閑話 日本・闇との出会い
お疲れ様です。
寒暖差が激しくて、まじでキツい今日この頃です。
そんな中・・・。
何を思ったのか部屋を片付け始めたのですが、
お、終わらないし・・・と、止まらない・・・。
ただでさえ蒸し暑いのに・・・orz
ってなことで、色々とやったおかげで、
疲れ果ててしまいましたw
今回は外伝の閑話ですね~・・・。
戒斗と直次の過去のお話となっております・・・。
それでは、閑話をお楽しみ下さい。
俺の名は、神野戒斗・・・
禍払いを生業とし、代々「魔狩り人」として生きて来た。
そして俺は歴代の中でも、天才剣士として、
神野流抜刀術を駆使し、日夜勤めを果たしている・・・。
とは言っても、これは自称に過ぎない・・・。
何故なら俺にはどうしても越える事が出来ない兄貴・・・。
そう・・・「悠斗」が居るからだ。
昔は憧れていた・・・その強さに・・・そしてその優しさに・・・。
だけどある日突然恋人である「穂高」が死んでしまってから人が変わった。
それはまるで自ら死地を求めるように・・・。
そんな兄貴を見て来た俺は、いつの頃からか兄貴を避けるようになっていた。
そんな時だった・・・。
~ 神野 戒斗視点 ~
ある日俺の班・・・。
つまり第三班に突然新人が入って来た。
通常上位三班に入隊するには、研修などを受けた後、
下位での班で下積みを数年こなしてから試験を受けた後、
その能力に応じ隊への配属となるのだが、
この新人・・・「織田 直次」は通常とは違っていたようだった。
当初知らされた時は、流石の俺も猛反対したのだが、
その事情と言うヤツを涼華姉貴から聞いて納得せざるを得なかった。
「戒斗・・・この子は人の亜種である・・・「異端人」なのよ」
「・・・異端人・・・?
えっ!?い、異端人って、ぶ、文献にあった・・・あのっ!?」
そう説明された俺は涼華姉貴の命によって、
幻術を解いた直次の真の姿を見る事になり、その真実に愕然とした。
それから暫くの間・・・。
俺は直次の実力を見る為、様々な仕事を与えたんだが・・・。
正直、驚きの連続だった・・・。
頭のキレは良く常人離れした観察眼と行動力・・・。
それと作戦の立案・・・。
直次よりも経験が多い俺の部下達でも、
その能力と実力に舌を巻くほどだった。
だが、そんな直次にも欠点があった。
それは、体力が他の者達に比べ、異常なほどになかった。
そんな事が任務中度々起こり、見かねた俺は直次にその理由を聞いた。
「みんなと同じ修練をしているのにも関わらず、
どうしてスタミナ切れを起こすんだよ?」
俺の質問に直次は苦笑いを浮かべながら俺の問いに答えていった。
「実は僕達異端人達は、生まれ持って体力が低いのです」
「・・・生まれ持って?」
「はい・・・。
俺達は持久力が低い代わりに、霊的な能力に長けている人種なのです」
そう直次から聞いた俺はその言葉に納得した。
「だからかっ!?呪符などの結界による何らかの妨害に気付いたり、
魔の特性などを見抜いたあの力・・・。
あれは偶然ではなく、お前達異端人の特殊な力だったのかっ!?
それなら何故、その事を前もって話してくれなかったんだ?」
「はい・・・。
申し訳ありません。
僕達の特殊能力の事を話すなと言われていましたので・・・」
「・・・それって・・・?
あぁ~・・・なるほど・・・。姉貴か~?」
「・・・はい」
直次からそう話を聞いた俺は・・・。
いや、俺達第三班は、
その日からどんどん成果を上げていった。
魔との戦いにおいて一切の重症者や死人を出す事もなくなり、
英二さん達率いる第一班や兄貴が率いる第二班にも勝るとも劣らない、
そんな戦果を挙げて行ったんだ・・・。
そしてそんな或る日だった・・・。
俺がたまたま兄貴の修練場を横切った時、
馬鹿重い木刀を振り修練している兄貴が不意に話しかけて来た・・・。
「戒斗・・・」
「なっ、何だよっ!?
