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異世界転移 ~魔を狩る者~  作者: 緋色火花
第二章 港町・アシュリナ編
257/406

199話 決着と誘(いざな)う者・・・。

お疲れ様です。


花粉が辛過ぎて調子悪い緋色で御座います><


さて、第2章終了まで残り2話って事で、

気合が入り過ぎたのか、話が長くなってしまいました^^;

退屈せず読んでもらえたら嬉しいのですが・・・w


今回のお話は鬼達との決着がメインとなっており、

又、今後に続く伏線なんかもありますので、

今後とも宜しくお願い致します^^


それでは、199話をお楽しみ下さい^^

ヲグナの試練を無事クリアしたカロンは、

再び悠斗達が居る大地へと戻って来ると壇鬼へと指を差した。


「おいっ!てめー・・・。

 まさかとは思うが、逃げ出したりはしねーよな~?」


「なっ、何だとっ!?貴様・・・ふざけた事をぬかしやがってっ!」


カロンの強気な言動に壇鬼は目を吊り上げ、

烈火の如く怒っていた。


「壇鬼・・・どちらがふざけているのか・・・

 決着(ケリ)・・・着けようじゃねーか?」


「・・・雑魚神風情がっ!」


「・・・着いて来いよ」


「・・・またあの世へ送り返してやるっ!」


不敵な笑みを浮かべるカロンに苛立ちを募らせた壇鬼は、

その場を後にし着いて行った・・・。



そしてその場に残って居たのは、

悠斗・火山竜・童鬼の3人だけだった・・・。


「さてっと・・・」


軽く息を吐きながらそう呟いた悠斗は、

童鬼に声をかけ始めた。


「童鬼ーっ!続き・・・やるんだろー?」


ニヤ気顏でそう声を掛けると、

童鬼は悠斗のニヤ気顏に戸惑いを見せたが、

「あぁ・・・そうだな」と答えると、すぐさま歩き始めた。


対峙する悠斗と童鬼・・・。

お互いに笑みを浮かべながら睨み合う中、

火山竜だけが1人・・・ポツンとする事となった。


「・・・ユ、ユウト?

 お、俺はどうすればいいのだ?」


「・・・あっ!忘れてたっ!ごめんっ!」


「「・・・・・」」


本当に驚いたような表情を浮かべる悠斗に、

火山竜も童鬼も少し渋い顔をしていたのだが、

悠斗から「悪いけどこれは俺達の問題だから♪」と笑顔で言われた後、

「カロンの邪魔をしないでね?」と再び笑顔でそう言われた。

火山竜は引きつった笑みを浮かべるも、

渋々承諾すると距離を取り三角座りをするとしょげていた。


「お、俺って一体・・・

 あっ!?そうだっ!今の間にテレスをっ!」


気絶したままのテレスの事を思い出した火山竜は、

一度童鬼へとその視線を向けると童鬼も火山竜の気持ちを察し、

「構わん・・・行け」とだけ声を発した・・・。



そしてカロンと壇鬼は・・・。


「・・・いつまで移動する気なんだよ?」


壇鬼が苛立った表情を見せながら声を発すると、

カロンは足をピタリと止め、辺りを見渡し始めた・・・。


「そうだな・・・。ここならあいつらの邪魔にはならないだろう」


そう口を開くとカロンは踵を返し壇鬼へと振り返った。


その振り返ったカロンの不敵な笑みに再び壇鬼は怒りを滲ませていた。


「貴様・・・今更どうして生き返ったのかはもうどうでもいい。

 だがな?貴様が生き返ったからと言って、

 この俺様には勝てんのだ・・・。

 クックックッ・・・生き返った事を悔いてまた死んでいけっ!」


「・・・けっ!てめーなんぞにはもう殺られはしねーよっ!」


壇鬼の言葉に対してカロンは冷静に言葉を返すと、

何かを感じた壇鬼の身体を悪寒が駆け巡った。


(な、何だっ!?こいつっ!さっきまでとは様子が・・・っ!?

 あの裏切者の影響は受けてないのかっ!?)


壇鬼の頬を「ツー」っと汗が流れ落ち、

喉を「ゴクリ」と鳴らす様子を見たカロンは、

鋭い視線を向けつつも壇鬼を挑発し始めた。


「てめー・・・。

 自分では気づいてねーんだろうから教えてやるぜ」


「・・・何の事だっ!?」


「壇鬼・・・お前、ビビってんだろ?」


「はぁぁぁっ!?

 ハッハッハッ!どうして雑魚神風情に俺様がビビ・・・」


壇鬼が高笑いをしながらそう言うと、

カロンはその言葉を遮るように静かな口調でこう言った。


「・・・気付かねーのか?

