193話 真の力 中編
お疲れ様です。
まぁ~冬なので当たり前なのですが、
寒い日が続きますね~・・・。
コロナもまた凄まじい勢いで増えていますし・・・。
皆さんも気をつけて下さいね。
って言う事で、今回は中編となります。
相変わらず戦闘メインにはなっていますが、
楽しんで頂けたら幸いです^^
それでは、193話をお楽しみ下さい。
カロンは神力を解放し、壇鬼は鬼の力を解放した。
両者睨み合うも薄く笑みを浮かべており、
凄まじい緊迫感がその空間を満たしていた。
「神力って・・・お前・・・神か?」
「・・・フッ、そんな時もあったっけな~?
だがそれは昔の話だ」
「って事はつまり・・・お前がギョルスに乗っ取られていた・・・?」
「・・・ギョ、ギョル・・・?
って・・・ああ、アレかっ!?そうだよっ!」
そう言葉を交わした時、壇鬼は突然大声で笑い始めた。
「わーっはっはっはっはっ!
お前があの・・・?あのどうしようもねー神の1人かっ!?」
「うっせーよっ!今は関係ねーだろうがよっ!」
「クックックッ・・・まぁ、今はどうでもいいか・・・。
そんな糞弱い神なんぞ・・・俺達の仲間にはいらねーからな~」
「ちっ」
カロンがそう舌打ちをした瞬間、
「ドンっ!」と何かが爆発したような音を響かせながら、
カロンと壇鬼が激突した。
カロンは身体から銀色の神力を放出させ、
壇鬼はその身体からは鬼特有の赤銅色の気が噴き上がっていた。
「うおぉぉぉぉぉぉっ!」
「どりゃぁぁぁぁぁっ!」
2人は正真正銘・・・。
脳筋の正しいぶつかり方を披露していた。
そんな手本になるような衝突をすると、
力と力の勝負が始まったのだった・・・。
「クックックッ・・・こんな所で神をぶっ殺せるとはな~♪」
「けっ!やれるもんならやってみやがれぇぇぇっ!」
そう叫びながら2人は連打を繰り出し、
防御などそっちのけで戦っていた。
そんな最中カロンはある違和感に気付き始めた。
(な、何だっ!?ヤ、ヤツの傷がどんどん塞がってっ!?
一体どうなってんだよっ!?)
「うおぉぉぉぉっ!」
「ハッハッハァァァァっ!
オラオラーっ!元、神ーっ!そんなモノかよぉぉぉっ!」
殴り合っていた2人だったが、
次第にカロンの攻撃の手数が目に見えて減って来た。
(こ、このままじゃ・・・)
一度後方へと飛び退いたカロンはパーフェク・ヒールを使用し、
ダメージの完全回復をした。
「ぜぇ、ぜぇ」と息を切らしたカロンの呼吸が瞬時に整うと、
壇鬼の口元が不敵に吊り上がった。
「・・・説明してやろう。
俺達鬼は、戦いの最中でも自然治癒が働き、
この程度の負傷なら瞬時に回復するんだよ・・・」
「・・・ちっ!鬱陶しいスキルだな~・・・頭に来るぜっ!」
「それに引き換えお前は神力や魔力でしか回復しね~・・・
クックックッ・・・哀れで笑っちまうぜ」
呆れ顔を見せた壇鬼に心底腹を立てたが・・・
今のカロンは怒りに任せる事などはしなかった。
それは悠斗達との触れ合いにより、
日々カロンが成長している証でもあったのだ。
(ちっ!頭に来る野郎だが・・・確かに言われてみりゃ~そうだ。
だが・・・このままじゃ埒があかね~からな~・・・
さて・・・どうするかだな?)
顔を顰めながらもカロンは何かないかと辺りに目を向けた。
するとあるモノがその視界に入るとある事を思い出し考え始めた。
(・・・そうだったっ!
まずはアレを何とかしねーといけないんだったよな?
