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異世界転移 ~魔を狩る者~  作者: 緋色火花
外伝・壱
270/407

9話・日本・黒蝶の嘲笑

お疲れ様です。


それにしても暑いですね^^;

まぁ~夏なのだから当然なのですが・・・w

暑さに弱い緋色的には地獄であります><


さて今回も当然外伝の続きとなります。

個人的にとても黒蝶のキャラを気に入っているのですが、

皆さんはいかがでしょうか?

感想などで書いてくれたら嬉しく思います^^



それでは、外伝9話をお楽しみ下さい^^

沙耶が不敵な笑みを浮かべ、

英二は魂から来る恐怖に身体を震わせていた。


(ヤ、ヤベェ・・・まじでヤベェ・・・。

 お、鬼化をし、黒蝶様の力で更に強くなったってのに・・・

 勝てる・・・気が・・・しねぇ・・・)


そして黒蝶もまた、英二の前で悠然と構える沙耶に対し、

眉間に皺を寄せていた。


(こ、このタイミングでこの女とは・・・。

 全く以って想定外・・・。

 てっきり高みの見物を決め込んで、出て来ないものとばかり・・・

 わ、私のミスですね・・・)




英二と黒蝶がそれぞれに思い悩んでいると、

ある人物の声によって緊迫した雰囲気が搔き消されたのだった。


「待って下さいよぉ~っ!沙耶さーんっ!」


「「「っ!?」」」


重い空気を切り裂くようにこの場所へと乱入して来たのは、

『ぜぇぜぇ』と息を切らし、

倒れ込むように沙耶に寄り掛かった『いちか』だった・・・。


「遅いんだよっ!いちかっ!

 って言うか・・・私に寄りかかるんじゃないわよっ!」


「ぜぇ、ぜぇ・・・えぇ~・・・。

 ちょっとくらいいいじゃないですかぁ~?

 って言うか沙耶さん・・・

 戦闘で疲れている私を置いて1人で突っ走って行ってっ!

 部下を思いやる気持ちとか~、一族としての誇りとか~?

 そう言うモノを全部ひっくるめて、

 沙耶さんには優しさってモノがないんですかぁ~?」


「優しさだぁ~?

 フッ・・・そんなモノ・・・。

 幼稚園の頃、悠斗をいじめていた連中を葬った時からないわよ」


「ほ、葬った・・・?

 え、えっ!?幼稚園児の頃にですかっ!?」


「あぁ・・・。

 私の可愛い悠斗をいじめたんだから・・・

 それくらい当然よね~?」


「・・・さ、沙耶さん、ブ、ブラコンだったんですか?」


「・・・悪い?」


沙耶のカミングアウトとも取れる言葉に、

いちかは勢いよく頭を左右に振って見せた・・・。


そして暫く2人のどうでもいい会話が続いていると、

黒蝶が堰を切ったかのように口調を荒げ始めた。


「あ、貴女達っ!!

 雑談もいい加減にして欲しいのですがっ?」


「・・・あっ」


「げっ!黒蝶っ!あんたこんな所に居たのっ!?

 って・・・アレ?英二さんも居たのっ!?」


「英二さんもっ!って何だよっ!?

 俺が居ちゃ~悪いのかよっ!」


「・・・い、居たのって、貴女ね・・・」


自分の存在を忘れ談笑していた2人に、

黒蝶のこめかみが『ヒクヒク』と動いていた。

そして『ま、まぁ~いいですけど』と呟くと、

気を取り直し口を開いていった。


「い、いい度胸ですね・・・2人共・・・。

 それにしてもいちかさん?

 私の結界・落葉とゴブリン・・・どうされたのですか?

 とくにあの結界はまだ未完成と言えど、

 貴女如きに破られる代物でないと思うのですが?」


まるで違う生き物でも見るかのような、

そんな視線をいちかへと向けると、

そのいちかは一瞬・・・。

沙耶をチラ見すると、申し訳なさそうに口を開いた。


「い、いや~・・・あの結界には正直手こずっていたし、

 ゴブリンに邪魔されるはで、それどころじゃなかったんだけど、

 丁度いいタイミングで沙耶さんが結界の外からバイクで・・・

 あはは・・・」


作り笑いを浮かべそう話すいちかに、

黒蝶もまた同じような表情を浮かべると、

その視線を沙耶へと向け、苦々しい物言いで話し始めたのだった。


「沙耶さん・・・。なるほど納得ですね?

