2話・日本・覚醒・中編
お疲れ様です。
ちょっとセキュリティの面でアクセス出来なくて焦りました^^;
ははは・・・まじで驚いたw
ってな訳で、少し遅れましたが無事にIN出来ました^^
さて今回は中編となっております。
メインのお話がいちかの話となっております。
それでは、外伝第2話をお楽しみ下さい。
私の名はいちか・・・。
今日も私はとある山深い山中で修練していた・・・。
「はぁぁぁっ!はっ!ふんっ!とぉっ!せぇりゃゃっ!」
私の先輩であり、尊敬する人であり、そして師匠でもある・・・。
そんな大切な人がこの世界から居なくなって、
もうどれくらい経ったのだろう?
まぁ~最初は驚いたけど、無事ならいいや♪
どうせ私もノーブルって所に行く訳だしね♪
あとは~・・・魔法の練習もしっかりやらなくちゃ♪
ノーブルに行って、悠斗さんに魔法使えませんっ!
みたいな事を言って、がっかりされたくないし・・・
それに、前みたいに魔法が使えないせいで、
月読様に迷惑かけたくないものね・・・。
魔法の練習は頑張っているつもりなんだけど、
でも師匠はここには居ない・・・。
だから私はその悲しみを紛らわせる為、
今日も1人・・・己を鍛える為に刀を振っている。
とは言っても、正確には1人じゃないのよね。
神野家の執事をしているかなりのイケメン・・・。
「塚本 修一」さんと2人でこんな山深い場所に居るの。
何故かって・・・?
まぁ~・・・聞きたくもなるわよね?
それは涼華様や沙耶様が、私1人で行動する事を許さないのよね~?
まぁ~別に私は~気にしないって言ったんだけど~?
涼華様曰く「お前を野放しにすると、何を仕出かすかわからんっ!」
(仕出かすってっ!?
一体私の事を何だと思っているんですかっ!?)
と、まぁ~そう思いつつも、声に出すとその直後に絶対後悔するから、
言える訳ないのだけどね・・・ははは。
沙耶様曰く「お前はすぐに暴れるからダメだっ!」
(あんたにだけは言われたくないわよっ!)
と、まぁ~、これも面と向かっては言えないわよね~?
言いそうになって、慌てて言葉を飲み込んだけどさ~
もし口に出してしまったら・・・。
私に待つのは・・・「死」だものね。
まぁ~、そんな訳で・・・私は塚本さんに見張られながら、
只今こうして修練に励んでいるんです。
ん?どうして執事の塚本さんなのかって?
あぁ~・・・それはね?
彼・・・塚本さんは元々うちの第1班に居たの。
15歳の時から実戦部隊で活躍してた凄腕の魔狩り人
まぁ~どこかのファミリーの自称天才の弟君とは違って本物の天才っ!
今は御当主の命により、執事として働いているんだけど、
その実力は・・・師匠を除くと1番なのよね。
あっ、だけど・・・。
沙耶様や涼華様・・・それに貴子様達みたいな、
化物連中と比べたらって事ね?
ってな事で、前置きはこれくらいにしてっと・・。
~ 回 想 ~
いちかは師匠である悠斗の教えに従い、
日々研鑽を積み修練をこなしていたのだが・・・。
ここ最近・・・。
いちかの中で異変が起きていた・・・。
ある日の事・・・。
「英二、いちか・・・悠斗の抜けた穴はお前達に埋めてもらうわ」
今まで誰にも知られる事もなく、
涼華から下される任務を、悠斗がたった1人でこなしてきた。
その悠斗が抜けた穴を、英二といちかが埋める事になったのだった。
その任務とは、実戦部隊である第1班が取り扱う任務よりも、
高難度な任務を行う事を目的とされている。
その日も英二といちかは任務に出ると、
強力な魔を狩る事になった。
そして今、英二といちかは2ⅿほどある5体の魔と戦闘していた。
だがその内の2体が逃走を計ったのだった・・・。
「お、おいっ!いちかっ!2体が逃げ出しやがったっ!
ここは俺1人に任せて追ってくれっ!」
「ど、どうして私がっ!?
気付いたのなら英二さんが行けばいいでしょっ!?」
魔の攻撃を躱しながら、英二の理不尽な物言いに、
いちかはキレながらそう答えた。
「行けるなら俺が行ってんだけどよ~?
