閑話 女神の苦悩と女の声
お疲れ様です。
社畜過ぎて今、頭がバグっている緋色で御座いますw
さて今回ですが、引き続き閑話となっています。
まぁ~今回のタイトルを見てお分かりかと思いますが、
まずはミスティのお話となっております^^
そして次回ですが・・・。
もう1話だけ閑話が続きます^^
それでは、閑話をお楽しみ下さい。
~ 岩場の聖域 ~
ここ岩場の聖域ではイリア達が己のレベルを上げる為、
神達による猛特訓が日夜続けられていた・・・。
だがしかしここに・・・苦悶の表情を浮かべながら、
1人何かに焦っている者が居た・・・。
~ 岩場の聖域内・旧・食堂 ~
(・・・残り時間ももう余り・・・
・・・何としても間に合わせないと・・・)
椅子に座りながらも沸騰した鍋に構う事もなく、
物思いにふけっていた・・・。
すると「ガチャ」っと突然食堂の両開きの扉が開き、
訓練を終えた者達がゾロゾロと食堂内へと入って来た・・・。
「ふぅ~やっとお昼ね~・・・もうお腹が空いて限界よ~」
「私ももうおにゃかがペコペコなのにゃ~」
「最近メンタルを保つのに、ランチの間の休息は欠かせませんね」
今にも空腹で倒れそうな表情を浮かべながら、
イリア、セルカ、アンナが食堂内へ入ると、
それぞれの場所に腰を沈めながらテーブルに伏していた。
「お、おにゃかが空いたのにゃ~・・・。
今日のお昼はなんなのにゃ~?
にゃんでもいいからすぐに食べたいのにゃ~・・・」
テーブルに伏しながらセルカがそう声を漏らすと、
返らぬ声に違和感を感じたアンナが振り返った・・・。
「・・・ん?ミスティ・・・様?」
何とも言い様のない声にイリアとセルカが顏を上げると、
そこにはただ椅子に座り一点だけを虚無に見続け、
その存在感すらも色褪せてしまっているミスティの姿があった。
3人は顏を見合わせ首を傾げると、
火にかかっている鍋が沸騰し、吹きこぼれている事に気付いた。
慌てて席を立ったアンナが駆け寄り火を止めると、
ぼ~っとするミスティの肩を揺さぶり始めたのだった。
「ミスティ様っ!ミスティ様っ!?」
「ガクガク」と肩を大きく揺さぶられたミスティが我に返ると、
目の前に居たアンナに驚きの声を挙げていた。
「きゃぁっ!?」
「っ!?」
「ど、どうされたのですかミスティ様?
お、お身体の具合でも・・・?」
心配し顔を覗き込むアンナにミスティは慌てて謝罪し、
特訓をしていた者達へと出されるはずの料理が、
何も出来ていない事に謝罪し始めた。
「ご、ごめんなさいっ!
わ、私ったらボ~っとしちゃって・・・」
「ミスティ様・・・」
顏を背けたミスティの横顔にはいくつもの汗が流れた跡があり、
その表情もまた悲壮感が漂っていたのだった。
そんなミスティに皆が言葉を失い沈黙していた時だった・・・。
(✕〇△□・・・)
「っ!?」
突然ミスティの頭の中に念話が送られて来た・・・。
再び驚きに満ちた表情をしたミスティは慌てて立ち上がり、
「ちょっと失礼するわ」と言ってそのまま食堂を後にし、
神界へとその扉を開き消えて行った・・・。
食堂に取り残された者達はミスティのその様子に唖然とし、
暫くの間、食事の事も忘れ沈黙していた・・・。
~ 神界の自室前 ~
ミスティは自室に入る為のドアノブに手を掛け立ち止まると、
後ろに控えていたお付きの天使に声を掛けた。
「暫くの間誰にも繋がないでもらえるかしら?」
「はっ、かしこまりました。ミスティ様」
「ガチャ」っと扉を開き自室の中へと入ると、
早速念話を使用し連絡を取った。
(・・・聞こえますか?私です、ミスティです。
返事が遅れてしまい誠に申し訳御座いませんでした・・・)
(ん?おぉ~ミスティか?
突然連絡してしまいすまなかったな?
それで今・・・大丈夫なのか?)
