閑話 異質な魂と試す者・・・。
お疲れ様です。
仕事に追われ過ぎてwowsが出来ない緋色で御座います^^
今回で第2章の閑話は終了となります。
前回と活動報告でお知らせしたように、
第2章は200話で完結致します。
そしてその次は・・・外伝シリーズとなりますので、
楽しみにしていただけたら幸いです^^
それでは、閑話をお楽しみ下さい^^
~ 岩場の聖域・泉 ~
「もう~満腹なのにゃ~♪」
「わ、私も・・・もう食べられ・・・ゲプっ!」
「フフ・・・2人ともいくらなんでも食べ過ぎよ?
それにイリア?人前でそれは良くないわよ?」
「・・・ははは・・・す、すみません」
ウンディーネが管理するここ岩場の聖域内の泉の前で、
腹を満たした3人が腰を下し談笑していた。
「それにしてもミスティ様・・・急にどうしたのかしら?」
そう話を切り出したアンナはとても心配そうに呟くと、
イリアとセルカもその表情を曇らせた。
「確かにあの時のミスティ様の様子は・・・」
「とても煮詰まっている感じがしたのにゃ」
心配そうな表情を浮かべていた時、
突然目の前に在る泉の水面がせり上がって来た。
「・・・後片付けは終わりましたよ」
そう言って姿を現したのはこの泉の管理人ウンディーネだった。
「すみませんウンディーネ様・・・。
食事ばかりか後片付けまでしていただいて・・・」
静かに立ち上がり頭を下げるアンナに、
ウンディーネは優しく微笑んで見せた。
「フフフ・・・アンナも手伝ったではありませんか?
だから気にする事はありません。
貴女達は今、決死の覚悟で強くなろうとしています。
私は微力ながら力になりたいだけ・・・」
そう説明するウンディーネに3人は恐縮しながら再び頭を下げたのだった。
ミスティが突然去った後、この3人が唖然としていた時に現れたのが、
四大精霊の1人でもあるウンディーネだったのだ。
それから暫くの間再び談笑していると・・・。
「セルカーっ!そろそろ行くわよーっ!」
「にゃっ!?わかったのにゃーっ!」
少し離れた場所からアマルテアはセルカを呼ぶと、
「頑張って来るのにゃっ!」と、元気よく駆け出した。
そしてその姿が見えなくなるのと同時に、
アンナにもオウムアムアから念話が届いたようだった。
アンナはイリアとウンディーネに礼儀正しく頭を下げると、
「いきまーすっ!」とキャラに似合いそうにもない言葉を発し駆け出した。
「さ、最近アンナさんのキャラ・・・変わってきてませんか?」
「・・・あの子の師匠が師匠ですから・・・ね」
「・・・ははは」
走り去るアンナの背中を見ながらそう話していると、
突然「イリア」と言う念話が送られて来た。
「アリエル師匠っ!」
(すまない・・・少し遅れるわ。
だから少しその場で待っていてもらえる?)
そう告げられるとイリアは再び泉の前で腰を下した。
するとウンディーネにも念話が送られて来たようで、
何度か無言で頷いていたのだった。
話し終えたウンディーネはイリアの事をじっと見た後、
言葉を発した。
「イリア・・・少しの間アリエル様に面倒を見るように言われたわ」
「・・・わ、わかりましたっ!宜しくお願いしますっ!」
気持ちを引き締めたのかイリアは、
立ち上がりながら言葉を返すと、
ウンディーネからは意外な言葉が返って来た。
「フフフ・・・。そんなに気負わなくてもいいですよ」
「・・・はい?」
少し首を傾げているとウンディーネはこう言った。
「・・・本来はまだ時期ではないと思うのだけど・・・」
「・・・時期・・・ですか?」
ウンディーネの意味深な言葉にイリアは戸惑いを隠せないでいた。
そんなイリアにこう伝えた。
「実は貴女の中に・・・純粋な神力が眠っているのです」
「・・・純粋な神力って・・・へぇ~・・・。
・・・神力、神力ね~・・・。
・・・えっ!?えぇぇぇぇぇっ!わ、わたわたわたわた私にっ!
