閑話 神界の門 前編
お疲れ様です。
今回のお話は閑話となっています、
実はこの話・・・。
悠斗にとってとても重要な出来事に繋がります。
その時が来る日まで、頭の片隅にでも置いておいて下さい^^
それでは、閑話・神界の門 前編をお楽しみ下さい。
ウェズンと共に神界の門をくぐった悠斗だったが・・・。
「あ、あれ?ウェズン達・・・は?」
今、悠斗の目の前には、アシュリナの港町ではなく、
美しく花々が咲き乱れる草原に居たのだった。
「・・・綺麗な景色だな~?」
そんな呑気な悠斗の口から漏れると、
その背後から何者かの気配を感じ振り向いた。
「・・・って・・・神界の門・・・さん?」
振り返った悠斗の目の前には、気品溢れる白き神界の門が居た。
建造物であるはずのその神界の門からは、
人と同じように気配を感じ、気が巡っている事に気付いた。
(あ~・・・やっぱ神界の門さんって・・・生命なんだな~?)
薄く笑った悠斗を見た神界の門は、
和やかな雰囲気のまま悠斗へと話しかけた。
「フフフ・・・突然このような場所にお連れして申し訳ありません」
「いえいえ、こんな素敵な場所に来られて、
俺はとてもラッキーだったと思っていますよ?」
悠斗の返答に少し驚いたように見えた神界の門は、
とても嬉しそうに話を続けたのだった。
「ユウト様・・・。
この前私が話した事を覚えておられますでしょうか?」
「えっと~・・・それって、神界の門さんのお子さんのお話ですか?」
「はい♪覚えていただけて誠に光栄です♪」
「ははは、かなりインパクト強かったので、忘れたりなんかしませんよ?」
和やかな雰囲気の中、とても心休まる会話が続いて行くと、
少し緊張した雰囲気を漂わせ話を切り出してきたのだった・・・。
「ユウト様・・・以前話しましたように、
私の娘と契約をして頂けないでしょうか?」
(どうしたんだろ?言葉がとても強張っている気がする・・・)
「別に俺は問題ないですけど・・・、俺なんかでいいのですか?」
「はい♪貴方様のお人柄に惹かれましたので、
それにユウト様なら、うちの大切な娘を預けても問題ないかと・・・」
(何だろ、問題ない・・・?話に何か違和感が・・・)
「わかりました」
一瞬悠斗は目を細めたが直ぐに笑顔を浮かべながらそう言うと、
神界の門はその娘を呼び出した。
「娘よ・・・恥ずかしがらず出て来なさい」
神界の門の背後でモジモジとしていた小さな・・・とても小さな門が、
恥ずかしそうに悠斗の前に姿を表したのだった・・・。
(・・・ちっさっ!?)
流石に言葉には出さなかったが、神界の門の背後から現れた子は、
高さと幅の大きさがわずか5cmほどしかなかった。
そんな姿を見て少し驚いては見たものの、
その幼き神界の門から流れてくる清らかな気に、
悠斗の心が「癒やされる・・・」そんな雰囲気を感じたのだった。
「やぁ、初めまして。俺の名はユウト。
もし気に入ってもらえたのなら・・・俺と契約してもらえないかな?」
「・・・私でいいの?」
(な、何だっ!?この子からも違和感と言うか・・・。
これって・・・哀しみの感情・・・か?)
「あ、ああ・・・勿論だよ♪」
しゃがみ込んだ悠斗から視線でも外すかのように、
その幼き神界の門は器用に身をよじって見せながらそう答えた。
(・・・き、器用に捻って見せたもんだな?
素材は~・・・一体何で出来ているんだろ?)
そんな事を考えていた悠斗だったが、
幼き神界の門を観察していくと・・・。
「神界の門さん?この子・・・ピンク色なんですね?」
親である神界の門や、その他の神達の神界の門の色は、
白い色であるに対して、何故かこの子はピンク色だった。
「フフフ・・・神界の門の幼き姿は皆・・・ピンク色なんですよ?」
「へぇ~・・・可愛い色なんですね~?あれ・・・?」
悠斗は身を捩る幼き門に、数箇所だけ黒い斑点があるのを見つけた。
「あの・・・?どうして黒い斑点が?