 偶然にも貴女が外から落葉を破壊した為、

 運良く外に出られたと言う訳ですか~・・・納得です。

 そう容易く私の落葉が破壊されるはずもありませんから・・・♪」


何やらそう楽し気に話す黒蝶に、

沙耶は平然とそれを否定していった。


「いやいや、あんた黒蝶・・・って言ったっけ?

 別にあんたのあの『落葉』とか言う結界・・・。

 そんな大それた代物じゃないわよ?」


「・・・はい?」


黒蝶は片眉を吊り上げながら睨みつけるも、

そんな視線など気にする様子もなく沙耶は話し続けていった。


「この子に聞いた話だと・・・未完成って事らしいけど、

 あの結界・・・。内側からは破壊不可ってのは本当なの?

 実際はどうなのよ?」


「えぇ・・・。未完成・・・。

 私の力がまだ未熟な為に、未完成とはなっていますが、

 貴女達に破壊されるほど、柔な結界では御座いません」


まるで火花でも散っているかのように、

沙耶と黒蝶の間で『バチバチ』と視線をぶつけ合っていた。


「未完成・・・ふっふっふっ」


「・・・何が可笑しいのですか?」


「あんな三流結界・・・。

 例え完成していたとしても、たかが知れているわね・・・」


「・・・戯言を言う度胸は買いますが、

 貴女達は破壊された場所から出て来たのでしょ?

 何を偉そうに(のたま)うのでしょうか?」


「・・・ふっ」


黒蝶の勝ち誇った笑みを見下す様に、

沙耶は静かに笑って見せた。


そんな沙耶に黒蝶は拳を握り締めながら1歩・・・。

前へと踏み出そうとすると、

沙耶は双眼に力が籠った視線を黒蝶へと向けた。


「・・・力を一点集中」


「・・・?

 何かおっしゃいましたか?」


「あんな結界に手こずるのは、

 まだまだ二流の・・・修練が足りない出来損ないなヤツだけよ?

 集約した力を一点に集めるだけで、あんな壁・・・。

 簡単に破壊出来ちゃうわよ?」


この時・・・。

沙耶の隣に居たいちかは『がくっ』と膝から折れ、

『私は二流・・・私は二流』と念仏でも唱えるように、

放心していたが、それを構う事もなく2人の会話は続いて行った。


「そ、そんな事で・・・わ、私の『落葉』がっ!?

 バ、バカな・・・悪い夢でも見ているような・・・」


「フっ・・・。

 その程度の力しかないからっ!

 あんたはそこに居るバカしか堕とせないのよっ!」



『くっ!』と声を漏らした黒蝶は英二へと視線を向けると、

苛立った声を挙げながら指示を出したのだった。


「英二っ!何をしているのですっ!

 さっさとこの女を始末しなさいっ!」


「・・・わ、わかった・・・け、けどよ・・・」


英二は緊張で乾いた喉を鳴らしながら沙耶の顔を見ると、

『ギロリ』と沙耶の視線が英二の視線と絡み合った。


『バキっ!ボキっ!』と拳の指を豪快に鳴らすといちかにこう言った。


「いちか・・・悪いけど、このバカは私が()るから・・・」


「・・・えっ、は、はいっ!

 あっ、で、でもっ!ど、どうして英二さんがっ!?」


「隙を突かれた・・・。

 例えそうだとしても、日ごろの修練を怠っていたこいつが悪いっ!

 そんなバカ・・・私に殺されて当然よね~?」


いちかが驚くのも無理はない・・・。

英二は黒蝶の手に落ちたのを知らなかったのだ。

その説明をするべく桜はいちかを呼ぶと、

沙耶へと声を掛けた。


「・・・沙耶、すまない。

 バカ弟子の不始末をお前に・・・」


英二に向かってゆっくりとその歩みを進めた沙耶の足が止まると、

振り返る事もなく沙耶は口を開いた。


「なぁ~に・・・桜様・・・。

 こいつを始末するのは私に任せな・・・。

 こんなヤツでも、桜様にとっては弟子・・・。

 バカだけど・・・弟子・・・」


「・・・バカだけどな」


「えぇ・・・」

 

沙耶と桜の会話が()しくも鬼の力で聞き取れてしまった英二は、

誰に悟られる事もなく、静かに傷ついていたのだった。


(バカ、バカって・・・うぅぅぅ・・・

 堕ちた俺が悪いんだから・・・。

 そう言われたって仕方がないとは思うけどよ~・・・。

 そ、それでもちょっと言い過ぎじゃねーのか~?