だがアレは神力じゃどうしようも・・・)
視線をアレから離し壇鬼へと向けると、
「・・・あっ」と小さく呟いた。
「何だ?この俺とどうやって戦うか思い付きでもしたのか?」
壇鬼の上から目線の言葉にカロンは「まぁ~な」とだけ答えると、
「ふぅ~」と息を吐き、呼吸を整え再び構えを取った。
「・・・何を考えているかはわからんが、
お前に残された時間はあまり残ってねーぞ?」
「・・・けっ!ご忠告そりゃどーもっ!」
そう返答しながらカロンは駆け出すと、
悠斗のようにサイドステップを混ぜながら壇鬼へと接近して行った、
「そんなド素人なフェイントにこの俺が引っかかる訳ねーだろっ!
これでも喰らいなっ!」
壇鬼の懐に入り込む3歩手前に来たカロンに、
その身長差を利用して回し蹴りを放ったのだが・・・。
「フッ!そいつを待っていたぜっ!」
そう言うとカロンは迫る壇鬼の右足に飛び乗ると、
その威力を利用し壇鬼の後方へと飛び上がった。
「・・・抗いやがってっ!さっさと死にやがれっ!」
壇鬼の頭上を越えて行ったカロンの着地の瞬間を狙いすましたように、
壇鬼はバカでかい赤銅色の鬼弾を放った。
「くたばれぇぇぇっ!元・・・神ぃぃぃぃっ!」
放たれた鬼弾が着地寸前のカロンに襲い掛かった瞬間、
薄く笑みを浮かべたカロンは空中で一瞬止まると、
そのまま再び真上へと飛び上がった。
「甘いぜっ!ブタ鬼ーっ!とうっ!」
「な、何っ!?」
一瞬早くカロンが飛び上がると、壇鬼の鬼弾が通過し、
その後方で「ドカーン」と土煙りを巻き上げた。
「フッ・・・こいつの鬼の気なら破壊出来んだろ?」
着地したカロンがそう言って笑みを浮かべると、
その後方で何かが破壊され「ガラガラ」っと音を立てて崩れた。
「・・・お前っ!最初からそれが目的でっ!?」
「あぁ・・・当たり前だろうが?」
「・・・鬱陶しいヤツだ」
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた壇鬼は、
カロンの後方で崩れた何か・・・。
つまり黒い石碑を見て己の失態に悔やんでいた。
「アレを破壊されたとあっちゃ~・・・
鬼の結界とやらも無くなっちまったって訳だよな~?」
「・・・胸糞悪いヤツだぜっ!
この俺様がこんな失態をしでかしてしまうとはなっ!」
悔しがる壇鬼を見ながらもカロンは、
再び始まる戦いに備え、準備を整えていった。
(今の間に神力を補充しておかないとな・・・。
長期戦になる事ははなっから確定している事だしな)
カロンは戦闘態勢を崩さないまま、
左手を見られないように背後へと動かすと、
マジックスボックスから魔石を取り出した。
取り出した魔石は、
テレス山脈で経験した神力不足による戦闘不可を回避する為に、
日頃から常に神力を魔石に蓄積していたモノだった。
そしてカロンが神力を補充させ終わったそんな時だった・・・。
「・・・今更後悔しても仕方がないか」
そう呟くと壇鬼は再びカロンに視線を向けニヤリと笑みを浮かべた。
「っ!?」
「・・・神力の補充は終わったのか?」
「・・・なっ、何故それをっ!?」
カロンは壇鬼の隙をつき魔石より神力を補充したつもりでいたのだが、
実際はバレていたようだった。
そんなカロンに壇鬼は更に言葉を続けた。
「クックックッ・・・。
俺の隙をついたつもりで居たようだが、
神力なんてそんな分かりやすい力に気付かないはずはないだろう?
こんな低俗な星の神だけな事はあるぜ・・・。
こうも馬鹿揃いとは・・・クックックッ・・・助かるぜ」
「・・・てめー」
壇鬼の物言いに挑発されたカロンは怒りが頂点に達し、
ワナワナとその身体を震わせた。
そして怒りで震わせた拳をさらに握り締めると声を張り上げた。
「て、低俗・・・だとっ!?
てめーっ!いい度胸だっ!覚悟しやがれっ!」
そう声を高々と張り上げた瞬間・・・。
カロンはステータスボードを出現させると、
そのボードに映し出された点滅する「亜神」のボタンを押した。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!
てめーだけはっ!ぜぇっっっったいにっ!ぶっ倒すっ!!
