閑話 苦手な名付けと悠斗のノート
お疲れ様です。
全身筋肉通の緋色で御座います^^;
と、言う事で・・・。
今回も閑話です。
悠斗の話がメインとなりますので、
楽しんで頂けたら幸いです。
それでは、閑話をお楽しみ下さい。
ヤンキーの宿町で別行動を取る事になった悠斗は、
幻獣を託された商店へと幻獣と共に向かって歩いて行った。
そして商店に着いた悠斗は店主に礼を述べると、
その後、小声でこう・・・話を続けた。
「人払いか、もしくは・・・」
そう話を続けると店主は悠斗の意図を察し、
店主がその話の続きを答えていった。
「人が居ない場所ですね?」
「・・・は、はい」
「わかりました。では、こちらへ・・・」
店主の指示に従い、悠斗はその後を馬と一緒に付いて行った。
「・・・ここなら誰も来ませんので♪」
そうにこやかに話す店主に、悠斗も笑顔で礼を述べた。
そして後ろに居る馬へと近寄ると耳元で囁いた。
「・・・この店主さんに君の正体見せてもいいよね?」
「ヒヒンっ!」
「ありがとう♪」
幻獣である馬は悠斗と同じように小さく嘶きながら、
前足を何度か上げていた。
「あ、あの~・・・?」
少し不安げな表情を浮かべる店主に、
悠斗は笑顔を向けながら話していった。
「店主さんにはこの子が大変お世話になっていたって事で、
そのお礼にこの子の本当の姿を見せようかと・・・」
「ほ、本当の姿・・・ですか?」
悠斗は再び幻獣である馬の頬を撫でながら小声で話しかけた。
「・・・さぁ、見せてあげてよ♪」
「ヒヒィィーンっ!」
一瞬白銀の閃光が辺り一面を照らすと、
その中から姿を現したのは・・・「バーミラ」と呼ばれる伝説の幻獣だった。
「こ、このお姿はっ!?」
その閃光の眩しさに手で遮っていた店主は驚愕し、
思わず「バーミラ」の前に膝を着いて祈りを捧げていた。
「あれ?店主さん・・・この幻獣知ってるの?」
悠斗の言葉に店主は「ハッ!」と息を弾ませ我に返ると、
這いずるように悠斗の前に寄って来た。
「し、知ってるも何もっ!?
こ、こここの幻獣は、伝説とされる幻獣「バーミラ」様ですっ!」
「・・・はい?」
「しっ、知らないのですかっ!?」
「・・・す、すみません」
店主から伝説となった「バーミラ」に関して説明してもらった。
その内容とは・・・。
遥か昔神界にて、「神と魔」との戦争があった頃の神話の話だと言う。
その神話で主神である「ラウル」が魔との戦いで猛々しい馬に跨り、
神界の空を無尽に駆け回り、魔を討伐していったと言う話だった。
(・・・無尽にって・・う、嘘臭いな~)
悠斗は店主の話を聞きながら顔を引きつらせていたのだが、
どうやら得意げに話す店主はそんな悠斗に気付かず悦に浸っていた。
そしてそのラウルが乗っていた馬と言うのが、
悠斗達の目の前に居る伝説の幻獣馬・・・「バーミラ」との事だった。
「へぇ~・・・お前、すげーんだな?」
そう声を挙げた時だった・・・。
店主はバーミラに近寄りながらこう言った。
「ですがまだ・・・子供のようですな~?」
「えっ!?こいつ・・・まだ子供なのっ!?
サラブレット並みに・・・こんなにでかいのにっ!?」
「・・・はい」
店主は「バーミラ」について再び話を始めていった。
「見分け方と致しましては・・・。
まず幼少期は体毛は「白」く鬣もふわふわしておりますが、
成長し大人ともなりますと、体毛はプラチナ色に染まり、
鬣は逆立ちその毛は鋼のように硬くなるとの事ですから・・・。
それと成長致しますと、今よりも体格は大きくなるらしいのですよ」
「ま、まじか~・・・?は、鋼のようにって・・・まじか~っ!?
そ、それに今よりも大きく・・・って・・・。
まっっったくっ!想像出来ないんですけどっ!?」
「はっはっはっ!」
悠斗がどう想像したかは分からないが、
そんな悠斗を見たバーミラは悲しそうに項垂れたのだった。
幻獣馬を見せ終わった悠斗は、
再びバーミラに普通の馬に戻るよう促し、
店主にある事を聞いていた。
「あっ、そうだ・・・店主さん・・・」
「・・・はい?」
「このお店にノートって置いてますか?」
「・・・はい、勿論御座いますよ?」
「・・・やったっ♪」
満面の笑みを浮かべて喜ぶ悠斗の姿に、
店主は不思議そうな表情を浮かべていた・・・。
「どれくらいお入り用ですかな?」
「ん~・・・そうだな~・・・?」
店主の問いに悠斗は空を見つめると暫くの間考え込んでいた。
「・・・今後の事も考えると~・・・結構な数がいるかもな~?」
そう言ってブツブツ言っていたかと思うと・・・。
「・・・よしっ!店主さんっ!100冊ほど下さいっ!」
「ひゃ、100冊っ!?」
「はいっ♪」
「わ、わかりましたっ!只今在庫を確認して参りますっ!