落ち着いた口調で話し始めたミスティは、
ソファーに座りながら紅茶を飲んで一息ついた。
(えぇ・・・大丈夫ですわ。
突然のご連絡に少々驚いてしまいましたが、
今は自室ですので問題御座いませんわ)
(そうか・・・気を遣わせてしまったようで申し訳ないな)
(いえ、それで・・・ご用件は?)
紅茶を飲み喉を潤しながら念話での会話をしていると、
ミスティの表情が急に青ざめ、
カップを持つその手がプルプルと震え始めた。
(そ、それは・・・ほ、本当なのですかっ!?)
驚きの余り勢いよく立ち上がったミスティはカップを落し、
そのカップはテーブルの上に落下すると、
「パリン」と音を立て割れてしまった。
(こうしてはいられませんっ!
場所を・・・場所をお教え下さいっ!)
割れたカップを顧みる事もなく、
ミスティはそのまま扉へと移動するが、
突然その足は「ピタリ」と止まり、
「そ、そんな・・・」と言葉を漏らしながら立ち止まってしまった。
(あ、貴方は悠斗様を見捨てろと、そうおっしゃるのですかっ!?)
(落ち着けミスティ・・・お前らしくもない・・・)
(お、落ち着くも何もそんな悠長な事をっ!
そ、それにそんな状況に身を置かれている悠斗様を見捨てろとっ!?)
(・・・いや、見捨てるつもりなど更々ないぞ)
(で、では・・・一体どうして鬼との対決をっ!?
じ、事前にお分かりでしたら、
何故早急に手を打たれないのですかっ!?)
ミスティはそう念話をしながら自室内をウロウロとし、
明らかに落ち着きを無くしてしまっていた。
(・・・そうだな。
これはあいつにとって乗り越えなければならない・・・
言わば・・・試練ってヤツだ・・・。
だから俺はあえて何もしなかった・・・)
(し、試練って・・・そんなっ!?)
拳を握り怒りに打ち震えるミスティに構う事もなく、
念話の相手は続けざまにこう言った。
(今のあいつなら負けるはずはないとは思うからだ)
(お、思うって・・・か、勝てると言う確信ではないのですかっ!?)
(あぁ、確信は・・・ない。
だがな?4本角相手に負けているようでは、
少なくとも・・・ヤツに・・・アスラには勝てん)
(アスラっ!?あ、貴方はあのアスラに・・・
ユウト様をぶつけるおつもりですかっ!?)
(あぁ・・・今すぐって訳じゃないが、俺はそのつもりだ)
(ア、アスラを処理するのは・・・
貴方の役目ではないのですかっ!?
よ、よりにもよってあの化け物の相手を悠斗様にさせるなんてっ!
決して許されるはずもないでしょうっ!?
そ、それにそんな事・・・あ、あの方が許されるはずもありませんっ!)
アスラ・・・。
その名を聞いたミスティは途端にその足を止め、
その握り締められた拳から血が滴り落ちていた。
そんな怒りを見せるミスティに、なおも話を続けていったのだ。
(あいつからは「いいんじゃない?」と言われたよ?)
(・・・えっ!?そ、そんな・・・まさかっ!?
いくら何でもそんな事を言うはずがっ!?)
(心配するな・・・ミスティ。
きっかけはお前も知っているように、俺が事前に与えておいた。
赤銅色の鬼の気の使い方ってヤツを教えてはいる)
(し、しかしっ!それでもっ!
余りにもそれは無謀と言うモノですわっ!)
(はっはっはっ・・・無謀と来たか?
あいつなら何ら問題なく越えられる壁だと思っているがな?
フッフッフッ、でもまぁ~まさか・・・あの幼かったあの子供が、
俺の能力を受け継いでいるとは思わなかったけどな~♪
はっはっはっ!これだから人間は面白い♪)
そう楽し気に口を開いた相手に、
ミスティは再び怒りを滲ませ抗議をし始めた・・・。
(何を呑気に笑っておられるのですかっ!?
そ、それにそんな事・・・あの天照様が許すはずがありませんわっ!)
(はっはっはっ!天照って・・・おいおいミスティ・・・。
あんな小者に一体何が出来るってんだよ?
あの女の思惑は俺も把握しているが、実にあの女らしい下卑た企みた。
それに今のユウトの実力ではどの道・・・力不足過ぎるだろ?)
(・・・・・)
(いいかミスティ・・・。
これはあいつにとっても決して無駄にはならない・・・。
いや、それどころか・・・
これしきの事すら乗り越えられなければ、
あいつはこれから先・・・戦い抜く事など出来ないぞ?
