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異世界転移 ~魔を狩る者~  作者: 緋色火花
第二章 港町・アシュリナ編
250/404

195話 選択

お疲れ様です。


相変わらず寒い日が続きますが、

皆さんはいかがお過ごしでしょうか?


緋色は相変わらず社畜ですw

左足の肉離れなど、色々とありますが、

とりあえず・・・元気・・・?ですw


と、言う事で・・・。

195話まで来ましたね~・・・。

閑話などを入れたら余裕で200話越えていますが、

これからも頑張りたいと思いますので、

応援宜しくお願いします^^


今回・・・とても長いですが、楽しんで読んでもらえると、

大変嬉しく思います^^



それでは、195話をお楽しみ下さい。

間一髪危機を脱した悠斗は童鬼と再び対峙していた・・・。


「まさか飛べるとは思わなかったよ。

 本当にはお前には驚かせられるな・・・」


「ははは・・・」


苦笑いを浮かべていた悠斗だったが、それには理由があった。


(童鬼のヤツ・・・

 さっきよりも力が馴染んできている。

 三之門の力に慣れたって事かっ!?)


童鬼は三之門の力を制御し、完全に己の力に変えていたのだった。

そんな童鬼のセンスに驚き、悠斗は何も言えずにただ・・・

笑うしかなかったのだ。


「ユウト・・・続きといこうか?」


「・・・ああ」


対峙呼吸を整えると童鬼は赤銅色の気を纏い始め、

不敵な笑みを浮かべていた。


「・・・行くぞ」


「・・・いつでもいいよ」


「「はぁぁぁぁぁぁっ!」」


同時に声を挙げながら2人は駆け出すと、

童鬼は槍で突きを放ち、悠斗はその攻撃を炎鬼で払っていく。


「ガキンっ!ガキンっ!」と金属音が衝突し、

そのあまりの攻防に火花が飛び散っていた。


「やるなっ!ユウトっ!」


「・・・そっちこそっ!」


何度目かの攻防が繰り返した時だった・・・。

攻撃を放ちながらも童鬼は自信有り気に口を開いた。


「これに耐えられるかな?」


「っ!?」


突然そう告げた童鬼に悠斗は一瞬顔を顰めると、

童鬼の言葉の意味をすぐに理解する事になってしまった・・・。


童鬼は「はぁぁぁっ!」と気合を込め、

その槍の穂先を地面に突き刺すと、

ふと・・・顔を上げ悠斗を見て笑みを浮かべて見せた。


「見せてやろう・・・我が力の一端をっ!

 捕縛槍術・重波捕縛陣っ!」


(ヤ、ヤバいっ!?)


童鬼の行動に咄嗟に飛び退いた悠斗だったが、

突き刺した槍の穂先から地面を伝って、

鬼の気が悠斗目掛け伸びてきた。


「ぐぁぁぁっ!」


伸びてきた鬼の気が悠斗を捕らえると、

一瞬にして身体の自由を奪われ、地面に這いつくばってしまった。


「ぐぉぉぉ・・・お、重くてっ・・・う、うご・・・けない」


「ふぅ~・・・何とか成功したな」


額から落ちる汗を拭いながら童鬼は笑みを浮かべた。

そしてゆっくりと悠斗に近づきながら説明し始めた。


「お前も赤銅色を使う者だから説明してやろう。

 俺の三之門の特性は・・・重力だ」


「と、とく・・・せい・・・?

 じゅ、重・・・力っ!?」


「ふむ、やはりその様子では知らないようだな?

 いずれお前は俺達の仲間になる存在だから教えておいてやる。

 いいか・・・ユウト。

 俺達鬼には特性と言うモノがある。

 1つの門を開く度に俺達鬼は強化されて行く。

 一之門と二之門まではただ・・・強化されるだけなのだが、

 三之門以降の門からは、己の秘めた特性が覚醒するんだ」


「・・・ま、まじか」


(ゼ、ゼツのおっさん・・・そ、そんな説明なんて聞いてないぞっ!)


