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異世界転移 ~魔を狩る者~  作者: 緋色火花
第二章 港町・アシュリナ編
233/404

180話 火の巫女とフェイク

お疲れ様です。


仕事してたら0:00回ってました><

社畜過ぎる今日この頃ですが・・・。


最近雨が多いので気分的に疲れてしまいますよね^^;

だからと言って、暑いのは苦手なのですが・・。


今回は本編の続きです。



それでは、180話をお楽しみ下さい。

夕暮れが近づき日も傾き始めた頃、

悠斗達は手分けして野営の準備をしていくのだった。


そして野営地に結界を張り終えその準備が終わると、

白髪の透き通るような白い肌をした少女を交えて話を始めていった。



火を起こしたその周りを囲むようにそれぞれが座ると、

悠斗は優しい笑みを浮かべながら話を切り出していった。


「俺の名は悠斗・・・。そしてゴツイのはカロン。

 そして綺麗なお姉さんはミレイさんだ」


「誰がゴツイんだっ!誰がっ!」


「き、綺麗な・・・お、お姉さんって・・・はぅ」


悠斗に綺麗と言われ頬を赤くしたミレイだったが、

コホンと咳払いをして照れを隠しながら質問していった。


「えっ、えっと・・・あ、あなたの名は何て言うのかしら?」


「・・・私の名はテレス。神の命により火の巫女をしておりました」



(神の命・・・だとっ!?一体誰が・・・?)


カロンは訝しい表情を浮かべながらも、

その透き通るような少女の声に、

悠斗を含め全員が驚きの余り言葉を失った。


するとその空気を察したのか、

無表情なまま、テレスと名乗った少女が話を続けていった。


「私の名とこの山の名が同じだと言う事は、まだお話する事は出来ません。

 そして私が貴方にこの馬を託した事と、姿を現した事は説明致します」


「・・・わかった。じゃ~・・・テレスさん、話を聞かせて下さい」


「私の事はテレスで構いません」


「分かりました。では俺の事もユウトで宜しくお願いします」


「・・・それは出来ません」


「えっ!?で、でもそれじゃ~・・・」


「・・・出来ません」


「い、いや、あの~・・・ですね?」


「・・・出来ません」


「わ、わかり・・・ました」



悠斗がそう話をすると、今まで無表情だったテレスが笑顔を向け、

今まで緊張した空気が和らいだようになった。


(い、意外に頑固なんだな~?)


「まずあの白い馬ですが・・・

 あれは歴代の火の巫女が乗っていた馬で、種族としては幻獣になります」


「なっ!?」


そう驚きの声を挙げたのは誰でもないカロンだった。

悠斗とミレイはカロンに視線を向けると説明を求めた。


「・・・カロン、幻獣って何だ?

 俺は幻獣ってのに出会った事ないんだけど?」


「あ、ああ・・・そうだな。

 だがユウト・・・その話は少し待ってくれないか?」


申し訳なさそうに口を開いたカロンに、

悠斗は目を閉じながら黙って頷いて見せたのだった。


そんな悠斗にカロンは「すまねぇ」と呟くと、

視線をテレスへと向けた。


テレスはその視線にコクリと小さく頷くと話を続けていった。


「幻獣を託した理由はカロン様にはお分かりでしょうから、

 私は本題に入らせて頂きます」


見た目が愛らしい少女の言葉遣いに、

3人は違和感を覚えつつも話に耳を傾けるのだった。


「今の私はもうご存知かとは思いますが、生きてはいません。

 言わば・・・今の私は思念体のような存在なのです」


「思念体って言うのは、つまり貴女の残存思念って言う事でいいのかしら?」


ミレイの質問にテレスはコクリと小さく頷くと一呼吸置き、

再び話を続けていった。


「火の巫女・・・とは・・・」


白髪の少女が言葉を続けようとした時だった。


「ゴォアァァァァァァァッ!」と、突然何かの声が聞えたのだが、

その声はとても苦しそうな声に聞こえたのだった。


「なっ、何だっ!?今のっ!?」


立ち上がり声がしたテレス山脈の上へと視線を向けたのだが、

その標高は非常に高く、カロンが見上げる視線の先には、

分厚い雲が遮っていたのだった。


すると悠斗が呑気な口調で笑みを浮かべながらこう言った。


「・・・ドラゴンじゃね?」


「えっ!?」


「なっ!?」


「・・・・・」


悠斗の言葉に驚きの声を挙げる中、

テレス1人がただ黙ったまま口角を微かに上げていたのが見えた。


「流石ですね・・・ユウト様」


「ドラゴンの話を聞いていたからね~?

