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異世界転移 ~魔を狩る者~  作者: 緋色火花
第二章 港町・アシュリナ編
256/407

閑話 異質な魂と試す者・・・。

お疲れ様です。


仕事に追われ過ぎてwowsが出来ない緋色で御座います^^


今回で第2章の閑話は終了となります。

前回と活動報告でお知らせしたように、

第2章は200話で完結致します。


そしてその次は・・・外伝シリーズとなりますので、

楽しみにしていただけたら幸いです^^


それでは、閑話をお楽しみ下さい^^


~ 岩場の聖域・泉 ~



「もう~満腹なのにゃ~♪」


「わ、私も・・・もう食べられ・・・ゲプっ!」


「フフ・・・2人ともいくらなんでも食べ過ぎよ?

 それにイリア?人前でそれは良くないわよ?」


「・・・ははは・・・す、すみません」


ウンディーネが管理するここ岩場の聖域内の泉の前で、

腹を満たした3人が腰を下し談笑していた。


「それにしてもミスティ様・・・急にどうしたのかしら?」


そう話を切り出したアンナはとても心配そうに呟くと、

イリアとセルカもその表情を曇らせた。


「確かにあの時のミスティ様の様子は・・・」


「とても煮詰まっている感じがしたのにゃ」


心配そうな表情を浮かべていた時、

突然目の前に在る泉の水面がせり上がって来た。


「・・・後片付けは終わりましたよ」


そう言って姿を現したのはこの泉の管理人ウンディーネだった。


「すみませんウンディーネ様・・・。

 食事ばかりか後片付けまでしていただいて・・・」


静かに立ち上がり頭を下げるアンナに、

ウンディーネは優しく微笑んで見せた。


「フフフ・・・アンナも手伝ったではありませんか?

 だから気にする事はありません。

 貴女達は今、決死の覚悟で強くなろうとしています。

 私は微力ながら力になりたいだけ・・・」


そう説明するウンディーネに3人は恐縮しながら再び頭を下げたのだった。


ミスティが突然去った後、この3人が唖然としていた時に現れたのが、

四大精霊の1人でもあるウンディーネだったのだ。


それから暫くの間再び談笑していると・・・。


「セルカーっ!そろそろ行くわよーっ!」


「にゃっ!?わかったのにゃーっ!」


少し離れた場所からアマルテアはセルカを呼ぶと、

「頑張って来るのにゃっ!」と、元気よく駆け出した。


そしてその姿が見えなくなるのと同時に、

アンナにもオウムアムアから念話が届いたようだった。


アンナはイリアとウンディーネに礼儀正しく頭を下げると、

「いきまーすっ!」とキャラに似合いそうにもない言葉を発し駆け出した。


「さ、最近アンナさんのキャラ・・・変わってきてませんか?」


「・・・あの子の師匠が師匠ですから・・・ね」


「・・・ははは」


走り去るアンナの背中を見ながらそう話していると、

突然「イリア」と言う念話が送られて来た。


「アリエル師匠っ!」


(すまない・・・少し遅れるわ。

 だから少しその場で待っていてもらえる?)


そう告げられるとイリアは再び泉の前で腰を下した。

するとウンディーネにも念話が送られて来たようで、

何度か無言で頷いていたのだった。


話し終えたウンディーネはイリアの事をじっと見た後、

言葉を発した。


「イリア・・・少しの間アリエル様に面倒を見るように言われたわ」


「・・・わ、わかりましたっ!宜しくお願いしますっ!」


気持ちを引き締めたのかイリアは、

立ち上がりながら言葉を返すと、

ウンディーネからは意外な言葉が返って来た。


「フフフ・・・。そんなに気負わなくてもいいですよ」


「・・・はい?」


少し首を傾げているとウンディーネはこう言った。


「・・・本来はまだ時期ではないと思うのだけど・・・」


「・・・時期・・・ですか?」


ウンディーネの意味深な言葉にイリアは戸惑いを隠せないでいた。

そんなイリアにこう伝えた。


「実は貴女の中に・・・純粋な神力が眠っているのです」


「・・・純粋な神力って・・・へぇ~・・・。

 ・・・神力、神力ね~・・・。

 ・・・えっ!?えぇぇぇぇぇっ!わ、わたわたわたわた私にっ!