べ、別に邪魔しに来た訳じゃねーよっ!?
心臓が口から飛び出るかと思ったよっ!」
キョドる俺に兄貴は顏を向けず、
馬鹿重い木刀を振りながら話を続けていった・・・。
「お前の所の噂の新人君・・・」
「兄貴・・・人の話を聞けよっ!
・・・って、新人・・・くん?
あ、あぁ~・・・直次の事か?
あいつがどうかしたのかよ?」
「いや、ちょっと気になってさ・・・」
「・・・はは~ん?
直次が凄過ぎて第二班の立場が危うくなってきたから、
今のうちにあいつを引き抜こうって話か~?
あぁ~・・・でも悪いな~・・・兄貴~?
生憎と直次は俺達第三班にとってかけがえのない奴なんだ。
だからいくら兄貴の頼みとあっても、あいつは譲れないぜ?」
俺がそう言うとてっきり悔しがる・・・。
そう思っていたが兄貴の態度が・・・。
いや、兄貴はそんな俺に対して横目で見ながらも鋭い視線を向けて来た。
「なっ、何だよっ!?
直次は俺達第三班の人間だっ!
それが何か文句でもあるのかよっ!?」
「いや・・・。
俺達第二班に直次・・・彼は必要ないよ」
「はぁ~?必要ないってどう言う意味だよっ!?
直次に対してあまりにも失礼だろっ!?
って言うかっ!何様何だよっ!?」
「・・・俺の言い方が悪かった・・・ごめん。
だけど・・・俺の班には必要ない事には変わりないよ」
兄貴がそう言うと、木刀を振るのを止め、
俺の方へと向き直りその兄貴の表情がより一層厳しくなると、
静かに口を開いた。
「彼がどういった人間かは俺にはわからない・・・。
だけど、油断だけは・・・するなよ?」
「は、はぁ~?ゆ、油断だぁ~っ!?
兄貴・・・油断ってどう言う意味なんだよ?」
俺が苛立ちながら兄貴にそう聞き返すと、
兄貴の雰囲気が一瞬にして代わり、修練で汗を流したせいか・・・
兄貴の身体から白いモヤのようなモノが、ゆらゆらと立ち昇っていた。
その何とも言えない兄貴の迫力に一歩後ずさると、
俺は何も言えずただ・・・言葉を失い気圧されるだけだった・・・。
そんな無様な姿をさらす俺に構う事はせず、
兄貴は・・・悠斗は俺に言葉を投げかけた・・・。
「織田直次と言う男・・・。
彼の奥底には・・・俺と同じ闇があるような気がする」
「や、闇っ!?そ、それに・・・兄貴と同じってっ!?」
「・・・悪いがまだ、ハッキリとした事までは言えない・・・。
それに俺自身・・・。
まだ確証には至っていないんだ・・・」
「か、確証ってっ!?一体どう言う意味なんだよっ!?
せ、説明してくれないとわからないだろっ!?
それにっ!兄貴と同じ闇って何だよっ!?」
「・・・戒斗・・・ごめん」
俺が興奮気味にそう言っても、
兄貴はただ「ごめん」と言うだけだった。
(俺は兄貴の存在自体が気に入らない・・・。
何もかも全て見透かしたような兄貴が・・・)
それから暫くして俺達第三班に、こんな任務が舞い込んで来た。
「戒斗・・・。
これからお前達第三班は〇□県に行ってもらう」
「・・・涼華姉・・・?
雰囲気から察して、ヤバいのか?」
「・・・あぁ、第六班が・・・ほぼ壊滅状態で、
応援に駆け着けた第七班も同様に負傷者が続出しているわ・・・」
「なっ!?どうしてそんな事になってんだよっ!?
