189話 刀の制作と動き出す者達・・・。
お疲れ様です。
この2章もいよいよラストスパート。
これからどうなっていくのか、楽しんで頂けると幸いです^^
それでは189話をお楽しみ下さい^^
宿町である「ヤンキー」を後にした悠斗達は、
のどかな雰囲気の中、港町に到着した。
悠斗達は馬車を降りると、
ミレイが幻獣である「セナ」を撫でながら悠斗に声をかけてきた。
「ユウト様・・・。この子・・・セナはどうするのですか?」
「あぁ~、それなら・・・」
そう言って悠斗はセナを撫でながら、
冒険者ギルドの裏手にある厩舎へと連れて行った。
すると再びミレイが小声で周りを気にするように口を開いた。
「こ、こんな所で大丈夫なんですかっ!?」
「あははは・・・ミレイさんは心配性だな~?」
そう言って笑う悠斗の背後からカロンが呆れた声を挙げた。
「お前な~?セナは姿を変えているんだぞ?
バレる訳ねーだろうが・・・」
「で、でもっ!ま、万が一って事もあるでしょっ!?」
「ねーな」
「・・・あ、あんたって、本当にっ!」
カロンとミレイが顔を突き合わせ、
今にも喧嘩をし始めようととした時だった・・・。・
「ようっ!英雄殿っ!戻られたようじゃな?」
声のする方へと顔を上げると、
2階の窓からひょっこりと顔を覗かせていた鍛冶師であるベガの姿があった。
「あっ!ベガーっ!ただいま~」
「無事で何よりじゃの」
「何だよ~・・・ベガのじじぃかよっ!
俺達の邪魔をすんじゃねーよっ!」
「誰がじじぃじゃっ!?この腐れカロンっ!」
「く、くさ・・・れっ!?
て、てっめぇぇぇ・・・いい度胸だっ!
表に出やがれっ!」
先程喧嘩になりそうだったミレイの事をすっかりと忘れ、
今度はベガともめ始めたのだっが深く溜息を吐いた悠斗が2人を制した。
「カロン・・・ベガ・・・。
いい加減にしないと・・・キレるよ?」
そう悠斗が告げると同時に、身体から赤銅色の気が溢れ始めた。
そしてその迫力に2人は「うっ」と顔を歪めると、
慌てて悠斗へ謝罪し、セナを厩舎に残しギルド内へ移動していった。
そしてここは冒険者ギルドの2階、ギルドマスターの部屋。
「と、言う事で・・・テレス山脈の報告は以上です」
「・・・そうか、わかった。
みんなご苦労だったな?後はゆっくりしてくれ・・・」
そう言ったウェズンの顔は明らかに苦悩に満ちていた。
そして同席していたポーラもまた・・・困惑した表情を浮かべていたのだった。
そんな苦悩する2人を見ながら、
ギルマスの部屋を退出した悠斗達はベガと落ち合うべく、
ギルマスの部屋の向かいにある会議室へと入って行った。
するとそこには椅子に座りながらもそわそわしているベガの姿があった。
そして悠斗達を見ると慌ただしく席を立ち、悠斗達に詰め寄って来た。
「い、いつまでこの年寄りを待たせるんじゃっ!」
「いつまでって・・・」
詰め寄るベガに流石の悠斗もたじたじになってしまうが、
そんな事も気にする素振りも見せずベガは口を開いていった。
「でっ!?でっ!?魔鉱石はどれくらい取れたんじゃっ!?」
その迫力に気圧さ顔を見合わせる悠斗とカロンを他所に、
今度はミレイが荒々しい口調で前へと出て来た。
「しっかりと採掘してきましたよっ!
それよりもお疲れ様の一言もない訳っ!?」
声を押さえつつも苛立ちを隠せないで居たミレイの声に、
ベガも顔を引きつらせるしかなかった。
「あっ・・・その~・・・ご、ご苦労じゃった・・・な?」
恐る恐るミレイを見ながら言葉を出したベガに、
悠斗とカロンは含んだ笑みを浮かべていた。
「とりあえず・・・大量に魔鉱石はゲットしてきたよ」
「う、うむ・・・そ、そうか・・・。
な、なら早速わ、儂の工房へと行こうじゃないか・・・」
はやる気持ちを押さえながらベガがそう言うと、
今度はカロンが呆れた表情を浮かべていた。
「あ、あのな~・・・じぃーさんよ~?