 し、ししし神力ですかぁぁぁぁっ!?」


「・・・・・」


イリアの驚く声がよほど大きかったのだろう。

その大声にウンディーネは耳を塞ぐようなポーズをしながら、

しゃがみ込んでしまった。


「す、すみませーんっ!つ、ついっ!」


慌てて謝罪したイリアにウンディーネはゆっくりと立ち上がると、

一瞬優しい風が吹き抜け気が付けば・・・。

ウンディーネの掌の上に拳ほどある大きさの水球が出現していた。


「ウンディーネ様、その水球は・・・?」


「これは貴女の中に眠る神力に・・・

 いえ、魂に・・・直接触れる為のモノです」


「・・・直接触れる?」


「はい。正直その神力は純粋過ぎるが故に・・・異質・・・」


「異質っ!?えっ!?えっ!?

 あ、危ない・・・感じです・・・か?」


動揺が隠せないイリアにウンディーネは静かに首を振ると、

諭すように説明していった。


「貴女の中の奥底に眠る神力は、

 ブルーフレイムとはある意味・・・別物なのです」


「・・・別物?」


「アリエル様がこうおっしゃっていました・・・。

 ブルーフレイムは云わば・・・上澄みのような力だと・・・。

 そしてその源となるのは、イリア、貴女の魂なのです」


「・・・た、魂っ!?」


「・・・まずはこうなった経緯を話すとしましょう」


「はいっ!お願いしますっ!」


真剣な眼差しを向けるイリアに、

ウンディーネは優しく頬むと、目を閉じ静かに話していった。




~ 回想・癒しの森 ~


「ウンディーネ・・・お前に話がある」


そう言ってウンディーネは岩場の聖域でアリエルにそう言われると、

門を潜り抜け、ここ・・・。

癒しの森へと移動したのだった・・・。


「アリエル様・・・いかがされたのですか?

 それに私に話とは?」


門を潜り終えたアリエルはゆっくりとその歩みを進ませながら、

後ろから着いて来るウンディーネに話をし始めた。


「話と言うのはイリアの事よ」


「・・・イリア・・・ですか?

