194話 真の力 後編
お疲れ様ですっ!
仕事終わらなくてこんな時間になってしまいました><
さて今回は後編です。
まぁ~決着が着く訳ではないのですが、
楽しんで読んでもらえたら嬉しいです^^
それでは、194話をお楽しみ下さい。
亜神と化したカロンは、神器・ヴェスヴィオを纏い、
壇鬼を圧倒して見せたのだった。
そんなカロンに壇鬼は焦り始め歪な表情を向けたのだった・・・。
(くっそぉぉぉっ!こ、こんなゴミ如きに・・・
こ、この俺が・・・この俺様がぁぁぁっ!)
頭に血が上った壇鬼は怒りの形相で睨むも、
カロンは冷静に状況を分析していた。
(今はまだ神力の残量に問題はねー・・・
魔石の残りは後・・・10個ほどか・・・。
フル充電の1/3にも満たねーな。
長期戦だけは避けねーと、かなりヤベェーぜ・・・)
自然と拳に力が入ると、まだ頭に血が上っている壇鬼へと駆け出した。
「うおぉぉぉぉぉっ!」
「っ!?」
(ヤツはまだ状況を把握出来てねーっ!
仕掛けるなら・・・今だっ!)
そう考えたカロンは畳みかけるべく突進して行き、
一瞬遅れた壇鬼は構えると攻撃に備えた。
「うおりゃぁぁぁぁっ!」
「させるかぁぁぁぁっ!」
雄叫びを挙げながら2人は、序盤で見せた殴り合いへと突入した。
しかし、この時だった・・・。
とある空間で何者かの声が歪んだ笑みを浮かべていた。
「フフフ・・・そう思い通りにはなりませんよ?
そろそろ絶望し・・・永久に・・・消えなさい・・・カロン」
壇鬼の攻撃をカロンが捌くが、先程見せたほどのキレはなく、
小さいながらもダメージを追って行くのだった。
「ガクンっ!」
(なっ!?きゅ、急に・・・っ!?
か、身体の力が・・・な、何故だっ!?)
次第に冷静さを欠き始めたカロンの動きに、
逆に壇鬼は冷静さを取り戻して行った。
(ちっ!こ、拳に力が入らねーっ!?
どうなってんだよっ!?)
(こ、こいつ・・・焦りで身体のキレがっ!?
いや・・・どうもそれだけじゃないみたいだな~?
クックックッ・・・面白くなってきやがったぜ)
だがお互いに決定打とならず、ただ・・・殴り合いが続いて行くのだが、
お互いの立場が入れ変わりつつあった。
(だ、だめだっ!?思うようにっ!?
か、身体が重くて動かねぇーっ!?
こ、こうなったら・・・やるしかねーなぁぁぁっ!)
カロンはあからさまにキレの悪くなる攻撃に苛立つと、
身を翻し壇鬼との距離をとった。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「んっ!?」
神力の質を高めカロンは一気に勝負を仕掛ける為、
必殺技を撃つべく神力をチャージし始めた。
そして再びここはとある空間・・・。
未だに薄気味悪い笑みを浮かべる男が、カロンと壇鬼の映像を見ていた。
「フフフ・・・まだまだこんなモノではありませんよ?
私が植え付けた因子によって、
君の身体は更に弱体化して行くのですから・・・
さぁ~・・・絶望しなさいっ!
そしてその悲痛に苦しむ表情を・・・この・・・私にっ!」
だが、壇鬼は冷静にカロンの様子を観察すると、
ニヤリと笑みを浮かべ・・・それに備え始めた。
(なっ!?し、神力が高まらないっ!?
い、一体全体どうなってやがんだっ!?)
(あいつ・・・クックックッ・・・あぁ~、なるほど・・・
そうか・・・そう言う事だったのか?
クックックッ・・・お笑い種だぜ・・・
あまり感謝はしたくねーが、
あの裏切者が・・・何か細工を・・・クックックッ!
そう言う事なら・・・俺様も本気を出すか・・・)
カロンが神力を高める事にもたついていた時、
壇鬼は圧倒的な力を見せるべく、
とっておきの力を使用する為、鬼魂門を開いた。
「ぐぉぉぉぉっ!開けっ!我が鬼魂門っ!
一之門・・・うぉぉぉぉぉっ!解っ!」
「なっ、何だとっ!?あの野郎にもまだ・・・奥の手がっ!?