その場合は・・・あいつはもう用済みと言う事になる)
「・・・絶っ!!!」
思わず大声で怒鳴ったミスティは、その念話の相手の名・・・。
「絶」とそう呼んだのだった・・・。
(まぁ~今戦っている連中なら、何の問題もないはずだ。
それでも保障はしないがな?
ユウトがどれだけ覚醒するか・・・それ次第って事だ)
まるでどうでもいいかのようにそう答えるゼツに、
ミスティはただ唇を噛み締めるしかなかったのだった。
そしてそれから暫くゼツとの念話が続き会話を終えると、
ミスティはベッドに崩れ落ちるかのように、
仰向けになって「バフッ」と倒れ込んだ。
「・・・私は神として失格ね・・・。
そんな自分に反吐が出るわ・・・」
自室で1人ベッドに寝転がるミスティは、
天井の一点だけを見つめ悠斗の笑顔を思い出していた。
(悠斗様・・・どうかご無事で・・・)
ミスティはそう心の中で呟きながら、
悠斗の無事を祈る事しか出来なかった。
そして場所は変わり、ここはヘイルズ領の北に在る街「フレック」
丁度ミスティとゼツが念話をしている頃だった・・・。
セルンは裏路地に在る隠れ家の2階で、
窓を開けコーヒーを飲みながらのんびりと読書をしていた・・・。
すると「ドタドタドタっ!」と、
慌ただしく何者かが階段を駆け上がって来る音が聞こえ、
セルンは本を閉じドアの方へとその視線を移した。
「バンっ!」と勢いよくドアが開かれると、
ラハトが興奮気味に声を挙げた。
「セルンっ!朗報だぜっ!」
「ちょっとラハトっ!ノックぐらいしなさいよっ!
もう少しで殺すところだったじゃないっ!」
そう怒鳴るセルンの手には、
猛毒がたっぷりと仕込まれたナイフが握られており、
その殺気だったセルンにラハトは「ゴクリ」と喉を鳴らしたのだった。
「・・・こ、殺すって・・・えっ!?
お、お前・・・ぶ、物騒過ぎるだろうがよっ!」
「フンっ!あんたが悪いんでしょ~?
まぁ~その結果、あんたが死んだら、
適当にその辺に埋めて置いてあげるから、心配しなくていいわ♪」
「・・・て、適当って・・・も、もう少し・・・」
「・・・何か文句でもあるの?」
「・・・あ、ありません」
「なら、宜しい♪」
「・・・・・」
そう言って満足気に笑顔を見せると、
セルンは再び本を開き読み始めていった・・・。
(にしてもよ~・・・セルンのヤツ・・・
表情が柔らかくなったよな~?
これもアレか~?
ユウトってヤツのおかげって事なのか~?
でもまぁ~相変わらず物騒な女ってところは変わらねぇけどな。
何の為に俺がこんなに急いで・・・)
セルンを見ながらそう思っていたラハトだったが、
突然「あぁぁぁっ!そうだったぁぁぁっ!」と声を張り上げると、
再び慌ただしくセルンに話し始めるのだが、
「うるさいわねっ!」の一言で、テンション低めで話し始めた。
「・・・え、えっと~だな?
もう4年ほど前になるが、冒険者ギルドに依頼した事を覚えてるか?」
「4年前って~・・・あぁ~・・・
確か~内密に依頼した、例の・・・アレの事?」
「ああ・・・それだ」
「ふ~ん・・・でもまぁ~それがどうしたのよ?
それにまだ数年待たないといけないはずでしょ?」
適当に会話をしながら本から目線を離さないセルンに、
ラハトは眉を吊り上げていた。
「いや~それがよ?
今日フレックの冒険者ギルドから連絡があってな?」
「冒険者ギルドから連絡って・・・一体どうしたのよ?」
「セルン・・・驚かずに聞いてくれ」
「・・・はい?」
セルンは神妙な声を出すラハトに本から目を離し、
小さく首を傾げたのだった・・・。
「あのな?例のきのこ・・・。
エナジーマッシュルームが納品されたってよっ!」
「へぇ~・・・アレ納品されたのね~・・・」
そう無難に言っては見せたもののセルンは、
そのきのこの名が何度も頭の中でリフレインしていた・・・。
そしてしばしの沈黙の後・・・。
「えっ!?えぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?