 何だろ・・・?

 俺・・・泣きたくなってきた・・・とほほ)



そんなバカ・・・。

いや、英二と対峙した沙耶はやはり不敵な笑みを浮かべて居た。


「よぉ~・・・英二・・・。

 自分の師匠に手を挙げるなんて・・・中々いい度胸してるじゃない?」


「はは・・・は・・・そ、そんな事、な、ないっスよ」


苦笑いを浮かべる英二を無視するかのように、

沙耶はその鋭い視線を黒蝶へと向けると、吐き捨てるようにこう言った。


「・・・フンっ!こんな小娘如きに翻弄されて、

 挙句の果てに堕とされるなんて・・・

 あんたはやっぱり情けない男ね~?

 あぁ~ん?英二・・・そこんところ、どうなのよ?」


「ははは・・・はは・・・。

 い、いや~まぁ~・・・そう言われたらそうなんスけど、

 でも俺も好き好んで堕とされた訳じゃないっつーか?」


「って事は、つまり・・・。

 あの小娘の術か何かにはまったって事で間違いないのよね?」


「ま、まぁ~・・・そ、そう・・・スね。

 あはははは・・・あぁ~あ・・・ほんと、すんませんっ!

 まじで面目ないっス」


「フッ・・・そう言う事なのね~・・・。

 って事は・・・フフフ」


意味有り気な沙耶の笑いに、様子を伺っていた黒蝶は顔を顰め、

その苛立ちを(あらわ)にしながら英二に声を挙げたのだった。


「英二さんっ!何をいつまで話しているのですかっ!?

 私の命令に従いっ!さっさとこの女を殺してしまいなさいっ!」


そう英二に向かって声を挙げると、

その面の下の顔がしかめっ面になり、

無意識に扇子を広げ、その面の顔を隠したのだった。


「ははは・・・や、やりますよ・・・。

 やりゃ~いいんでしょうがっ!

 どうせ黒蝶様の命令には逆らえねーんだ。

 こうなったら破れかぶれだっ!

 沙耶っ!ここはまじで行くぜっ!」


気持ちを切り替えた英二に沙耶は再び笑みを浮かべると、

『いいぜ、来いよ♪』と英二に向かって手招きをして見せた。


「けっ!沙耶っ!俺様の強さを味わいやがれぇぇぇっ!」


そう意気込んで見せた英二は、後ろ脚に力を溜めると、

『縮地っ!』と声を挙げ駆け出した。


すると一瞬にして沙耶の懐へと姿を現すと、

渾身の力を込めてその左拳を沙耶の腹へと放ったのだった。


だがその瞬間、沙耶は笑みを浮かべていた。

まるで英二が最初からこの位置に来ると分かっていたかのように・・・。


『バチンっ!』と鈍い音が沙耶の腹から響くと、

沙耶の身体は『ゆらり』と・・・。

まるで柳の枝のように柔らかく揺れたのだった。


(て、手応えが・・・ねぇ・・・っ!)


一瞬英二はその視線を上げ沙耶の顔を見ると、

『ニヤ~』っと薄気味悪い笑みを浮かべていたのを見た。


(う、嘘だろっ!)


「ならっ!これはどうだぁぁぁぁっ!」


沙耶の懐から英二の声が挙がると、

今度は右の脇で溜めていたその右拳を、渾身の力で叩き込んだ。


「うらぁぁぁぁぁぁっ!」


「・・・馬鹿ね」


『ガキっ!グシャ!』


「ぐぁっ!?」


英二の放った渾身の右拳が沙耶の腹へと直撃した。

だがその炸裂したその音は、通常有り得ないような音だったのだ。


そして英二が驚きの声を挙げた瞬間、

その声は叫び声と変わり、沙耶の足元で藻掻き苦しむ英二の姿があった。


「ぐあぁぁぁぁぁっ!」


右拳を押さえ、その激痛に英二の全身の毛穴から大量の汗が噴き出した。


「ぐぁぁぁぁっ!ど、どう・・・し・・・て・・・こん・・・なっ!?