って言うか、そんなヤバい事になってるのなら、
どうして兄貴や英二さん達に連絡が行ってないんだよっ!?」
「今、悠斗や英二達は別件で、どうしても手が離せないのよ。
それにあの子達でも今回ばかりは特殊過ぎて無理なのよ・・・。
だからこの任務はお前達第三班にしか・・・任せられない・・・」
「と、特殊っ!?ま、任せられないって・・・?
姉貴、もしかしてそれって・・・
直次の能力が不可欠って事なのか?」
「・・・そう言う事よ」
涼華姉はそう静かに言うと俺の傍に寄り、
更に小声で耳打ちしてきた。
「異端人である・・・直次の能力がどうしても必要なのよ。
霊的なトラップがいくつも在ると報告が入っているわ・・・。
だから彼・・・直次の能力が必要不可欠なのよ」
「だ、だからって・・・あいつの負担が・・・。
それにいくつもって・・・そんなに大量にあるのかよ?」
「・・・えぇ、かなりの量らしいわ。
そのおかげで現地は混乱し、
ひっきりなしに医療班を含めた人材を寄越せと言ってきているわ」
「そ、そんなに切迫しているのなら、
すぐに医療班達を送ってやれよっ!」
「・・・勿論わかってるわ。
でも戒斗・・・冷静になって考えなさいっ!
実戦部隊の数ほど医療班は多くないのよ?」
「・・・た、確かにそうだけどっ!でもっ!」
「・・・他の班に着いている連中には、
手が空き次第、早急に向かうように既に連絡してあるわ」
「・・・・・」
「もっと人材が確保出来ていればこんな事には・・・」
この時、涼華姉の表情が一瞬曇った気がした・・・。
だが俺はそんな事など気に留めず直次のリスクを口にした。
「その事についてはわかった・・・
でもよ、姉貴・・・。
そんなに大量にトラップが在るって言うなら、
直次の身体の負担が半端じゃないってのも・・・
当然、分かっているんだよな?」
「えぇ・・・」
「姉貴・・・まさかとは思うが・・・
直次が人間の亜種だから・・・異端人だからってっ!
そんなくだらない事じゃないよなっ!?」
「っ!?」
涼華姉はこの俺の言葉に、
今まで見せた事のないような険しい表情をして見せた。
そして涼華姉はより一層鋭く冷たい眼差しで睨むと、
より冷ややかな口調でこう言った。
「・・・戒斗・・・私を舐めるなっ!
直次の事を一度たりとも差別した事はないっ!
この・・・俗物がっ!」
「ぞ、俗物って今時・・・」
こうして俺達第三班は現地に飛ぶと、
先行部隊と合流した。
現地に到着した俺達第三班はその場に立ち尽くした・・・。
何故なら・・。
「は、早く出血を止めないとっ!」
「だ、誰かーっ!は、早くこいつを診てやってくれーっ!
もう俺には・・・俺にはぁぁぁっ!」
「くそぉぉぉっ!人手が足りねぇーっ!
誰でもいいっ!本部に連絡して、医療班をもっとっ!」
「もう何度も連絡はしているっ!!
無駄口叩いてないで、もっと手を動かせっ!!」
まさに混乱の極みだった・・・。
俺達の目の前では、医療班達がフル回転で治療にあたっており、
現場は戦場と化していたのだが、負傷者の人数が圧倒的に上回っており、
次々運ばれて来る負傷者を前に、困窮を極めていた・・・。
俺達第三班は急ぎ治療の手助けに回りつつ姉貴に連絡した。
そして別の医療班達が複数到着した頃、
事情を聴いた俺達第三班は現場へ急ぎ、
山の奥深くへと浸入して行った・・・。
現地へと向かう最中、山道には夥しい血痕と鉄の匂い・・・。
咽るようなその匂いに、
俺達第三班の中にも嘔吐する者達が出て来た。
そして現場に到着した俺達が見たモノは、
まさに無残・・・。
そう言えるほどの光景が広がっていた。
そう・・・まさに血の海・・・。
手足が散らばり未だ運ばれていない死体・・・。
そのあまりにも残酷な惨状にプロである俺達もたじろいだ・・・。
「か、戒斗様っ!?い、いくら何でも俺達には荷が重いですよっ!?