俺達は今戻ったばかりなんだぜ~?
ちっとは休ませてくれよ~」
「な、なんじゃとー?
わ、儂がせっっっかくこうして首を長くして待って居ったのにっ!?
もっと年寄を大切に扱わんかっ!」
「年寄って・・・」
はやる気持ちがどうしても全面に押し出るベガに、
悠斗達は言葉が出なかったのだった。
そんな表情を悠斗達が見せると、
流石に空気を読んだのか・・・渋々とベガはカロンの申し出を受け入れた。
それから数時間後・・・。
ここはベガの工房・・・。
悠斗達は各々が集めた魔鉱石をベガへと見せると、
ベガは目の前に広がるその光景に、つぶらな瞳を輝かせていた。
「こ、こんなにも大量な魔鉱石にお目にかかれるとはっ!」
そう言葉を漏らすと魔鉱石を手に取り暫くの間うっとりと眺めていた。
そして暫く眺めていると不意に言葉を発した。
「こ、これで全部・・・なのか?」
「じぃーさん・・・3人も居るんだぜ?
このくらいな訳ねーだろうがよ~?」
「なっ、なんとっ!?魔鉱石に囲まれる人生・・・。
うむっ!歓喜の極みじゃぁぁぁぁっ!♪」
「極みって・・・やれやれ」
ニヤリと笑みを浮かべたカロンに、ベガ有頂天になっていたが、
ある魔鉱石を手に取ると、すぐに職人独特の吟味する顔へと豹変した。
「・・・うむ、どうやらいくつかの魔鉱石は使い物にならんようじゃな?」
そのベガの言葉に悠斗達は眉間に皺を寄せると、
カロンが苛立ちながらベガに喰ってかかった。
「ま、待てよっ!?使えないって・・・一体何を言い出しやがんだっ!?
これのどこが使えねーってんだよっ!?
火山竜が自信を持って俺達にススメてきた魔鉱石なんだぜっ!?」
カロンの言葉に視線だけを向けたベガは、
大量にある魔鉱石の中から似たような大きさの魔鉱石を2つ取り出すと、
テーブルの上へと置いた。
「・・・いいか?これをよく見て見ろ?」
テーブルの上に置かれた2つの魔鉱石を3人はまじまじと見つめていると、
「・・・もしかして?」と、そう声を漏らした悠斗がその1つを手に取った。
「・・・少し色合いが鈍い?」
そう答えた悠斗にベガは「それだけか?」と言葉短く答えた。
「うーん」と唸る悠斗に少し待ってからベガが再びその口を開いた。
「流石の英雄殿にもわからんかの?」
「・・・漏れ出てる魔力は多少感じるけど~・・・」
再び唸り始めた悠斗達に、ベガは厳しい目を向けながら答えていった。
「重さじゃよ・・・」
「「「・・・重さ?」」」
悠斗達はその2つの魔鉱石を手に持ちながら、
その魔鉱石の重さを確認していくのだが、何が違うかわからなかった。
そんな悠斗達に「はぁ~・・・これだから素人は・・・」
そう呆れた声を吐いたベガは説明していった。
「これは魔鉱石じゃ・・・。
だから似たような魔鉱石を普通に比べても、
そう変わらんのは当たり前じゃ・・・。
儂が言うておるのは、この魔鉱石に蓄積された魔力の質の話なんじゃよ」
悠斗はベガの言葉に慌てて手に持った2つの魔鉱石の魔力を比べると、
「はっ!」とした表情を浮かべた。
「・・・わかったじゃろ?」
「・・・ああ、確かに魔力の質に違いが・・・」
まだ悠斗の言葉が理解出来ていないカロンとミレイに説明していった。
そして・・・。
「ま、まじかよっ!?そんなに違いがあるなんて・・・よ?」