 ぐぁぁぁぁぁっ!

 お、俺の・・・こ、拳がぁぁぁぁぁっ!」


『ゴロゴロ』と転げ回る英二に冷たい視線で見下ろした沙耶が口を開いた。


「神野流・気功体術・・・気功腹反射・・・。

 英二・・・私が相手だって事、忘れてんじゃないの?

 この技は相手の威力が強いほど跳ね返る力が大きい・・・。

 だからあんたは今・・・こうなってるって訳よ?

 おめでとう英二・・・。

 お前の鬼の力が凄いって事が証明されたわね?」


「ぐぉぉぉぉぉ・・・くっ、くっそぉぉぉぉぉっ!

 お、俺の・・・鬼の力が・・・あ、仇となって・・・」


「あんたもバカね?

 何もバカ正直に真っ直ぐ打つ事ないでしょ?

 直線的な力は腕が真っ直ぐに伸びきるのよ?

 そんな逃げ場のない一方通行の威力だからモロに喰らうのよ・・・。

 だからこっちで一手間加えれば、結果はこの通りに・・・♪

 ほ~ら・・・あんたの拳はぐっちゃぐちゃ♪」


「ぐおぉぉぉぉっ!」


藻掻き苦しみながら押さえいたその右拳が見えると、

黒蝶はその面の下の顔が酷く引き攣り、

沙耶と言うその人間の恐ろしさを垣間見たのだった・・・。


(・・・こ、これが・・・ひ、人の・・・ただの人間の・・・技っ!?

 わ、私は・・・こ、こんな化け物みたいな女と・・・?

 バカな・・・ありえない・・・。

 この女・・・人間の力を越えている・・・)


面の下で唇を噛み締める黒蝶は、

この事態に驚愕していたのだった・・・。


そして黒蝶が沙耶と言う人間を越えた女に驚愕するように、

犬神である桜もまた・・・驚愕していたのだった。


(え、英二の拳を破壊した・・・。

 り、理屈はわかる。

 だからと言って、人が鬼の力を凌駕するなんてありえない。

 悠斗もそうだけど・・・この神野一族・・・。

 その潜在能力は計り知れない・・・)


深刻な表情を浮かべる桜を見ていたいちかは、

不思議そうな表情を浮かべ見ていた・・・。


(桜さんは一体何に驚いているんだろ?

 英二さんの拳を破壊した・・・から?

 それとも・・・)


いちかは桜や黒蝶にもわかないモノの事を・・・。

沙耶の身体からうっすらと流れ出るその力の事を思っていた。


その力とは・・・?



右拳をいとも簡単に破壊された英二は呼吸音を変えた。

それは『気道』の力の一端である、

呼吸によって痛みを和らげると言う呼吸法だった。


『コォっ!コォっ!コォォー・・・コォォォォォ』


(くっ、糞ったれっ!

 わ、わかっちゃいたが・・・だからって鬼の力をこうもっ!

 や、やっぱりあの女は化け者だっ!

 こ、こうなったら、今、俺が使えるあの赤紫の・・・

 黒蝶様にもらった強化された鬼の力をこの女にっ!)


苦痛に満ち汗を吹き出し全身ぐっしょりと濡れた英二だったが、

『ヨロヨロ』としながらも立ち上がって見せた。


「ふ~ん・・・よく立てたわね?

 その根性だけは認めてあげるわ♪

 実に泥臭いあんたらしい立ち上がり方ね~?」


「う、うる・・・せー・・・よ」


表情を歪めながらもそう言って見せた英二に、

沙耶は薄く笑みを浮かべて居た。


そしてそれを見ていた黒蝶は『・・・英二』と声を掛けると、

英二が振り向くと同時に何かを唱えながら扇子で一仰ぎして見せた。


「・・・な、何だ・・・これ?」


英二が右拳に違和感を感じそう声を漏らすと、

沙耶がその目を細め興味深そうに見つめていた。


(・・・青白く光る黒い蝶?

 だけどその光は鈍い・・・なんなの・・・アレは?)



