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異世界転移 ~魔を狩る者~  作者: 緋色火花
外伝・壱
266/408

5話・日本・深淵なる蝶

お疲れ様です。


ちょっと体調を崩してしまっていますが、

ちょこちょこ書いていっています。


妥協したくはないので、自分の中では納得したモノを書いています^^


今回はいちかがメインの話となっております。

楽しんで読んでもらえたら嬉しく思います。


登録や感想など宜しくお願いします^^

モチベが上がりますので・・・w

そうなると、1話が長くなったりしますw



それでは、外伝・日本・5話をお楽しみ下さい^^

戒斗は目の前で無念の死を遂げた親の想いを胸に、

その子供を救出すべく駆け出し、

修一は助け出した少女達を大介が待つ村の入り口に向かっていた頃、

いちかは村に漂う異様な雰囲気の中、1人走っていた・・・。



(やっぱりこの村には誰の姿も・・・

 いえ、人の気配さえも感じないわね?

 って事はつまり・・・私の居る空間はハズレって事?)


いちかは辺りをキョロキョロとしながらも、

その足を止める事無く先を急いでいると、

右手側に修一が戦った公民館が見え、そこを取り過ぎた時だった・・・。


(・・・っ!?)


何かを感じ取ったいちかの足がふと・・・ピタリと止まったのだ・・・。


(・・・これは視線っ!?

 だけどこの感じは・・・)


息を殺してこちらを見ている視線に気づいたいちかは、

咄嗟に月読から教えられた獣魔感知の魔法を使用した。


(っ!?

 ・・・やっぱりね~?

 人の気配とは違い、どこか異質な感じがしたのよね~)


今、いちかの目の前には、

獣魔感知によってもたらされた、5つの赤い点滅が記されていた。


(ん~・・・このままだと完全に囲まれるわね~?)


今、いちかが居る場所は広い通りにある公民館を過ぎて行くと、

十字路に別れる場所に出たのだが、

その場所はお世辞にも広いと呼べる場所ではなく、

民家が建ち並んでおり、視界も良好とは言えない場所だった。


(建物が邪魔で戦い辛い・・・。

 と、なれば・・・)


いちかは不利になる状況を打破する為、

細い路地が入り組む先に在る、

村の広場らしき場所へと向かって駆け出した。


何故、いちかが不慣れなこの村の地理を把握していたのか?

それは獣魔感知による恩恵だった。


この獣魔感知は、野生の獣や魔に対して反応を示す魔法なのだが、

その周辺の地形なども容易に知れる魔法なのだ。

だからこそ、いちかはこの村の地理を把握し、

不利にならない広い場所へと移動して行ったのだった。


(よしっ!着いて来ているわね?)


いちかは点滅する魔が見失わないように速度を加減しながら、

広い場所へと移動し、その場所の中央付近でその足を止めると、

この広場がどう言った用途の広場なのかが理解出来た。


(此処ってグランドだったのね~?)