う、噓でしょっ!?エナマシュが納品されたのっ!?」
「お、お前・・・名称を勝手に略すんじゃねーよっ!
って言うか、どこから納品されたと思う~?」
ニヤニヤといやらしく笑みを浮かべたラハトに、
セルンは訝しい表情を見せながら首を傾げて見せた。
「フッフッフッ~♪
な、何とっ!アシュリナの港街からなんだとよ~♪」
「えっ!?ア、アシュリナの・・・み、港・・・街?」
「あぁ~そうだよ・・・良かったな、セルン。
これでお前の弟の病も治るだろうぜ♪」
優しく微笑みながらそう話すラハトに、
セルンの目から一筋の涙がこぼれ落ちたのだった・・・。
「・・・あ、ありが・・・とう・・・」
涙を流しながら・・・。
そして言葉に詰まりながらそう言ったセルンに、
ラハトはおどけて見せたのだった・・・。
「べ、別に俺が納品した訳じゃないからな~♪
まぁ~礼は納品したヤツにでも言うこったな?♪」
涙を拭きながらセルンは微笑むラハトにこう尋ねた。
「そ、そう・・・ね。
そ、それで・・・納品してくれた人って、誰なの?」
「えっと~・・・そう言えばそこまでは聞いてなかったな~?
でもハンナが帰ってきたら聞いてみるといいんじゃねーか?」
「・・・そうね」
少し残念そうにセルンがそう言った時だった・・・。
下の階から再び「ドタドタ」と足音が聞こえてくると、
ハンナが嬉しそうに息を弾ませながら部屋へと飛び込んで来た。
「セルン~♪見てよこのきのこ~♪
なんとっ!エナマシュが何とっ!10個もっ!
ほ、ほらっ!見てよっ♪
そう言って小さなマジックバックから取り出して見せると、
セルンはその光景に唖然とした。
そしてその横で見ていたラハトがこう呟いていた。
「・・・エナマシュって言葉・・・流行りなの?
知らないのって・・・俺だけ?って・・・聞けよっ!」
そう呟いていたのだが、2人にスルーされ、
寂しい思いをしていたのはここだけの話だった・・・。
唖然とする光景にセルンは気持ちを落ち着かせると、
ハンナに尋ねた。
「ハンナ・・・誰が納品してくれたか教えてくれない?」
「・・・どうしてだい?」
やや笑みを浮かべそう尋ね直して来るハンナに、
セルンは不思議そうな顔を見せた。
「どうしてって・・・エナマシュの時期でもないのに、
一体どうやって手に・・・?
い、いえ・・・ただお礼を言いたいだけよ・・・。
しかも・・・こんなに・・・」
エナマシュを見つめながらそう言ったセルンに、
ハンナはこう言った。
「依頼したのは5個なんだけどね・・・。
でも10個も納品して残り5個分の報酬はいらないんだとさ♪
そんな奇特なヤツって、本当いるってんだから驚きだわね♪
しかも納品してくれた相手ってのがね?」
やけに話を引っ張るハンナだったが、
何故かその表情は穏やかだったのだ。
「いや~・・・これも運命ってヤツなのかしらね~?
エナマシュを納品してくれた人ってね~?
フフフ♪アナザーの・・・ユウト・カミノって人よ♪」
「えっ!?ア、アナザーの・・・ユ、ユウト・・・っ!?
の、納品してくれた人ってユウトなのっ!?
・・・う、嘘・・・」
悠斗の事は既にラハトから話を聞いており、
セルンの想い人である事も承知していた。
その事を知っていたハンナは、優しく微笑んでいたのだった・・・。
そしてその事実にセルンは再び涙を流すと、
いつの間にか部屋に来ていた仲間達に、
見守られていた事に気付くのだった。
呼吸を落ち着かせ涙を拭ったセルンがふと顔を上げると、
慌てて階段を駆け上がり屋上へと向かった。
そして悠斗からもらった2つの魔石を取り出すと、
その1つを使い悠斗に連絡を取るべく魔力を流した。
(・・・繋がらない?)
だが悠斗の声がその魔石から聞こえる事もなく、
もう1つある通信用魔石から再び連絡を試みるも・・・。
(お、おかしい・・・おかしいわ・・・
ユウトが・・・出ない。
ユウトが出ないなんて・・・一体何が?)