こ、こちらへどうぞっ!」
大量注文に店主は大急ぎでノートの在庫を確認する為に店主は駆け出し、
悠斗はその後を着いて行った。
その途中、従業員に悠斗を奥へ通すようにと指示を出すと一礼し、
慌てて倉庫へと姿を消して行ったのだった。
(・・・お、多く言い過ぎちゃったかな?
店主さん・・・すみませんでした)
心の中で謝罪した悠斗は従業員に案内され、
応接室へと通された。
すると・・・。
「カツン、カツン」と何かが窓を叩く音がした。
「あっ!ご、ごめんっ!お前の事忘れてたっ!」
「ブルルンっ!」
窓を叩いたのは悠斗にその存在を忘れ去られていたバーミラだった。
バーミラは悠斗の言葉に項垂れてしまっていた。
「ほんっっとうにごめんっ!
って言うか・・・バーミラって種の名称だよな~?」
「ブルンっ!」
「ふむふむ・・・。そうだよね?
だったら名前を考えないといけないんだけど~・・・
ま、また名付けか~・・・苦手なんだよね・・・。
馬の名前って~・・・赤兎馬とか~って・・・色が違うしね?
じゃ~・・・白兎馬って・・・白斗とかぶるし~・・・。
って言うか・・・あいつが絶対に怒るよな~?
ん~、じゃ~後は~・・・ダ、ダメだ・・・。
もう競走馬の名前しか思い浮かばない・・・」
悠斗は窓の淵に頬杖を着きながらバーミラの顔を見つめていた。
そんな悠斗の視線にバーミラ種は興奮気味に何かを言ってきた。
「ブルルルンっ!ブルっ!」
「ん?かっこいい名がいいのか?
ん~・・・そう言われてもな~・・・?」
悠斗はバーミラ種のその熱い眼差しにプレッシャーを感じ、
「下手な名でも付けようモノなら・・・はぅ」っと、項垂れしまった。
店主が戻るまでの間、悠斗はバーミラ種を眺めていた。
そしてバーミラ種もそんな悠斗に期待しつつ、
はしゃぐように飛んだり跳ねたりして名付けの為のアピールをしていた。
(ん~・・・痛いくらいに俺にアピールしてくるな~?
子供って事だから、教育上下手な名前は付けられないしな~?)
悠斗が真剣に悩んでいると、
ふと・・・バーミラ種は流れるようなターンをして見せた。
(おお~っ!今のターン凄く鮮やかだったな~っ!
ん・・・?ターン?)
悠斗は何かを思うと、少し慌てたように窓から身を乗り出し、
やや興奮気味に声を挙げた。
「い、今のもう一回やって見せてくれないかっ!」
「・・・ブルっ?」
「今の動きをもう1度見せてくれっ!」
食い入るように身を乗り出した悠斗に、
バーミラ種は再び同じようにクイック・ターンをして見せた。
「そんな微細な足の動きをしていたのか・・・。
だから流れるような動きが・・・?
微細な足の動き・・・か・・・」
「ヒィヒィーンっ!」
得意げに嘶いたバーミラ種に、悠斗は笑みを浮かべるとこう言った。
「決めたっ!お前の名は・・・「セナ」だっ!」
「・・・ヒィヒィーーンっ!!」
悠斗が告げた名が気に入ったのか、
セナと名付けられたバーミラ種は空に向かって嘶いて見せたのだった。
そして暫くの間、セナと会話を楽しんでいると、
ドタドタと足音を響かせながら応接室へと店主達が入って来た。
「お、お待たせ・・・はぁ、はぁはぁ・・・い、致しましたっ!」
店主は息を切らせながら悠斗をソファーへと促すと、
従業員達がノートをテーブルの上に置いていった。
「う、うちの店の・・・ざ、在庫を合わせても・・・。
ろ、60冊ほ、ほどしか・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・」
店主達の様子に悠斗は頭を下げると、突然謝罪を始めたのだった。
「すみませんでしたっ!突然無茶な注文をしてしまってっ!」
悠斗の突然の謝罪に、店主達はキョトンとし顔を見合わせる事になった。
そして店主は息を整えると盛大に笑いつつ、
悠斗の謝罪に対して礼を述べたのだった。
「流石はアシュリナの英雄様ですな~?