童鬼の説明に悠斗は目を丸くし驚きを見せていた。

そんな悠斗に笑みをこぼしながらも童鬼は説明を続けていった。


「さて、先程の話に戻るが・・・。

 俺は三之門まで開ける事が出来る。

 そしてその門を開いた俺は、己の中に眠る特性を覚醒させ、

 ユウト・・・お前は今、俺の特性である「重力」によって、

 地面に這いつくばっているんだ」


「・・・さ、三之門を・・・か、解放した時・・・。

 俺の身体が突然重くなったのは・・・そのせい・・・だったのかっ!?」


「あぁ、そうだ・・・。

 ユウト・・・確かにお前は赤銅色の気が使えるようだが、

 我々鬼はお前達人間とは根本的に違うのだ。

 遺伝子レベルで違うのだから、人間が俺達鬼に勝てるはずがないのだ」


「・・・い、言ってくれる・・・じゃんか」


「だがお前には見込みがある・・・。

 だから俺が鍛えてやるよ」


苦悶の表情を浮かべ地面に這いつくばる悠斗に、

童鬼はしゃがみ込むと・・・再び問いただしてきた。


「さて、ユウト・・・。先程の返答やいかに?」


「へ、返答って・・・な、なん・・・だっけ?」


「俺達の仲間になる・・・って話の事だ」


「あは・・・ははは・・・」


地面に這いつくばり返答に顔を顰める悠斗に、

更に危険が迫る事になるのだった・・・。



そしてカロンと壇鬼達は・・・。


壇鬼の鬼魂砲が直撃し、大量の土煙りが辺り一面を覆っていた。


「クックックッ・・・この距離での直撃だ・・・

 ヤツの身体なんぞコナゴナに・・・ワッハッハッハッ!」


勝利を確信した壇鬼が声を挙げそう笑うと、

余韻に浸りながらその場を後にしようとした時だった・・・。


「・・・ま、まだ・・・くたばっちゃ・・・い、いねーぜ・・・」


「なっ!?」


「お、驚く・・・こ・・・と・・・ねーだろ?

 お、俺は・・・まだ・・・生きてる・・・ぜ・・・」


大量に舞った土煙りが次第に晴れて行くと、

そこには顔の前で腕をクロスさせボロボロになったカロンの姿があった。

だが、顔の前でクロスさせたカロンの左腕はちぎれてしまっていた。


「あ、あれを・・・お、俺様の鬼魂砲喰らって・・・

 ま、まだ生きている・・・だとっ!?」


「ゲホッ!ゲホッ!み、見ての通り・・・まだ生きてるぜ」


「バカなっ!?ど、どうして・・・」


血の気が引いて行く壇鬼に対しカロンは、

両腕をだらりと垂らしながらも力強く一歩前へと踏み出した。


「ヒィっ!」


左腕が千切れてもなお、力強く踏み出すカロン・・・。

壇鬼はその気迫に「ヒィッ!」と声を挙げると、

一歩、また一歩と無意識に後ずさって行ったのだ。


「な、何故だっ!?ど、どうして動けるんだっ!?」


声を張り上げながらも後ずさる壇鬼に、

カロンはこう答えた。


「・・・こんもの、気迫でどうにでもなるんだよっ!

 俺はまだ・・・ヤレる・・・。

 まだ俺は負けちゃ・・・負けちゃいねーんだよぉぉぉっ!

 はぁぁぁぁぁぁっ!」


「バカなぁぁぁっ!?」


カロンの気迫が壇鬼を下がらせ、

そして力尽きる事のないその眼光が恐怖を植え付けたのだった。


(ヤ、ヤツは何故・・・う、動けるんだっ!?

 ヤ、ヤツの目は・・・ど、どうしてし、死んでないっ!?

 何故・・・だ・・・何故だ、何故だっ!何故だぁぁぁっ!!)



何度も何度も壇鬼は心の中でそう言葉を吐いていたが、

歩みを止めないカロンの事がどうしても理解出来なかったのだ。


すると「ハッ!」とした壇鬼がふと視線を落とすと・・・。


「お、俺様の手、手が・・・ふ、震えている・・・だとっ!?

 う、嘘だろっ!?こ、この俺様が・・・こ、こんなヤツに・・・

 きょ、恐怖を感じている・・・だとっ!?