セルンが真剣な表情になると再び連絡を取ろうとし、
何度も何度も通信を試みるのだが通じず、
セルンは魔石を握り締めながら、悠斗の安否を心配した。
(・・・ユウト、一体どうしたのよ?
・・・貴方が言った通り、
私は魔石通信を補助する魔石もあちこちに置いて来たのに・・・
それなのにどうして?
ユウト・・・一体今どこに?)
セルンがそう思った時だった・・・。
突然「うっ」と顔を顰めたセルンは胸の痛みに膝を着いた。
(な、何っ!?い、一体・・・どうしてっ!?
どうして突然胸に痛みがっ!?)
そう思いながら、今にも潰れそうなその胸の痛みに耐えていると、
頭の中に薄っすらと悠斗の声が聞えて来た。
(何があっても・・・あいつだけは・・・許さない)
「うっ」
突然悠斗の声が聞えて来たかと思ったら、
再び呻き声を挙げその胸の痛みに悶絶した。
(カロン・・・お前の敵は俺が取るっ!)
再び悠斗の声がセルンの脳裏に聞こえると、
その胸の痛みは和らぎ次第に何も感じなくなった・・・。
(い、今のは・・・ユウトの・・・声?
い、一体ユウトに何がっ!?
それにカロンってっ!?)
痛みによって膝を着いていたセルンの身体に、
何とも言えないような悪寒が駆け抜けて行った。
するとその時、セルンの胸の辺りが熱くなりはじめると、
心の中に直接語り掛けて来る声が聞えはじめた。
(・・・悠斗を助けて・・・いそ・・・い・・・で・・・)
「た、助け・・・!?って・・・何っ!?今の声っ!?
お、女・・・の声?貴女誰なのよっ!答えなさいっ!
それにい、急いでって、一体どこへ行けと言うのよっ!?」
(・・・早く・・・場所は・・・リン・・・トの・・・
嘆き・・・の・・・)
「ちょ、ちょっとっ!?ねぇっ!ねぇってばっ!?」
セルンは四つん這いになった状態で強く拳を握り締めると、
その双眼に力が籠り立ち上がった。
「・・・行かなくちゃ。
最後まで声は聞こえなかったけど、
恐らくその場所は・・・北の大地に在るリント村・・・。
そしてその近くに在る・・・「嘆きの・・・森」ね」
セルンはそう決意すると、仲間達にこの事を伝え旅支度を始めた。
「お、おいっ!セルンっ!?
き、急にどうしたんだよっ!?」
「行かなくちゃっ!」
「・・・はい?」
突然旅支度を始めたセルンのその険しい表情に、
仲間達は何かしらを察すると、ハンナ達はその旅支度を手伝った。
そしてラハトと共にセルンはフレックの街を、
慌ただしく旅立って行ったのだった・・・。
フレックの街を北へ向かって駆け出す中、
その表情に余裕のないセルンに声を掛けていった。
「って言うか、一体どこへ行くつもりなんだよっ!?」
「どこへって・・・リント村の近くに在る・・・嘆きの森よっ!」
「嘆きの森ね~・・・って、な、嘆きの森だとぉぉぉぉっ!?
も、もうじき真冬になるってのにかっ!?嘘だろっ!?」
「嫌なら帰りなさいよっ!
誰も着いて来てなんて頼んでないわよっ!」
「そ、そんな冷たい事言うなよっ!
ってか、冬支度なんて持ってきてねーぞっ!?」
「そんなモノ途中で買えばいいでしょっ!?
兎に角今は急ぐんだからっ!
文句言ってないでさっさと着いて来なさいよっ!」
「なぁ~セルンっ!北の大地に向かうなら尚更・・・
どうして馬車に乗らなかったんだよっ!」
「・・・ば、馬車っ!?
え、えっと~・・・う、うるさいわねっ!
さっさと行くわよっ!」
「・・・あぁ~こりゃ、そこまで考えていなかったって事だな~
へいへい・・・頑張って着いて行きますよ~っとくらぁっ!」
こうしてラハトと共に旅立ったセルンは、
謎の声に導かれ、北の大地に在るリント村へと向かい、
嘆きの森へと急ぐのだった・・・。
ってな事で、今回のお話はいかがだったでしょうか?
苦労人ミスティとセルンのお話でしたが、
楽しく読んでもらえたのなら嬉しく思います^^
ってなことで、緋色火花でした。