これもひょっとして、幼い頃にあるモノなんですか?」
「え、ええ・・・そのようなモノ・・・です」
悠斗の何気ない質問に、その場の空気が張り詰めたのを感じると、
その雰囲気を変える為、重い空気を感じていないかのように、
話を変えたのだった・・・。
「ところで・・・神界の門の成長ってどうすればいいんですか?」
その質問に神界の門は少し間を空けてから話し出した。
「・・・本来ならば神に使える我々は、
その神により神力をいただき成長するのですが・・・」
そう話し始めた神界の門だったが、少し不安がるような気を感じると、
しゃがみ込んだ悠斗が、幼き神界の門を見つめながら口を開いた。
「この子は・・・皆さんと少し違うって事?」
「えっ!?」
悠斗は幼き神界の門の頭・・・?を撫でながらそう言うと、
悠斗の問いに答え始めたのだった。
「はい・・・この子は皆とは少し違っておりまして、
神力では・・・成長しないようなのです」
「・・・でもそれじゃ・・・この子は成長しないはずなのでは?」
「はい、ですからこの子は未だに幼いままなのです」
「ん~・・・どうして俺にこの子を?」
撫でる悠斗の指に甘えるように、幼きその門はじゃれていた。
「そうですね・・・。
それは、ユウト様の神精力に反応を示したからです」
「・・・えっ?」
「試しに・・・ユウト様の神精力を与えてみて頂けませんか?」
「えっと・・・指先とかでもいいのかな?」
「はい、それで結構です」
悠斗は神界の門からそう聞くと、幼き門がじゃれるその指先に、
神精力を流して行ったのだった。
すると・・・。
「ピシッ!」と、突然幼き門から音が聞こえると、
わずか5cmほどしかない体長に亀裂が走って行った。
その様子に悠斗は顔を引きつらせると、
顔を上げ不安そうな表情を浮かべるのだった。
「こ、これ・・・だ、だ、大丈夫・・・?」
「はい♪ユウト様から与えられた神精力によって、
我が子は成長する為に脱皮しているのです」
「だ、脱皮っ!?神界の門って・・・脱皮して成長するのっ!?」
「はい♪少しずつ脱皮する事によって、私達神界の門は成長して行くのです」
「・・・ま、まじか」
(確か甲殻類って脱皮を繰り返して・・・って・・・同じ感じなのか?)
かなりの驚きを見せた悠斗だったが、
今、まさに目の前で脱皮して行く幼き門を見つめていると・・・。
「・・・ピシッ!ピシッピシッピシッ!」
亀裂が入ったその全身の中から光が漏れ始めると、
パラパラと殻・・・?外壁・・・?が少しずつ崩れ落ちると、
少し成長した幼き門がその姿を表したのだった。
「・・・せ、成長・・・?」
そう言葉を漏らす悠斗の視線の先には、
5cmほどだった幼き門は15cmほどの大きさに成長したのだが、
身体・・・?から発せられた光はまだ消失する事がなかった。
「神界の門・・・ッパねぇ~・・・」
「フフフ・・・私達は主の御力を分けて頂き成長します。
ですから主を持たない門達はいずれ朽ち果ててしまうのです」
「・・・神界の門と言えど、色々と苦労があるのですね~」
悠斗は未だ光を発している神界の門を見つめながら、
色々な質問をしていくのだった。
「神界の門さん、いくつか質問したいんだけど?」
「はい♪いくつでもどうぞ♪」
「えっと、俺の力を大量に与えたらどうなるのか?って事と、
普段食事的なモノはどうするのか?
そして、どのように呼び出せばいいのか?