 この俺がっ!?」


小刻みに震える両手を凝視し、

無意識に後ろへと下がる己の両足に驚愕するしかなかった。


そんな壇鬼を睨みつけながらもカロンはその歩みを止めなかった。


(しょ、正直・・・自分でも何故動けるのか・・・

 全く理解が出来ねー・・・。

 只一つ言えるとすれば・・・だ・・・。

 あいつを・・・ユウトを・・・

 たった1人で戦わせるのは御免だって事だ・・・。

 元・神として・・・いや、最初に出来た・・・友として・・・

 俺はあいつを・・・1人にさせる訳には出来ねーって事だっ!)


カロンがそう心の中で吠えた時だった・・・。

そう吠えたカロンもまた、己の言葉にハッ!とすると、

咳き込みながらも笑みがこぼれたのだった・・・。


「はっはっはっ!ゲホッ!ゲホッ!

 ま、まじか~・・・

 ユウトが・・・友・・・はっはっはっ・・・

 はっはっはっはっ!ゴホッ!ゴホッ!」


咳き込みながらも突然声を挙げ笑い始めたカロンに、

壇鬼はその巨体を「ビクっ!」と震わせ顔を引きつらせていた。


そんなオドオドとした壇鬼にカロンは鋭い視線を向けると、

再び神力を纏いながら口を開いた。


「てめー・・・壇鬼・・・

 ここからが・・・俺の本気だっ!」


「ヒィッ!」


恐怖が染み渡った壇鬼に、先程までの威勢は既になかったのだった。



そしてここはとある空間・・・。


1人の男がカロンと壇鬼の映像を見ながら怒声を挙げていた。


「何故だっ!何故なのだっ!?

 どうしてカロンが生きているのだっ!?

 わ、私の植え付けた因子は間違いなくヤツを弱らせたはずっ!

 そ、それなのにっ!それなのにだっ!

 どうしてヤツは・・・カロンは生きているのだぁっ!」


何もないその空間で悲痛な叫び声が、

虚しく響き渡っていくのだった・・・。



恐怖に捕らわれ後ずさる壇鬼を見据えながらも、

カロンの歩みは止まる事がなかった。


(こんな状態でも動けるのは有難てーが・・・

 だからと言って実際問題・・・どうするよ?

 左腕は失ってるしよ~・・・)


カロンがそう考えた時だった・・・。


「ドカっ!ドカっ!」っと、突然壇鬼が張った結界の外から音が聞えた。


「な、何だっ!?」


「っ!?」


その音にカロンと壇鬼が反応し足を止めると・・・。


「ペキっ!ペキペキペキっ!」っと、

その赤い結界に亀裂が生じたのだった。


「な、何だよっ!?一体何が起こってんだよっ!」


カロンがそう声を挙げたその時、

「バキンっ!」と鈍い音をたてると続けざまに「バリンっ!」と、

鬼の結界が砕け外の光が結界の中へと入って来た。


そして結果の中へと入り姿を現せたのは・・・。


「か、火山竜のおっさんっ!?テ、テレスっ!?

 お、お前ら・・・どうしてここにっ!?」


赤い鬼の結界内に姿を現せたのは、

テレス山脈に戻ったと思われた、火山竜とテレスだった。


驚いたの束の間・・・。

カロンは火山竜の腕を見て声を挙げた。


「おっさんっ!?あ、あんた・・・そ、その腕っ!?」


「はっはっはっ・・・年甲斐もなく・・・頑張り過ぎたようだ・・・」


額に冷や汗を浮かべ苦笑して見せた火山竜のその腕は、

まるでハンマーに潰されたかのようになっていた・・・。


「お、おっさんっ!まさか・・・っ!?」


「あぁ・・・。コレ・・・か?