来いっ!神器っ!ヴェスヴィオォォォォォっ!」
凄まじい銀色の神気を身体中から噴き上げ亜神化すると、
カロンはその両手を天へと突き上げた。
そしてその声に呼応するかのように一筋の光がカロンを照らすと、
天より降り注いだ光の粒子がカロンの身体へと纏い、
やがてその光の粒子は具現化し、神器・ヴェスヴィオが装着された。
「・・・てめーは必ず俺が・・・このカロンがぶっ飛ばすっ!」
神器を纏ったカロンを見た壇鬼は「ヒュゥ~」と口笛を漏らすと、
威圧する眼光が更に勢いを増していた。
「ほう・・・それが神器か・・・。
いいね~・・・お前を殺してそれは・・・俺が頂こう」
「・・・やれるもんならっ!」
そう声を挙げつつカロンは態勢を低くすると、
更に声を挙げながら突進して行った。
「やってみやがれぇぇぇぇっ!」
「格の違いってヤツをっ!見せてやるっ!」
再び激突したカロンと壇鬼・・・。
激しくぶつかり合いながらも、
カロンは壇鬼の拳を躱し、そして防御して見せた。
「っ!?こ、こいつ・・・さっきとはまるで別人の動きにっ!?」
壇鬼が驚くのも無理はない。
カロンは先程とは違い、完璧な防御を見せていたからだった。
「お、俺の攻撃が何故っ!?」
壇鬼の拳を躱し、払い、防御して行くうちに、
その表情から見て取れるほどの焦りを見せ始めたのだった。
(ヴェスヴィオが具現化出来る時間はそう長くねー・・・。
神力を補充出来れば問題ねーが、そんな隙を見せるほど、
コイツは弱くねーっ!
さて・・・どうするっ!?)
そして一方、悠斗と童鬼は・・・。
赤銅色の海に身を沈めた童鬼を悠斗は黙って見つめていた。
するとその赤銅色の海が突然「ブクブク」と泡立ち始めたのだった。
「・・・これはっ!?」
驚いた悠斗は再び後方へと飛び退き様子を伺いつつ半身になり、
この戦いで初めて腰に差している刀・・・。
「炎鬼」に手を添えたのだった。
すると「ブクブク」と泡立った赤銅色の海の中から、
威圧の籠った声が悠斗の耳に届いてきた。
「・・・待たせてすまない。
鬼の姿に戻るには、どうしても時間がかかってしまう」
そう言いながら赤銅色の海からゆっくりとその姿を現すと、
童鬼は身構える悠斗に視線を向け、更に話を続けた。
「これで分かっただろ?
人間であるユウトと、鬼であるこの俺の違いが?」
悠斗は「炎鬼」に手を添えたままの姿勢で、
童鬼の質問に答えた。
「違いは嫌でもわかるけど・・・だから、何?」
「・・・何だと?これでもまだ俺達の元へと来ないというのかっ!?」
童鬼の身体は本来の姿に戻る事によって、
到底人が敵う存在ではなくなっていた。
肌は赤茶け口からは牙が露出し、
鬼のトレードマークでもあるその角も、
更に大きく悠斗の目を引いていた。
だが悠斗は童鬼のそんな姿に驚く様子もなく、
ただ・・・冷めた笑みを浮かべていた。
「ユウト・・・この姿を見て、臆する事はないのか?」
悠斗の様子に童鬼は目を細めそう尋ねると、
悠斗は更に口角を上げながらこう答えたのだった・・・。
「悪いけど童鬼・・・。
その程度じゃ、俺は驚かないよ」
「・・・ほう~」
「こう見えても俺は・・・
古来より魔を狩る一族の末裔なんだ・・・」
「なっ、何だとっ!?ユウト・・・お前っ!
に、日本のっ!?ま、魔狩りの一族なのかっ!?