私共にまで頭を下げられるとは・・・♪
それに私共の店では、60冊程度の品数しかなく、
お恥ずかしい限りで御座います」
「無茶な注文したのは俺の方なので、謝罪などは・・・」
それから暫くして商談が無事に終わると、
悠斗はセナの背に跨り、商店を後にしたのだった。
宿に戻った悠斗は、カロンとミレイが眠りに着いたその後・・・。
1人テーブルに向かい作業をしていた・・・。
(さてっと~・・・今日も書いて行きますか~♪)
悠斗はマジックボックスから1冊のノートを取り出した。
するとそのノートには・・・。
「イリア専用」と書かれていた。
そしてその中身はと言うと・・・。
『イリアヘ・・・。
今、とても頑丈な壁にぶつかっているみたいだね?』
そう書かれてあった。
このノートはイリアの師匠でもあるアリエルが、
その日々の鍛錬の様子を悠斗に報告し、
それをまとめたノートだったのだ。
『ブルースピリットを上手く使えるようになったみたいだけど、
大技を仕掛ける時、どうしても隙が生まれて攻撃出来ないみたいだね?』
現時点のイリアの弱点の対策案などを、
悠斗が自分なりにまとめたノートだった。
そんなノートを悠斗は全員分・・・書いていたのだった。
『セルカへ・・・。
体重移動を更に進化させたいのであれば、
方向転換する際、気道をある方法で使用すれば、
今抱えている体重移動の問題はクリアできると思うぞ。
で・・・。その方法なんだけど・・・』
『アンナへ・・・。
見かけによらずアンナはせっかちだからな~?
結果を急ぎ過ぎるのは良くないと思うよ?
特に・・・、気道の場合はしっかり基礎を鍛錬しないと・・・』
『エルナトへ・・・。
聞いたぞ~?キナリを負かしたんだってな~?
パパはエルナトを誇りに思うぞっ!♪
でもパティーナが言っていたぞ~?
想定していない事が起きると、急に動きが甘くなるって・・・。
それを聞いてパパは考えた・・・。
結構まじに考えたんだけど・・・こう言うのはどうだ?
それはだな~・・・ふっふっふっ~・・・』
「ミアプラへ・・・。
エルナトに勝てないってごねてんだって~?
はっはっはっーっ!そんな事、気にするなよな?
お前が勝てない理由は、ただエルナトが強いってだけじゃない。
負ける要因がミアプラにあるって事だからな?
プロキシオンが言ってたぞ~♪
ミアプラの反応速度はエルナトよりも速いってな?
で・・・、パパは思ったんだが・・・。
ふっふっふっ!いい手があるんだが、パパの案を参考にしてみないか?」
などと、悠斗は更に勇者達やゼノ達の分まで、
自分が思い付く限りの案をノートに書いていたのだった。
最後に書いたノートをパタリと閉じた時だった・・・。
(ピッピッピッ!)っと頭の中で音が鳴った。
(もうそんな時間か~・・・)
悠斗は薄く笑みを浮かべると・・・。
(みんな~・・・お待たせ~♪)
そう言って心の中で声を挙げたのだった。
(ユウト~・・・遅いぞっ!)
(あははは・・・ご、ごめんアリエル。
ちょっと書くのに時間かかっちゃってさ~♪)
(そうか・・・すまんな?
だが、時間はきっちり守らないとな?)
(・・・す、すみません)
悠斗が渋い顔をして謝りながら、
マジックスボックスからコーヒーセットを取り出すと・・・。
(ちょっとーっ!アリエルっ!?
あんた・・・私の愛する師匠になんて事言うのよっ!
このロリッ娘のクセにっ!調子乗るんじゃないわよっ!)
(・・・はぁぁぁぁっ!?だっ、誰がロリッ娘なのよっ!?
色ぼけ脳筋女っ!ちょっと闘技場まで顔を貸しなっ!
決着・・・着けてやろうじゃないのよっ!)
(だっ、誰が色ぽけよっ!?
この剣神であるアマルテアを舐めてるとっ!
ぶち殺すわよっ!
ロリッ娘風情が調子に乗るんじゃないわよっ!)
突然ロリッ娘・・・。コホン・・・アリエルと、
そのアリエルが言うところの色ボケ脳筋女・・・コホン。
アマルテアが・・・喧嘩し始めた。
(お、おいっ!?ふ、2人共っ!?喧嘩してんじゃ・・・)
悠斗が2人を止めようと声を挙げるも、
(やってやるわよっ!)とアマルテアが言い・・・。
(ポロ雑巾にしてやるわ)と、アリエルがそう答えると、
念話を中断し悠斗は残されてしまった。
(えぇぇぇっ!?な、ないわ~、まじで・・・ないわ~っ!)