し、ししし神力ですかぁぁぁぁっ!?」
「・・・・・」
イリアの驚く声がよほど大きかったのだろう。
その大声にウンディーネは耳を塞ぐようなポーズをしながら、
しゃがみ込んでしまった。
「す、すみませーんっ!つ、ついっ!」
慌てて謝罪したイリアにウンディーネはゆっくりと立ち上がると、
一瞬優しい風が吹き抜け気が付けば・・・。
ウンディーネの掌の上に拳ほどある大きさの水球が出現していた。
「ウンディーネ様、その水球は・・・?」
「これは貴女の中に眠る神力に・・・
いえ、魂に・・・直接触れる為のモノです」
「・・・直接触れる?」
「はい。正直その神力は純粋過ぎるが故に・・・異質・・・」
「異質っ!?えっ!?えっ!?
あ、危ない・・・感じです・・・か?」
動揺が隠せないイリアにウンディーネは静かに首を振ると、
諭すように説明していった。
「貴女の中の奥底に眠る神力は、
ブルーフレイムとはある意味・・・別物なのです」
「・・・別物?」
「アリエル様がこうおっしゃっていました・・・。
ブルーフレイムは云わば・・・上澄みのような力だと・・・。
そしてその源となるのは、イリア、貴女の魂なのです」
「・・・た、魂っ!?」
「・・・まずはこうなった経緯を話すとしましょう」
「はいっ!お願いしますっ!」
真剣な眼差しを向けるイリアに、
ウンディーネは優しく頬むと、目を閉じ静かに話していった。
~ 回想・癒しの森 ~
「ウンディーネ・・・お前に話がある」
そう言ってウンディーネは岩場の聖域でアリエルにそう言われると、
門を潜り抜け、ここ・・・。
癒しの森へと移動したのだった・・・。
「アリエル様・・・いかがされたのですか?
それに私に話とは?」
門を潜り終えたアリエルはゆっくりとその歩みを進ませながら、
後ろから着いて来るウンディーネに話をし始めた。
「話と言うのはイリアの事よ」
「・・・イリア・・・ですか?
彼女が一体?」
「うむ、あいつにはブルーフレイムとは違った、
異質な神力が眠っている」
「・・・し、神力ですかっ!?」
驚きの余り動きを止めたウンディーネに、
アリエルは振り向きながら「クスっ」と笑って見せた。
「・・・?」
「ははは・・・すまない。
己の感情をあまり表に出さないお前が、
そんなに驚いた表情をするものだから・・・つい笑ってしまったわ。
・・・すまないな」
「い、いえ・・・。そ、それで話の続きですが?」
アリエルの言葉よりも今は話の続きが気になるウンディーネは、
催促するようにアリエルとの距離を縮めた。
「あのブルーフレイムも特殊なのは間違いないわ。
でもあの力は云わば・・・あの子の力の上澄みでしかない」
「・・・上澄みですか?」
「えぇ、あの子の力を・・・いえ、潜在能力を確かめようと、
色々と試した事があって・・・。
私の神力をあの子の中に入れた時、
突然私の神力が弾き出されたのよ」
「・・・えっ!?そ、そんな事が・・・可能なのですかっ!?」
「・・・私は神よ?たかが1生命体である人族に、
そんな事が出来るはずもない・・・」
「・・・・・」
先程からアリエルの話に驚くばかりのウンディーネは、
唖然とするしかなかった。
そんなウンディーネにアリエルは薄く笑みを浮かべながら話を続けた。
「神力のあんな・・・そう、あんな弾かれ方をしたのは初めてよ」
「・・・・・」
「私が今まで感じた事がない・・・異質な神力・・・
でもその神力は純粋過ぎるが故の異質・・・」
「純粋過ぎるが故の異質な神力?」
ウンディーネがそう話を聞き返した時だった。
「神力結界っ!」
「っ!?」
突然アリエルは神力を一瞬で高めると、