 彼女が一体?」


「うむ、あいつにはブルーフレイムとは違った、

 異質な神力が眠っている」


「・・・し、神力ですかっ!?」


驚きの余り動きを止めたウンディーネに、

アリエルは振り向きながら「クスっ」と笑って見せた。


「・・・?」


「ははは・・・すまない。

 己の感情をあまり表に出さないお前が、

 そんなに驚いた表情をするものだから・・・つい笑ってしまったわ。

 ・・・すまないな」


「い、いえ・・・。そ、それで話の続きですが?」


アリエルの言葉よりも今は話の続きが気になるウンディーネは、

催促するようにアリエルとの距離を縮めた。


「あのブルーフレイムも特殊なのは間違いないわ。

 でもあの力は云わば・・・あの子の力の上澄みでしかない」


「・・・上澄みですか?」


「えぇ、あの子の力を・・・いえ、潜在能力を確かめようと、

 色々と試した事があって・・・。

 私の神力をあの子の中に入れた時、

 突然私の神力が弾き出されたのよ」


「・・・えっ!?そ、そんな事が・・・可能なのですかっ!?」


「・・・私は神よ?たかが1生命体である人族に、

 そんな事が出来るはずもない・・・」


「・・・・・」


先程からアリエルの話に驚くばかりのウンディーネは、

唖然とするしかなかった。


そんなウンディーネにアリエルは薄く笑みを浮かべながら話を続けた。


「神力のあんな・・・そう、あんな弾かれ方をしたのは初めてよ」


「・・・・・」


「私が今まで感じた事がない・・・異質な神力・・・

 でもその神力は純粋過ぎるが故の異質・・・」


「純粋過ぎるが故の異質な神力?」


ウンディーネがそう話を聞き返した時だった。


「神力結界っ!」


「っ!?」


突然アリエルは神力を一瞬で高めると、

癒しの森をまるごと結界で覆ってしまったのだ。


「と、突然どうされたのですかっ!?」


危険を感じたのかウンディーネは振り返ると戦闘態勢に入り、

辺りの気配を探り始めた。


「フフっ・・・すまないウンディーネ。

 ちょっと誰にも聞かれたくない話なのよ」


「・・・わ、わかりました」


戦闘態勢を解いたウンディーネは、

マジックスボックスからテーブルなどを取り出すと、

紅茶をアリエルへと差し出した。


アリエルは椅子に座り紅茶を一口飲み終わると、

静かにカップを置き話を始めた。


「イリアの奥底に眠る神力・・・。

 ・・・違うわね。

 アレはそう・・・イリア自身の魂・・・そう言ったところね?」


「・・・魂・・・ですか?」


「えぇ・・・。

 あの子の魂そのものから・・・神力が出ているわ」


「・・・・・」


困惑してしまうウンディーネから、

冷え切った汗がが流れ落ちた。


「わ、私には・・・り、理解が・・・」


そう答えるのが精一杯だった。


魔法神・アリエルから突然聞かされた真実にウンディーネには、

そう答えるしかなかったのだった・・・。


その様子を見たアリエルの目が鋭く吊り上がると、

動揺するウンディーネにこう告げた。


「ウンディーネよ・・・。

 魔法神・アリエルとして命令するっ!」


「・・・はっ!」


椅子に座っていたウンディーネは咄嗟に椅子から離れると、

片膝を着き頭を垂れた。


「・・・四大精霊の中で・・・

 唯一魂とコンタクトを取れるお前にだからこそ、

 魔法神・アリエルの名を持って命令を下すのですっ!」


「はっ!何なりと・・・」


「イリアの魂が何かを・・・その正体を突き止めよっ!」


「正体・・・?

 ・・・はっ!承知致しました」



~ そして現在 岩場の聖域・泉 ~



「と、・・・そう言う事があったのです」


「・・・そ、それで私の魂を調べると?」


「・・・はい」


「わ、わかりましたっ!」


そう声を大きく返事をしたイリアの表情は、

何かを決意するとそのままそれを口にしたのだった・・・。


「ウ、ウンディーネ様にお願いが御座いますっ!」


「・・・お願いですか?」


片膝を着き頭を垂れるイリアは一度大きく呼吸すると、

頷きながらこう言った。


「・・・も、もし・・・万が一・・・。

 わ、私のた、魂が邪悪に満ちていた場合っ!

 す、すぐに・・・私を処分して下さいっ!」


「・・・なっ!?な、なんと言う事をっ!?」


「調べた結果・・・そのような場合は・・・。

 そ、そのまま処分して下さいませんかっ!?」


暫くの間、2人の押し問答が続いたのだが、

イリアの意思は非常に硬く、ウンディーネは頷くしかなかったのだった。


そして改めて作り出した水球を出現させると、

正座をして黙って目を閉じるイリアの身体の中に侵入して行った。


まるでジェットコースターのような魔力線を移動しながら、

ウンディーネはイリアの源である魂の前に辿り着く。


両手を広げながらイリアの身体の中へと潜る水球・・・。

その水球とウンディーネは常に繋がっており、

不審なモノがないかも調べていたのだった。


(ここまでは異常なし・・・ね。

 そして私の目の前には・・・これは・・・

 ブルーフレイム・・・。

 お願い・・・ブルーフレイム・・・私を通して・・・)


ウンディーネ本体からは大粒の汗が流れ出しており、

イリアの魂との接触に全神経を集中させていたのだった。


暫くの間、ウンディーネはブルーフレイムに己の気持ちを伝えると、

そのブルーフレイムはゆっくりとだが、

ウンディーネをその奥へと通した。


だが・・・そこで見たモノは・・・。


(こ、これがっ!?これが・・・イリアの・・・魂っ!?