あ、あれってユウトから聞いた鬼の門ってヤツかっ!?」
壇鬼の言葉にカロンは驚愕するも、必死に神力を高めていくのだった。
だが・・・。
(ま、まだ出力が・・・た、足りねー・・・
つーか・・・力が出せねーっ!?
ま、まるで何かに邪魔されてるようなっ!?
くそったれぇぇぇぇっ!
ど、どうしてこんなに力が出ねーんだぁぁぁっ!?
俺の身体は一体どうなってやがんだよぉぉぉっ!?)
力を上手く引き出せないカロンは顔を顰め始め、
目の前で鬼の気を高める壇鬼に焦りが加速して行ったのだ。
「だっ、だめだっ!もう待てねーっ!」
やるしか・・・やるしかねぇぇぇぇっ!」
そう叫びながらカロンは必殺技を放つ事にしたのだが、
高まらない神力に不安を感じながらも、
撃ち放つしかなかったのだった・・・。
(フルチャージじゃねーがっ!)
「うぉぉぉぉぉっ!ヴェスヴィオ・イラプションっ!
いっっっけぇぇぇぇぇっ!」
カロンの右腕から放たれた円柱状の火砕流は雷を伴い、
鬼魂門を開き鬼の気を高める壇鬼へと放たれた。
だが、カロンの放たれた必殺技はどうにも様子がおかしかった。
「ゴォォォォっ!パリッ、パリパリっ!」
(な、何だっ!?イラプションの威力がっ!?
い、いや・・・それだけじゃねー・・・
い、雷の威力までもが・・・よ、弱くなっ・・・て・・・)
螺旋状にうねりながらも速度は出ず、その威力も弱体化していた。
笑みを浮かべた壇鬼は・・・
「ぐぉぉぉっ!二之門・・・解っ!」と咆哮し、
「バシュッ!」と音を立てると同時に鬼の気が収束した。
この時カロンは双眼を見開き驚愕していた。
何故なら壇鬼の姿が太った体型からゴリラマッチョになっていたからだった。
そしてその身体に纏わり着く赤銅色が色濃くなっていたのだった。
「何故ヤツの身体がっ!?そんなバカなっ!?
こ、これが・・・鬼かっ!?」
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ・・・ふぅ~~・・・
ワッハッハッハッァァァァッ!
これが俺様の正真正銘っ!真の力だぁぁぁぁぁっ!」
遅く弱体化したカロンの火砕流がゆっくりと迫る頃、
余裕を持って態勢を整えると、壇鬼は両手を前に突き出した。
「見せてやるぜ・・・。
雑魚神がどんなに足掻いても辿り着けない力をっ!
くたばれっ!・・・元、神っ!鬼魂砲ーっ!」
突き出された両の掌から圧縮された赤銅色の鬼の気の塊が、
「ドォーンっ!」と爆発音と共に発射された。
「ヤ、ヤベェェェェっ!」
壇鬼から放たれた赤銅色の鬼魂砲が、
カロンの必殺技であるヴェスヴィオ・イラプションを、
いとも簡単に飲み込み、
茫然とするカロンへと真っ直ぐ向かって行った。
「か、身体がっ!?くっそぉぉぉっ!避けられねぇぇぇっ!」
「ドカァァァァァンっ!」
そして一方、悠斗と童鬼は・・・。
「シュゥゥゥゥ」っと音を立て、
悠斗の身体から鬼の気である赤銅色の気が溢れ始めていた・・・。
「そ、その・・・せ、赤銅色の気はっ!?」
悠斗の異変に驚愕する童鬼は、溢れ出る赤銅色の濃さに固まっていた。
「あぁ~・・・これ?
別に気にしなくていいよ・・・」
抑揚のない声で静かにそう言うと、
悠斗は再び「炎鬼」を納刀し構えをとった・・・。
童鬼は顔を引きつらせ、
悠斗から溢れる赤銅色を未だに見つめていた。
(ユ、ユウトは人間ではないのかっ!?
魔を狩る一族の末裔・・・つ、つまりそれは・・・
あ、あの御方の力をう、受け継いでいる・・・とっ!?
い、いやでも、御館様・・・アスラ様の気は感じられないっ!?
い、一体どうなってっ!?)
あまりの衝撃に動揺を隠せない童鬼は、
身体中の毛穴から吹き出すほどの冷たい汗を流していた。
(あ、ありえないっ!ありえるはずがないっ!