 まぁ~鬼の結界をどうにかしようと思って色々と試したが、

 結局のところ・・・力ずくしかなかったからな・・・

 俺のブレスでさえ、この結界の前では通用せぬとは、

 いやはや、この俺も流石に年を感じたぞ」


そう答える火山竜の両拳からは「シュゥゥゥ」と煙を立ち昇らせ、

鬼の結界の強固さを感じ取るには充分だった。


すると今まで声を挙げる事が出来なかった壇鬼が、

話に割って入って来た・・・。


「お、お前らぁぁぁっ!一体何しに来やがったぁぁぁっ!?」


そう怒鳴る壇鬼に視線を向けた火山竜は鋭い視線を向けると、

竜眼を発現し鑑定を始めた。


「ほぅ~・・・力自慢のパワータイプか・・・」


そう言うと火山竜はテレスへと視線を向けて小さく頷いて見せると、

テレスは両手を胸の前で合わせカロンと火山竜の状態を把握し、

目を開き神力を高めた。


「・・・女神の息吹」


テレスの透き通るようなその声に、

カロンと火山竜は森の中に優しく吹き抜けるような風を感じると、

負傷した箇所が徐々に癒され始めた。


「こ、これは・・・?」


「これは山の女神になったテレスの癒しだ」


「・・・あ、ありがてーぜっ!」


そしてその癒しの効果が消えると、

「ガクッ」とテレスが膝から崩れ落ち肩で「はぁ、はぁ」と息を切らせていた。


「お、おいっ!だ、大丈夫かよっ!?」


心配するカロンはその場から駆け寄ろうとするも、

テレスが手で制して見せた。


「ま、まだ女神に成りたて・・・ですから・・・はぁ、はぁ・・・

 い、今の私には・・・これが、精一杯なのです・・・」


「・・・すまねぇ」


「あ、貴方のその千切れた・・・その腕を・・・

 元通りにする・・・ことが出来ず・・・も、申し訳・・・」


そう話をしていると突然テレスの意識が「フッ」と消えた。


「「テレスっ!?」」


崩れ落ちるテレスを抱き止めた火山竜は、

燃え滾るような視線を壇鬼へと向けながら声を挙げた。


「カロンっ!集中しろっ!」


「っ!?」


「まずはこやつに集中するのだっ!」


「・・・わ、わかったっ!」


火山竜はカロンの返答を聞くとゆっくりと立ち上がり、

テレスを少し離れた場所へと移動させた。


そして再び視線を向けると・・・。


「こやつはこの世に害悪をもたらす者・・・。

 2人で共に・・・殺らねばならぬっ!」


「で、でもよっ!俺はこいつとっ!」


カロンは壇鬼との1対1の戦いを望んでいたのだが、

火山竜はその燃え滾る視線を今度はカロンへと向け一喝した。


「黙れぇぇっ!元・神ーっ!!」


「なっ!?お、おっさん・・・し、知ってた・・・のかっ❕?」


「当たり前だっ!伊達に俺も長く生きておらぬわっ!」


「・・・うぐっ」


その火山竜の声に呼応するように、

凄まじいまでの気迫がカロンを押し黙らせたのだった。


「いいか・・・カロン・・・。

 こやつらのような禍々しい異形なる者達を好き勝手に・・・

 いや、この世界の者達を守る為にも、

 こやつはここで、この場で・・・始末せねばならぬのだっ!

 それに今のお前程度では・・・勝てんっ!

 俺と組んでも・・・それでもまだ・・・怪しいのだ・・・」


「・・・ま、待てよ・・・おっさんっ!?

 じゃ、じゃ~何かっ!?こ、こいつにはまだ何かあるって事かっ!?」


俯いたままの壇鬼を他所にカロンと火山竜が話していると、

「クックックッ・・・」と、突然肩を揺らし始め盛大に笑い始めた。


「ワァ~ハッハッハッハッァァァァーっ!

 おい、そこのじじぃ・・・。

 お前・・・あの山に居た・・・竜か?」


壇鬼の言葉に火山竜を眉をピクリと吊り上げると、

殺気の籠った視線を向けながらも態勢を低くとった。


「・・・その物言い・・・。

 お前もあの場所に居た・・・と言う事か?」


「ああ・・・そり通りだ」


「・・・なるほどな。

 カロン、よいな?ここからが本番だっ!」


「ま、待てっ!おっさんっ!!」


意を決した火山竜は竜族特有の力である・・・

緑色に染まった「竜気(りゅうき)」を纏うと、一気に駆け出した。


(・・・速いっ!?だがな・・・)


駆け出した火山竜は一気に壇鬼に接近すると、

竜気を纏ったその緑色に光る拳を突き出した。


「はぁぁっ!」


「こんなものぉぉぉっ!」


気合を入れそう声を挙げた壇鬼は鬼の気を全身に纏わせると、

難なく火山竜の拳を弾き上げたのだった・・・。


「バカ・・・な・・・」


「クックックッ・・・これがこの世界の竜族の気か・・・?