癒しの森をまるごと結界で覆ってしまったのだ。
「と、突然どうされたのですかっ!?」
危険を感じたのかウンディーネは振り返ると戦闘態勢に入り、
辺りの気配を探り始めた。
「フフっ・・・すまないウンディーネ。
ちょっと誰にも聞かれたくない話なのよ」
「・・・わ、わかりました」
戦闘態勢を解いたウンディーネは、
マジックスボックスからテーブルなどを取り出すと、
紅茶をアリエルへと差し出した。
アリエルは椅子に座り紅茶を一口飲み終わると、
静かにカップを置き話を始めた。
「イリアの奥底に眠る神力・・・。
・・・違うわね。
アレはそう・・・イリア自身の魂・・・そう言ったところね?」
「・・・魂・・・ですか?」
「えぇ・・・。
あの子の魂そのものから・・・神力が出ているわ」
「・・・・・」
困惑してしまうウンディーネから、
冷え切った汗がが流れ落ちた。
「わ、私には・・・り、理解が・・・」
そう答えるのが精一杯だった。
魔法神・アリエルから突然聞かされた真実にウンディーネには、
そう答えるしかなかったのだった・・・。
その様子を見たアリエルの目が鋭く吊り上がると、
動揺するウンディーネにこう告げた。
「ウンディーネよ・・・。
魔法神・アリエルとして命令するっ!」
「・・・はっ!」
椅子に座っていたウンディーネは咄嗟に椅子から離れると、
片膝を着き頭を垂れた。
「・・・四大精霊の中で・・・
唯一魂とコンタクトを取れるお前にだからこそ、
魔法神・アリエルの名を持って命令を下すのですっ!」
「はっ!何なりと・・・」
「イリアの魂が何かを・・・その正体を突き止めよっ!」
「正体・・・?
・・・はっ!承知致しました」
~ そして現在 岩場の聖域・泉 ~
「と、・・・そう言う事があったのです」
「・・・そ、それで私の魂を調べると?」
「・・・はい」
「わ、わかりましたっ!」
そう声を大きく返事をしたイリアの表情は、
何かを決意するとそのままそれを口にしたのだった・・・。
「ウ、ウンディーネ様にお願いが御座いますっ!」
「・・・お願いですか?」
片膝を着き頭を垂れるイリアは一度大きく呼吸すると、
頷きながらこう言った。
「・・・も、もし・・・万が一・・・。
わ、私のた、魂が邪悪に満ちていた場合っ!
す、すぐに・・・私を処分して下さいっ!」
「・・・なっ!?な、なんと言う事をっ!?」
「調べた結果・・・そのような場合は・・・。
そ、そのまま処分して下さいませんかっ!?」
暫くの間、2人の押し問答が続いたのだが、
イリアの意思は非常に硬く、ウンディーネは頷くしかなかったのだった。
そして改めて作り出した水球を出現させると、
正座をして黙って目を閉じるイリアの身体の中に侵入して行った。
まるでジェットコースターのような魔力線を移動しながら、
ウンディーネはイリアの源である魂の前に辿り着く。
両手を広げながらイリアの身体の中へと潜る水球・・・。
その水球とウンディーネは常に繋がっており、
不審なモノがないかも調べていたのだった。
(ここまでは異常なし・・・ね。
そして私の目の前には・・・これは・・・
ブルーフレイム・・・。
お願い・・・ブルーフレイム・・・私を通して・・・)
ウンディーネ本体からは大粒の汗が流れ出しており、
イリアの魂との接触に全神経を集中させていたのだった。
暫くの間、ウンディーネはブルーフレイムに己の気持ちを伝えると、
そのブルーフレイムはゆっくりとだが、
ウンディーネをその奥へと通した。
だが・・・そこで見たモノは・・・。
(こ、これがっ!?これが・・・イリアの・・・魂っ!?