「え、ええ・・・。私も初耳だわ」
納得した悠斗達はベガの指示の元、
大量にある魔鉱石を仕分けする事になったのだが、
その作業がとても大変だった。
ベガは経験の元、それらを見分ける事も可能なのだが、
悠斗達は職人ではない。
従って、それらの魔鉱石を1つ1つ手に取り、
その魔鉱石に蓄積されている魔力量を鑑定していく事になったのだった。
そして漸く・・・その作業が終了する頃・・・。
日は傾き外は暗くなろうとしていた。
一旦作業を打ち切った悠斗達はその夜港町の宿屋・・・。
つまりここ港町で宿屋を経営するロイサムの店・・・。
「潮風に荒ぶる金熊の肉煮込み亭」で1泊したのだった。
その時ロイサムに悠斗とカロンは声をかけた。
「ところで宿の名ってこのまま行くの?」
「・・・い、今のところは~」
「・・・ま、まじかよ?」
「は、はい・・・」
こんなやり取りがあったらしかった。
そして翌朝・・・。
朝食を済ませた悠斗とカロンはベガの工房へと移動し、
再び作業を開始した。
暫く時間はかかったものの、魔鉱石の選別が終了し、
次の段階へと進んでいくと、
ベガが工房の奥へと来るよう手招きをしていた。
工房の奥へと入った悠斗は目の前に広がる光景に驚きの声を挙げた。
「こ、これって・・・っ!?」
ニヤリと笑みを浮かべたベガは悠斗から預かった絵とメモを元に、
図面を製作し、それを形にしていたのだった。
そう・・・。それはつまり・・・「炉」である。
「フッフッフッ!どうじゃっ!さすがの英雄殿も驚いたじゃろ?」
「あ、ああ・・・正直驚いたよ」
「まじかっ!?ユウトの下手くそな絵を元に作っちまったのかよっ!?」
「へ、下手くそって何だよっ!?
俺なりに頑張ったってのにさっ!?」
「へっへっへっ・・・悪りぃーな?」
「・・・ま、まったくっ!」
カロンの言葉に悠斗は恥ずかしそうにしながらそう言うと、
視線をベガへと移し話を始めていった。
「ベガ・・・所々高熱で焼けた跡があるみたいだけど、
もう刀を作ってみたの?」
「んー・・・」
ベガは悠斗の問いに唸って見せると、
工房の中にある大きな戸棚を開き、布に包まれたモノを取り出してきた。
「・・・まぁ~、英雄殿、まずは見てくれ」
「・・・わかった」
ベガから手渡されたモノの布を取ると、
その中から一振りの刀らしきモノがその姿を現した。
悠斗はそれを手に取ると、柄を握り鞘からそっと引き抜こうとしたのだが、
引き抜く途中で所々引っ掛かりを感じたのだった。
「・・・えっと~・・・これは?」
「・・・儂は職人としてこんなにも恥ずかしいと思った事はないのじゃが、
これは間違いなく・・・失敗作じゃ・・・」
「・・・そうだね」
悠斗はそう言いながら刀らしきモノに視線を移しながらそう言うと、
ベガがこうなった経緯を口にし始めた。
「ユウト殿・・・儂は職人としてこんなに恥ずかしいと思った事はない。
儂の人生においても、こんな事は今の今まで1度もなかったわい。
改めて言うのもなんじゃが・・・。
まだ儂の知らぬ事があり・・・己の未熟さを痛感したわい」
ベガの言葉に悠斗は笑みを浮かべると、
悔しそうに俯くベガのその肩にそっと手を置きこういった。
「・・・何度でもやり直せばいいじゃんか。
職人として悔しいって思っているんだろ?