 くだらん・・・実にくだらんなぁぁぁっ!」


怒声を挙げた壇鬼がそう声に出しながら、

鬼の気込めた突きを火山竜の腹にめり込ませた。


「ぐはっ!お、俺の・・・攻撃が、こうも簡単に・・・。

 い、一体どうなっているのだ・・・」


腹を押さえ蹲る火山竜を見下ろしながら、

ニヤリと笑みを浮かべた。


「・・・知らなかったようだから教えてやろう」


壇鬼は勝ち誇り、苦悶の表情を浮かべる火山竜に説明し始めた。


「俺達はこれまで様々な世界を渡り歩き、

 その世界の者達を蹂躙してきた・・・。

 勿論・・・女子供も容赦はしねぇ・・・歯向かう者は皆殺しだ」


「なん・・・だとっ!?な、なんと、卑劣なっ!」


「クックックッ・・・卑劣だと?

 それは俺達にとっちゃ、誉め言葉だぜ?」


「お、おのれ・・・」


「様々な世界を渡り歩く中で俺達は竜族にも出会った。

 まぁ~最初の頃は苦労もしたけどよ~・・・

 竜族と戦う中、俺達はある事を発見したんだ・・・」


様々な世界を渡り歩いて来たと話始めた壇鬼だったが、

違う世界の竜族の話になり、火山竜は目を細めた。


「それは・・・な?

 どうやら竜族の気は俺達鬼族の気と相性が悪いらしいぜ?」


「・・・何だとっ!?そんな事があるはずもないだろっ!

 俺達は生命体の中でも頂点に居る存在なのだぞっ!」


「クックックッ・・・まだ認められないようだな?

 お前の先程の攻撃で気づかなかったのか?

 お前の竜の気が俺様に触れた瞬間・・・霧散したと言う事に・・・」


「・・・バカな」


壇鬼の説明に火山竜は肩の力が抜けると、

笑みを浮かべた壇鬼が拳を振り上げた。


「・・・竜族よ。絶望を抱いて・・・死ねっ!

 はぁぁっ!」


(ユウトよ・・・すまぬ。俺はここまでのようだ)


力なく心の中で謝罪を述べた火山竜が絶望へと染まろうとした時だった。


「うおりゃぁぁぁぁぁっ!」


突然聞こえた叫び声と同時にカロンが壇鬼目掛けて飛び蹴りを放った。


「おっとっ!」


「ちっ!当たらなかったか・・・」


壇鬼に余裕で躱されたカロンは火山竜の前に立ちはだかると、

ヨロヨロと立ち上がる火山竜に苛立ちながら小声で話した。


「おっさん・・・勝手に突っ走るんじゃねーよ」


小声ながらも威圧を込めたその声に、

火山竜はただ「すまぬ」としか言えなかった。


そしてそんな2人に壇鬼は薄ら笑いを浮かべると、

首を「ゴキ、ゴキ」と鳴らしながら口を開いた。


「元・神・・・。

 お前、片腕1本で今更俺とやり合う気かよ?」


「・・・片腕くらいで丁度いいハンデだぜ」


「クックックッ・・・。

 それにそんな竜族如きと組んだところで、

 この状況は覆らんぞ」


「それはやって見ねーとわかんねーだろうがっ!」


そう壇鬼に言いながらカロンは火山竜に念話を送っていた。


(おい、おっさんっ!)


(な、何だっ!?)


(竜族のおっさんなら知っているとは思うけどよ・・・

 俺の神力とおっさんの竜気・・・合わせてぶっ放すぞっ!)


突然そうきかされた火山竜は驚きに一瞬呼吸が止まり、

カロンの背中を凝視したのだった。


(なっ!た、確かそれって文献にあったっ!?)


(あぁ・・・神竜気ってヤツだ)


(ぶ、文献に記載されてはいたがっ!?

 い、今までそれをやった者などおらぬのだぞっ!?)


(あぁ、確かに誰もいねー・・・。

 だがよ?もうこれしか手がねーんだよ)


(だからと言って、成功するかどうかもっ!)