でもこの足じゃ~行けねーっつーのっ!」
そう言って英二は左足に一瞬視線を落として見せると、
その足には魔の爪による攻撃を受けた血だらけの足があった。
「・・・攻撃、当たってたんですね?」
「あ、あぁ・・・悪りぃ~な?ドジッたぜ・・・。
まぁ~、そんな訳だからよ~・・・いちか、頼むわ」
魔の攻撃を躱しながらもいちかは英二を見ると、
その額に汗が浮かんでいるのが見て取れたのだった。
そんな英二に対して天邪鬼ないちかは悪態をついていった。
「あんなとろ~い攻撃が当たるなんて・・・
英二さん・・・まじで・・よわっ!♪」
「う、うるせーよっ!?と、とっとと行きやがれっ!」
ニヤっと笑みを浮かべそう言った英二に、
いちかは「べぇ~っ!」と舌を出して見せながらも、
その態度とは裏腹に、英二を心配する表情を浮かべて居た。
「・・・大丈夫なんですか?」
突然いちかから優しい声をかけられた英二は、
一瞬その動きを止め驚きを見せていたが、
魔の攻撃を防ぎながらも、英二も同様に悪態をついて見せた。
「けっ!この英二様をあなどるんじゃねーよっ!
こんな・・・野郎共なんてっ!
鬼化すれば何の問題もないっつーのっ!
だから・・・とっとと行けよっ!いちかっ!」
「はいっ!ここは頼みますっ!英二さんっ!」
「おうよっ!っとくらぁぁぁっ!
行くぜーっ!魔狩り人の力を見せてやんぜぇぇぇっ!」
「身体強化っ!Lv.2!」
2人はお互いにニヤっと笑みを浮かべると、
逃げた2体を追って振り返る事無く、
覚えたての魔法を使用していちかは駆け出したのだった。
いちかは逃走した2体の魔を追って暫くの間探したのだが・・・
「はぁ、はぁ、はぁ・・・み、見つからないっ!?
い、一体どこへ行ったのよっ!?」
流れ出す汗を拭いながら呼吸を整えていると、
いちかの頭の中に直接声が響いて来たがその声はとても小さかった。
(いちかさん、聞こえますか?)
(えっ?い、今、声が頭の中に・・・?)
慌てたいちかは周辺を見渡すも人影などは見当たらなかった。
「・・・気の・・・せい?」
そう思っていると再び頭の中に声が流れて来たが、
今度は小声程度ではなく、しっかりと聞こえていた。
(いちかさん?川崎・・・いちかさん?
私の声が聞えているかしら?月読ですけど・・・?)
(き、気のせいじゃないっ!?
そ、それに声の主は月読様だったのっ!?)
咄嗟にいちかは片耳を押さえながら、
まるでインカムで会話するように話し始めた。
「き、聞こえますっ!い、いちかですっ!」
(フフフ・・・別に声に出さなくても大丈夫ですよ?)
(わ、わかり・・・ました・・・。
そ、それで月読様?ど、どう言ったご用件でしょうか?)
突然聞こえた月読の声に動揺しつつもそう話すと、
月読は「フフ」っと声を漏らしながら要件を伝えた。
(魔を追うのに苦労しているようですから、
ここは私が助け船を出して差し上げましょうかと思いまして・・・♪)
(あははは・・・み、見ていらしたんですね?
は、恥ずかしい所を見せちゃいましたね~?)
(フフ・・・。恥ずかしくはありませんわ。
貴女が日々、頑張っている事は知っておりますから・・・♪)
(そ、それはそれで、とても恥ずかしいのですが・・・)
いちかは顏を真っ赤に染めていると、
月読が魔を探す為の方法を口にし始めた。
(いいですか?
魔を探すのに便利な魔法があるのですが、
今ここでそれを覚えなさい)
(い、今ここでですかっ!?)
(はい、今ここで・・・です♪)
(つ、月読様、いくら何でもそれは無茶ですよ~?
覚えている魔法もまだ少ないのに、
今ここでなんて・・・)
少し甘えた子供のように月読にそう話すと、
月読は声のトーンを少し落としながら話し、
いちかを諭すように話していった。
(これくらいの事が出来なくてどうするのですか?)