そう思いながらも獣魔感知で敵の位置を把握しているいちかは、

ニヤりと笑みを浮かべ後方へと振り向きながら、

マジックボックスから弓を取り出しつつ、

矢を2本取り出すと、それを(つが)え構えた。


「・・・ふぅ~。

 さてっと~・・・ど~れに~、しよ~かな~♪」


視界が開けたいちかは、

まるで今の状況を楽しむように、

まだ姿を見せていない敵に対し弓を引き絞ると、

「ふぅ~」っと軽く息を吐き、迷う事無く矢を放ったのだった。


「シュっ!」


「・・・いっけぇぇぇっ!」


いちかがそう声を挙げる中、

放たれた2本の矢はⅤ(ブイ)の字の軌跡を描きながら、

1つはグランドの片隅に在る、存在感たっぷりの大樹へと向かい、

そしてもう1つはその反対側に在る、

人の腰辺りまで生えている茂みの中へと向かっていった。


「ドスっ!」


「ウギャァァァっ!」


「カツンっ!」


「・・・げっ!?はずしたぁぁぁぁっ!?」


茂みの中へと放たれた矢は、対象を見事に貫き絶命させたが、

樹木へと放たれた矢は対象を捉える事もなく、

その樹木へと突き刺さり、虚しく音を響かせたのだった。


「うぅ・・・。わ、私ってば昔から弓は苦手なのよね~。

 悠斗さんが居たら・・・ジト目を向けつつ無言の威圧が・・・。

 うぅぅ・・・あ、あの目って怖いのよね・・・」


無言でいちかを見つめて来る悠斗の顔を思い出すと、

1度身震いした後、弓を再びマジックボックスへと戻した。


だが敵はまだその姿を見せず、息を潜め潜伏しているのだろうが、

獣魔感知を使用しているいちかには、何の意味も成さなかった。


そんな敵に対しいちかは苛立ちを募らせると、

いちかは白鷹を抜きながら声を挙げた。


「いつまで隠れてんのよっ!

 とっっっくにバレてんだからっ!

 とっとと出てきなさいよっ!」


そう声を張り上げると大樹の陰から・・・。

そして茂みの中から、緑色の肌をした魔物・・・。

ゴブリンがその醜い姿を現したのだった。


「うわぁ~・・・キッッッモっ!

 ・・・予想以上に醜い姿ね?」


そう声を漏らすいちかに4体のゴブリンは醜い笑みを浮かべ、

ジリジリといちかとの距離を詰め始めた。


「グゲゲゲゲ・・・」


不敵な笑みを浮かべた1体が石斧を空へと向かって突き上げると、

「グギィィィィっ!」と雄たけびを挙げながら、

いちかに向かって3体のゴブリンが駆け出したのだった。


「・・・かかって来なさいよっ!」


いちかを威圧するように声を挙げたゴブリン達に、

いちかも負けず声を挙げると・・・。


「身体強化Lv.2っ!

 いっっっっくわよぉぉぉぉっ!」


魔法を使用し、いちかの身体が淡い光に包まれると、

先行する1体のゴブリン目掛け突進して行った。


「囲むならっ!味方と連携して速度くらい合わせなさいよっ!

 このっ!馬鹿者がぁぁぁっ!はぁぁっ!」


「ズシャっ!」


「プッギャァァァっ!」


最初にいちかに飛びかかったゴブリンは、

振りかぶった石斧を振り下ろす事もなく、

いちかに斬って捨てられると、

それを目にした2体のゴブリンは「グギャっ!」と合図を送り、

いちかを挟むように左右へと分かれて行った・・・。


「ふふっ♪挟み撃ちって訳ね~?

 いいじゃな~い♪

 でもその作戦が私に通用するかどうか・・・

 その命を持って確かめるといいわ♪」


薄く笑みを浮かべたいちかに構う事無く、

左右に分かれたゴブリンは再び雄たけびを挙げながら、

同時に飛びかかって来た。


「グギィィィっ!」


「シャァァァっ!」


「ふっ・・・」


ゴブリン達の連携攻撃にそう薄く笑ったいちかは、

突然驚きの行動にでた。


「・・・これも1つの修練って事で~♪」


いちかはそう言いながら白鷹を納刀すると、

左右から飛びかかって来るゴブリン達に向かって、

両手を広げ声を挙げた。


「喰らいなさいっ!

 ファイヤー・ランスっ!

 あ~・・・んどっ!

 フリージング・ランスっ!

 いっけぇぇぇっ!」


「「ギィギィっ!?」」


いちかがそう声を挙げ、

2体のゴブリン達が驚きの声を挙げた瞬間、

いちかの掌から放たれた炎の槍と氷の槍が、

一瞬にして2体のゴブリンに命中し、

1体は身体を貫かれながら燃え、

もう1体は貫かれた場所から凍り付いたのだった。


「ウギァァァァァっ!」


「フギァァァァァっ!」


2体のゴブリン達は、断末魔の声を挙げながら、

絶命したのだった。


どうしていちかは白鷹を納刀し魔法で攻撃したか?

