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異世界転移 ~魔を狩る者~  作者: 緋色火花
第二章 港町・アシュリナ編
255/406

閑話 女神の苦悩と女の声

お疲れ様です。


社畜過ぎて今、頭がバグっている緋色で御座いますw


さて今回ですが、引き続き閑話となっています。

まぁ~今回のタイトルを見てお分かりかと思いますが、

まずはミスティのお話となっております^^


そして次回ですが・・・。

もう1話だけ閑話が続きます^^



それでは、閑話をお楽しみ下さい。

~ 岩場の聖域 ~


ここ岩場の聖域ではイリア達が己のレベルを上げる為、

神達による猛特訓が日夜続けられていた・・・。


だがしかしここに・・・苦悶の表情を浮かべながら、

1人何かに焦っている者が居た・・・。



~ 岩場の聖域内・旧・食堂 ~


(・・・残り時間ももう余り・・・

 ・・・何としても間に合わせないと・・・)


椅子に座りながらも沸騰した鍋に構う事もなく、

物思いにふけっていた・・・。


すると「ガチャ」っと突然食堂の両開きの扉が開き、

訓練を終えた者達がゾロゾロと食堂内へと入って来た・・・。


「ふぅ~やっとお昼ね~・・・もうお腹が空いて限界よ~」


「私ももうおにゃかがペコペコなのにゃ~」


「最近メンタルを保つのに、ランチの間の休息は欠かせませんね」


今にも空腹で倒れそうな表情を浮かべながら、

イリア、セルカ、アンナが食堂内へ入ると、

それぞれの場所に腰を沈めながらテーブルに伏していた。


「お、おにゃかが空いたのにゃ~・・・。

 今日のお昼はなんなのにゃ~?

 にゃんでもいいからすぐに食べたいのにゃ~・・・」


テーブルに伏しながらセルカがそう声を漏らすと、

返らぬ声に違和感を感じたアンナが振り返った・・・。


「・・・ん?ミスティ・・・様?」


何とも言い様のない声にイリアとセルカが顏を上げると、

そこにはただ椅子に座り一点だけを虚無に見続け、

その存在感すらも色褪せてしまっているミスティの姿があった。


3人は顏を見合わせ首を傾げると、

火にかかっている鍋が沸騰し、吹きこぼれている事に気付いた。


慌てて席を立ったアンナが駆け寄り火を止めると、

ぼ~っとするミスティの肩を揺さぶり始めたのだった。


「ミスティ様っ!ミスティ様っ!?」


「ガクガク」と肩を大きく揺さぶられたミスティが我に返ると、

目の前に居たアンナに驚きの声を挙げていた。


「きゃぁっ!?」


「っ!?」


「ど、どうされたのですかミスティ様?

 お、お身体の具合でも・・・?」


心配し顔を覗き込むアンナにミスティは慌てて謝罪し、

特訓をしていた者達へと出されるはずの料理が、

何も出来ていない事に謝罪し始めた。


「ご、ごめんなさいっ!

 わ、私ったらボ~っとしちゃって・・・」


「ミスティ様・・・」


顏を背けたミスティの横顔にはいくつもの汗が流れた跡があり、

その表情もまた悲壮感が漂っていたのだった。


そんなミスティに皆が言葉を失い沈黙していた時だった・・・。


(✕〇△□・・・)


「っ!?」


突然ミスティの頭の中に念話が送られて来た・・・。

再び驚きに満ちた表情をしたミスティは慌てて立ち上がり、

「ちょっと失礼するわ」と言ってそのまま食堂を後にし、

神界へとその扉を開き消えて行った・・・。


食堂に取り残された者達はミスティのその様子に唖然とし、

暫くの間、食事の事も忘れ沈黙していた・・・。



~ 神界の自室前  ~


ミスティは自室に入る為のドアノブに手を掛け立ち止まると、

後ろに控えていたお付きの天使に声を掛けた。


「暫くの間誰にも繋がないでもらえるかしら?」


「はっ、かしこまりました。ミスティ様」


「ガチャ」っと扉を開き自室の中へと入ると、

早速念話を使用し連絡を取った。


(・・・聞こえますか?私です、ミスティです。

 返事が遅れてしまい誠に申し訳御座いませんでした・・・)


(ん?おぉ~ミスティか?

 突然連絡してしまいすまなかったな?

 それで今・・・大丈夫なのか?)