 別に慌てる必要もないでしょ?」


何事もなかったかのようにそう答える悠斗に、

カロンは顏の筋肉をヒクつかせていた。


(こ、この天然属性めぇぇぇっ!)



そして更に話は本題へと入っていき、テレスの表情が険しくなっていった。


「あのヴォルカニック・ドラゴンの願いを叶えてあげてほしい」


「・・・ちょっと何を言っているのかわかんないんだけど?」


不思議そうな顔をして見せる悠斗に、

テレスは何度か瞬きをするとその口を開いた。


「今まで貴方達が通って来た道を見ておわかりでしょうが、

 この山脈の周りの樹海は、今・・・瀕死の状態なのです。

 もし、このままこの樹海が消滅してしまえば、

 この樹海に住む動物達や植物達が死に絶えてしまいます。

 ですから・・・」


テレスはまだ言葉を続けようとしたのだが、

その言葉を苛立ちを見せたカロンが遮ったのだった。


「待てよっ!テレスとか言ったな?

 どうしてそんな願いを俺達が叶えないといけねーんだよっ!?

 突然現れて願いを叶えろだぁ~?

 ふざけるのも大概にしやがれっ!」


カロンがそう言って怒りを露にするのだが、

テレスはそんな言葉など無視するように言葉を続けていった。


「実はそのヴォルカニック・ドラゴンはこの山脈の守り神なのです」


「む、無視すんじゃねーぞっ!こらぁぁぁっ!

 って・・・はぁぁぁぁっ!?」


怒鳴り声を挙げたカロンだったが、テレスの言葉の意味を理解すると、

上ずった声を挙げたのだった。


そしてそれはミレイも同様で驚きの声を挙げていたのだが、

ただ悠斗だけは2人の反応とは違って冷静だった。


「ほ、本当なのっ!?」


「まじか~・・・まぁ~そんな感じはしたんだけどね~」


悠斗の反応に鋭くそして敏感に反応したカロンが苛立ちを見せながら、

悠斗の物言いに口を開いた。


「てめー・・・ユウトっ!

 一体何だよ、その反応はっ!?」


鋭い視線を向けて来るカロンに悠斗は目線をやや右上に向けると

何かを考えながらカロンの問いに答えたのだった。


「えっと~・・・俺にはそんな感じがしたってだけなんだけど、

 それにしてもテレス山脈の伝説の話と余りにも違うから、

 何かを隠す為のフェイクである可能性が~って思ってただけなんだ」


「「フェイク~っ!?」」


見事に声がシンクロしたカロンとミレイに苦笑しつつ、

視線をテレスへと向けると、薄く笑ったのが見て取れたのだった。


そして悠斗は更に話を続けた。

視線をテレスから外さず、その少女の微妙な動きも見逃さないようにと・・・。


「考えてもみろよ?テレス山脈の伝説って、簡単に言うと財宝伝説だろ?」


「え、ええ・・・その通りよ」


「でもさ~それにしても不思議じゃないか?

 そんな伝説があるのにどうして誰も探しに行かないんだよ?」


「だ、だってそれは・・・標高が高い場所に在るからって・・・」


そんな事を言ったミレイに悠斗は溜息を漏らしながら口を開いた。


「はぁ~・・・。

 この世界は剣と魔法の世界だろ?

 いくら標高が高い場所に在るからって、魔法で何とかなるんじゃね?

 だいいちおかしいだろ?

 どうして財宝を探してみた・・・って話すらないんだよ?」


悠斗の問いにカロンやミレイも押し黙るしかなかったのだが、

テレスだけは笑みを見せながらも、悠斗に真剣な眼差しを向けていた。

そして悠斗はそんなテレスに向けて「ふぅ~」と息を漏らすと、

フェイクである可能性の話を始めた。


「テレスが言うこの山脈の守り神・・・。

 それが本当ならヴォルカニック・ドラゴンはずっとこの地に住んでいた。

 それが突然出現し、雄大だったはずの自然を破壊している事になる。

 でもいきなりどうして現れたんだよ?