それには理由があった・・・。


その理由とは、異世界へ行った時、

魔法での戦闘を考慮し、

今からその戦い方に慣れておこうと思っていたからだった。


「いてててて・・・うぅ・・・。

 2つ同時の魔法ってまだ慣れないわね~?

 って言うか、腕に流れるこの魔力腺がチクチクして、

 地味に痛いのよね・・・。

 もっと魔法の練習しなくっちゃね~」


だから今回この異質な仕事は、、

いちかにとって願ったり叶ったりだったのだ。


「ふぅ~・・・」と、

息を漏らしながら残ったもう1体のゴブリンへとその視線を向けると、

いちかはチクチクとする痛みを忘れ目を見開き、

目の前で起こっている光景に驚愕したのだった・・・。


「ちょっ・・・、あ、あんた・・・。

 い、一体・・・何やってんのよっ!?」


いちかが驚愕するほどの驚きを見せたのは、

残った1体のゴブリンが、

つい先ほどいちかによって射抜かれたゴブリンを、

「バリバリ」と音を立てながら喰らっていたからだった。


「やっ、止めろってーのっ!」


いちかは怒声を挙げながら駆け出すと、

死体に喰らいつくゴブリンへと刀を振り下ろした。


「ちっ!」


だが、いちかの攻撃を一瞬早く躱したゴブリンは、

木材で出来た柵の上に飛び移ると、

手に持っていた同族である仲間の腕を、

再び貪るように喰らいついていったのだった。


「こ、こいつ・・・」


その光景に吐き気を覚えたいちかだったが、

仲間に対する敬意も愛情もないその姿に怒りが優先し、

何とか嘔吐を堪えたのだった。


「・・・絶対に・・・殺す」


苦虫を潰したような表情を浮かべたいちかに、

横目で見ていたゴブリンの目が一瞬・・・笑ったかのように見えた。


(い、今・・・私を見て・・・わ、笑った?)


そう捉えたいちかの怒りが上昇し、

顔をヒクつかせながら怒声を発した。


「・・・あんた今・・・私を見て笑った?」


「グギィ・・・」


「あんたーっ!人の話はちゃんと聞きなさいよっ!

 って言うか、いつまで食ってんのよぉぉぉぉっ!」


そう怒声を発したいちかに対し、

無視するかのように貪っていたゴブリンだったが、

ふとその動きを止めると突然苦しみだした。


「グッ・・・ギィギィ・・・グギァっ!」


「と、突然・・・何っ!?」


その呻き声は次第に苦痛を伴う声へと変わると、

地面を転げ回り、更に悲鳴に近いような声を挙げた。


「グッッッギャァァァァァァァァァっ!」


「な、何が・・・一体何が起こってるのよっ!?」


その光景に後ろへと1歩後ずさったいちかの身体を、

何とも言えないほどの悪寒が駆け巡った。


転げ回り叫び声を挙げたそのゴブリンが、

パタリと動きを止めると、いちか達の居るグランドは、

何事もなかったかのように静寂に包まれた・・・。


「・・・し、死んだ?う、嘘っ!?