落ち着いた口調で話し始めたミスティは、

ソファーに座りながら紅茶を飲んで一息ついた。


(えぇ・・・大丈夫ですわ。

 突然のご連絡に少々驚いてしまいましたが、

 今は自室ですので問題御座いませんわ)


(そうか・・・気を遣わせてしまったようで申し訳ないな)


(いえ、それで・・・ご用件は?)


紅茶を飲み喉を潤しながら念話での会話をしていると、

ミスティの表情が急に青ざめ、

カップを持つその手がプルプルと震え始めた。


(そ、それは・・・ほ、本当なのですかっ!?)


驚きの余り勢いよく立ち上がったミスティはカップを落し、

そのカップはテーブルの上に落下すると、

「パリン」と音を立て割れてしまった。


(こうしてはいられませんっ!

 場所を・・・場所をお教え下さいっ!)


割れたカップを顧みる事もなく、

ミスティはそのまま扉へと移動するが、

突然その足は「ピタリ」と止まり、

「そ、そんな・・・」と言葉を漏らしながら立ち止まってしまった。


(あ、貴方は悠斗様を見捨てろと、そうおっしゃるのですかっ!?)


(落ち着けミスティ・・・お前らしくもない・・・)


(お、落ち着くも何もそんな悠長な事をっ!

 そ、それにそんな状況に身を置かれている悠斗様を見捨てろとっ!?)


(・・・いや、見捨てるつもりなど更々ないぞ)


(で、では・・・一体どうして鬼との対決をっ!?

 じ、事前にお分かりでしたら、

 何故早急に手を打たれないのですかっ!?)


ミスティはそう念話をしながら自室内をウロウロとし、

明らかに落ち着きを無くしてしまっていた。


(・・・そうだな。

 これはあいつにとって乗り越えなければならない・・・

 言わば・・・試練ってヤツだ・・・。

 だから俺はあえて何もしなかった・・・)


(し、試練って・・・そんなっ!?)


拳を握り怒りに打ち震えるミスティに構う事もなく、

念話の相手は続けざまにこう言った。


(今のあいつなら負けるはずはないとは思うからだ)


(お、思うって・・・か、勝てると言う確信ではないのですかっ!?)


(あぁ、確信は・・・ない。

 だがな?4本角相手に負けているようでは、

 少なくとも・・・ヤツに・・・アスラには勝てん)


(アスラっ!?あ、貴方はあのアスラに・・・

 ユウト様をぶつけるおつもりですかっ!?)


(あぁ・・・今すぐって訳じゃないが、俺はそのつもりだ)


(ア、アスラを処理するのは・・・

 貴方の役目ではないのですかっ!?

 よ、よりにもよってあの化け物の相手を悠斗様にさせるなんてっ!

 決して許されるはずもないでしょうっ!?

 そ、それにそんな事・・・あ、あの方が許されるはずもありませんっ!)


アスラ・・・。

その名を聞いたミスティは途端にその足を止め、

その握り締められた拳から血が滴り落ちていた。


そんな怒りを見せるミスティに、なおも話を続けていったのだ。


(あいつからは「いいんじゃない?」と言われたよ?)


(・・・えっ!?そ、そんな・・・まさかっ!?

 いくら何でもそんな事を言うはずがっ!?)


(心配するな・・・ミスティ。

 きっかけはお前も知っているように、俺が事前に与えておいた。

 赤銅色の鬼の気の使い方ってヤツを教えてはいる)


(し、しかしっ!それでもっ!

 余りにもそれは無謀と言うモノですわっ!)


(はっはっはっ・・・無謀と来たか?

 あいつなら何ら問題なく越えられる壁だと思っているがな?

 フッフッフッ、でもまぁ~まさか・・・あの幼かったあの子供が、

 俺の能力を受け継いでいるとは思わなかったけどな~♪

 はっはっはっ!これだから人間は面白い♪)


そう楽し気に口を開いた相手に、

ミスティは再び怒りを滲ませ抗議をし始めた・・・。


(何を呑気に笑っておられるのですかっ!?

 そ、それにそんな事・・・あの天照様が許すはずがありませんわっ!)


(はっはっはっ!天照って・・・おいおいミスティ・・・。

 あんな小者に一体何が出来るってんだよ?

 あの女の思惑は俺も把握しているが、実にあの女らしい下卑た企みた。

 それに今のユウトの実力ではどの道・・・力不足過ぎるだろ?)


(・・・・・)


(いいかミスティ・・・。

 これはあいつにとっても決して無駄にはならない・・・。

 いや、それどころか・・・

 これしきの事すら乗り越えられなければ、

 あいつはこれから先・・・戦い抜く事など出来ないぞ?