 この樹海の有様を見てもわかるように、

 守り神がこんな無慈悲な事をするのか?」


悠斗はそう話しながらもテレスからの視線を外さず見ていたが、

表情も眼差しも何1つ変わる事がなかった。


(・・・どうやら俺の予想は間違いではないようだけど・・・)


そう思いながらも未だに押し黙る2人に話していった。


「きっと何かを隠す為に、テレス山脈の財宝伝説が作られた・・・。

 俺はそう思ってるし、それにさ~?」


悠斗の熱の籠った話から突然、その口調が変わった事に戸惑う2人は、

悠斗の視線の先を追ってテレスへと向けたのだった。


すると今まで真剣な眼差しを向けていたテレスがその口を開いた。


「・・・それに・・・何ですか?」


透き通るような声でそう尋ねるテレスに、

悠斗がにこりと笑みを浮かべるとその続きを話していった。


「それに・・・。

 俺達がここに来る事を知っていたテレスが店主に馬を預け、

 俺に渡すように頼んだ・・・。

 それと・・・。

 こうして俺達の前に姿を現した・・・。

 それは俺達に火山竜の願いを叶えてもらう為・・・。

 そう考えると、テレス山脈の財宝伝説がフェイク・・・。

 つまりデマって事にならないかな?」


そう話しながら最後に首を傾げ笑みを浮かべた悠斗に、

テレスは薄く驚き笑みを浮かべながら・・・

「パチ、パチ、パチ」っと拍手をして見せたのだった。


そしてテレスはこう言った。


「流石ですね?

 ですが1つ・・・間違っています」


「・・・ま、まじか?」


「はい、ユウト様に幻獣を預けるよう頼みはしましたが、

 それを引き取ってくれるかどうかは・・・わかりませんでした。

 ですが、話に聞いていた方なら・・・と・・・」


テレスの言葉に悠斗は少し反応を示すと口を開いた。


「・・・誰に聞いたんだ?」


「・・・今は言えません。ごめんなさい」


申し訳なさそうにそう答えるテレスに、悠斗は困った顔をして見せたが、

再び軽く息を吐くとこう言ったのだった。


「ふぅ~・・・まぁ~、色々と訳アリっぽいからな~?

 だからまぁ~・・・今は別にいいや♪」


「・・・・・」


悠斗の言葉にテレスは一瞬悲しそうな表情を浮かべたが、

その事に対して何も言う事はなかった。


だがカロンは・・・違った。

急に立ち上がると声を荒げ始めたのだった。


「テレスっ!てめー・・・何を隠してやがるんだっ!

 それに・・・てめーには聞きたい事があるっ!

 神によって命じられたと言ったな?

 その神ってのは・・・一体誰なんだっ!答えろっ!」


そう怒鳴り声を挙げるカロンにテレスは萎縮してしまい、

小刻みに震えているのが見て取れた。


しかしそのカロンはテレスのそんな姿を目の辺りにしたのにも関わらず、

荒々しく言葉を続けた。


「知ってるかどうかは知らねーがっ!

 俺はこれでも元・神だっ!

 だが、てめーが話したそんな話を俺は今まで聞いた事もねーっ!

 答えろっ!誰が命じたんだっ!」


「っ!」


カロンの威圧にテレスの思念体が一瞬揺れて見せたかと思うと、

飼葉を()んでいた馬が突然嘶き、猛然とカロンへと襲い掛かって来た。


「ヒィヒィーンっ!」


「な、何だっ!?突然っ!?」


馬は前足を振り上げカロンへとその一撃を振り下ろすが、

その攻撃が当たる事もなく、

ひらりと躱したカロンはその拳を放ったのだった。


「てめーっ!身の程を弁えやがれぇぇぇっ!」


「「!?」」


突然の攻防にミレイとテレスは身体が硬直してしまい動けずに、

カロンの拳が馬に当たる瞬間目を背けていると・・・。


「ガシッ!」と言う音と共に悠斗の声が2人の耳に入って来た。


「・・・何してんだよ?」


「ユウトっ!てめーっ!邪魔してんじゃねーぞっ!」


ミレイとテレスはそんな言い争う声に向き直ると、

カロンが繰り出した拳が悠斗によって阻まれていた事に、

安堵の息を漏らすのだった。


そして更にカロンの怒声が静まるこの樹海に響き渡っていた。


「何で止めんだよっ!こいつは俺に喧嘩を売ったんだぜっ!?