 どうなっているのか全然わかんないんだけどっ!?」


恐る恐る近づいたいちかは、

動かなくなったゴブリンの腕を軽く蹴ってみるが、

やはり動かないようだった。


「・・・ど、どうなってんのよ?」


そう疑問を口にするいちかだったが、

いつまでもこうしては居られないと自分に言い聞かせ、

踵を返してそのグランドを後にしようとした時だった・・・。


「・・・っ!?」


背後に突然異質な気を感じたいちかは身構えながら振り向くと、

そこにはたった今死んだはずのゴブリンが立ち上がって居た。


「・・・し、死んだはずじゃっ!?」


驚きの声を挙げたいちかだったが、

ふとゴブリンの額に黒く光る何かに気付いた。


「あ、あの黒い光・・・って言うか、

 あ、あれって・・・何かの文字っ!?」


ゴブリンの額に黒く光る文字のようなモノは、

余りにはその黒い光がくすんでいた為、

どのような文字かまでは確認出来なかった・・・。


すると突然何処からともなく女の声が聞こえてきた。


「・・・フフフ」


「だっ、誰っ!?で、出てきなさいよっ!?」


「・・・たいした度胸ですね?」


いちかはその声の主の在りかを探るべく、

獣魔感知を使用したが、この魔法には何も反応がなかった。


(反応がないって・・・事は・・・?

 えっ!?そ、それってまさか・・・に、人間って言う事っ!?

 嘘でしょっ!?

 ど、どうして人間がっ!?)


必死に気配を探るいちかの目の前の空間が突然歪むと、

その中から金の糸で模様が象られた黒い和服の女性が現れた。


「御機嫌よう♪」


まるで友人でもあるかのような挨拶をしてきた女性だが、

その女性の異質さや違和感は一目瞭然だったのだ。


(何よあの面は?

 右の片方だけ開けられた目と、

 真っ赤に塗られた唇・・・。

 異様・・・としか、言いようがないわね?)


襲うでもなく威圧するでもなく・・・。

そんな異様な女性にいちかは冷静に口を開いて行った。


「あんた・・・何者なの?

 そんな真っ白い気持ちの悪い面など付けて、

 一体どう言うつもりなのよ?」


「・・・フフフ」


突然目の前に現れた女性に、いちかは咄嗟に白鷹に手を添え、

いつでも抜刀出来るよう白鷹に手を添えると低く身構えた。


「フフフ・・・。

 そう警戒されては話す事すら出来ませんわね?」


「・・・話?

 一体この私に、どんな話があるのよ?」


「フフフ・・・実はですね?

 私の実験の為に、貴女にご協力して頂けないかと・・・」


「・・・実験っ!?協力っ!?」


「はい♪」


「な、何の実験よっ!?」


「こちらをご覧ください♪」


そう言って左腕を横へと伸ばすと、

額に黒く光る文字のようなモノがあり、

無言でただ立ち尽くしているゴブリンを示したのだった。


「私が独自に開発した傀儡の術・・・。

 この実験体である魔物ゴブリンに施しているのですが、

 まだ未完成なれど、少々思うところが御座いまして、

 是非、貴女に私が製作したこの傀儡の実験台になって頂こうかと♪」


いちかは目の前に居る得体の知れない女性の威圧に、

「ギリっ!」と奥歯を食い縛るのだった。


「傀儡の実験台っ!?この私がっ!?」


「はい♪」


ゆったりとした口調で話すその女性にいちかは、

あからさまにその苛立ちを口にした。


「・・・誰が好き好んで、

 そんなヤバい実験に付き合わないといけないのよっ!」


「フフフ・・・。

 それは困りましたわね~?

 私の実験台にはどうしても貴女にやって頂きたいですのに~♪

 ・・・困りましたわね?」


そう言って仮面の女性が開いている右目を見せた時、

いちかの背筋に恐ろしく冷たいモノが走った。


「っ!?」


咄嗟に後方へと飛び退いたいちかは、

戦闘態勢を整えその女性の動きに注意を払った。


(い、一瞬だったけど・・・。

 あの仮面の奥に在る目が・・・血走っていた・・・。

 わ、私と何か因縁でもあるってのっ!?)


「そうてすか・・・そうですわね?

 仕方がありませんね?

 もうこうするしかないようです♪」


するとその女性は懐より長方形の紙切れと木の葉を数枚取り出すと、

空に向かって放り投げたのだった・・・。


「これもまだ実用には程遠く実験段階なのだけれど・・・」


そう哀しそうな声を出しつつ、

その女性は胸の前で何かの印を数度結ぶと、

剣印を空へと突き出しながら抑揚のない声で呟くように言った。


「虚構結界・落葉」


「結界っ!?」


その結界の名を口にした時、

いちかが居るグランド全体を、

黄色味がかったドーム状の結界が張られたのだった。


「ゆ、油断してた訳じゃないけどっ!