沙耶が注目する中、英二の右拳に止まったその黒蝶は、

鈍く青白い光をその身体に纏わせ、羽根をゆっくりと・・・。

まるで自らの命を削っているかのように、

黒蝶の身体が纏っていた鈍く青白い光は少しずつ薄れていった。


『ポトリ』


「・・・あっ」


「っ!?」


黒い蝶は力尽きたのか地面へと落ちて行った・・・。


「あ、あれ・・・?

 お、俺の拳が・・・な、治ってる・・・」


(まさかあの黒蝶は・・・?)


地に落ちた黒い蝶を見た沙耶は何かを感じ取ったのか、

怒りに満ちた視線を黒蝶へと向け静かに声を挙げた・・・。


「黒蝶・・・お前・・・」


「・・・フフフ♪何かお気付きのようですね?

 貴女のその感じ取ったモノは・・・正解です♪」


「・・・貴様、命を一体なんだと思ってるのよ?」


「・・・フフフ♪命・・・ですか?

 そんなモノ・・・。

 神ならいくらでも作り出す事が出来る・・・。

 その程度のくだらない代物ではありませんか?」


黒蝶の口から予想にもしていない言葉が吐き出されると、

桜やいちかの表情が怒りに満ちて染まっていた。


「なっ!なんて事言うのよっ!?

 黒蝶っ!あんただけは・・・何があっても絶対に許さないわっ!」


「黒蝶・・・。

 いくら神で在っても・・・命と言うモノはそう簡単ではない。

 我が身を引き裂くような思いをし、

 人間の未来を願って生み出されるモノなのよ」


そう桜から重い言葉を聞いた黒蝶は『・・・フッ」と笑って見せた。

そして今度は怒りに満ちた目を桜へと向けると、

憎悪の塊とでも言うべきか・・・。

密度の高い憎悪の言葉を返して来た・・・。


「フフフ・・・。

 犬神・・・今、何か言葉を吐きましたか?」


「・・・何だとっ!?」


「・・・我が身を引き裂く思いで生み出した?

 ・・・人間の未来を願って?

 フフフ・・・実に面白い事をおっしゃるのですね?」


「・・・何が可笑しいのよ?」


威圧を纏わせた桜がそう言葉を返すも、

黒蝶の開けられた右目の眼力は未だ衰える事はなかったのだ。


「・・・可笑しい・・・フフフ。

 こんなに可笑しい事はありませんでしょ?

 人一人の命など、何とも思っていないばかりか、

 人を利用し終われば慈悲もなく捨て去る・・・。

 そんなお前達神がっ!どんな言葉を吐こうともっ!

 この私は神の言葉など信じるに値しないっ!」


黒い風・・・。

黒蝶が心の奥底から吐き出された神への憎悪が、

禍々しい黒い風となって桜達へと放たれた。


「ぐっ!な、何て禍々しい憎悪をっ!?」


「きゃあっ!?か、身体が・・・きゅ、急に体が重く・・・」


憎悪の風を受けた桜はその表情を曇らせ、

そしていちかはその憎悪を受けた事によって、

身体がまるで鉛のように重くなったのだった・・・。


だが・・・そんな中、沙耶だけは平然と黒蝶を睨みつけていた。

『・・・嘘でしょ?』と、黒蝶が沙耶に向かって言葉を漏らした。



『・・・ジャリ』


一歩前へと踏み出した沙耶はその表情を・・・。

その怒りの表情を崩さないまま・・・その口を開いた。


「黒蝶・・・あんたと神の間に一体何があったかはわからない。

 例えその理由がわかったとしても・・・。

 私はあんたに手を貸す事はしないわ」


「・・・ふーん」


「黒蝶・・・あんたはこう言った・・・。

 人の命を何とも思っていないばかりか、

 人を利用し終えれば慈悲もなく・・・捨てると・・・」


「はい、確か私はそう言いましたが?」


「黒蝶・・・お前・・・。

 今、お前がやっている事は・・・それと同じじゃないのか?」


「・・・はい?」


沙耶の投げかけた言葉に黒蝶は首を傾げて見せた。

そんな黒蝶に沙耶は言葉を続けた。


「・・・わからないの?

 お前がさっき何をしたのかを?