 その場合は・・・あいつはもう用済みと言う事になる)


「・・・絶っ!!!」


思わず大声で怒鳴ったミスティは、その念話の相手の名・・・。

「絶」とそう呼んだのだった・・・。


(まぁ~今戦っている連中なら、何の問題もないはずだ。

 それでも保障はしないがな?

 ユウトがどれだけ覚醒するか・・・それ次第って事だ)


まるでどうでもいいかのようにそう答えるゼツに、

ミスティはただ唇を噛み締めるしかなかったのだった。


そしてそれから暫くゼツとの念話が続き会話を終えると、

ミスティはベッドに崩れ落ちるかのように、

仰向けになって「バフッ」と倒れ込んだ。


「・・・私は神として失格ね・・・。

 そんな自分に反吐が出るわ・・・」


自室で1人ベッドに寝転がるミスティは、

天井の一点だけを見つめ悠斗の笑顔を思い出していた。


(悠斗様・・・どうかご無事で・・・)


ミスティはそう心の中で呟きながら、

悠斗の無事を祈る事しか出来なかった。




そして場所は変わり、ここはヘイルズ領の北に在る街「フレック」


丁度ミスティとゼツが念話をしている頃だった・・・。



セルンは裏路地に在る隠れ家の2階で、

窓を開けコーヒーを飲みながらのんびりと読書をしていた・・・。


すると「ドタドタドタっ!」と、

慌ただしく何者かが階段を駆け上がって来る音が聞こえ、

セルンは本を閉じドアの方へとその視線を移した。


「バンっ!」と勢いよくドアが開かれると、

ラハトが興奮気味に声を挙げた。


「セルンっ!朗報だぜっ!」


「ちょっとラハトっ!ノックぐらいしなさいよっ! 

 もう少しで殺すところだったじゃないっ!」


そう怒鳴るセルンの手には、

猛毒がたっぷりと仕込まれたナイフが握られており、

その殺気だったセルンにラハトは「ゴクリ」と喉を鳴らしたのだった。


「・・・こ、殺すって・・・えっ!?

 お、お前・・・ぶ、物騒過ぎるだろうがよっ!」


「フンっ!あんたが悪いんでしょ~?

 まぁ~その結果、あんたが死んだら、

 適当にその辺に埋めて置いてあげるから、心配しなくていいわ♪」


「・・・て、適当って・・・も、もう少し・・・」


「・・・何か文句でもあるの?」


「・・・あ、ありません」


「なら、宜しい♪」


「・・・・・」


そう言って満足気に笑顔を見せると、

セルンは再び本を開き読み始めていった・・・。


(にしてもよ~・・・セルンのヤツ・・・

 表情が柔らかくなったよな~?

 これもアレか~?

 ユウトってヤツのおかげって事なのか~?

 でもまぁ~相変わらず物騒な女ってところは変わらねぇけどな。

 何の為に俺がこんなに急いで・・・)



セルンを見ながらそう思っていたラハトだったが、

突然「あぁぁぁっ!そうだったぁぁぁっ!」と声を張り上げると、

再び慌ただしくセルンに話し始めるのだが、

「うるさいわねっ!」の一言で、テンション低めで話し始めた。


「・・・え、えっと~だな?

 もう4年ほど前になるが、冒険者ギルドに依頼した事を覚えてるか?」


「4年前って~・・・あぁ~・・・

 確か~内密に依頼した、例の・・・アレの事?」


「ああ・・・それだ」


「ふ~ん・・・でもまぁ~それがどうしたのよ?

 それにまだ数年待たないといけないはずでしょ?」


適当に会話をしながら本から目線を離さないセルンに、

ラハトは眉を吊り上げていた。


「いや~それがよ?

 今日フレックの冒険者ギルドから連絡があってな?」


「冒険者ギルドから連絡って・・・一体どうしたのよ?」


「セルン・・・驚かずに聞いてくれ」


「・・・はい?」


セルンは神妙な声を出すラハトに本から目を離し、

小さく首を傾げたのだった・・・。


「あのな?例のきのこ・・・。

 エナジーマッシュルームが納品されたってよっ!」


「へぇ~・・・アレ納品されたのね~・・・」


そう無難に言っては見せたもののセルンは、

そのきのこの名が何度も頭の中でリフレインしていた・・・。



そしてしばしの沈黙の後・・・。


「えっ!?えぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?

 う、噓でしょっ!?エナマシュが納品されたのっ!?」


「お、お前・・・名称を勝手に略すんじゃねーよっ!