そ、そう言えば大和魂がどうのこうのってっ!?」
「ああ・・・だからその程度じゃ~・・・」
そう言いながら悠斗は静かに腰に携えた「炎鬼」を抜くと、
神楽でも舞うかのように「くるり」とその場で一回転して構えて見せ、
射貫くような眼光を向けながらこう言葉を続けた。
「俺達魔狩りの一族の心は・・・折れはしない」
「ギラっ!」と鈍く光る「炎鬼」と、
同じように鈍い光を放つ悠斗の眼光に、
流石に鬼である童鬼も一歩・・・後ずさった。
そんな悠斗の迫力に童鬼の額からは一筋の汗が頬を伝って行った。
「そ、その昔・・・。
我らが鬼の腕を斬り落とすだけでなく、
その肉を喰らい力を得た・・・。
あ、あの・・・い、一族の末裔が・・・な、何故ここにっ!?」
驚きを隠せない童鬼に悠斗は更に威圧を込めながら、
静かに口を開いた。
「ある神に頼まれて・・・お前達魔を・・・
いや、鬼を・・・狩りに来た」
「なっ、何だ・・・とっ!?」
顔を引きつらせ動きが止まった童鬼に、
悠斗は駆け出しその懐へと潜り込むと、
その胴を薙ぎに「炎鬼」で斬りつけた。
「キィィンっ!」
「っ!?」
悠斗はその手応えに違和感を感じると、
すぐさま童鬼の横をすり抜け背後へと移動した。
「流石は・・・鬼ってところか」
「炎鬼」の刃を見た悠斗がそう声を漏らすと、
ゆっくりと振り向いた童鬼は笑みを浮かべていた。
「お、驚かせてくれる・・・。
だが、流石のお前でも、鬼を斬る事は出来まい」
再び「炎鬼」の刃を見た悠斗は、
軽快に何度か頷いて見せると、再び笑みを浮かべ童鬼を見据えた。
そんな時だった・・・。
突然「バリンっ!」と音が響き、
音が鳴る方へと悠斗と童鬼が視線を向けると・・・。
「・・・壇鬼のヤツっ!石碑を守れなかったのかっ!?」
(石碑・・・?って事は、カロンがやってくれたのか?)
悠斗は視線をカロン達が居る方へと向けると、
「ナイス、カロン」と小さく呟いた。
そし再び悠斗は笑みを浮かべると、
顔をやや下げ童鬼から表情が読み取れないよう俯いた。
そして何の感情も覗かせない、
その無機質な声で呟いた。
「・・・さぁ、いこうか」
静かな口調でそう呟いた悠斗に、
童鬼は何か得体の知れない圧を感じると、
無意識に拳が悠斗の顔面目掛け放たれていた。
「コォォォォォォっ!」と、悠斗の呼吸音が変わりながらも、
童鬼の拳を軽々と避けて見せると・・・。
「なっ!?」
「操術&身体強化Lv・3」
悠斗は気道である操術を使用しながら、
魔法で身体強化をミックスさせたのだった。
「ギュンっ!」と一気に加速しつつ、
「炎鬼」を「カチン」と一度納刀すると身を低くしながら、
童鬼に向かって一気に加速した。
悠斗は「炎鬼」を鞘に納めたまま、
「気刃剣」と声を挙げると、童鬼とすれ違いざまに抜刀した。
「一閃っ!」
「ザシュッ!」
「ヒュンっ!」と言う心地よい風切り音が童鬼に届いた瞬間、
「うっ」と呻き声が口からこぼれ落ちると、
童鬼はそのまま片膝を地面に着いたのだった・・・。
「ま、まさか・・・な?」
その声に振り返った悠斗は「炎鬼」に付着した血を振り落としながら、
冷たい視線を童鬼へと向けた。
「・・・いい加減、本気出せよ」
「っ!?ハッハッハッ・・・き、気付いていたのか?」
「当たり前だろ?
魔狩りの一族を舐めるなよな。
じゃないと、次はその首を・・・落とす」
静かな口調だが、悠斗のその言葉には冷たく重みがあった。
そんな悠斗に童鬼は押さえていた手を傷口から外すと、
その傷はもう、跡形もなく消え去っていたのだった。
(流石は・・・鬼。アレくらいじゃダメージは与えられないか)
立ち上がった童鬼は口を開く事もせず悠斗を見据え、
無言のまま目を閉じると「はぁぁぁっ!」と鬼の気を放出させた。
構える事もせず振り返った姿勢のまま見つめる悠斗は、
次第に童鬼から放出される鬼の気が洗練されて行く様に、
思わず「ゴクリ」と息を飲んだのだった。
(・・・これが・・・本気っ!?