や、やはり一班か二班じゃないとっ!」
そう声を挙げるヤツも居たが、
そう言いたくなる気持ちも当然わかる・・・。
だがこれは俺達の任務だ・・・。
これは俺達第三班にしか出来ない任務なんだ・・・。
何とか事情を説明し説得した俺は横に居た直次に目配せをすると、
俺の意図を汲んだ直次がかるく頷いて見せた。
「僕が確認をしてきます・・・。
だから僕がいい・・・と、言うまでは、
絶対に・・・追って来ないで下さいね?」
「わ、わかった・・・」
そう言う直次に班の連中が心配する声を挙げたが、
直次の妙な迫力に俺達は息を飲みながら承諾するしかなかった。
その俺達の返事ににこりと微笑んだ直次は意を決すると、
1人・・・鬱蒼とする茂みの中へと入って行った。
背中を見守る事しか出来なかった俺達は、
未だ連絡のない直次の心配をし始めると、
漸く・・・インカムから直次の声が聞えて来た・・・。
「連絡が遅れて申し訳ありません。
戒斗様・・・。
やはりこの付近にはいくつものトラップがありますね」
「とりあえずお前が無事で良かったが・・・
そうか・・・やっぱりそうだったか・・・。
それで直次・・・。お前は大丈夫なのか?」
「はい。僕は大丈夫です。
霊的に力の強い僕にはこの類のモノは無効化出来ますので・・・」
「そうか・・・相変わらずお前は凄いな?
でも良かった・・・。
あっ、そうだ・・・安心して忘れていたが・・・、
無数に在るそのトラップの種類はわかるか?」
「それが・・・」
俺の質問に戸惑い気味にそう答える直次に、
何かしらの違和感を感じた。
「・・・言いにくい事なのか?」
「い、いや・・・あ、あの・・・」
俺は仲間達に目配せをすると、
俺と直次以外の全員がインカムのスイッチを切った。
俺は仲間達に感謝しつつ直次に事の詳細を話すと、
俺の違和感について口を開いていった・・・。
「じ、実は・・・このトラップですが・・・
「呪符」によるモノのようです」
「呪符っ!?」
思わず俺は「呪符」と言う言葉を口にしてしまい、
気付いた時には仲間達も口々に不安の声を漏らしていた・・・。
俺はハンドサインで静まるように合図を送ると、
直次が「ちょっと待って下さいね」と言葉を残し、
「ガサガサ」という音がインカム越しに聞こえて来た。
「お、おいっ!直次っ!?どうしたんだっ!?」
俺の声に直次からこんな言葉が返って来た。
「戒斗様・・・。少し集中したいので・・・」
「・・・集中?」
直次の真剣な声に俺は「わかった」と答える他なかった。
「こ、これって・・・?」
そうインカム越しに直次の声が流れてきた途端、
「ピーガァァー・・・ガガガ・・・」と、激しいノイズ音が聞こえ、
俺はその激しい雑音に咄嗟にインカムを耳から離したその瞬間・・・。
(〇〇〇・・・)
(っ!?)
「なっ、何だよっ!?この雑音はっ!?
直次っ!?おいっ!直次ーっ!?」
(そ、それに・・・今一瞬・・・?)
俺のその声に驚いたのだろう・・・。
仲間達数人から声がかかった。
「戒斗様っ!?一体どうされたのですかっ!?」
「な、直次に何かあったのですかっ!?」
などと声が挙がったのだが、
俺には「・・・俺にもよくわからない」としか答えようがなかった。
直次から動かないようにと言われた俺達は、
その場から1歩も動く事が出来ず、
そんな自分達に誰もが歯痒さを持っていたのだった。
何故動けなかったか・・・?