 って言うか、どこから納品されたと思う~?」


ニヤニヤといやらしく笑みを浮かべたラハトに、

セルンは訝しい表情を見せながら首を傾げて見せた。


「フッフッフッ~♪

 な、何とっ!アシュリナの港街からなんだとよ~♪」


「えっ!?ア、アシュリナの・・・み、港・・・街?」


「あぁ~そうだよ・・・良かったな、セルン。

 これでお前の弟の病も治るだろうぜ♪」


優しく微笑みながらそう話すラハトに、

セルンの目から一筋の涙がこぼれ落ちたのだった・・・。


「・・・あ、ありが・・・とう・・・」


涙を流しながら・・・。

そして言葉に詰まりながらそう言ったセルンに、

ラハトはおどけて見せたのだった・・・。


「べ、別に俺が納品した訳じゃないからな~♪

 まぁ~礼は納品したヤツにでも言うこったな?♪」


涙を拭きながらセルンは微笑むラハトにこう尋ねた。


「そ、そう・・・ね。

 そ、それで・・・納品してくれた人って、誰なの?」


「えっと~・・・そう言えばそこまでは聞いてなかったな~?

 でもハンナが帰ってきたら聞いてみるといいんじゃねーか?」


「・・・そうね」


少し残念そうにセルンがそう言った時だった・・・。

下の階から再び「ドタドタ」と足音が聞こえてくると、

ハンナが嬉しそうに息を弾ませながら部屋へと飛び込んで来た。


「セルン~♪見てよこのきのこ~♪

 なんとっ!エナマシュが何とっ!10個もっ!

 ほ、ほらっ!見てよっ♪


そう言って小さなマジックバックから取り出して見せると、

セルンはその光景に唖然とした。


そしてその横で見ていたラハトがこう呟いていた。


「・・・エナマシュって言葉・・・流行りなの?

 知らないのって・・・俺だけ?って・・・聞けよっ!」


そう呟いていたのだが、2人にスルーされ、

寂しい思いをしていたのはここだけの話だった・・・。


唖然とする光景にセルンは気持ちを落ち着かせると、

ハンナに尋ねた。


「ハンナ・・・誰が納品してくれたか教えてくれない?」


「・・・どうしてだい?」


やや笑みを浮かべそう尋ね直して来るハンナに、

セルンは不思議そうな顔を見せた。


「どうしてって・・・エナマシュの時期でもないのに、

 一体どうやって手に・・・?

 い、いえ・・・ただお礼を言いたいだけよ・・・。

 しかも・・・こんなに・・・」


エナマシュを見つめながらそう言ったセルンに、

ハンナはこう言った。


「依頼したのは5個なんだけどね・・・。

 でも10個も納品して残り5個分の報酬はいらないんだとさ♪

 そんな奇特なヤツって、本当いるってんだから驚きだわね♪

 しかも納品してくれた相手ってのがね?」


やけに話を引っ張るハンナだったが、

何故かその表情は穏やかだったのだ。


「いや~・・・これも運命ってヤツなのかしらね~?

 エナマシュを納品してくれた人ってね~?

 フフフ♪アナザーの・・・ユウト・カミノって人よ♪」


「えっ!?ア、アナザーの・・・ユ、ユウト・・・っ!?

 の、納品してくれた人ってユウトなのっ!?

 ・・・う、嘘・・・」


悠斗の事は既にラハトから話を聞いており、

セルンの想い人である事も承知していた。


その事を知っていたハンナは、優しく微笑んでいたのだった・・・。

そしてその事実にセルンは再び涙を流すと、

いつの間にか部屋に来ていた仲間達に、

見守られていた事に気付くのだった。


呼吸を落ち着かせ涙を拭ったセルンがふと顔を上げると、

慌てて階段を駆け上がり屋上へと向かった。


そして悠斗からもらった2つの魔石を取り出すと、

その1つを使い悠斗に連絡を取るべく魔力を流した。


(・・・繋がらない?)


だが悠斗の声がその魔石から聞こえる事もなく、

もう1つある通信用魔石から再び連絡を試みるも・・・。


(お、おかしい・・・おかしいわ・・・

 ユウトが・・・出ない。

 ユウトが出ないなんて・・・一体何が?)


セルンが真剣な表情になると再び連絡を取ろうとし、

何度も何度も通信を試みるのだが通じず、

セルンは魔石を握り締めながら、悠斗の安否を心配した。


(・・・ユウト、一体どうしたのよ?