 壇鬼、てめー・・・後ろへ下がってんぜ?」


「はっ!?」


壇鬼は咄嗟に視線を足元へと向けると、

そこには「ジワリ、ジワリ」と後ろへと下がる自分の足跡に驚愕した。


「な、何故・・・だ?

 こ、この俺がっ!?バカなっ!?

 こ、こんな雑魚神如きに・・・こ、この俺様がっ!?」


己の無意識の行動に驚きを感じつつも、

壇鬼はそれを認めようとはしなかった・・・。


「こ、これはただ後ろに下がって正々堂々と貴様と戦う距離を・・・」


「てめー・・・。何が正々堂々だっ!

 人質まで取りやがって・・・

 てめーみたいな下衆は生きている価値はねーぜっ!」


「・・・クッ」


「てめーみたいなゲス野郎・・・。

 この武神・カロンが叩き潰してやるからよ~」


カロンの表情は先程とは打って変わっており、

怒りに満ちていた。


そんなカロンの迫力に壇鬼も「クッ!」と呻き声を挙げるも、

葛籠からある小瓶を取り出すと、蓋を開け一気に飲み干した。


「ぐぅ・・・おぉぉぉぉぉぉっ!

 み、見てろよ・・・こ、この雑魚・・・神がぁぁぁっ!」


そう怒声を挙げながら苦しそうな表情を見せると、

みるみる壇鬼の身体は大きさを・・・いや、筋肉を増大させたのだった。


「な、何だよっ!てめーっ!何を飲みやがったっ!?」


「うごぉぉぉぉぉぉっ!」


苦しみながらも筋肉を増大させると血走った目が、

カロンを捉えたのだった。


「もう一度・・・死にやがれぇぇぇぇっ!」


「うぉぉぉっ!?」


突然振り上げられた壇鬼の拳がカロン目掛け振り下ろされたが、

一瞬早くカロンは回避しつつ一度距離を取った。


「い、いきなり襲い掛かって来やがってっ!

 てめーっ・・・この野郎っ!」


カロンがそう声を挙げたのだが、

壇鬼の振り下ろされた拳附近の地面が、

まるでクレーターのように抉られている事に気付いた。


「このバカ力がっ!・・・くそったれっ!」


そんなカロンの言葉をまるで聞いていないかのように、

壇鬼は歪んだ笑みを浮かべながら顔を向けると、

「死ねぇぇぇぇっ!」と再び怒声を挙げながら襲い掛かって来た。


「な、なんなんだよっ!?はっ、話を聞けよっ!

 アレってヤバい薬なんじゃねーのかっ!?」


そう声を挙げつつもカロンは、

襲い掛かって来る壇鬼の攻撃を躱し続けた。


「死ねっ!死ねっ!死ねっ!死ねぇぇぇぇっ!」


(こいつ・・・完全にイッてやがるな?

 面倒臭せーヤツと関わっちまったもんだぜっ!)


そう叫び声を挙げながら襲い掛かる壇鬼に、

カロンは冷静に壇鬼の動きを見切っていった・・・。


「ゼェ、ゼェ、ゼェ・・・ちょ、ちょこまかとっ!

 この雑魚神がぁぁぁぁっ!」


そう怒声を挙げながら放たれた壇鬼の拳が、

カロンの顔面に放たれた。


「バチンっ!」


「・・・な、何だっ!?こ、この手応えはっ!?」


放たれた拳が・・・。

カロンの顔面に直撃するものと確信していた壇鬼は一瞬、

ニヤリと笑みを浮かべたのだが、

その余りにも手応えの無さに視線をカロンの居た足元へと向けた。


(・・・な、何故・・・ヤツの足があるんだよ?)


消し飛んだはずのカロンの足が、

視線を落した壇鬼の目に映っていた。


すると壇鬼の拳の先から聞き覚えるある声が聞えて来た。


「・・・何だよったくっ・・・。

 ヤベー薬を飲んで強くなったんじゃねーのかよ?」


「なっ、何ぃぃぃっ!?

 き、貴様っ!?ど、どうしてまだ生きて・・・」


「はぁ?何だよてめー・・・。

 薬で感覚までおかしくなったのか?」


少し呆れた口調でそう言ったカロンは、

壇鬼の拳の先から顏を「ヒョイ」っと覗かせた。


「・・・そんな事がっ!?」


「けっ!そんなに驚く事かよっ!?

 てめーが薬でどんだけ強くなったのか楽しみにしてたのによ~?