(ごちゃごちゃうっせーよっ!)


(っ!?)


(俺の神力もあと・・・残り少ねー・・・

 だからもうこれしかねーんだよっ!

 禁忌の法だろうが、禁断の技だろうが関係ねーっ!

 もう後がねーんだよっ!)


切羽詰まったこの状況にカロンは苦肉の策を打ち出した。

そんなカロンに火山竜は一度目を閉じると静かな口調で返答した。


(・・・わかった。それしかないと・・・言うなら、

 それに全てを賭けよう。

 ただし、2度目はない・・・。

 何故なら俺はこの結界を破る為に、

 力のほとんどを消耗してしまったからだ)


火山竜からそう告げられるとカロンは壇鬼を見据えたまま、

ニヤリと笑みを浮かべていた。


そして2人の作戦など露知らず、

壇鬼は余裕の笑みを浮かべカロン達を見下ろしていた。


(よっしゃっ!そうとなれば、おっさんっ!俺の後方に常に居てくれっ!)


(いいだろう・・・最後の攻撃か・・・。

 フッフッフッ・・・1つ・・・派手に行こうかっ!)


「元・神・・・そして竜族・・・。

 死ぬ準備は出来たか?」


「うるせーよ・・・今に吠え面かかせてやるからよっ!」


「・・・クックックッ、期待してるぜ・・・雑魚共」


見下す壇鬼はそう言うと構えを取り、

己が優位だとそう位置づけたのだった・・・。


そしてカロンと火山竜は互いに笑みを浮かべると、

「コクリ」と小さく頷きあった。


(おっさん・・・すまねーな?

 あと・・・遅れんじゃねーぞっ!)


(フッ・・・貴様に言われたくもない)


(上等だぜっ!行くぜっ!ヴォルカニック・ドラゴンっ!)


(おうっ!参ろうぞっ!)


「行くぜっ!」


カロンの掛け声とともに、

2人は壇鬼を中心に円を描きながら回り始めた。


「うぉぉぉぉっ!」


「はぁぁぁぁっ!」


「・・・何か小細工でも思い付いたようだが、

 俺様にはそんなモノ通用せんぞっ!」


「けっ!やってみなくちゃわかんねーだろうがっ!」


壇鬼の周りをぐるぐると周りつつ、

カロンと火山竜はタイミングを計っていた。


そして・・・。


「おっさんっ!ここだっ!」


「おうっ!」



「ザザァァー」っと足を滑らせながら、

2人は壇鬼の左斜め後方からの攻撃に踏み切った。


「「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」」


カロンが上下に出された手の間で大きな神力の塊が圧縮されていき、

火山竜はその神力の塊目掛け己の残された竜気をぶっぱなした。


「喰らいやがれっ!神っ!」


「はぁぁぁぁっ!竜っ!」


「「気砲っ!!」


「・・・ちっ!」


「キュインっ!」と音を立てて撃ち放たれた火山竜の竜気が、

カロンが圧縮した神力に直撃すると・・・。



「ぐぉぉぉぉぉぉっ!せ、制御がっ!?

 くそったれぇぇぇぇぇっ!」


「ドォゴォォーンっ!」と言う強烈な音を立てながら、

2人が放った銀と緑が混ざり合った「神竜気砲」が発射され、

それに壇鬼は咆哮した。


「こんなものぉぉぉぉぉっ!」


そう声を挙げると壇鬼は身を翻しながら距離を取り、

急速に鬼の気を高め始めていった。


「雑魚如きに俺様のとっておきを使うはめになるとはなぁぁぁっ!

 一之門・・・二門・・・ぐぉぉぉぉ・・・か、解っ!」


「ボンっ!」と言う破裂音と共に、壇鬼の身体は更に筋肉量が増すと、

両腕を突き出し鬼の気を凝縮し始めた。



だが、2人の放った衝撃波の威力が凄まじく、

撃ち放ったカロンと火山竜はその威力で吹き飛ばされてしまった。


「「ぐぁぁぁぁっ!」」


凄まじい威力に吹き飛ばされながらも、

その放たれた「神竜気砲」は壇鬼へとまっすぐ向かい、

壇鬼はそれに遅れる事・・・2秒・・・。


凝縮された鬼の気が怒号と共に撃ち放たれた。


「鬼魂砲・・・滅破(めっぱ)っ!