い、一体ど、どう言う事なのですっ!?
そ、そんな事が・・・そんな事があるなんてっ!?
ありえ・・・ない・・・ありえないわっ!)
ウンディーネは在り得るはずもないこの現実に、
寒気が全身を駆け巡るのだった・・・。
そしてここは、とある北の大地へと続く街道・・・。
精悍な顔立ちをした男が1人・・・歩いていた。
(・・・うぅぅぅ・・・さ、さむっ!
まぁ~北の大地だから寒いのは当然なんだが・・・)
その寒さに苦い表情を浮かべたその男は、
葛籠より冬服を取り出すと、寒さ対策の為に着替えていった。
そしてまだ少し遠くに在る雪化粧をした山々を見つめると、
ポツリとこう漏らした。
「・・・数百年ぶりだな♪」
その男は感慨深そうな表情を浮かべながら再びその足を進めた。
それから暫く歩いて行くと、
大きな立て札と矢印が書かれた立て札がその男の目に止まった。
「リントまで2日」
矢印が書かれた小さな立て札。
「2日」と言う文字に少し渋い顔をして見せたその男だったが、
その隣に在る大きな立て札に書かれている文字に、
訝しい表情をしていたのだった・・・。
{ここから先の森林内には魔獣が多数出現。
魔獣除けの香炉なしでの通行不可・・・}
「・・・んー。確か俺の記憶では宿町があった気がするのだが・・・
数百年ですっかり様変わりしてしまったな・・・」
そんな事をブツブツと看板を見ながら吐くと、
「まぁ~俺には関係ない事だがな♪」と笑みを浮かべ、
その立て札の内容を無視し森林の中へと入って行った・・・。
森林の中へと入って行くと、鬱蒼とした木々に陽の光も遮られ、
魔獣らしき気配が無数に漂っていた。
「・・・昔は魔獣も出ずいい宿町だったのにな~・・・
昔を知る俺としては・・・悲し過ぎるな・・・」
そう呟き昔の風景を懐かしみながらも、
その男を取り巻くように移動し始める魔獣の気配に溜息を吐いた。
「・・・気が進まないが仕方がない。
言っておくが俺はこう見えて動物好きなんだぜ?」
そう言葉を漏らし小声ながらも「散れっ!」と威圧を込めた言葉が、
辺りに居た魔獣どもを蹴散らした。
そして魔獣の気配が消えた森林の中は静寂に包まれたのだが、
その男はある違和感を覚えた。
「・・・おかしいな?魔獣のみを蹴散らせたはず・・・なんだがな?」
その男はピタリとその歩みを止めると、
静寂に包まれた森林の中で、
他の動物達の息吹すら感じない事に目を細めた。
「やはり・・・何かあるのか?」
その男は気配察知を使用し周辺を探っていくと、
約1km先で何かが戦っている気配を察知した。
(・・・流石に1kmも離れているとよく分からないが、
でも・・・この感じ慣れたこの気配は・・・鬼かっ!?)
その男が「鬼」と判断すると薄暗い森林の中で印を結び始め、
「神速迅雷っ!」と呟いた。
駆け出したその男の足跡は、
まるで雷でも落ちたかのように赤黒く染まり、
森林の大地からは焦げ付く匂いを発していた。
薄暗い道をものともせず、
その男は気配を辿りながら状況を把握しようとし、
親指を軽く噛み切り血を出すと、
走りながら掌に鳥のような絵を描いたのだった・・・。
「状況が知りたいっ!頼むっ!血鳥よっ!」
掌の中で小さく一瞬赤く光ると、
血液で描かれた鳥の絵が羽ばたき「ピィー」と鳴くと、
物凄い速さで指定された場所へと飛び立ったのだった。
薄暗い森林の中を走り、残り200ⅿとなった時だった、
血鳥からの映像がその男の頭の中に流れてきた。
その映像にその男は「やはりな・・・」と声を漏らすと、
更に速度を上げて行った。
(人族が襲われてるっ!?ちっ!鬼が5体もいやがるっ!