なら・・・それは負けじゃない。
俺も手伝うからさ?何度でも挑戦しようよ♪」
悠斗の言葉にベガはニヤリと笑みを浮かべると、
それから数日間に渡って、
ベガの工房からは槌を振り下ろす音が響き渡っていた。
そして4日目の夕方頃・・・。
「ジュゥゥゥ」と激しく沸騰する水のの音と共に、
ベガは悠斗にそれを手渡した。
「ユウト殿・・・頼む」
悠斗は頷きそれを手に取り、
厳しい視線を向けながら品定めを始めていくと、
ベガはゴクリと喉を鳴らしながら、その緊迫した雰囲気に緊張し始めた。
そして悠斗はベガの様子など気にする事もなく、
ただ・・・手渡された一振りの武器に集中していったのだ。
長さ、重さ、反りやバランスを確かめると、
最後に歪みを確かめるべく視線を刃へと這わせた。
「・・・こ、今度のは・・・どうじゃ?」
「・・・・・」
緊張からか思わずかすれた声が漏れてしまったベガに構わず、
悠斗は「ヒュン」と武器を縦に軽く振った。
そしてにこりと笑みを浮かべると・・・。
「・・・今まで一番いいと思う♪」
悠斗の言葉に「ぷはぁぁぁ~」っと息を吐いたベガは、
緊張の糸が切れたかのように地べたにヘタリ込んでしまった。
「・・・い、生きた心地がせんかったわい」
「・・・あははは。ベガ、ご苦労さん♪」
「「はっはっはっはっ!」」
とりあえずの成功に2人は自然と笑うと、
悠斗とベガに代わって店番をしていたカロンに念話で報告した。
「俺にも早く拝ませろっ!」と、
やや興奮気味に念話を返してきたカロンは、
店番などもお構いなしに店の奥にある工房へと駆け出した。
そして出来た刀を手に取ると・・・。
「こ、これが刀ってヤツ・・・ん~・・・なのか?」
カロンのその声は「感動、尊敬」などと言ったモノではなく、
どちらかと言うと・・・「頼りない」と言った物言いだった。
「頼りない」それは刀を知らないカロンにとって、
薄くそして細いその武器に、物足りなさを感じたからだった。
そしてその物言いはカロンだけではなく、
刀を打った本人・・・つまり職人ベガも同意見だった。
そんな2人に悠斗はこう言った。
「・・・まだ完成じゃないんだけど?」
「・・・はぁっ!?」
「よく見て見ろよ?まだ刃が付いてないだろ?
それに最後の焼き入れもしてないしさっ!」
そう言って悠斗はカロンから刀を受け取ると、
黙々と作業を再開し、波紋を付けるべく焼き入れ、
そして最後に砥石を前にひたすら刀の刃を研ぎ始めた。
※ 話の都合上、色々と割愛させて頂きます。
悠斗が刀の刃を研ぎ始めてから暫く経った・・・。
同じリズムで「シュッ・・・シュッ」っと、刃が研磨されていく・・・。
砥石に水を垂らし「シュッ、シュッ」と同じリズムで繰り返されで行く。
悠斗のその真剣な眼差しと、その集中力に2人は固唾を飲んでいた。
そして悠斗の手が止まり、刃に親指を軽く当てると・・・。
「・・・悪くない♪」
そう言って見守るカロンとベガに笑って見せた。
カロンとベガは互いに顔を見合わせると呟くように言葉を出した。
「か、完成・・・か?」
「・・・完成したんじゃな?」
「・・・ああ、後は・・・試すだけだ♪」
「「おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」と、そう声を張り上げた2人は、
手と手を取り合って喜び合っていた。
悠斗は用意してあった鎺、鍔、柄を手に取ると、
それぞれを装着していった。
そして最後に目釘を打ち込むと、「キュッ」と心地いい音が聞こえ、
目釘穴と茎が一体となり、
その刀身を鞘へと納め完成となったのである。
※ 柄糸や鮫皮などの専門的な事柄は割愛させて頂きます。
完成した刀を手に悠斗は工房の裏手へと移動すると、
そこには予め用意されていた、
試し切り用の木材の杭が地面に打ち込まれていた。
悠斗はその木材で出来た杭の前に静かに立つと、
左手に刀を持ち・・・流れるように抜刀術の構えを取った。
そして悠斗の背後では、カロンとベガが見守っているのだが、
一連の流れる動きを見せた悠斗に、これまでにないモノを感じ取っていた。
(こ、これが本来の・・・あいつの・・・ユウトの構えなのかっ!?