 死にやがれぇぇぇぇぇっ!雑魚どもぉぉぉぉぉっ!」


最初に放たれた「鬼魂砲」の威力よりも数段上を行く鬼砲が放たれた。


両者が放ったモノが中央付近でぶつかると、

まるで地鳴りでもなっているような・・・

「ドッ、ドッ、ドッドッドッ!」と言う音が周辺を包み込んだ。


威力が五分・・・そう思われた瞬間だった・・・。

突然壇鬼が声が高らかに叫び声を挙げた。


「飲み込めぇぇぇぇっ!滅破ぁぁぁぁっ!」


その言葉に呼応した「滅破」は文字通り、

カロンと火山竜が放った「神竜気砲」を飲み込むと、

吹き飛ばされる前まで居た場所で爆発したのだった・・・。


そして巻き上げられた土煙りが晴れ始めると、

その場所には大きなクレーターが出来ていた。


「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ!・・・な、なんて威力だ・・・」


土煙りで咳き込むカロンはふと違和感に気付いた。


(・・・お、おっさんの気配が・・・か、感じられねー・・・)


カロンは「ハッ!」とすると、慌てて火山竜に声を挙げた。


「おっさんっ!ど、どこだっ!おっさんっ!」


声を張り上げるカロンだったが、火山竜からの返事はなく、

ただ壇鬼のバカみたいに大きな笑い声だけが木霊しているだけだった。


すると突然ピタリと壇鬼の笑い声が止まると、

冷たく容赦ない声が聞え、カロンの顔色が真っ青に染まった・・・。


「あの竜族なら・・・そこだ」


土煙りが晴れた中、壇鬼がそう言って指を差すと、

その光景にカロンの心臓は「トクン」と波打った。


「う、嘘・・・だよな~?お、おっさん・・・

 な、なぁ~・・・返事しろよ・・・おっさん・・・

 じょ、冗談・・・キ、キツイぜ・・・なぁ~ってよ~・・・」


壇鬼が指を差し示した方向には、

弾き飛ばされた火山竜が鬼の結界の一部を突き抜け、

大木の枝に突き刺さり、力なく「ブラン」と頭を垂れている姿があった。


「おっ・・・おっさぁぁぁぁんっ!!

 ぐはっ!」


慌てて駆け出そうとしたカロンだったが、

既に瀕死状態にあるカロンは立つ事も出来ず、

再び倒れ込んでしまった。


カロンの悲痛な叫び声を聞いた壇鬼は、

肩で大きく「ゼェ、ゼェ」と息を切らせながらも、

(おぞ)ましいほどまでに歪んだ笑みを浮かべていたのだった。


そして息を切らせながらもカロンに向けて口を開き、

その言葉はある選択を強いられる事になるのだった・・・。


「ゼェ、ゼェ・・・ざ、雑魚の癖に・・ね、粘り・・・やがって・・・。

 おい、元・神・・・お前に選ばせてやる・・・」


そう言うと壇鬼はテレスに向けて片腕をかざしながら、

もう片手は・・・

童鬼の重力の力で地面に這いつくばる悠斗へと向けていた。


そして再び悍ましく歪んだ笑みを浮かべながらカロンにこう告げた。


「さぁ、選択しろ・・・。

 どっちを救うかお前に選ばせてやる・・・クックックッ」


気絶するテレスと地面に這いつくばっている悠斗を見て、

カロンはその怒りと悔しさに奥歯を「ギリっ!」と噛み締めるのだった。




と、言う事で・・・皆さんいかがだったでしょうか?


とても長くなってしまい、大変申し訳御座いません><

楽しんで読んでもらえたなら幸かと思いますが、

・・・どう・・・でした?


また感想などを聞かせていただけると有難いです^^


ってなことで、緋色火花でした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 鬼の新たな能力とか竜に対して優位であるとか、 けっこうなビックリ展開でしたね。 そんな中でカロンがいい感じに描かれてますね♥︎ 脳筋バカなのに、時々すごくカッコ良く描かれてる。 愛すべき…
感想一覧
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