間に合う・・・かっ!?)
それから数秒後の事だった・・・。
少し開けた場所では既に人族は狩られており、
辺り一面が血の海と化していた・・・。
「間に合わなかったかっ!」
「ザザァァァっ!」と地面を滑るように止まると、
そこには人族を狩り終えたモノ達・・・。
・・・つまり「鬼」が居たのだった。
「何だ~?貴様は~?」
鋭い視線を突然の来訪者へと向けた鬼は、
人族の血で染まった斧を肩に担ぎ舌舐めずりをした。
その鬼の一言で背中を向けていた4体の鬼達も顔を向けた。
「・・・殺されに来たのか?」
突然の来訪者から一番離れた場所に居た鬼がそう言うと、
その来訪者は不敵な笑みを浮かべ呟くようにこう言った。
「フッ・・・。お前達を・・・狩りに来た」
「はぁ?」
「人族に狩られる俺達じゃねー・・・」
威圧を放つ鬼に対しその男がそう呟くのだが、
その表情からは再び笑みが漏れていた。
「・・・5本角風情が」
「「「「「っ!?」」」」」
5体の5本角の鬼達は、その男の言葉に絶句した。
しかしその驚きは仕方がない・・・。
何故ならこの世界において、鬼の存在を知る者など皆無だったからだ。
「お、お前・・・一体・・・何者だっ!?」
一番手前に居た鬼が驚きの声を挙げた瞬間、
その鬼の視界が上下にズレた。
「なっ、何だ・・・こりゃ・・・?」
そう言葉を発した瞬間、いつの間にか真っ二つになった鬼は、
動く事すら出来ず絶命した。
「き、貴様ぁぁぁっ!」
「おのれぇぇぇっ!」
「やりやがったなぁぁぁっ!」
「・・・・・」
3者がそう口走りると、一番奥で言葉を発しなかった鬼が、
その男を見ながら「ガタガタ」と震え始めた。
だがそんな様子を知るはずもない他の鬼達が声を荒げ、
各々の武器を手ににじり寄り間合いを縮めていったのだが・・・。
「や、やめ・・・ろ」
その鬼の声など届くはずはなかった。
3体の5本角の鬼達は目の前で起こった出来事に混乱しており、
冷静でいられるはずがなかったからだった。
「お、お前は何者だぁぁぁぁっ!」
そう本能では怯えながらも正しい判断が出来なくなった鬼の1人が、
槍を振り上げ男に襲い掛かって来た。
そしてそれは一瞬の出来事だった。
この世から音が消えた・・・。
そう思わせるほどの静寂に包まれた時、
最初に声を出したのは、一番奥にいた鬼だった・・・。
「・・・い、いつ・・・そ、そこ・・・へ?」
そう声を漏らした瞬間、その鬼の前に居た仲間達が、
細切れになってその大地へと崩れた。
その鬼の前に現れた男の表情には、何の感情も現れない、
ただの無表情だった。
「ポタっ・・・ポタっ・・・ポタっ」っと、
水の滴る音がその静寂に染まった空間に響いていた。
その鬼がその音に気付くと、
見開いた双眼をゆっくりとその音の方へと下げた。
「ジワ~」っとした汗が・・・。
その鬼の体中から脂汗が浮かび流れ落ちていく。
「ヒ・・・ヒィっ!」
顏を盛大に引きつらせながら後ろへと下がろうとする鬼だったが、
仰け反ったのはその上半身だけ・・・。
その音の方へと向けられた双眼から得られた情報に、
その鬼の身体は恐怖に支配されてしまい自由が利かなかったのだ。
そして一瞬その見開かれた双眼がその男へと向けられた・・・。
すると男は鋭い視線を向けたまま口を開いた。
そう・・・その声はまるで死神のような・・・。
そんな冷酷無比な声が目の前にいる男から聞こえた。
「・・・お前も終わってるよ」
「ヒィィィィっ!?」
その鬼の声が引き金になり、その身体はバラバラに斬り裂かれ、
「ボタボタ」と地面にその肉片が散らばり落ちていった。
「ポタッ・・・ポタっ・・・ポタっ・・・」
再び静寂が満ちたその空間に再び水の滴る音が響くと、
その男の瞳が一瞬縦長の瞳へと変わった。
「鬼爪百鬼狩り」
「ヒュンっ!」と右腕を振り、斬り裂いた鬼達の血液が飛び散ると、
葛籠より取り出した布を指先に掛けゆっくりと拭っていった・・・。
その拭い取る男の指先の爪は短刀ほどの長さに伸びており、
拭い終わると「シュッ」と通常の大きさへと姿を変えたのだった。
「ふぅ~」っと男がそう息を吐いた時だった・・・。
(絶様・・・聞こえますか?)と、誰かからの念話が送られて来た。
(あぁ・・・何かあったのか?)