 この程度・・・とはな?がっかりだぜっ!」


「なっ!?」


「それ・・・これはテレスの分だぁぁぁっ!

 受け取りやがれぇぇぇっ!」


そう言い終わると同時にカロンは、

断鬼の突き出された拳に神力を込めた拳を打ち返した。


「ベキっ!バキっ!ベキベキベキっ!バキンっ!」


「ぐぁぁぁぁぁぁっ!」


壇鬼の拳をカロンの拳で打ち返すと、

そのカロンの拳は壇鬼の拳にめり込み骨を粉砕した。


その激痛からか壇鬼は崩れるように両膝を着くと、

苦痛による叫び声を挙げた。


「ぐっ、ぐぁぁぁぁぁぁぁっ!

 お、俺様のほ、骨がっ!骨がぁぁぁっ!

 そ、そんなバカなぁぁぁぁっ!?

 ざ、雑魚神ふ、風情にっ!こ、この俺がっ!

 この俺様がぁぁぁぁっ!?」


悲鳴にも似た叫び声を挙げながら、

壇鬼は蹲りのたうち回る姿を見ていたカロンは呆れ返っていた。


「あれだけ偉そうにほざいていやがったのによ~

 てめーには、がっかりだぜ・・・まじでよ?」


カロンの言葉に苦悶の表情を浮かべながら壇鬼は細目を開け、

目の前に立って居る男へと言葉を吐き捨てた。


「な、何故だ・・・何故・・・き、貴様如きがっ!?」


壇鬼は怒りを滲ませながらそう問うと、

カロンは溜息1つ吐きながらその問いに答えた。


「・・・さっきからてめー・・・。

 俺の事を雑魚、雑魚言いやがってっ!

 俺は神なんだぜ?

 俺本来の力が使える今となってはっ!

 てめー如きに殺られる俺じゃねーんだよぉぉぉっ!」


そう声を張り上げカロンは両手を天へと突き上げると、

その自信に満ち溢れた双眼を見開き叫んだ。


「来いっ!真・武装神器・ヴェスヴィオーっ!」


「っ!?」


カロンの声に答えるかのように、空に一筋の光が舞い下りると、

その眩い光はカロンの身体を包み込み・・・。


今、その真なる姿を現したのだった・・・。


「へっへっへっ・・・武神・カロンっ!光臨だぜ♪」


「し、神器・・・だとっ!?

 き、貴様はまだ・・・つ、強く・・・」


黄金に光り輝く神器を纏ったカロンに・・・。

そして、凄まじい神力を放出する男に、

壇鬼はそれ以上言葉を発する事が出来なくなってしまった。



そしてここ、悠斗と対峙する童鬼は・・・。


「さてっと・・・そろそろ俺達も始めようか?

 カロン達もすぐに終わるんじゃないのかな~?」


「何だとっ!?ユウト・・・どう言う意味だ?」


笑顔を見せつつ悠斗はカロン達が始めた戦いを見てそう言うと、

童鬼は怪訝な表情を浮かべて問い返した。


「今のあいつなら、壇鬼ってヤツに絶対に負ける事はないよ」


「フッ・・・一度死んでいるはずだが?」


「ははは・・・前は誰かに邪魔されていたみたいだしな~?」


「・・・邪魔?」


童鬼は更に険しい表情を浮かべそう聞き返したのだが、

悠斗はただ笑顔を見せているだけだった・・・。


そしてその笑顔を消した瞬間・・・。

悠斗は戦闘態勢に入り炎鬼にそっと右手を添えた。


「いいだろう・・・。

 お前を倒した後・・・色々と聞かせてもらうぞ?」


「・・・勝てれば・・・ね」


童鬼は薄く笑みを浮かべると、槍を再び取り出し構えると、

童鬼はすぐさま駆け出した。


「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」


槍を振りかぶり渾身の力を込めてその槍を叩きつけたが、

悠斗は流れるようにその攻撃を躱しつつ右斜め前に移動し、

「コォォォォっ!」と呼吸音を変えた。


童鬼の攻撃によって土煙りが舞う中、

「バシッ!」と言う音を立てると、

「カタカタカタ」と言う音が続いて聞こえ始めた。


「・・・やっぱ、強いな~♪」


「・・・ユウトっ!」


土煙りが晴れるとそこには槍の石突(いしつき)辺りで、

ギリギリに防御し、防がれた事によって笑顔を見せた・・・

そんな悠斗に童鬼は背筋が凍り付いていたのだった。


そして「カタカタカタ」と言う音に違和感を感じた童鬼は、

不自然に思われた音がする方へと視線を下げ・・・

再び驚きの声を挙げた。


「なっ!?ユ、ユウトっ!?