ん~・・・とりあえず今、思い付く事はこの3つくらいかな~?」
(本当は一番聞きたい事があるんだけど・・・後でいいか・・・)
悠斗は神界の門にそう聞いた時だった・・・。
突然神力を感じ振り向くと、そこには笑顔を向けているシロの姿があった。
「あっ・・・シロっ!」
「えっと~・・・ユウト~・・・様~・・・どうして~・・・?」
そう声を発したシロに、悠斗は少し顔を引きつらせた。
(あれ?昨日は普通に話していたのに・・・元に戻ってるっ!?
あ~・・・また会話で苦労しそうだな~?)
そんな事を思っていた悠斗だったが、雰囲気が少し違っているようだった・・・。
「ユウト様・・・色々とご迷惑をかけてしまい、申し訳ありませんでした」
(・・・普通にしゃべってるっ!?)
「い、いや・・・それは別にいいんだけど・・・」
「有難う御座います。これからは私も生命の為に、
女神の1人として、温かく見守って行こうと思います」
「ああ・・・クロと2人でしっかりと頼むよ。
俺も精一杯頑張るからさ♪」
「はい♪」
悠斗の問いに明るく「はい♪」と答えたシロのその表情は、
神界のアイドル・・・そう呼ばれのに相応しい、とても優しい笑顔だった。
悠斗とシロの間の蟠りは解け、
信頼出来る神の1人として、悠斗は心から笑顔を向けると、
シロの視線が神界の幼き門へと注がれている事に気付いた。
「えっと・・・これは~」
そう言葉が淀むも上手く説明出来ないでいると・・・。
「・・・成長途中の状態ですね?」
「あ、ああ・・・」
「これはユウト様の・・・?」
シロの質問に悠斗が答えようとした時だった・・・。
悠斗の後方に居た神界の門から言葉が流れてきた。
「チタニア様・・・いえ、シロ様?
私がユウト様にお願いして、御力を注いで頂きました」
「・・・そうですか」
シロは幼き門の成長を見つめながら、
何やら考えにふけっているようだった・・・。
そんなシロに少し首を傾げた悠斗が口を開いた。
「シロ・・・?この子って、普通の神界の門じゃない・・・よね?」
「えっ!?」
「!?」
悠斗の問いにシロと神界の門はとても驚いたようで、
シロの時間だけが止まっているかのように、その身体は微動だにしなかった。
「ユ、ユウト様・・・?と、突然どうしてそのような事を?」
(あ~・・・図星っぽいな~?)
「ん~・・・違和感・・・を、感じたからなんだけど?」
「違和感・・・ですか?」
「ああ、この神界の門さんから伝わる緊張感・・・。
そしてこの子から伝わった哀しみ・・・と、言うか・・・
諦め・・・みたいな感情・・・。
そして・・・シロ、あんたから伝わる恐れ・・・?
そんな違和感が俺には感じ取れるんだよ」
シロと神界の門はお互い念話でもしているのだろうか?
口を開くまで少しの時間がかかった。
そして話を終えたのか、シロが悠斗に向き直ると、
突然頭を下げ謝罪を口にしたのだった。
「も、申し訳御座いませんっ!」
「は、はい?」
戸惑う悠斗にシロがポツリ、ポツリと話始めた。
「ユウト様が感じられたように、この子はただの神界の門ではありません。
数百年に1度生まれる希少種・・・です」
「・・・希少種ってどう言う事だよ?」
悠斗の言葉を聞いたシロは、
まだ光を放ったままでいる幼き門を見つめると・・・。
「こ、この子の正体は・・・は、破滅の・・・門」
「破滅・・・って・・・また物騒な名だね?」
驚きを隠せない悠斗に、話を続けたのは神界の門だった。
「数百年に1度・・・この子のような門が生まれるのです。
何故そのような門が生まれるのか、創造神様でさえ・・・わからないのです」
「・・・じゃ、じゃ~今までは・・・?