(・・・えっ!?)
(貴女はノーブルへと行くのですよね?)
(は、はいっ!)
(そして悠斗様の力になるのですよね?)
(は、はい・・・そ、そのつもり・・・です)
威圧にも似た言葉を平坦な口調で言い始めた月読に、
戸惑いを感じながらも、自分の甘えに気付いたいちかは、
軽く息を吐きながら言葉を吐き出した。
(ふぅ~・・・。
も、申し訳御座いません、月読様っ!
向こうで師匠も頑張っていると言うのに・・・
弟子の私がこんな所で甘ったれていては、
悠斗さんの・・・いえ、師匠の名を汚してしまいますよねっ!?)
(・・・そうですね♪)
いちかは再び気合を入れると、
月読が教えた通りに魔法をその場で使用した・・・。
「獣魔感知っ!」
月読はある特殊な魔法をいちかに授けたのだった。
その魔法とは「獣魔感知」と言う魔法・・・。
この魔法は「獣と魔」の2種類しか感知する事が出来ない魔法で、
「感知系」の魔法に慣れていない者にとっては、
誤認率がとても低く、初心者に向いている魔法だった。
それを使用しいちかは逃走した魔を感知すると、
月読に礼を述べ、再び身体強化を使用し駆け出したのだった。
(こ、この魔法・・・便利~♪
対象との距離までわかっちゃうなんて・・・すごっ!
それに野生の動物と魔が色分けされて区別されてる~♪)
いちかは感心しながらも魔を追って行き、
あと100ⅿと迫った時だった・・・。
「うっ」
突然いちかは「ドクン」と心臓が波打つと、
その痛みにより前のめりに地面に倒れ込んだ・・・。
「ドサっ!」
「む、胸が・・・い、いた・・・い・・・。
一体・・・な、何・・・がっ!?」
地面に蹲りながらいちかは心臓の辺りを押さえ悶絶していると、
急にその痛みから解放されたのだった・・・。
「あ、あれ・・・?い、痛く・・・ない?
ど、どう言う事?」
いちかは立ち上がると大きく深呼吸しながら身体を動かすと、
心臓に痛みが走らないかを確認した。
「だ、大丈夫・・・みたいね?」
いちかは痛みがない事を確認すると、
月読に授かった「獣魔感知」を再び使用した・・・。
「・・・まだ同じ場所に・・・居るわね?
逃げていたはずなのに・・・一体どうして?」
そんな疑念を抱きつつも、いちかは再び駆け出し魔を追った。
距離を縮め藪の中から視認しようとした時、
声が聞こえて来たのだが、その声はとても小さかった。
「お前達には私の声が聞えたのね?」
(っ!?魔の他に・・・誰か居るっ!?
良く・・・見えないわね・・・こうなったらっ!)
いちかは魔と共に居る者を確認しようと藪の中から飛び出した。
「ザザァァァ!」と、
地面を滑るように着地したいちかが確認しようとした時、
その声の主がこちらを見て・・・。
「邪魔が入ったわね?
貴方達・・・あの人間を殺しなさい。
それと・・・これを・・・でもごめんね?
これはまだ1本しかないのよ・・・」
「「ウガァァァァっ!」」
魔が何かを受け取りそう雄叫びを挙げた瞬間、
その声の主は一瞬にして姿ばかりではなく、
その気配すらも消したのだった。
いちかは咄嗟に「獣魔感知」を使用したのだが、
周辺にあったのは目の前に居る魔が2体と、
いくつかの獣達だけだった・・・。
(居ないっ!?あ、あんな一瞬でっ!?
あっ、でもこの魔法って、人間は探せないんだっけ?)