 お、お前・・・さ、鞘から抜いていないのかっ!?」


「フッ」


悠斗はそう笑って見せながら力試しが続く中、

悪戯っ子のようにこう口を開いた。


「・・・さて、ここで問題です・・・。

 これで俺がこの炎鬼を抜いたら~

 一体・・・どうなるでしょう・・・か?♪」


「ユ、ユウトっ!?ふ、ふざけているのかっ!?」


童鬼は怒りに顔を歪ませながらも、

まるで問いかけるように見せたその笑みに、

自然と思考して行くと、徐々に童鬼の顔色は変わり、

真っ青になり始めた。


「・・・理解したか?」


「・・・あ、ああ」


悠斗はニヤっと笑みを浮かべると力を抜き、

後方へと移動し再び構え直して見せた・・・。


(あのままだと俺は・・・完全に斬られていた。

 いくら俺が飛び退いたところで、

 踏み込んでも居ないユウトのヤツが抜刀すれば、

 その踏み込みによって・・・俺の身体は真っ二つに・・・くっ!)


青ざめた顔を見せたまま、童鬼は槍を持つ己の腕を見ると、

小刻みに震えている事に気付くのだった。


(ち、力では俺が勝っている・・・はず、

 技術では・・・ユウトの方が・・・う、上だとでもっ!?

 そ、そんなバカなっ!?

 お、俺は鬼だぞっ!?たかが人間如きに劣るとでもっ!?)


自問自答を繰り返す童鬼に悠斗は、

納刀されたままの刀を己の顔の前に持ち、

少し抜いてから再び「パチン」と音を立てて納刀しこう言った。


「・・・次は、斬る」


「ゴクリ」


何とも言えない威圧感に童鬼は喉を鳴らすと、

自分が喉の渇きを訴えていた事に気付いた。


そして一度大きく息をすると、

威圧する悠斗に構え直しながら口を開いた。


「あぁ・・・わかった。

 次は本気で・・・殺る・・・」


「・・・OK」


悠斗と童鬼は再び構え直すと、

殺気を込めつつ身体中に力を漲らせて行った・・・。



そして再びカロンと壇鬼は・・・。


神器・ヴェスヴィオを装着したカロンと、

ドーピングにより更にパワーを増した壇鬼は睨み合っていた。


だが、神器を装着したカロンのその真なるその力に、

壇鬼は再び後ろへと下がり始めていた。


「おい、てめーっ!壇鬼っ!

 今更ビビってんじゃねーよっ!

 てめーが始めた戦いだろうがよ~・・・

 最後まで・・・付き合えや・・・こらーっ!」


「うぐっ」


目の前で仁王立ちしているカロンに、

壇鬼はもはや成す統べ無しな状況に追い込まれていた。


(う、嘘だろっ!?こ、この世界の神が・・・

 こ、こんなに強いモノだとは・・・ゆ、夢にも・・・。

 そ、それにし、神器からも尋常じゃない力がっ!?

 な、何がどうなってんだよっ!?

 な、何とか・・・こ、この場からに、逃げなければ・・・)


そう考えながらも壇鬼は後ろへと下がり続け、

ユラユラとまるで蒸気が昇るかのように、

カロンの身体から神力が立ち昇っていたのだった・・・。


そんな時だった・・・。


怖気づきどう逃走しようかと悩んでいた時、

壇鬼の元へと念話が強制的に送られて来た・・・。


(・・・壇鬼よ)


(っ!?そ、その声は・・・お、御館・・・さ、様っ!?)


(おい、お前・・・何逃げようとしてんだよ・・・あぁ~?)


(そ、そんなっ!?こ、この俺が・・・か、神如きに・・・

 に、逃げ・・・て・・・な、など・・・)


(こっちは最初から見てんだよ?

 まさか貴様・・・神相手にビビってんじゃねーだろうな~?)


(そ、それは・・・)


(貴様はもう後がないんだぜ?

 万が一にでも、その神に負けるとあれば・・・

 そして貴様がもし生き延びたとしても、

 そこに待つのは・・・死、だけだ)


(・・・お、御館様っ!?)


(それが嫌なら・・・死んでも勝て・・・いいな?

 貴様が生き残る術は・・・もう他にない。

 死にたくなければ・・・どんな手を使ってでも・・・勝て)


(・・・はっ、ははぁぁぁっ!)



恐怖で顔を歪めた壇鬼にカロンは眉間に皺を寄せて不審がっていた。


(な、何だってんだ?急にガタガタと震え始めやがってよ?