そう落胆の叫びを悠斗が漏らすと、
ボソッと申し訳なさそうな声が悠斗に聞こえてきた。
(し、師匠・・・。あ、あの・・・た、大変申し訳なく・・・)
(んっ!?オウムアムアかっ!?)
(は、はい・・・師匠。お元気そうで何よりです)
念話で話しているのだが、
何故か悠斗にはオウムアムアの申し訳なさそうな顔が思い浮かばれ、
(き、気にするなよ~)と、ぎこちない声を挙げてしまったのだった。
((あはははは・・・))
苦笑するしかなかった2人だつたが、
(コホン)と咳払いをした後、悠斗が話を切り出した。
(ところでアンナさんの調子はどうだい?)
(うむ・・・。まだ壁は分厚いようで当人も苦戦しているようです)
(なるほど~・・・。
まぁ~ノートには書いたんだけどさ~
今、お前に話しておくから、それを伝えてくれよ)
(宜しいのですか?
そのノートは完成してから渡す為のモノでは?)
(ん~・・・まぁ~そうなんだけど、
ただのきっかけ作りって感じでお前から話してくれよ?
答えは教えなくていい、ただのきっかけだからさ♪)
(きっかけ・・・なるほど。
自分で掴み取らなければ意味がない・・・ですからね?)
(うんうんっ!だけどきっかけは・・・別にいいじゃんね?)
(ははははははっ!
甘いとは思いますが・・・鬼畜ではありませんからな~?)
(そう言う事~♪)
悠斗とオウムアムアは久しぶりに長い時間語らい、
信頼出来る者同士の会話に余韻を残しつつ念話を終了すると・・・。
「・・・んっ?な、何だ?ユウト・・・か?
お前まだ起きてんのかよ~?」
寝ぼけながらカロンがベットから身体を起こしたのだった。
「あっ、悪い・・・起こしたか?」
「いや・・・。喉が渇いちまってな~?」
「そうか・・・。水なら、そこに置いてるから飲めよ」
「・・・ありがてぇ」
悠斗にそう促され、カロンは水をゴクゴクと飲んでいると、
ふと、悠斗がマジックスボックスにノートらしきモノを仕舞う姿が見えた。
「ん?それ・・・何だ?」
「あぁ~・・・コレか?」
悠斗がそう言いながら1冊のノートを手に取ると、
カロンは「うんうん」と頷いて見せた。
「・・・何を書いてんだよ?」
「まぁ~その何て言うんだろ?
みんなの為に俺に何かできないかな~って思ってさ?」
「つまり・・・秘伝書みたいなモノか?」
「そんな大したモノじゃないけどさ?
みんなの役に立てばって、そう思ってさ~」
「・・・ご苦労なこって~。
お前ってヤツは本当にお人好しだな~?」
「・・・うぅぅ」
カロンの物言いに苦い表情を浮かべた悠斗は、
ブツブツと何か言いながらも、声を大にしては言い返さなかった。
「お前もいい加減に寝ろよな~?
じゃ~俺はお先におやすみさんっと~♪」
カロンはそう言って寝返ると、
手のをヒラヒラさせながら再び眠りに着いたのだが・・・。
(あいつめ・・・何であんな悲しそうな顔してやがんだ?
何か俺達に隠している事でもあるんじゃねーか?
ここは問いただして~って・・・俺もあいつの事言えねーな?
俺だって夢で見た試練の事があるしな~?)
そう思いながらもカロンは眠りの底に落ちてしまった。
悠斗は背を向けたカロンに「おやすみ」と告げると、
ノートをマジックボックスに収納しながらこう思っていた。
(・・・ごめんカロン。
近い将来・・・俺は消えてしまうかもしれない・・・。
そんな気がするんだ。
だから、俺が生きている間に少しでも何か出来ないかと・・・さ。
何でだろ?そんな気がするんだ・・・)
悲しい表情を浮かべる悠斗は、
残り少なくなったコーヒーを一気に流し込むと、
拳を強く握りながら窓から見える暗い景色を見つめていた。
(まぁ~そう簡単に消えるつもりはないけどね~。
まだ試したい事もあるしさ・・・。
・・・ゼツのおっさん、あんたは今、どこに居るんだよ?)
先程とは違い笑みを浮かべた悠斗はベッドに入ると、
一瞬にして深い眠りに着いたのだった。
今回の話はいかがだったでしょうか?
来週からは本編に戻りますのでお楽しみ下さい^^
まだ日があるのですが、一応お知らせしておきます。
11月30日にちょっと手術する事になりましたので、
もしかしたら・・・お休みするかもしれません。
大した事はないので大丈夫かと思いますが、
念の為・・・って事でw
ってなことで、緋色火花でした。