一瞬で姿を消した声の主に対し、
いちかは「ちっ!」と舌打ちしたものの、
目の前でこちらに睨みを利かせている魔に集中するしかなかった。
「まぁ~いいわ・・・。
いずれ何者か突き止めてやるわっ!」
いちかはそう吐き捨てると、
白鷹を抜き2体の間に対して正眼の構えをとった。
「さぁ・・・どこからでもかかって来なさいよっ!」
「ドスっ!ドスっ!ドスっ!」っと、
2体の魔がいちかに向かって駆け出してきた。
その魔に対していちかも駆け出すと、
フェイントを左右に入れながら片方の魔の足に斬りつけた。
「はぁぁぁっ!」
「ブシャっ!」
「グォォォっ!」
斬りつけられた魔は悲鳴にも似た声を挙げると、
足を押さえ蹲ってしまった。
「今だっ!」
いちかはチャンスとばかりに声を挙げると、
蹲った魔に向かって飛び上がった。
「はぁぁぁぁぁぁっ!」
気合と共に振り下ろされた刀に、
突如として鈍い手応えが伝わって来た。
「・・・邪魔とかするのね?」
憎らしい視線を向けた先には、
いちかの攻撃を遮ったもう1体の魔の姿がそこに居た。
「あんた達って・・・仲間をかばったりするのね?
今まで知らなかったわ」
いちかがその現実に驚きの表情を見せたのも頷けた。
何故なら魔と言う存在は基本・・・。
攻撃されている仲間を助けたりする事がなかった・・・。
通常であれば、仲間を助けたように見えても偶然であり、
守る所を誰も見た事などなかったからだった。
恐らくそれは・・・。
「師匠も見た事ないんじゃないかしら?」
いちかは顏を顰めながらこちらにニヤ気顔をしている魔に、
負けずと睨み返していた。
するといちかを見下ろしている魔が、
蹲る魔を避けていちかの前に立ちはだかった。
「グォォォ・・・」
小さく唸って見せた魔は、再びニヤ気顔を見せながらその拳を、
いちか目掛け振り下ろしてきた。
「ヤバっ!?」
咄嗟に身を翻し後方へと着地したいちかは、
呼吸を整えようとするのだが、
だが魔はそんな時間の余裕も与える間もなく、
「ドスっ!ドスっ!」と音を立て、いちかに向かって来た。
「こ、こいつーっ!?」
魔がいちかを休ませまいと、連続攻撃を仕掛け、
それに対しいちかは防戦一方だった。
「ちょっ、ちょっとっ!?
す、少しくらい休ませなさいよっ!」
そう声を挙げるも魔の攻撃は止まらない。
反撃のチャンスすら見出せない現状に舌を巻いていると、
「カツン」といちかの踵に何かがあたった・・・。
(な、何っ!?)
いちかは魔の攻撃を最小限で避けつつ、
踵に当たった何かが気になったのだった。
そしてそれを確認したいちかは、「何コレ?」っと声を挙げた。
だがしっかり確認出来た訳ではなかったが、
「・・・ガラスの小瓶?」であると確認出来たのだった。
いちかは魔の攻撃を避けながらも頭の中を整理し始めた。
(どうしてこんなモノが?
た、確かあの時・・・誰かが・・・)
そしてそれがある程度どう言うモノかを結論付けようとしたその瞬間・・・。
「ガシっ!」
「し、しまったっ!?」
いちかは思考に集中する余り、
いつの間にか背後に居た負傷した魔に捕まってしまった。
「い、痛いっ!痛いってばっ!
は、離せぇぇぇっ!離せってばぁぁぁっ!?」
「グッフフフ・・・」
魔の圧倒的な力の前に、
いちかはただ・・・悶絶するしかなかった。
そして羽交い絞めにしている魔からは、
泥臭い息がいちかの後頭部に当たっていた。
「は、はな・・・せ・・・」
「グゥオォォォォ!」
勝ち誇ったような雄叫びが、正面にいる魔から上がった。
その魔は地面に落ちていた大きくて長い木の枝を拾うと、
「バキっ!バキっ!」と音を立てて、
まるで槍のようなモノを作っていちかの喉元へと当て、
ニヤりと笑みを浮かべながら見せつけて来た。
「ちっ・・・ちくしょぉぉぉぉぉっ!!」
いちかがその悔しさから絶叫すると、
槍のような枝を持った魔が、
いちかの身体を貫こうと振りかぶった。
「いやぁぁぁぁぁっ!師匠ーっ!!」
その時だった・・・。
「うっ」
再び心臓に痛みが走ったいちかの身体から、
「シュゥゥゥゥ」っと、蒸気のような音を立てて、
赤銅色の気が溢れ出し始めた。
「グォォっ!?」
「ドサっ!」
その赤銅色の蒸気によって驚いた魔は、
いちかを解放し距離を取り、槍のような枝を振り上げた魔も、
唖然としながら固まっていた。
「い、痛ぁぁぁぁいっ!一体何だってのよ~?」
地面に落とされたいちかは、その痛みに顔を歪めるも、
魔がどうして自分を解放したのか全くその理由がわからなかった。
「・・・突然、どうして?」
するといちかの頭の中に、再び月読からの声が響いて来た。
(いちかさんっ!いちかさんっ!聞こえますかっ!?)