 それにこの情緒不安定さも気になる・・・。

 あの薬に何かあるのか?)


大量に流す汗・・・そして身体の震え・・・

その現状に己に目が向くほど、今の壇鬼には余裕がなかった。


(こ、殺され・・・るっ!?こ、このお・・・おれ・・・さまが?

 ハハハ・・・こ、これはゆ、夢だ・・・

 お、俺様のような・・・ゆ、有能な・・・ぶ、部下がまさか・・・)


まるで悪夢でも見ているかのように目も虚ろになり、

現実を逃避し始めると、カロンは「けっ!」と言葉を吐き捨て、

壇鬼の横を素通りした時、

その歩みを止め壇鬼を見下ろしながら口を開いた。


「ったく・・・がっかりだぜ・・・壇鬼さんよ?

 てめーは弱い者虐めしか出来ねー、くだらねーヤツだぜ。

 もう俺達にその(ツラ)・・・見せんじゃねーぞ?

 じゃ~な・・・あばよ」


「うぐぅぅぅぅ」


カロンの言葉にそう呻き声を挙げた壇鬼を他所に、

悠斗と童鬼が戦っている場所へと再び歩み始めた・・・。



(な、何故だぁぁぁぁぁっ!)


そう心の中で叫びつつ、

怒りの矛先をどこへも向ける事が出来ない壇鬼は、

ただひたすらに地面を叩き始めた。


(ど、どうしてこの俺様がっ!?

 そ、それに折角御館様に頂いた薬を使ったのにっ!?

 な、何故なんだぁぁぁっ!?

 ハッ!お、御館様はこうおっしゃっていた・・・

 ・・・どんな手を使ってでも・・・勝てと・・・)


御館様と呼ばれた男の声が、再び壇鬼の頭で繰り返された。

そんな壇鬼は「ど、どんな・・・手でも?」と呟くと、

まるで催眠術でもかけられているかのように立ち上がり、

遠ざかるカロンに駆け寄り声をかけた。


「ま、待ってくれぇぇぇっ!お、俺を助けてくれぇぇぇぇっ!」


「ザザァァ」っと地面を滑り、カロンの膝にしがみついた壇鬼は、

まるで念仏を唱えるかのようにブツブツと言い始めた。


「こ、殺される・・・。お、御館様に・・・こ、殺されるっ!

 た、助けてくれ・・・た、頼むっ!何でもするっ!

 だ、だから俺を助けてくれぇぇぇぇっ!」


今までの態度を急変させカロンにすがりつく壇鬼に、

「ちっ!」と舌打ちをすると、壇鬼の胸倉を掴み上げ怒り声を挙げた。


「てめーっ!いい加減にしろぉぉぉっ!

 急にヒヨりやがってよぉぉぉっ!?

 ふざけた事抜かしてんじゃねーぞっ!ゴラァァァァァっ!」


「ヒィっ! ?

 な、何でもいい・・・な、何でもいいからっ!

 お、俺を助けてくれぇぇぇぇっ!」


「知るかぁぁぁっ!このボケェェェェェっ!

 てめー・・・自慢してたよな~?

 今までどれだけ命を弄んで来たかってよぉぉぉっ!?

 それだけほざいておいてっ!

 今更何言ってやがんだよっ!てめーはよぉぉぉっ!?」


「そ、それでもっ!お、俺はぁぁぁっ!

 死にたくないっ!死にたくないんだぁぁぁっ!」


壇鬼の泣き言に流石のカロンも怒りが収まらなかった。

だが今のカロンは以前のような男ではなかった。

悠斗達と出会いヲグナの試練を乗り越えたカロンは、

命の尊さを胸に刻んでいたからだった・・・。


神として覚醒したカロンは「ギリっ!」と奥歯を噛み締めると、

胸倉を掴み上げていた壇鬼を放り投げた。


「失せろーっ!」


「ぐはっ!」


踵を返し背中を向けると、震え蹲っている壇鬼へ最後にこう告げた。


「今すぐここから逃げやがれ・・・。

 本来ならてめーをぶっ殺したいところだがっ!

 戦意喪失したてめーなんぞ殺ろす価値もねー・・・。

 俺は神だが・・・てめーを守る事は絶対にねーからよ?

 だからこのまま失せろっ!

 運が良けりゃ~・・・その命も助かるだろうぜ?」


「うぅぅ・・・グッグググ・・・す、すまないっ!感謝するっ!」


奥歯を再び噛み締めながらカロンは再びその歩みを進めた。


「すまない・・・すまない・・・本当に・・・すまない」


壇鬼は言葉ではそう漏らすのだが、

しかしその本心は言葉とはうらはらなモノだったのだ。


(こ、ここだ・・・こ、この距離で喰らえば貴様程度の神ではっ!)