 動物にはきっちりと上下関係ってヤツを叩き込むしかねーだろうがっ!」


「・・・お前が理不尽にテレスを責めたから・・・だろ?

 それに上下関係って何勝手な事言ってんだよっ!」


「し、しかしだなっ!こ、こいつは真実を話やがらねーじゃねーかっ!

 俺はただ、誰に頼まれたか聞いただけだろうがっ!」


怒りを滲ませるカロンに、悠斗は鋭い視線をカロンへと向けると、

「ベキっ!」と、言う音と共に、

気がつけばカロンは悠斗によって吹っ飛ばされていた。


「ドサっ!」と言う音を響かせながら、仰向けに倒れるカロンに、

悠斗はその足をゆっくりと進めながら口を開いた。


「カロン・・・お前、何も学ばなかったのか?」


「くっ!・・・ユウト・・・てめー・・・」


上半身を起こしたカロンに向かって歩みを進めた悠斗を見て、

本気で怒っているように感じたカロンは、

背中に冷たいモノが流れる事に気付いたのだった。


「・・・まだやるって言うのなら、俺はとことん付き合うけど?」


「・・・・・」


ゆっくりと歩んで来る悠斗の身体から、

赤銅色の気がゆら~っと立ち昇るのが見て取れた。


「お、お前は・・・お前はテレスの話を受け入れるのかよっ!?

 真実を話さねーこいつの事をよっ!?」


ゴクリと喉を鳴らしながらそう言い放ったカロンに、

悠斗は抑揚がない声で・・・。

ただその声に冷たさしか感じない声でこう言った。


「もうお前は来なくていい・・・。

 物事の背景が考えられないお前とはやっていけない。

 だから・・・」


カロンはこんな悠斗の声を聞いた事がなかった。

それは何度か戦った事があるカロンだからこそわかる事なのだが、

ここまで悠斗が怒りを露にした事は、今まで見た事がなかった。


そんな悠斗に底知れない恐怖を感じたカロンは、

一言発するのが精一杯だった。


「・・・だ、だから?」


再びゴクリと喉を鳴らしたカロンに、

その眼前で足を止めた悠斗が冷たく言い放った。


「・・・消す」


「・・・えっ!?う、嘘・・・だ、だよなっ!?」


「・・・・・」


「ユ、ユウト・・・?お、俺達・・・な、仲間・・・だろ?」


「・・・・・」


全身から恐怖による汗を流しつつ、感情の籠らない視線を向ける悠斗に、

カロンは心底恐怖したのだった。


そしてその悠斗は強く握り締める拳を・・・。

いや、怒りによって震わせるその身体に、赤銅色の気が纏わりついていた。


「・・・わ、悪かったっ!こ、この通りだっ!

 ユ、ユウトっ!ゆ、許してくれっ!頼むっ!」


地面に頭をこすりつけるカロンは必死に謝罪するが、

無情にも悠斗からはこんな言葉が返ってきた。


「・・・今までご苦労さん」


「・・・くっ!?」


その言葉と同時に顔を上げたカロンは悟った・・・。

「・・・終わりだ」と・・・。


そして走馬灯が次から次に頭の中を流れながらこう思っていた。


(俺はチャンスを与えられたのに・・・不甲斐ねー

 すまねー・・・ユウト)


そして最後に聞いた音は、「ベキっ!」と言う衝突音と、

「きゃぁぁぁぁっ!」と言う悲鳴だけだった。







今回のお話はいかがだったでしょうか?


楽しく読んで頂けたのなら幸いですが・・・。


今回はお知らせがあります。


ツイッターなどでも告知済みなのですが、

来週は仕事の都合でお休みさせていただこうかと思っております。


ちょっとずつ書いてはいくのですが、

恐らく・・・間に合わないと判断致しました。


1週空いてしまい申し訳ありません。

次回も頑張りたいと思いますので、応援のほど宜しくお願いします^^



ってなことで、緋色火花でした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「楽しく読める」て感じのラストではなかったですけど(笑) 最近「続きが気になる〜」てところで終わられちゃいますねw
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