 なら、私が思い出させてあげるわ・・・

 先程英二の右拳を治したあの黒い蝶・・・」


「・・・・・」

 

「あれは神野一族の文献にあった・・・冥界の蝶・・・。

 その名は確か・・・『灯蝶(ともしびちょう)』だったか?」


沙耶の言った『灯蝶』の名を聞いた黒蝶は驚きを露にしていた。

そしてその面の下の表情もまた・・・

『信じられない』と言わんばかりの表情を浮かべて居たのだった。


そしていちかがその話に首を捻る中、

桜は黒蝶と同じように驚きの表情を浮かべるのだった。


(た、確かにそう言われてみれば・・・。

 ここは人間界・・・。

 『灯蝶』など存在する訳がないと、勝手にそう思い込んでいたわ。

 冥府魔道の力を操る黒蝶が『灯蝶』を操るのは・・・

 至極当然だものね・・・。

 私とした事が・・・そんな事にも気付かないなんて・・・ちっ!)



驚きを露にした黒蝶ではあったが、

今はその肩を小刻みに揺らしていたのだった・・・。


「・・・フフフ。

 まさか・・・ですね?」


「・・・はぁ?」


「フフフ・・・まさか『灯蝶』の存在を知っているだなんて・・・。 

 流石は『魔狩り人』の一族ですね。

 御見それ致しました・・・」


そう言いながら黒蝶は沙耶に対しお辞儀をして見せた。

だが沙耶は表情を崩さず、話の本質を口にし始めたのだった。


「・・・『灯蝶』

 その文献によると冥界の黒い蝶は・・・。

 冥府の土地に僅かに残る人間の命の欠片を好んで集め、

 その蝶一体で人間1人分の命を蓄える・・・。

 やがてその『灯蝶』が蓄えたその命は再び人へと生まれ変わる。

 そう書き記されていたわ」


「・・・ご名答♪」


「そして黒蝶・・・。

 お前は神で在る桜様に対し言葉を吐き捨てた」


「・・・そうですね」


「人1人分の命を・・・。

 英二の拳を治す為だけに・・・」


そう言いながら沙耶は一瞬、その顔を英二へと向けた。


「ま、まじ・・・かよ?

 そ、そんな『灯蝶』ってのを・・・俺の拳なんかに・・・?

 何でだよ・・・?

 黒蝶様・・・。どうしてそんな尊い『灯蝶』をっ!?」


ワナワナと身体を震わせ黒蝶にそう問い質した英二だったが、

黒蝶は再びニヤりと笑みを浮かべながら平然と話していった。


「英二さん・・・。

 貴方は私の仲間になったのです。

 その仲間を治癒して差し上げるのは至極当然ではありませんか?」


「・・・た、確かにそりゃ~そうかもしれねーけどよっ!

 だ、だからってっ!」


「では・・・はっきりと申し上げますが・・・」


そう言うと視線を英二から離し、再び沙耶達へと向けたのだった。

そして嘲笑(あざけわら)うようにこう言った。


「・・・フフフ♪

 人を・・・人間を越えた私は良いのです♪」


「「「なっ!?」」」


「・・・こ、黒蝶・・・様っ!?

 あ、あんた・・・一体何を言ってっ!?」


「はぁ~あっはっはっはっはっはっ♪

 いずれこの私・・・。黒蝶はっ!

 神をも越える存在となりっ!

 この地球にとってっ!より良い人間だけを残しっ!

 未来永劫・・・繁栄を築いて行くのですっ!」


黒蝶の言葉に沙耶達は怒りで震え、

今まで震えて黒蝶の話を聞いて居た英二の身体の震えは・・・

『ピタリ』と止まった。


「余計な命など直ぐに処分し・・・。

 より良い人間を作り出す為に『灯蝶』を利用する・・・。

 これの一体何がいけないと言うのでしょう?

 それにこの行いは神と同じではありません。

 私は神に出来なかった事をっ!

 この神をも越える私が成すのですっ!

 フフフフフフ・・・ハハハハハ・・・アァ~ハッハッハッ!」



悦に・・・。

いや、狂気に満ち嘲笑する黒蝶の姿に、

沙耶達だけではなく、堕ちた英二までもが怒りに震えたのだった。




ってな事で、今回のお話はいかがだったでしょうか?

黒蝶・・・ヤバいですねw

自分で書いていてこいつヤバいなって思いましたw


皆さんはどんな感想をお持ちでしょうか?



ってなことで、緋色火花でした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 黒蝶。。。マッドですね。 でもその根底には深い悲しみや怒りがありそうで。。。 いつか彼女が癒されることを祈ってます。。。
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