「喰らえぇぇぇっ!鬼魂砲・滅破ぁぁぁっ!

 流石の貴様もこれでっ!これでぇぇぇぇっ!」


「ちっ!」


「ドンっ!」


「俺様が貴様なんぞに負けるかぁぁぁぁぁっ!

 死ねぇぇぇっ!雑魚神ーっ!」


ここぞとばかりに背を向けたカロンに放たれた壇鬼の攻撃・・・。

「鬼魂砲・滅破」は一直線にカロンの背中に直撃し、

凄まじい爆発音と共に、黒い煙りで辺りの視界を遮った。


「ハハハ・・・ハ・・・。

 フフフフフ・・・ハハハハハ・・・ワァ~ハッハッハッハッ!

 み、見たかっ!?お、俺様に・・・この俺様に・・・

 貴様如きが(かな)う訳がないのだぁぁぁぁっ!

 ハッハッハッハッハァァァァァァっ!

 た、戦いの最中に背を見せた貴様がバカなのだぁぁぁっ!

 や、やりましたよっ!御館様ぁぁぁぁっ!アスラ様ぁぁぁぁっ!」


全てが終わったと思った壇鬼が有頂天になり、

まるで発狂しているが如く声を張り上げていると、

壇鬼の心臓が「ドクン」と跳ね上がる事が起きた。


「・・・誰がてめーに敵う訳ねーって?」


突然黒い煙りの中から壇鬼の耳に聞き覚えのある声が流れて来た。


「・・・へっ!?ハハ・・・?

 な、何故ヤツの声が・・・?き、気の・・・せい・・・か?」


「・・・てめー、覚悟は出来てんだろうな~?」


「ヒィッ!?そ、そんなバカなっ!?」


黒い煙りが晴れ視界が開けると・・・

そこには背中を見せたままのカロンの姿があった。


「む、むき・・・ず・・・だとっ!?」


余りの衝撃に壇鬼の声は掠れてしまい、

聞き取る事が難しいほどだった。


そんな壇鬼の言葉など、今のカロンの耳には届かない・・・。

背中を向けたまま怒りによって握り締められた拳から、

「ポトリ」と一滴何かが滴り落ちた・・・。


「シュゥゥ~」


「っ!?」


「ポタっ・・・シュゥゥゥ~」


その雫がカロンの握り締められた拳から滴り落ちると度に、

地面に落ちたその雫から蒸気が立ち昇り始めた。


「なっ、何だよっ!それはぁぁぁぁっ!?」


「あぁ~・・・これか~?」


そう言いながら振り返ったカロンの双眼は、

まるで炎を纏ったような瞳を壇鬼へと向けた。


「な、なんなんだよっ!き、貴様はぁぁぁぁっ!?」


壇鬼が狂乱する中、カロンは身構えると、

声を張り上げながら地面にその拳を叩きつけた。


「何度も言わせるんじゃねーっ!!

 俺は武神・カロンだぁぁぁぁっ!

 この俺のマグマの中でくたばりやがれぇぇぇぇっ!

 マグナード・マーシュっ!」


「ドゴンっ!」


「っ!?」


その打ち着けた拳に反応するかのように、

その対象者である壇鬼の周辺の地面が赤く熱を帯び、

そして蒸気を噴出し始めた。


「なっ、何だこれはぁぁぁっ!?あ、熱いっ!熱いっ!?

 ぎゃぁぁぁぁっ!あ、熱いぃぃぃっ!」


「けっ!それは俺の・・・マグマだっ!

 じっくりと・・・味わいな・・・この下衆野郎っ!」


「マッ、マグマだとぉぉぉっ!?」


壇鬼がそう声を挙げると、突然壇鬼の周辺の地面が、

「ゴボッ」と音を立てて陥没するとマグマの沼と化した。


「うぎゃぁぁぁぁっ!た、たすけーっ!

 や、焼かれ・・・と、溶け・・・て・・・

 お、御館さ・・・まぁぁぁ!」


「ジュゥゥゥゥ・・・ボコッ・・・

 ジュゥゥゥゥ・・・ボコッ」


「た、た・・・す・・・け・・・」


壇鬼は叫び声を挙げるも、その身体はマグマによって溶け始め、

一瞬にして跡形もなく溶かしてしまった。


最後を見届けゆっくりと立ち上がったカロンは、

煮え滾るマグマの沼を見つめながら壇鬼に向けて言葉を吐き捨てた。


「壇鬼・・・てめーは、まじで・・・クズだったぜ」


そう別れの言葉を告げたカロンは、

悠斗と童鬼が戦う戦場へと向けて再び歩き始めたのだった。



そして再び悠斗と童鬼は・・・。


構える中、童鬼は赤銅色の・・・鬼の気を纏い、

今、極限状態に居た・・・。


そして悠斗もまた己を極限状態にする為、

心の中で鬼魂門を開けて行くのだが、

徐々に溢れ出る赤銅色の気に、童鬼は動揺の色を滲ませていた。


(こ、こいつは・・・に、人間のはず・・・だろっ!?