(あっ、はいっ!き、聞こえますっ!月読様っ!)
(よ、良かった・・・。無事のようですね?)
(は、はい・・・何とか・・・)
声の感じから月読が焦っている様子が伺えるのだが、
当のいちかはその理由がわからなかった。
(ど、どうしたんですか?そんなに慌てて・・・)
(どうしたもこうしたもありませんっ!
貴女は今、ご自分の状態に気付いていますかっ!?)
(・・・はい?
気付いてってそんな事言われても・・・)
月読にそう言われるもいちか自身、
とても何かあるように思えなかった。
その様子に月読は少し苛立ちながらも説明すると、
いちかは驚きながらも何故か口元は薄く笑っていた。
(・・・ま、まじですか?)
(ま、まじ・・・ですわ)
(じゃ、じゃ~これは・・・悠斗さんと同じ・・・
鬼の気ってヤツなんですかね?
それにどうして私に、そ、その・・・鬼の気が?)
(そ、それは私にもわかりません・・・。
一体何が原因で貴女から鬼の気が出ているのか、
神である私にもわからないのです)
(ふ~ん・・・。
でも月読様?これって間違いなく鬼の気なんですよね?)
(え、えぇ・・・それは間違いありません。
幾度も悠斗様が放つ鬼の気をこの目で拝見していますから・・・)
(そかそか♪それなら~間違いないですよね~?
フフフ・・・悠斗さんと同じ鬼の気ってんなら~♪
ふっふ~ん♪全然っ!問題なしっ!)
(・・・は、はいっ!?い、いちかさんっ!?)
月読はいちかの様子にただ、ただ・・・首を捻るばかりだった。
そんな月読に構う事もなく、
いちかはニヤりと悠斗のような冷たい笑みを浮かべた。
そして刀を・・・白鷹を納刀し、
左右に居る魔に対し中央で構えると・・・。
「コォォォォォっ!」と呼吸音を変えつつ目を閉じた。
(師匠と同じってんなら、
気道を利用してこの力を使えるはずっ!
弟子としてっ!これくらいの事が出来なくてっ!
どうするんですかーっ!・・・ってね♪)
そう誰に話すでもなく、己の心の中で言放つと、
いちかの閉じられた双眼が開かれ、
今までにない力が身体の中から湧き出て来る事に気付いた。
2体の魔も、いちかの異常な集中と呼吸音に何かを察知し、
悲鳴のような声を挙げながら突進して来た。
だが、負傷した魔が突進して来ただけで、
もう1体はどうやら様子を伺っているようで、
全く動く気配を見せなかったのだ。
「グ、グウォォォっ!」
「はぁぁぁぁぁぁっ!気刃剣っ!」
いちかは迫る魔に口角を少し上げながら右手を柄に添えると、
白鷹に赤銅色の・・・鬼の気を流し始めた。
そしていちかの剣の結界へと浸入した瞬間、
いちかは鬼の気を白鷹に纏わせながら刀を抜き、
その場で「はぁぁぁぁっ!」っと気を発しながら、
「くるり」と1周回った。
「カチン」
「グゥゥゥゥ・・・オォ・・・オォォォォ」
「っ!?」
「白鷲流・剣術・一閃独楽」
「ズルっ!ブッシュゥゥゥゥっ!ドサッ!」
いちかは倒した魔には目も暮れず、
こちらの様子を観察していた魔に鋭い視線を向けた。
「・・・後はお前だけよ」
そのいちかの眼光に魔の顔が引きつってはいたものの、
怯える様子など見せていなかった。
それどころかその魔は、
自ら製作した槍のような枝を振り回しながらいちかに迫って来た。
「グオォォォォォォッ!」
「・・・いい気概ね?