まじか・・・ヤバい・・・な・・・やれやれ)
悠斗は童鬼本来の力を感じ取ると、
顔を顰めながらも「炎鬼」を再び納刀し腰を落した。
「はぁぁぁぁぁぁっ!」
「バシュンっ!」と童鬼の気が消滅すると、
より精悍な顔つきへと変わった童鬼が悠斗を見据えていた。
「感謝するユウトよ・・・。
今の俺に一片のためらいも・・・ない」
「・・・それがあんたの本気って事か?」
「ああ、そうなるな」
「・・・燃えて来た」
「フッ・・・お前は面白いヤツだ。
殺すのは惜しい・・・だからっ!」
童鬼はそう言葉を切ると、悠斗に向けて猛然と突っ込んで行った。
(速いっ!?だけどっ!)
本気になった童鬼の速さに一瞬悠斗は目を細めたが、
己の周辺に剣の結界を張ると、納刀した「炎鬼」に手を添えた。
「ドッ、ドッ、ドッ、ドッ!」っと童鬼は咄嗟に悠斗の剣の結界に警戒し、
剣の結界の周辺を移動しながら様子を伺った。
(これが剣の・・・ユウトの結界かっ!?
こいつは本当に人間なのかっ!?
いくら俺達鬼でもあってもそう迂闊には・・・)
童鬼がそう考え突破口を見つけるべく思案していると、
(ん?アレは・・・?)と何かに気付いた。
それを確認すべく童鬼は更に速度を上げ確認すると、
無意識に笑みがこぼれたのだった。
(ほう・・・強いと言ってもユウトも人間・・・。
結界を張る事によって、苦手となる方位を晒す事になったか・・・)
悠斗の剣の結界の弱点に気付いた童鬼は、
移動しながら呼吸を整えると、一気に仕掛けて行った。
「ユウトっ!もらったぁぁぁぁっ!」
「・・・・・」
「お前の結界の弱点はここだぁぁぁっ!」
童鬼が見つけた悠斗の剣の結界の弱点・・・。
悠斗の結界は見た目真円に張られているモノだと思われたが、
実は、「炎鬼」を持つ左後方面だけが、歪に凹んでいたのだった・・・。
童鬼は悠斗の剣の結界内に侵入し、
その歪に凹んだ結界面に踏み込み拳を振り上げ勝利を確信した時だった・・・。
「・・・甘いな」
「っ!?」
悠斗の呟く声が童鬼の耳に触れたその刹那の瞬間・・・。
「ザシュッ!」
「うっ!」
童鬼がその拳を振り下ろした瞬間、何とも言えない違和感が、
その右腕から伝わって来た。
そして気が付くと童鬼の目の前に居たはずの悠斗の姿はそこにはなかった。
「どっ、どこだっ!?」
辺りを見回し悠斗の姿を確認しようと振り返ろうとした時、
「チンっ!」と金属音が静かに鳴った。
「ボトっ・・・ブシャァァァァァっ!」
「ぐおぉぉぉぉぉぉぉっ!」
童鬼は突然膝から崩れ落ちたその視線の先には、
鮮血を吹き出す童鬼自身の腕があった。
「ユ、ユ、ユウトォォォォォっ!?
い、一体俺に何を・・・何をしたぁぁぁぁっ!」
切断された右腕を押さえながら、童鬼は悠斗へと視線を向けると、
凛と佇む悠斗の背中を見た。
悠斗は童鬼の声に振り向く事もせず、
ただ・・・静かに口を開いた。
「白鷲流・影技抜刀術・空蝉」
悠斗は結界の中に童鬼が侵入したと検知すると、
咄嗟に右腕に「炎鬼」を持ち代えながら、
浸入した方向へと左足を軸にし一足飛びに飛びつつ、
左腕で抜刀したのだった。
「ユ、ユウト・・・お、お前は本当に人間なのかっ!?」
苦痛に顔を歪めながらそう声を挙げた童鬼対して悠斗は・・・。
「・・・さぁ、どうなんだろうね?
でもそれは俺も知りたいところなんだけどね」
そう言いながら振り返った悠斗からは、
「シュゥゥ」っと、赤銅色の・・・鬼の気が溢れ始めていたのだった。
さて、今回の中編はいかがだったでしょうか?
相変わらず戦闘メインではありましたが、
面白いと思っていただけたのなら幸です^^
さて次回は後編となります^^
お楽しみに♪
ってなことで、緋色火花でした。