 い、いくらあの御方の力を覚醒させたからと言って、

 たかが人間風情に扱えるような・・・

 そ、そんな事・・・あ、あるはずが・・・)


動揺する童鬼は悠斗の力をある程度把握する事が出来ていたのだが、

あまりの異常さに身体中の毛穴から汗が噴き出していた。


そして更に・・・童鬼は驚愕する事になった。


「・・・これが俺の・・・本気だっ!

 うおぉぉぉぉっ!さ、三・・・之門・・・解っ!」


「さ、三之門だとっ!?」


「バシュッ!」っと音を立てて鬼の気が激しく溢れると、

その鬼の気はやがて悠斗の身体に纏わり付き始めた・・・。


驚愕し掠れた声で童鬼は声を発した。


「・・・そ、そのよ、鎧・・・

 ま、まさか・・・ふ、不動・・・の・・・鎧なのかっ!?」


「・・・不動?

 あ、阿修羅ってのじゃなくて?」


童鬼が悠斗を見て発した言葉・・・「不動の鎧」

悠斗は以前「絶」に三之門を開けた時・・・

その力が「阿修羅」だと教えられていた。


だが実際悠斗が開けた三之門は「阿修羅」ではなく、

童鬼が言った鎧・・・「不動」だった。


そしてその「不動」は悠斗にも当然覚えがあった・・・。


「あ、あの時のヤバい・・・鎧かっ!?」


そしてもう1つ悠斗は気付いた事があった。

それは腰に携えているのは「炎鬼」であって、

悠斗の知る「不動」と彫られた大太刀ではなかったのだ。


完全に鬼の気が具現化し収束すると、

やはりあの時悠斗が纏ったあの・・・鎧だったのだ。


「な、何故ユウト・・・お前がその鎧を?」


「・・・わかんない」


(だけど以前のような辛さは微塵も感じない・・・

 でも・・・何故だ?)


「・・・・・」


お互いに違和感を抱きつつも悠斗と童鬼は構え直した。


そして・・・。


「いくらその鎧を纏っていても、

 ユウト・・・残念だが俺には勝てん・・・」


「・・・理由はあるのか?」


「フッ・・・俺に勝てたら・・・教えてやろう。

 そしてもう1つ・・・」


「・・・何?」


「俺が本気になった以上・・・お前に勝ちはない。

 一撃だ・・・その一撃でこの勝負は決着する」


「・・・了解」


「ヒュ~」っと風が吹き荒れ木の葉が舞い、

近くに在る滝の音が一瞬遮られた時、2人は同時に駆け出し、

悠斗は抜刀しつつ小脇に構え、童鬼はその槍を突き出した。


「はぁぁぁぁぁぁっ!重撃必殺っ!波動撃っ!」


童鬼は己の力で在る重力を槍に纏わせると、

その槍の攻撃力と重さがケタ違いに跳ね上がり、

凄まじい攻撃力を生んだ。


そして悠斗は・・・。


「白鷲・瞬刀断・影技・疾風(はやて)


悠斗は納刀されていない鞘を投げつつ加速すると、

投げた鞘のこじりと童鬼の槍の矛先が衝突した瞬間・・・。


赤銅色を纏った炎鬼を鞘の中へと捻じ込み、

その鞘走りで更に突きを加速させた。


「キーン」と言う金属音が鳴り響く・・・

そしてすぐその後・・・「ピシッ!」と音を立てると、

悠斗の投げた鞘が真っ二つになり「ポトリ」と地面に落ちた。



一瞬の沈黙・・・

再び「ヒュゥ~」と言う風が駆け抜けて行くと、

少しの間静寂が包み込んだ時、童鬼が笑みを浮かべ口を開いた。


「・・・さ、流石・・・お、俺がみ、見込んだ男だ」


「・・・・・」


「・・・ユウト、どうした・・・?