 で、でも・・・こ、これが結界っ!?

 何よ・・・この結界?

 こんな結界、今まで見た事も聞いた事も・・・」


まるで枯れた落ち葉のような色を連想させるその結界に、

いちかは戸惑いの色を濃くしていた。


そんないちかにその女性は話しかけて来た。


「貴女達の事は既に調べが着いています。

 いちかさん・・・。

 もしも私の可愛い傀儡を倒したとしても、

 この「落葉の結界」を破壊出来るでしょうか?」


(わ、私の名前まで知っているとはね?

 達って事は・・・。

 調べが着いているっての言うのは、まんざら嘘でもないようね?)


いちかはそう考え大きく深呼吸し、

力強い視線をその女性へと向け笑みを浮かべると、

白鷹の切っ先をその女性へと向けながら啖呵を切って見せた。


「実験だか何だか知らないけど・・・。

 あんたの好きにさせる訳ないでしょっ!

 師匠が居ないこの日本でっ!

 あんたみたいな連中をのさばらせておく訳にはいかないのよっ!

 その異様な仮面・・・剝ぎ取ってあげるからっ!

 さっさとかかって来なさいよっ!」


そう啖呵を切ったいちかは、

白鷹を勢いよく納刀し「カチンっ!」と音を響かせると、

意思の籠った力強い眼差しを向け、

抜刀術の態勢を取って見せた。


「・・・・・」


いちかのその威圧と迫力・・・。

そしてその剣気に、その女性は一瞬言葉を失ったのだが、

すぐに抑揚のない笑い声を漏らしながら、

いちかの意気込みに応えたのだった。


「フフフフフフ・・・。

 ハハハハ・・・アァ~ハッハッハッ♪

 いざ良しや・・・その心意気♪

 その心意気に免じて、名乗ろうでは在りませんか♪」


「・・・名乗る?」


「えぇ♪

 ですからくれぐれも・・・。

 こんな所で死なないで下さいね?

 川崎いちかさん・・・。

 私の名は『黒蝶(こくちょう)♪』

 紅葉(もみじ)をも滅ぼす、深淵なる蝶です♪

 以後、お見知りおきを・・・♪」


(黒蝶・・・?

 それがこの女の名?

 でも、紅葉をも滅ぼすって・・・何っ!?)


黒蝶と名乗る女性の言葉に違和感を抱きつつも、

油断ならない相手の一挙手一投足に神経を張り巡らせていった。


そしていちかの意を察してか、

黒蝶は帯に差していた扇子を抜き真っ白い仮面の前で広げると、

血のように赤く染まる唇を覗かせながら、

最後にこう告げた。


「さて、そろそろお時間のようです♪

 コレを倒して、いちかさん・・・。

 貴女と再び相まみえる事を切に願います♪

 では、御機嫌よう♪」


「黒蝶っ!逃げるなぁぁぁぁっ!」


「・・・フフフ♪


いちかにそう言葉と笑みを残すと、

黒蝶の周りの空間が歪み、その中へと消えて行ったのだった。


「あぁぁぁぁぁっ!もうっ!!

 イライラするわねーっ!

 次に会ったらっ!ぜぇぇぇぇぇぇったいにっ!

 その仮面を剝ぎ取ってやるんだからぁぁぁぁっ!