 い、一体ど、どう言う事なのですっ!?

 そ、そんな事が・・・そんな事があるなんてっ!?

 ありえ・・・ない・・・ありえないわっ!)


ウンディーネは在り得るはずもないこの現実に、

寒気が全身を駆け巡るのだった・・・。



そしてここは、とある北の大地へと続く街道・・・。



精悍な顔立ちをした男が1人・・・歩いていた。


(・・・うぅぅぅ・・・さ、さむっ!

 まぁ~北の大地だから寒いのは当然なんだが・・・)


その寒さに苦い表情を浮かべたその男は、

葛籠より冬服を取り出すと、寒さ対策の為に着替えていった。


そしてまだ少し遠くに在る雪化粧をした山々を見つめると、

ポツリとこう漏らした。


「・・・数百年ぶりだな♪」


その男は感慨深そうな表情を浮かべながら再びその足を進めた。


それから暫く歩いて行くと、

大きな立て札と矢印が書かれた立て札がその男の目に止まった。


「リントまで2日」


矢印が書かれた小さな立て札。


「2日」と言う文字に少し渋い顔をして見せたその男だったが、

その隣に在る大きな立て札に書かれている文字に、

訝しい表情をしていたのだった・・・。


{ここから先の森林内には魔獣が多数出現。

 魔獣除けの香炉なしでの通行不可・・・}


「・・・んー。確か俺の記憶では宿町があった気がするのだが・・・

 数百年ですっかり様変わりしてしまったな・・・」


そんな事をブツブツと看板を見ながら吐くと、

「まぁ~俺には関係ない事だがな♪」と笑みを浮かべ、

その立て札の内容を無視し森林の中へと入って行った・・・。


森林の中へと入って行くと、鬱蒼とした木々に陽の光も遮られ、

魔獣らしき気配が無数に漂っていた。


「・・・昔は魔獣も出ずいい宿町だったのにな~・・・

 昔を知る俺としては・・・悲し過ぎるな・・・」


そう呟き昔の風景を懐かしみながらも、

その男を取り巻くように移動し始める魔獣の気配に溜息を吐いた。


「・・・気が進まないが仕方がない。

 言っておくが俺はこう見えて動物好きなんだぜ?」


そう言葉を漏らし小声ながらも「散れっ!」と威圧を込めた言葉が、

辺りに居た魔獣どもを蹴散らした。


そして魔獣の気配が消えた森林の中は静寂に包まれたのだが、

その男はある違和感を覚えた。


「・・・おかしいな?魔獣のみを蹴散らせたはず・・・なんだがな?」


その男はピタリとその歩みを止めると、

静寂に包まれた森林の中で、

他の動物達の息吹すら感じない事に目を細めた。


「やはり・・・何かあるのか?」


その男は気配察知を使用し周辺を探っていくと、

約1km先で何かが戦っている気配を察知した。


(・・・流石に1kmも離れているとよく分からないが、

 でも・・・この感じ慣れたこの気配は・・・鬼かっ!?)


その男が「鬼」と判断すると薄暗い森林の中で印を結び始め、

「神速迅雷っ!」と呟いた。


駆け出したその男の足跡は、

まるで雷でも落ちたかのように赤黒く染まり、

森林の大地からは焦げ付く匂いを発していた。


薄暗い道をものともせず、

その男は気配を辿りながら状況を把握しようとし、

親指を軽く噛み切り血を出すと、

走りながら掌に鳥のような絵を描いたのだった・・・。


「状況が知りたいっ!頼むっ!血鳥(けっちょう)よっ!」


掌の中で小さく一瞬赤く光ると、

血液で描かれた鳥の絵が羽ばたき「ピィー」と鳴くと、

物凄い速さで指定された場所へと飛び立ったのだった。


薄暗い森林の中を走り、残り200ⅿとなった時だった、

血鳥からの映像がその男の頭の中に流れてきた。


その映像にその男は「やはりな・・・」と声を漏らすと、

更に速度を上げて行った。


(人族が襲われてるっ!?ちっ!鬼が5体もいやがるっ!