す、隙がどうのこうのってもんじゃねぇ・・・。
後ろに居る俺までもが飲まれて・・・い、一歩も動けねぇ・・・)
(こ、これがあの英雄殿の本来の姿っ!?
な、なんと張り詰めた空気を作り出すんじゃっ!?
ユウト殿もまた・・・ある意味職人じゃの~)
カロンとベガの感想など悠斗にとってはどこ吹く風・・・。
悠斗は久しぶりに手にした刀に・・・心を弾ませていた。
そして緊張と沈黙が支配するこの空間に、
「はっ!」と言う悠斗の声と共に抜かれた刀は、
「シュッ!」と言う風切り音を纏いながら悠斗によって振り抜かれた。
そして悠斗がその場で軸足を中心にくるりと半回転し、
背後に居たカロンとベガに向き直りながら、
再び流れるように淀みなく、
静かに刀身を「パチン」と鳴る寸前まで納刀すると、
悠斗は目を閉じ微動だにしなくなった。
悠斗の洗練されたその所作に飲まれた2人は「ゴクリ」と喉を鳴らすと、
斬った木材へと視線が注がれたのだが・・・。
「・・・ん?ユ、ユウト?
・・・あの木を斬ったんじゃねーのか?」
「・・・・・」
目を閉じ何も語らない悠斗に不安を覚え始めたカロンとベガ・・・。
そんな雰囲気にベガが溜まらず声を漏らした。
「ま、まさかユウト殿っ!?」
そんな不安な声を漏らしたベガに悠斗はそっと目を開けると、
口角を少し上げながら静かに口を開いた。
「・・・心配ないよ」
「パチンっ!」
刀身が完全に鞘に収まった事を告げる音を静かに鳴らすと、
「ズズっ!」と木材が斜めに滑り「ガラン」と音を立てて地に落ちた。
「なっ!?」
「な、なんとっ!?」
そう言葉が漏れたカロンとベガが見たその光景は、
感動を通り抜け、もはや畏怖・・・そう呼べるモノだったのだ。
そしてぎこちなく悠斗へと視線を向けたカロンがこう言った。
「ユ、ユウト・・・これがお前の本当・・・の?」
背中に伝わる冷え切った汗が伝うカロンと、
絶句する事しか出来なかったベガは納刀された刀に視線を向けると、
その刀のポテンシャルに驚愕したのだった。
だが驚愕するカロンとベガを他所にしながら、
悠斗の表情はただ・・・曇っていた。
(くっ!・・・この程度じゃ・・・刀とは言えない・・・)
構えを解いた悠斗は「グッ」と拳を握り締めたのだが、
それに気付く者はこの場には居なかった。
それから2日後・・・。
一応に完成した刀に「炎鬼」と名付けた悠斗は、
それを腰に携えながら、あるモノを探す為に、
悠斗とカロンは港町を出て旅立って行った・・・。
そしてここは美しい自然に囲まれたとある滝が流れ落ちる場所・・・。
(よいか?童鬼よ・・・。
ただ・・・力を推し量るだけでよい。
くれぐれも殺す事のないように・・・な?)
「はっ!アスラ様っ!
この童鬼・・・五本角に誓って、御館様の命に誓いますっ!」
(うむ・・・貴様に任せたぞ)
「はっ!有難き幸せ・・・」
黒き肌をした背丈が3mほどの者が、
片膝を着き滝から落ちた水面に向かってそう言っていた。
そしてその水面に映るその男の頭部の髪の中から覗き出ていたのは、
フジツボのような5つの小さな角だった・・・。
「くっくっくっ・・・。
御館様が気になさる人間とやらに早く会いたいモノ・・・だな?
ハァ~ハッハッハッハッ!楽しみだっ!」
そして高笑いを決め込むその後ろ姿を何者かが見つめていた・・・。
「・・・ここからだね♪」
そう言葉を漏らすと何事もなかったかのように、
その場から忽然と姿を消しただ・・・。
鳥の羽根だけがふわりと地面に落ちて行った。
今回の話はどうだったでしょうか?
楽しんで読んで頂けていると嬉しいのですが・・・。
これからも頑張りますので宜しくお願いします^^
ってなことで、緋色火花でした。