い、いくら末裔だと言っても・・・
どれだけの年数が経っていると思ってるっ!?
そ、そんな隔世遺伝など・・・き、聞いた事が・・・な、ない。
そ、それにこ、この赤銅色の濃さは何だっ!?
こ、この力はま、まるで・・・)
汗が止まらない童鬼の思考回路はショート寸前になっていた。
すると悠斗が無表情なまま口を開いた。
「童鬼・・・もう終わりなのか?」
「・・・えっ?」
「もう終わりかと聞いているんだけど?
もし、そうなら・・・俺はカロンの元に行くけど・・・
どうするんだ?」
「あ・・・あ・・・」
言葉にならない童鬼に悠斗は溜息を吐くと構えを解き、
背を見せ歩き始めた。
悠斗の歩く後姿を茫然と見ながらも、
童鬼は思考し続けた。
(ま、待て・・・落ち着け・・・
ユウトは・・・な、何らかの奇跡によって、
あの御方の因子を受け継いだと考える他・・・ない。
な、ならばだ・・・。
も、もしユウトを仲間に出来たのなら・・・)
少しずつ遠ざかる悠斗を見ていた童鬼はそう結論づけると・・・。
「ま、待てっ!ユウトっ!」
童鬼の声に悠斗は静かに立ち止まり、
振り返る事なく答えた。
「・・・何か用?」
「うっ・・・」
立ち止まった悠斗に童鬼は呻きながらもヨロヨロと立ち上がり、
申し訳なさそうに謝罪し始めた。
「す、すまない・・・ユウト。
不甲斐ない姿を見せてしまった・・・心から謝罪する」
「・・・別にいいけど?
・・・それで・・・俺に何か用?」
先程と同じく悠斗は振り返る事もなく、ただそう答えた。
「お前がもし・・・そうなら・・・。
俺はこのままユウト・・・お前を逃す事は出来ない」
「・・・・・?」
「そのお前の力・・・いや、益々お前を仲間に引き入れたくなった」
「・・・・・」
悠斗は童鬼の問いに沈黙していると、更に言葉を続けた。
「俺と共に来てくれっ!
ユウト、お前が仲間に加われば・・・
もしかすると・・・御館様を止められるかもしれないっ!」
「っ!?」
童鬼の思わぬ発言に悠斗は驚きの余り振り返った。
「止める・・・っ!?どう言う事なんだっ!?」
「・・・今は説明する事は出来ん。
だが、俺を・・・この俺を信じてくれ・・・
決して悪いようには・・・しない。
誓ってもいいっ!頼むっ!ユウトっ!
お前の力を・・・俺達に貸してくれっ!」
頭を下げ頼むと言った童鬼の言葉に、
悠斗はただただ・・・困惑していた。
すると童鬼は話をこう続け、
現在の悠斗に現実的な話をしていった。
「だが、今のお前では御館様に勝てない・・・
いや、それどころか・・・瞬殺されるだろう。
だから俺と一緒に修練し、更に力を付けてもらいたい」
「・・・断ったら?」
「・・・力づくでも仲間に引き入れる」
「・・・へぇ~」
「力づく・・・」その言葉に悠斗はニヤリと笑みを浮かべて見せた。
それに釣られて童鬼もまた笑みを浮かべると、
ゆっくりと歩みながら再び話かけていった。
「これから俺は・・・もう出し惜しみはしない・・・。
全力を持って、お前を倒すっ!
だがユウト・・・お前を殺すつもりはない。
それは俺が望むモノではないからだ・・・」
そう話した童鬼に悠斗もゆっくりと歩みながら返答した。
「・・・余裕そうじゃん」
「あぁ・・・。ユウト、今のお前では・・・
俺の全力には・・・絶対に勝てん」
「・・・へぇ~・・・言ってくれるね?