 間に合う・・・かっ!?)



それから数秒後の事だった・・・。


少し開けた場所では既に人族は狩られており、

辺り一面が血の海と化していた・・・。


「間に合わなかったかっ!」


「ザザァァァっ!」と地面を滑るように止まると、

そこには人族を狩り終えたモノ達・・・。


・・・つまり「鬼」が居たのだった。



「何だ~?貴様は~?」


鋭い視線を突然の来訪者へと向けた鬼は、

人族の血で染まった斧を肩に担ぎ舌舐めずりをした。


その鬼の一言で背中を向けていた4体の鬼達も顔を向けた。


「・・・殺されに来たのか?」


突然の来訪者から一番離れた場所に居た鬼がそう言うと、

その来訪者は不敵な笑みを浮かべ呟くようにこう言った。


「フッ・・・。お前達を・・・狩りに来た」


「はぁ?」


「人族に狩られる俺達じゃねー・・・」


威圧を放つ鬼に対しその男がそう呟くのだが、

その表情からは再び笑みが漏れていた。


「・・・5本角風情が」


「「「「「っ!?」」」」」


5体の5本角の鬼達は、その男の言葉に絶句した。

しかしその驚きは仕方がない・・・。

何故ならこの世界において、鬼の存在を知る者など皆無だったからだ。


「お、お前・・・一体・・・何者だっ!?」


一番手前に居た鬼が驚きの声を挙げた瞬間、

その鬼の視界が上下にズレた。


「なっ、何だ・・・こりゃ・・・?」


そう言葉を発した瞬間、いつの間にか真っ二つになった鬼は、

動く事すら出来ず絶命した。


「き、貴様ぁぁぁっ!」


「おのれぇぇぇっ!」


「やりやがったなぁぁぁっ!」


「・・・・・」


3者がそう口走りると、一番奥で言葉を発しなかった鬼が、

その男を見ながら「ガタガタ」と震え始めた。


だがそんな様子を知るはずもない他の鬼達が声を荒げ、

各々の武器を手ににじり寄り間合いを縮めていったのだが・・・。


「や、やめ・・・ろ」


その鬼の声など届くはずはなかった。

3体の5本角の鬼達は目の前で起こった出来事に混乱しており、

冷静でいられるはずがなかったからだった。


「お、お前は何者だぁぁぁぁっ!」


そう本能では怯えながらも正しい判断が出来なくなった鬼の1人が、

槍を振り上げ男に襲い掛かって来た。


そしてそれは一瞬の出来事だった。


この世から音が消えた・・・。

そう思わせるほどの静寂に包まれた時、

最初に声を出したのは、一番奥にいた鬼だった・・・。


「・・・い、いつ・・・そ、そこ・・・へ?」


そう声を漏らした瞬間、その鬼の前に居た仲間達が、

細切れになってその大地へと崩れた。


その鬼の前に現れた男の表情には、何の感情も現れない、

ただの無表情だった。


「ポタっ・・・ポタっ・・・ポタっ」っと、

水の滴る音がその静寂に染まった空間に響いていた。


その鬼がその音に気付くと、

見開いた双眼をゆっくりとその音の方へと下げた。



「ジワ~」っとした汗が・・・。

その鬼の体中から脂汗が浮かび流れ落ちていく。


「ヒ・・・ヒィっ!」


顏を盛大に引きつらせながら後ろへと下がろうとする鬼だったが、

仰け反ったのはその上半身だけ・・・。


その音の方へと向けられた双眼から得られた情報に、

その鬼の身体は恐怖に支配されてしまい自由が利かなかったのだ。


そして一瞬その見開かれた双眼がその男へと向けられた・・・。


すると男は鋭い視線を向けたまま口を開いた。

そう・・・その声はまるで死神のような・・・。

そんな冷酷無比な声が目の前にいる男から聞こえた。


「・・・お前も終わってるよ」


「ヒィィィィっ!?」


その鬼の声が引き金になり、その身体はバラバラに斬り裂かれ、

「ボタボタ」と地面にその肉片が散らばり落ちていった。


「ポタッ・・・ポタっ・・・ポタっ・・・」