それは簡単な事だ・・・。
こういう時の直次の助言は・・・必ず当たる・・・。
それが身に染みている仲間達・・・。
俺を含め仲間達も痛感している為、誰も動けずに居た。
それから少しすると左手に持たれたインカムから声が聞えて来た。
「な、直次かっ!?お前っ!大丈夫なのかっ!?」
「は、はい、大丈夫です」
「な、何があったんだっ!?」
「い、いや~・・・じ、実はですね・・・」
そう言い直次の説明を聞いて行くと、
「ガサガサ」と突然茂みの向こうから音が聞こえて来たかと思い、
その確認をする為に忍び寄ると、
そこには大きなイノシシが居て目が合ってしまったらしい・・・。
慌てた直次は尻もちを着くその瞬間、
耳からはずれたインカムがお尻の下敷きになってしまったと言う・・・。
直次の説明にいつの間にか、
インカムのスイッチをオンにしていた仲間達から直次はどやされていた。
仲間達の声に俺も苦笑いを浮かべつつ、
口を開いていった。
「コホン・・・。
で、直次・・・?」
「は、はいっ!ご、ご心配おかけして・・・
本当に申し訳ありませんっ!
あっ・・・じゅ、呪符の事ですよね?」
「あ、あぁ・・・」
「一枚一枚対処して剥がして行くのは不可能だと思います。
ですからここは・・・多少強引にはなるのですが、
この辺り一面を焼き払うのが最善かと思います」
「や、焼き払うって・・・他に手はないのか?」
「・・・えっと・・・はい」
「・・・まじか?」
俺は直次の判断に身を委ねる事にすると、
仲間達を引き連れ合流ポイントへと向かって歩き始めた。
だが・・・この時、俺は直次の言葉に少し・・・疑問を持っていた。
その理由は、直次との通信中・・・。
仲間達がインカムのスイッチを切り、激しい雑音が流れる少し前に、
風の音に紛れ、ある声を聞いていたからだった・・・。
「フフフ・・・」と、恐らくまだ若い女性と思われるその声を・・・。
気のせい・・・そう俺は自分に言い聞かせながら、
俺達は合流ポイントへと急ぎその足を進めたのだった・・・。
~ 織田 直次視点 ~
僕は直次・・・「織田 直次」
第三班で日々研鑽を積み、世の為人の為に日夜仕事に勤しんでいる。
僕は忌み嫌われた人種・・・「異端人」だ。
人間とは共生しながらも差別を受けて来た人種・・・。
古来より迫害を受けつつも何とか現在まで生き延びる事が出来た。
僕が神野 戒斗様率いる第三班に入隊して暫く時間が流れた頃、
緊急で呼び出された僕達は「神野 涼華様」の命により、
ある県へと急ぎ向かった。
到着と同時にその悲惨な現状に一同固まってしまったけど、
戒斗様の声をきっかけに、それぞれが仕事をしていった・・・。
暫くして応援が駆け付けたのと同時に、
僕達第三班は現地へ赴く為、行動を開始した・・・。
その道中、血の海と化しその鉄の匂いに山道で嘔吐しつつも到着すると、
僕は何とも言えない違和感に身震いしていた・・・。
現地の現状に仲間達がうろたえる中、
戒斗様の指示に従い説明すると、
僕は1人・・・茂みの中へと入って行った。
(何だろう・・・?この感じは・・・?)
インカムで僕の声は聞こえている為、
声に出さず心の中でそう気持ちを漏らしていると・・・。
(あれ?これって・・・?)
ふと足元に視線を向けた時、
ある意味見慣れたモノを目にその足を止めた。
(・・・この紙って、まさか・・・呪符?)
切れ端・・・ではあったが、
その見慣れたモノとその手触り・・・
僕の・・・「異端人」としてのその鋭敏な感覚が、
その紙の切れ端が、「呪符」に使用されているモノだとわかった。
(戒斗様が言っていた霊的なトラップって、
呪符の事だったのかっ!?
って事はつまり・・・これを仕掛けたのは同業者っ!?
も、もしくは・・・)
僕は咄嗟にそう思うと、硬い地面に手を着き探り始めた。
(1つ・・・2つ・・・3つ・・・っ!?
えっ!?こ、こんなにたくさんあるのっ!?