そう言うからには、それだけの理由がある・・・って事?」
「当然だ・・・俺は見ての通り5本角だ・・・。
だがな?俺の真の力は・・・3本角に匹敵する」
「・・・へぇ~、それが理由か・・・なるほど」
「あぁ、それがお前が勝てない・・・理由だ」
そう話し終える頃、悠斗と童鬼はピタリと足を止め構えた。
ヒュ~っと風が2人の間を吹き抜けて行くと、
互いにニヤリと笑みを浮かべ・・・駆け出した。
「繰術&身体強化Lv・3っ!」
「行くぞぉぉぉっ!ユウトっ!」
駆け出した2人が再び激突した。
悠斗は「炎鬼」を抜き童鬼は葛籠と呼ばれる収納庫、
所謂マジックボックスから槍を取り出した。
「ガキンっ!ガキンっ!ガキンっ!」と、
両者が激しく武器で打ち合っていった。
そして何度目か打ち合うと突進し「ギチギチ」と音を立てて、
鍔迫り合いが始まり、力試しが始まった。
「ギチっ!ギチギチっ!」
激しく鍔迫り合う2人・・・。
顔面がぶつかりそうな距離で2人はニヤリと口角を上げつつ、
食い縛る歯がここでも「ギチギチ」と音を立てていた。
「・・・や、やるじゃん」
「ユ、ユウトもなっ!」
一瞬武器同士が擦れ合い「ギィィィィっ!」と鈍い音を立てると、
悠斗と童鬼は飛び退き一度距離を取った。
「ふう~」っと互いに呼吸を整えると、
悠斗は炎鬼を正眼構え、童鬼は槍をクルクルと大きく回転させ始めた。
そして童鬼が何度か槍を回転させると、
「ビタっ!」と槍を脇に抱え構えを取ったまま静止した。
(・・・んっ!?何だ・・・?)
その動きに眉間を皺を寄せた悠斗は、
童鬼から伝わる凄まじい鬼の気に敏感に反応した。
(・・・ど、どんどん鬼の気が・・・つ、強くなってっ!?
こ、この感じって、まさか・・・鬼魂門かっ!?)
童鬼の膨らむ気を敏感に捉え、
そう感じた時だった・・・。
「ユウトっ!見せてやるっ!俺の真の・・・力をっ!
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!
鬼魂一之門・・・解っ!」
童鬼がそう吠えると、「ドンっ!」と言う音と共に、
2人が居る一帯の重力が変わった・・・。
「なっ!?か、身体が・・・お、おも・・・い・・・
こ、これでい、一之門っ!?」
その重力に悠斗は思わず片膝を着くと、
苦々しい表情を浮かべながら凄まじい鬼の気を放つ童鬼を見た。
「うっ・・・うぅぅっ・・・うがぁぁぁぁぁっ!
に、二之門・・・解っ!」
苦痛にも似た童鬼の叫びが辺り一帯に響き渡ると、
見る見るうちに、童鬼の身体が煙を放ちながら、
更に真っ赤に染まりながら、身体を大きくしていった。
「う、うぐっ・・・な、なんて・・・ち、力だっ!?
そ、それに、一之門の二門じゃなく・・・
い、いきなり二之門なのかっ!?
鬼なら出来て・・・当たり前って事かっ!」
炎鬼を地面に突き刺し、苦悶に顔を歪ませながらも、
悠斗は必死に堪えていた。
そして更に童鬼は変貌していく・・・。
「ま、まだだ・・・ユ、ユウトっ!
も、もう少し・・・そのまま見てろっ!うがぁぁぁぁぁっ!
さ、三・・・之・・・も、門・・・か、解っ!」
(う、嘘だろっ!?またいきなり・・・三之門っ!?
こ、これは・・・ヤ、ヤバ・・・い・・・)
絶叫しながら変貌していく童鬼は、一際大きく絶叫すると・・・。
「・・・ボンっ!」と言う破裂音と共に、
辺り一面に赤銅色の煙が弾け飛んだ。
「ぐはっ!・・・ゲホッ、ゲホッ!
い、一体これは何だよっ!?」
苦悶に表情を歪めながらも、
悠斗は赤銅色の煙の中に居る、童鬼の気を探った。
(ど、どこだっ!?あ、あいつは一体・・・どこにっ!?)
童鬼の気を探り少しすると、悠斗の顔色が変わった。
(う、動いて・・・ないっ!?
そ、それに・・・こ、この気のでかさが・・・
さ、三之門・・・かっ!?)