再び静寂が満ちたその空間に再び水の滴る音が響くと、

その男の瞳が一瞬縦長の瞳へと変わった。


鬼爪(きそう)百鬼狩り」


「ヒュンっ!」と右腕を振り、斬り裂いた鬼達の血液が飛び散ると、

葛籠より取り出した布を指先に掛けゆっくりと拭っていった・・・。


その拭い取る男の指先の爪は短刀ほどの長さに伸びており、

拭い終わると「シュッ」と通常の大きさへと姿を変えたのだった。



「ふぅ~」っと男がそう息を吐いた時だった・・・。


(絶様・・・聞こえますか?)と、誰かからの念話が送られて来た。


(あぁ・・・何かあったのか?)


「絶様」と呼ばれた男は念話をしながら歩き始めると、

人族の亡骸と鬼の亡骸を弔う事もなく、無慈悲にその足を進めた。


(はっ、只今彼と童鬼が戦闘に入りました)


(ふむ、そうか・・・それで?)


(あ、あの・・・。それで・・・とは?

 お、お助けした方が良いのでは?)


(フッ・・・必要ないだろ?)


(・・・えっ!?)


絶の返答に戸惑う部下に絶はこう言葉を続けた。


(そんな小者に負けるようじゃ話にならんだろ?

 だから何があっても助ける事はするな)


(で、ですがっ!?)


(お前はただ、事の成り行きを見守っていればいい・・・。

 心配するな・・・。

 あいつに基本は教えた・・・。

 あとはあいつが・・・、ユウトが歩き出すだけだ・・・。

 自ら壁を乗り越えて行かなければ、この先戦う事など出来ん。

 それに、どんな赤ん坊だっていずれは1人で立ち上がり歩くんだ。

 だからあいつの成長を妨げる事は断じて許さんっ!

 ・・・いいな?)


(・・・は、はっ!で、では・・・)


絶の部下らしき男がそう言って念話を切ろうとした時だった・・・。


(あっ、すまんが・・・)と絶は言葉を続けた。


(・・・な、何か?)


(うむ・・・ミスティは今、どこに居る?)


するとその部下らしき声とは別に、違う声が流れて来た。


(絶様・・・。ミスティ様は癒しの森の近くに在る、

 特殊な結界内・・・恐らくこれは聖域かと思いますが、

 その中に居られます)


(そうか・・・あんな所に聖域が・・・ね)


(いかが致しますか?)


(・・・中には浸入出来そうか?)


(試みたのですが・・・)


(そうか・・・わかった。

 もう暫くしたらミスティに念話を送るとしよう。

 それとユウトの方だが・・・)


(は、はっ!まだ何か?)


(その戦闘に勝利した後・・・嘆きの森へと来るよう伝言を頼む)


(・・・しょ、承知致しました)


(では、引き続き監視を頼む・・・以上だ)



((はっ!))


念話を切った絶はニヤリと笑みを浮かべながら呟いた。


「・・・ユウトにその資格があるか、試すとしよう。

 フッフッフッフッ・・・

 俺の力を継承したんだ、1度や2度の死など、

 乗り越えてもらわないと・・・な」


含んだ笑い声を静かに挙げながら、

絶は薄暗い森林の道をゆっくりと歩んで行くのだった・・・。


そう・・・リント村の附近に在る、「嘆きの森」へ向かって・・・。






さて、今回のお話はいかがだったでしょうか?

今回で第2章の閑話は終了となりますが、

残り2話・・・。

頑張って書いて行きたいと思いますので、

応援のほど宜しくお願い致します^^



ってなことで、緋色火花でした。

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― 新着の感想 ―
[一言] ウンディーネ料理できたんや!? というのがまずビックリw 前回ミスティ様がいなくなった後、 お腹ペコペコのみんなはどうしたのか気になっていたのでホッとしましたけど♥︎ イリアの魂のことと…
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