 ・・・貴方が言った通り、

 私は魔石通信を補助する魔石もあちこちに置いて来たのに・・・

 それなのにどうして?

 ユウト・・・一体今どこに?)


セルンがそう思った時だった・・・。


突然「うっ」と顔を顰めたセルンは胸の痛みに膝を着いた。


(な、何っ!?い、一体・・・どうしてっ!?

 どうして突然胸に痛みがっ!?)


そう思いながら、今にも潰れそうなその胸の痛みに耐えていると、

頭の中に薄っすらと悠斗の声が聞えて来た。


(何があっても・・・あいつだけは・・・許さない)


「うっ」


突然悠斗の声が聞えて来たかと思ったら、

再び呻き声を挙げその胸の痛みに悶絶した。


(カロン・・・お前の敵は俺が取るっ!)


再び悠斗の声がセルンの脳裏に聞こえると、

その胸の痛みは和らぎ次第に何も感じなくなった・・・。


(い、今のは・・・ユウトの・・・声?

 い、一体ユウトに何がっ!?

 それにカロンってっ!?)


痛みによって膝を着いていたセルンの身体に、

何とも言えないような悪寒が駆け抜けて行った。


するとその時、セルンの胸の辺りが熱くなりはじめると、

心の中に直接語り掛けて来る声が聞えはじめた。


(・・・悠斗を助けて・・・いそ・・・い・・・で・・・)


「た、助け・・・!?って・・・何っ!?今の声っ!?

 お、女・・・の声?貴女誰なのよっ!答えなさいっ!

 それにい、急いでって、一体どこへ行けと言うのよっ!?」


(・・・早く・・・場所は・・・リン・・・トの・・・

 嘆き・・・の・・・)


「ちょ、ちょっとっ!?ねぇっ!ねぇってばっ!?」


セルンは四つん這いになった状態で強く拳を握り締めると、

その双眼に力が籠り立ち上がった。


「・・・行かなくちゃ。

 最後まで声は聞こえなかったけど、

 恐らくその場所は・・・北の大地に在るリント村・・・。

 そしてその近くに在る・・・「嘆きの・・・森」ね」


セルンはそう決意すると、仲間達にこの事を伝え旅支度を始めた。


「お、おいっ!セルンっ!?

 き、急にどうしたんだよっ!?」


「行かなくちゃっ!」


「・・・はい?」


突然旅支度を始めたセルンのその険しい表情に、

仲間達は何かしらを察すると、ハンナ達はその旅支度を手伝った。


そしてラハトと共にセルンはフレックの街を、

慌ただしく旅立って行ったのだった・・・。


フレックの街を北へ向かって駆け出す中、

その表情に余裕のないセルンに声を掛けていった。


「って言うか、一体どこへ行くつもりなんだよっ!?」


「どこへって・・・リント村の近くに在る・・・嘆きの森よっ!」


「嘆きの森ね~・・・って、な、嘆きの森だとぉぉぉぉっ!?

 も、もうじき真冬になるってのにかっ!?嘘だろっ!?」


「嫌なら帰りなさいよっ!

 誰も着いて来てなんて頼んでないわよっ!」


「そ、そんな冷たい事言うなよっ!

 ってか、冬支度なんて持ってきてねーぞっ!?」


「そんなモノ途中で買えばいいでしょっ!?

 兎に角今は急ぐんだからっ!

 文句言ってないでさっさと着いて来なさいよっ!」


「なぁ~セルンっ!北の大地に向かうなら尚更・・・

 どうして馬車に乗らなかったんだよっ!」


「・・・ば、馬車っ!?

 え、えっと~・・・う、うるさいわねっ!

 さっさと行くわよっ!」


「・・・あぁ~こりゃ、そこまで考えていなかったって事だな~

 へいへい・・・頑張って着いて行きますよ~っとくらぁっ!」


こうしてラハトと共に旅立ったセルンは、

謎の声に導かれ、北の大地に在るリント村へと向かい、

嘆きの森へと急ぐのだった・・・。



ってな事で、今回のお話はいかがだったでしょうか?


苦労人ミスティとセルンのお話でしたが、

楽しく読んでもらえたのなら嬉しく思います^^



ってなことで、緋色火花でした。

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― 新着の感想 ―
[一言] ミスティ様には色々苦悩があるんですね。。。 セルン共々久々に様子が見れて嬉しかったです♥︎ 「絶」とミスティとの関係とか、 謎が深まってゾクゾクしながら読んでますよ〜♥︎
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