 黒蝶っ!!待っていなさいよぉぉぉぉっ!」



『黒蝶』と名乗った『深淵なる黒い蝶』・・・。

その女性は含んだ笑みを残し消え去った・・・。


だが、今後の戦いには間違いなく・・・。

『人間』が関与していると言う事実でもあった。


その事実に拳を握り締めるいちかではあったが、

今後の熾烈な戦いを想像する事が出来たのだった。



そんな中・・・。


修一から少女達を預かった大介は状況を伝える為、

本家に連絡を取っているのだが、

電話の相手の背後から聞こえる声に違和感を感じたのだった。


「・・・そちらがとても騒がしいのですが、

 本家で何かあったんですか?」


「あはは・・・ははは・・・。

 い、いや~・・・じ、実は・・・ですね・・・」


電話の主が戸惑いながらもそう話しかけた時だった・・・。


「フォン、フォーンっ!」と、

何処からともなくバイクのエキゾースト音が響き渡って来た。


「・・・ん?バイクの音・・・?

 誰か応援に来たのか?

 ひょっとして、もう誰かこちらに送って・・・」


そう言いながら大介は、

バイクの排気音が響き渡る方へと視線を向けてると、

1台のバイクが物凄いスピードで迫り、

あっと言う間に大介と少女達の横を走り抜けて行った。


(げっ!噓でしょっ!?)


その去り際・・・。

ライダースーツを着た者からハンドサインが送られると、

そのハンドサインを見た大介の顔が見る見る強張ったのだった。


「ハンドサインで『任せろっ!』って言われても・・・。

 あぁ~あ・・・。って言うか、ど、どうして貴女が?

 ・・・来れないはずじゃなかったんですか~?」


大介はそう独り言を呟くと、

電話の向こうからこんな声が返って来た。


「あぁ~・・・やっぱりそちらに行っちゃいましたか~?」


そう電話の相手から溜息混じりの声が聞こえて来たのだ。


「あぁ~・・・って事は、やっぱり無断で?」


「は、はい・・・。

 こちらでも涼華様がもうそれはそれはお怒りで・・・」


「・・・ですよね~?心中お察しします」


「「はぁ~・・・」」


電話の相手と大介がそう溜息を漏らす中、

バイクの主は躊躇う事もなく、村の中へと浸入して行ったのだった。


呆気に取られた大介は、

心配そうな表情を浮かべて居る少女達に優しい笑顔を向けると、

頭を撫でてやり「心配ないよ♪」と微笑んで見せた。


だが大介の心中はそうではなかった・・・。


(あぁ~・・・。どうか神様・・・。

 あの人がどうか村を破壊しませんように・・・)


そう心から祈っていたのだった・・・。



そしていちかの方はと言うと、

黒蝶が作り出した『落葉』と言う名の結界の中で、

腕を組んで考え事をしていた。


(・・・あの女~・・・。

 面倒臭い結界なんか張っちゃってくれちゃって~・・・。

 まぁ~無駄だとは思うけど一応試してみるしかないわね~?

 どの道このままじゃ埒あかないし・・・)


黄色味がかった結界の中で軽く息を吐き呼吸を整えながら、

結界の壁際まで移動し渋い表情を浮かべながら白鷹を抜いた。


(やれるだけやってみますか~・・・)


「はぁぁぁぁっ!」


気合と共に繰り出したいちかの斬撃だったが、

「ギュインっ!」と、音を立て結界の壁が波立つだけで、

傷1つ付ける事が出来なかった。


「・・・やっぱり無理ね。

 私ってばパワー系じゃないから、

 こう言うタイプの結果は苦手なのよね~?

 ・・・んんんんーっ!どうしよ~・・・」


結界の壁際でいちかは苦悩しているその背後で、

動きを止めていたゴブリンの指がピクリと反応し始めていたのだが、

今のいちかに気付けるだけの余裕はなかったのだった・・・。



ってな事で、今回のお話はいかがだったでしょうか?

楽しんでいただけたなら嬉しく思います^^


次回も楽しみにしていただけたら幸いです^^



ってなことで、緋色火花でした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 映像的に美しい場面が多かったですね♪ 黒蝶はもしや。。。でもなぜ。。。? 謎だらけでこの後もワクワクします♥︎
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