いいわ・・・一瞬で終わらせてあげる♪」
いちかは笑みを浮かべながらそう言うと、
抜刀術の態勢を取った。
そして槍のような枝をいちかの頭部に振り下ろそうとした刹那・・・。
「繰術&身体強化Lv・2っ!」
いちかは白鷹に手を添えたまま繰術と身体強化を使用し、
飛び上がりながら、槍のような枝を真っ二つに斬り裂いた。
「グォォォっ!?」
驚く魔を見る事もなく、
着地したと同時に納刀し傍にあった木を利用して飛び上がると、
いちかは前方へと回転しながら気合と共に声を張り上げた。
「人間をっ!舐めるなぁぁぁぁっ!」
「っ!?」
「これでっ!終わりだぁぁぁぁっ!
はぁぁぁぁぁぁっ!」
「シュインっ!」
「ドシャっ!」
白鷹の切っ先からゆらゆらと鬼の気を立ち昇らせながら、
地面スレスレで正眼に構えたまま片膝立ちで着地したいちかに、
魔は盛大に「ビクビク」と顔を引きつらせていた。
「グゥゥ・・・オォォォォォっ!」
魔がそう唸り声を挙げた時だった・・・。
いちかは白鷹に着いた血を横一閃し飛ばすと、
「カチン」と音を立てて納刀しながら呟いた・・・。
「白鷲流・剣術・瞬刀断・山嵐」
いちかを見下ろす魔の身体に、
一筋の線が「ピシっ!」と縦に入った。
そして左右に別れながら「ドシャっ!」と倒れた時、
安堵するいちかの頭の中に突然月読の声が聞えて来た。
(いちかさんっ!?まだですっ!気を抜かないでっ!)
「えっ!?」
そう声を挙げたいちかの横をすり抜けた黒いフードを被った何者かが、
地面に落ちていたガラスの小瓶を手に取っていた。
「な、何者よっ!?」
再び白鷹を抜き戦闘態勢を取ると、しゃがみ込み背中を見せたまま、
黒いフードを被った何者かが楽しそうに声を発した。
「・・・またいずれ会いましょう♪」
「お、女っ!?」
その声からして女性らしき人物がそう言いながら立ち上がると、
一瞬にして再びその姿を消したのだった。
「ちっ!逃げられたっ!?
月読様・・・?
あの黒いフードの人物は一体何者なのでしょうか?」
(・・・それは私にもわかりかねます。
何かの薬品を使用していたのか、
又は・・・魔法の類なのかはわかりませんが、
私にも認識する事が出来ませんでした・・・)
「か、神が認識出来ないってっ!?」
(・・・申し訳御座いません)
いちかは月読との念話で会話をしながら、
英二の元へとその足を進めようとした時、
いちかの鼻にほんのりとハーブの香りがしたのだった・・・。
(ん・・・?
こ、この匂いって、どこかで・・・?)
その香りを思い出そうとするも、
英二の事が気がかりだったいちかは考えるのを止め、
急ぎ英二の元へと駆け出したのだった。
~ 現 在 ~
あの時の事を思い出していたいちかだったが、
日々の修練に手を抜く事無なく汗を流していた。
そして今日も激しい修練が終了し、
塚本より手渡されたタオルで汗を拭っていると、
塚本のスマフォに突然連絡が入った。
塚本が会話している中、
いちかはコーヒーを手に椅子に腰を下していると、
塚本が通話を切り、険しい表情を浮かべながら視線を向けた。
いちかは塚本のその表情を見て何かを察すると、
何とも言い様のないくらい顔を引きつらせたのだった。
「いちか・・・至急出動だっ!」
「・・・えぇぇぇぇっ!?やだぁぁぁぁっ!」
「やだぁぁっ!じゃないっ!
桜様と英二さんが・・・2人だけで出たらしいぞっ!」
「・・・あぁ~・・・面倒な事になりそうな予感」
溜息を漏らしながら嫌々帰り支度を始めたいちか達に、
嫌な運命が待ち受けているとは、この時予想もしていなかったのだった。
「お家に帰りたいーっ!」
「・・・諦めろ」
「いやぁぁぁぁぁぁっ!!」
ってな事で、今回はこのようなお話となりました^^
いかがだったでしょうか?
楽しんでもらえたなら嬉しく思います^^
あと、もう暫くの間、日本編は続きますので、
宜しくお願いします^^
ってなことで、緋色火花でした。