 なっ!?」


童鬼が悠斗に視線を向けた時だった・・・。

悠斗の表情が曇り静かに目を閉じていた。


すると童鬼は・・・

悠斗のそんな態度に己の身体に伝わる事象と符合させると、

薄く笑みを浮かべていた。


「な、なるほど・・・な・・・。

 ハッハッハッ・・・。実に・・・お前らし・・・いな」


「ピシッ!パキンっ!」


突然悠斗の刀・・・

つまり「炎鬼」の刃が砕け鈍い音を立てながら折れた刃が地面に落ちた。


だがそれと同時に童鬼の槍も「ビシッ!」と、

物凄い木割れの音を響かせながら真っ二つに裂けた童鬼の手から落ちた。


「ゴフッ!ぐはっ!」と、突然吐血したのは童鬼だった。


吐血しながら崩れ落ちる童鬼を悠斗は咄嗟に抱きかかえると、

虚ろな目をした童鬼が小声ながらも口を開いた。


「ユウ・・・ト・・・。

 お、俺の・・・負け・・・だ」


「・・・そう・・・だね。でも・・・」


「フッ・・・。

 ひ、1つだけ・・・お、おしえ・・・ておこう・・・。

 お、お前の・・・じゃく・・・てん・・・は・・・

 そ、その・・・折れた・・・刀・・・だ」


「・・・だろうね」


「あぁ・・・き、気付いて・・・いた・・・のか?

 だ、だから・・・き、気に・・・や、病むな・・・

 お、お前がつ、使うには・・・ち、力不足・・・だっ・・・た・・・」


「・・・わかった。

 だからもう・・・しゃべらなくていい・・・」


「・・・フフフ」



悠斗の言葉を聞いた童鬼は笑顔を見せ笑うと、

そのまま静かに目を閉じていった・・・。


悠斗は童鬼を静かに地面に寝かせると、

その視線は折れた刀へと向けられ、再び苦々しい表情を浮かべた。


そしてその手を折れた刀へと伸ばそうとした時・・・。



(聞こえるか?ユウト・カミノ・・・。

 まずはあの童鬼を倒した事におめでとうと言わせてもらおう)


(だ、誰だっ!?どこに居るっ!出て来いっ!)


(フフフ・・・まぁ~そう慌てるな)


突然悠斗に何者かが念話を送って来た。

辺りを警戒し身構え気配を探るも何も情報を得る事が出来ず、

悠斗はただ「ちっ!」と舌打ちするしかなかった。


そして悠斗が警戒する中、再び念話が送られて来た。


(ユウト・・・君に伝言がある)


(・・・伝言?誰からだ?)


(誰からかは・・・俺からは言えん・・・。

 だが、北の大地のリント村に在る「嘆きの森」へ行け)


(・・・嘆きの森)


(あぁ、そうだ。

 その時、「誰が・・・」と言う君の疑問も解決するはずだ。

 でも君は・・・薄々だが、気付いているのではないか?)


(・・・何となく・・・だけどね)


(フッフッフッ・・・だと思ったよ。流石だな?)


(で・・・?いつ・・・そこへ行けばいい?)


(フフフ・・・それは言わなくても分かっているんじゃないのか?)


(・・・だよね)


(では・・・伝えたからな?

 ユウト・カミノ・・・また会おう・・・さらばだ)


「・・・嘆きの森か・・・

 何だか色々と仕組まれているみたいだな~?

 あぁ~あ・・・面倒臭いな~・・・

 でもまぁ~どの道・・・行くんだけどね~」



悠斗が周辺を見渡しながら、今後について考えていた時、

「おーいっ!」と声を挙げながらカロンが向かって来ていた。

そして火山竜もまた・・・テレスを抱きかかえながら、

悠斗の元へと向かっていた。


そんな仲間達に手を振りながら悠斗は深刻な表情を浮かべ、

空を眺めながら心の中で呟いていた。


(俺の時間も、もう余りなさそうだな・・・)


少し寂し気な表情を浮かべつつも、悠斗は仲間達に手を振り、

そしてこれから起こる出来事に、

仲間達の笑顔が走馬灯のように流れては消えて行った。




ってな訳で・・・今回のお話はいかがだったでしょうか?


何故壇鬼が急にヒヨりだしたなど、

今後を楽しみにしてもらえるととても嬉しく思います^^


さぁ~これで次回第2章・200話最終回となります^^

今までお付き合い下さり登録者の皆様にはとても感謝しております^^

最終回後もまだまだ続きますので、

これからもどうぞ宜しくお願い致します^^



ってなことで、次回第2章最終回っ! 緋色火花でした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 読み始めた当初より話がどんどん深くなってるのでびっくりします。 伏線も多そうなので一度読み返すべきかなー。 今後も楽しみにしています♥︎
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