「絶様」と呼ばれた男は念話をしながら歩き始めると、
人族の亡骸と鬼の亡骸を弔う事もなく、無慈悲にその足を進めた。
(はっ、只今彼と童鬼が戦闘に入りました)
(ふむ、そうか・・・それで?)
(あ、あの・・・。それで・・・とは?
お、お助けした方が良いのでは?)
(フッ・・・必要ないだろ?)
(・・・えっ!?)
絶の返答に戸惑う部下に絶はこう言葉を続けた。
(そんな小者に負けるようじゃ話にならんだろ?
だから何があっても助ける事はするな)
(で、ですがっ!?)
(お前はただ、事の成り行きを見守っていればいい・・・。
心配するな・・・。
あいつに基本は教えた・・・。
あとはあいつが・・・、ユウトが歩き出すだけだ・・・。
自ら壁を乗り越えて行かなければ、この先戦う事など出来ん。
それに、どんな赤ん坊だっていずれは1人で立ち上がり歩くんだ。
だからあいつの成長を妨げる事は断じて許さんっ!
・・・いいな?)
(・・・は、はっ!で、では・・・)
絶の部下らしき男がそう言って念話を切ろうとした時だった・・・。
(あっ、すまんが・・・)と絶は言葉を続けた。
(・・・な、何か?)
(うむ・・・ミスティは今、どこに居る?)
するとその部下らしき声とは別に、違う声が流れて来た。
(絶様・・・。ミスティ様は癒しの森の近くに在る、
特殊な結界内・・・恐らくこれは聖域かと思いますが、
その中に居られます)
(そうか・・・あんな所に聖域が・・・ね)
(いかが致しますか?)
(・・・中には浸入出来そうか?)
(試みたのですが・・・)
(そうか・・・わかった。
もう暫くしたらミスティに念話を送るとしよう。
それとユウトの方だが・・・)
(は、はっ!まだ何か?)
(その戦闘に勝利した後・・・嘆きの森へと来るよう伝言を頼む)
(・・・しょ、承知致しました)
(では、引き続き監視を頼む・・・以上だ)
((はっ!))
念話を切った絶はニヤリと笑みを浮かべながら呟いた。
「・・・ユウトにその資格があるか、試すとしよう。
フッフッフッフッ・・・
俺の力を継承したんだ、1度や2度の死など、
乗り越えてもらわないと・・・な」
含んだ笑い声を静かに挙げながら、
絶は薄暗い森林の道をゆっくりと歩んで行くのだった・・・。
そう・・・リント村の附近に在る、「嘆きの森」へ向かって・・・。
さて、今回のお話はいかがだったでしょうか?
今回で第2章の閑話は終了となりますが、
残り2話・・・。
頑張って書いて行きたいと思いますので、
応援のほど宜しくお願い致します^^
ってなことで、緋色火花でした。