こ、これって・・・かなりヤバいな・・・)
僕はそう感じた時・・・。
一瞬ではあったけど、人の気配を感じ急ぎ周辺を見渡した。
(気の・・・せい?
ふぅ~・・・きっとこの異質な現状に、
僕は必要以上に過敏に成り過ぎていたのかもしれないな)
そう納得した僕は現状を伝える為、
戒斗様に急ぎ連絡を取り、いくつものトラップが存在する事を伝えた。
「呪符」によるトラップがいくつもある・・・
と、伝えた僕は、この時・・・あるモノが目に止まった。
ゆっくりと近づくとそこにはこの場に不釣り合いなモノが落ちており、
何かのトラップではないかと思った僕は、
報告中にも関らず戒斗様にこう言った。
「戒斗様・・・。少し集中したいので・・・」
僕の言葉に戸惑いを見せるものの、納得してくれた戒斗様はその口を閉じ、
僕からの言葉を待っていた。
(・・・赤い糸?どうしてこんなモノがこんな所に?)
僕はその「赤い糸」を手に取りながら、
その先へと自然に目を向けると・・・。
「こ、これって・・・?」
そう思わず声に出してしまった・・・。
(これって女性用の・・・?紅葉・・・?)
僕はそれに意識が集中する余り、
背後に誰かが居た事なんて気づきもしなかった。
「有難う・・・それ私のなの」
(えっ!?)
咄嗟にその場で振り返った僕は、思わず尻もちを着いてしまった。
「き、君・・・ど、どうしてこんな所にっ!?」
「フフフ・・・。それ、私が落としたモノなの。
拾ってくれて、どうも有難う♪」
「い、いや・・・ぼ、僕は何だろうと思って・・・」
僕の目の前に居たのは、見事な着物を着た真っ白い肌をした女性で、
年は十代後半と言ったくらいの年齢に見えた。
そして後、目に付いたのは・・・。
その赤と金色の糸を用いられた見事な帯だった・・・。
僕が呑気にそんな感想を抱いていると、
その女性は僕が差し出したソレを取りながら、
僕の目の前まで音もなく近付き、息が触れ合う距離まで来ると、
薄く微笑みながら透き通るような声で口を開いた。
「貴方・・・いい瞳をしているのね?」
「・・・えっ!?そ、そう・・・ですか?」
「えぇ・・・。ライトブルーの澄んだ瞳・・・。
とっても素敵よ♪」
「ははは・・・そ、そんな事・・・ないですよ」
僕がそう答えながら照れて視線を外したその一瞬・・・
再び女性へと向いた僕は驚きの声を挙げる事になった。
「あ、あれっ!?い・・・居ないっ!?」
慌てて立ち上がった僕は、その女性を探したのだが、
その存在も・・・そして足跡も・・・何も見つける事が出来なかった。
それから少しして遅くなってしまった連絡を入れた僕は、
仲間達から怒られはしたものの、ふと不自然な事に気付いた。
(あれから結構な時間が過ぎたはずなのに・・・
何も言われなかったな?)
そう思いながらも僕はこの「呪符」によるトラップについて、
戒斗様に提案していくのだった。
その提案が受け入れられた僕は、
その場に・・・。
あの女性と出会った場所に後ろ髪を引かれながらも、
僕は戒斗様達第三班のみんなと合流し、
未だ戦場と化しているだろう、負傷者達が居る場所へ急ぎ帰還するのだった。
(・・・あっ、名前・・・聞き忘れたな?
またどこかで会えるといいな~・・・)
感慨深い思いに捕らわれながら再び後ろを振り返る僕の耳元で・・・。
(フフフ・・・またすぐに会えるわ♪)
と、あの透き通るような女性の声が聞えてきたのだった・・・。
と、言う事で・・・。
今回のお話はいかがだったでしょう?
感想などを聞かせていただけると、非常に嬉しいのですが・・・?
時間は現在に戻って、村の中に突入した後のお話になります。
ってなことで、緋色火花でした。