すると突然赤銅色の煙の中から「はぁぁぁぁっ!」と言う声が響くと、
突風が巻き起こり、赤銅色の煙が一瞬にして消滅したのだった・・・。
悠斗は凄まじい気を放ちこちらを見据える男に視線を向けると、
変貌した時に見せた大きな体格とは違い、
最初に出会った時と然程変わらない体格に戻っていた。
だが、よりその体格は精錬されており、
薄赤い肌と、より引き締まった筋肉で覆われていた。
「・・・ま、まじか」
こぼれるようにそう言葉を出した悠斗に、
童鬼は薄く笑みを浮かべてこう言った・・・。
「この姿になるのは・・・数百年以来・・・だな。
そしてユウト・・・。
今から俺が一方的にお前を蹂躙する。
お前はただ・・・俺に殴られるだけの砂袋だ」
そう言って悠斗を見る目には力が漲っていた。
そんな童鬼に悠斗は地面に突き刺さる炎鬼に寄り掛かりながら、
ヨロヨロと立ち上がった。
「へ、へぇ~・・・言ってくれるじゃんか」
「強がるな・・・真の力を出した俺の前に居るだけで、
お前は立つのがやっとなはずだ」
「・・・じ、自己評価が・・・か、過剰じゃ・・・ね?」
「何だと?」
「一方的なんて・・・ごめんだね・・・」
「フッフッフッ・・・これだけの力の差を見せつけられてもまだ・・・
そんな口が叩けるとはな?
ユウト・・・お前は面白い男だよ。
だからだ・・・だからこそお前を引き入れる為に俺はっ!
俺はお前を・・・倒すっ!」
圧倒的な力の差を見せつける童鬼に、
悠斗は無意識に笑みを浮かべていた。
「・・・抗ってやるっ!」
「・・・フッフッフッ・・・いい目だ。
ユウト・・・お前の潜在能力に、期待してるぞ」
「・・・期待に応えてやるよ」
「・・・行くぞ、ユウト」
「どこからでも、かかって・・・」
悠斗がそう答えかけた時だった・・・。
童鬼が突然悠斗に向けて手をかざすと、
「ドンっ!」と空気の振動が伝わり、悠斗はその衝撃波で弾き飛ばされた。
「ぐはっ!」
「ヒューン」と悠斗が弾き飛ばされながら、
辛うじて片目を開けると、既に童鬼の残影が、
吹き飛ばされた悠斗を追い越して行くのが見えたのだった。
(ま、まじかっ!?もう追い越してっ!?)
そう思っていると再び童鬼の声が背後から悠斗の耳に入って来た。
「・・・どうしたんだユウト?
これくらいで驚いてちゃ・・・この先は抗えないぜ?」
「こ、このっ!」
悠斗は童鬼の声に反応すると、手に持っていた炎鬼を、
身体を捻りながら振りかざした。
「フォォンっ!」
「ちっ!」
「フッフッフッ・・・甘い甘い・・・どこを狙っているんだ?」
空振りした悠斗を嘲笑うように、
再び悠斗の背後から声が聞えて来た。
「まだまだぁぁぁぁっ!」
「っ!?」
そう悠斗が声を挙げると、悠斗はそのまま身体を九の字に曲げ、
「止まれぇぇぇぇっ!」と声を張り上げた。
「なっ、何ぃぃぃっ!?」
童鬼が驚くのも無理はなかった・・・。
何故なら悠斗は衝撃波の威力を殺し、
そのまま空中で停止し浮かんでいたからだった・・・。
「ふぅ~・・・な、何とか止まったな・・・。
空気の摩擦で手がヒリヒリする・・・あの衝撃波すげーな?
・・・やれやれ」
地面に着地した悠斗はそう言いながら汗を袖で拭っていた。
そしてその様子を口を開けたまま固まっていた童鬼には、
何が起こったかを理解出来ないでいた・・・。
「ユ、ユウト・・・お、お前・・・今、何をした?」
「ん?見ての通り、停止しただけだけど?」
「お、お前・・・ま、まさか・・・と、飛べたりするのかっ!?」
「・・・ふふ~ん♪実は俺・・・空を飛べるんだ♪
すごいでしょ?♪」
「あ、ああ・・・す、素直に凄いと思うぞ」
「・・・だろ?♪」
目の前で満面の笑みを浮かべながらそう言った悠斗に、
童鬼は唖然とするしかなかったのだった。
だが、悠斗の心中は穏やかではなかった・・・。
(こんなに強いって・・・ズルく・・・ねっ!?)
暗雲立ち込める悠斗は次の手を模索し始めるのだった・・・。
さて、今回の話はいかがだったでしょうか?
って、言うか・・・キーボードの調子が・・・orz
いよいよ2章も大詰めとなっており、
緋色も頑張りたいと思いますっ!
これからも応援のほど、宜しくお願いします^^
ってなことで、緋色火花でした。