今まで生まれてきた幼き門達は・・・?」
(嫌な予感が・・・はずれている事を願いたいけど・・・)
この時悠斗はとても嫌な予感がしていた・・・。
その予感がはずれる事を心の底から願っていのだが、
そんな悠斗の予想は的中してしまった。
「今まで生まれてきた幼き破滅の門達は・・・、
その生命の誕生と同時に・・・絶たれて・・・」
「・・・ちっ!」
神界の門から流れ込んでくる悲しみと、
自分の予想が的中してしまった思いが重なって、
悠斗は無意識に舌打ちしてしまったのだった。
そんな悠斗にシロが話を続けた。
そう・・・とても悲しみに満ちた表情を浮かべて・・・。
「神に属する者達には、必ず1体神界の門が居るのです。
1人に対し必ず1体・・・。
ですが破滅の門と呼ばれる門には・・・仕える神はいないのです」
「だから神界の門さんは俺に・・・?」
「・・・そのようですね?」
シロはそう言うと、神界の門へと厳しい視線を向けたのだった。
その視線に神界の門は震えた声で説明を始め、
その話が終わる頃・・・幼き門の成長が終わったのか、
光が消え、そして姿を表したのは・・・漆黒に染まった門だった。
「・・・・・」
言葉を失くした悠斗達だったが、
悠斗は頭を数回振ると、神界の門の話を思い出していった。
その説明とは・・・。
元々神界の門の生命の誕生は、新たな神の誕生を察知すると、
選ばれた神界の門が自らの身体の一部を壊し、
その破片から生まれてくるとの事・・・。
そして悠斗の目の前に居る神界の門は選ばれ、
その身を砕いたまでは良かったのだが、
破片から生まれたのは、黒い斑点を持つ幼き門だった。
我が身を砕き生まれ出た幼き門が破滅の門と知り、
絶望を感じすぐに闇へと葬ろうとしたのだが、
すり寄ってくる我が子を見て、隠れて育てていたらしい・・・。
自分が仕える神・・・つまりシロにも内緒に育てていたのだと言う。
先程のシロの厳しい視線は、そう言う事だったのだ。
悠斗は溜息を吐くと口を開いた。
「破滅の門って成長したらどうなるんだ?」
「そ、それは・・・この世が・・・滅ぶと・・・」
恐る恐る答えるシロに、悠斗はあからさまに睨んで見せると、
厳しい口調で言い放った。
「・・・確証はないんだよな?
それなのに・・・色が違うとか、仕える神が居ないとか・・・
そんなくだらない理由で差別してないよなっ!?」
「そ、それは・・・その・・・」
顔を伏せ俯き唇を噛み締め言葉を飲み込むのだった。
「・・・図星かよ」
冷たく言い放つ悠斗は黒き破滅の門に一度視線を送ると、
神界の門へ向き直り笑顔を向けたのだった。
「・・・ユウト様?」
悠斗の笑顔の意味がわからない神界の門に、
悠斗は再び黒き破滅の門に視線を移しながらこう言った。
「心配いらないよ?あの子とちゃんと契約するからさ♪」
「!?」
「ユ、ユウト様っ!?」
苦々しい表情を浮かべていたシロはそう驚きの声を挙げ、
神界の門はただ・・・驚くだけだった。
悠斗はそんな2人を他所に黒き破滅の門へと、その足を進めた。
言葉なく悠斗の歩みをただ見つめる事とか出来なかった。
そして悠斗は黒き幼き門の元へ来ると、
しゃがみ込み笑顔を浮かべて口を開いた・・・。
「はっはっはっ・・・成長してもまだ15cmくらいなんだな~?
だけど気にするなっ!これからは俺がお前の主だからなっ♪」
悠斗の言葉に黒き破滅の門は驚いたような素振りを見せるが、
すぐに近寄ると、再び悠斗の指にその身体を擦り付けるのだった。
黒き破滅の門に微笑みを浮かべていると、
悠斗の頭の中に、こんな声が聞こえてきた。
「ありがとう♪主様♪」
その幼い心地いい声と感情に、悠斗は満面の笑みを浮かべると、
黒き破滅の門を手に乗せ立ち上がると振り向いた。
「で・・・?こいつと契約ってどうすればいいんだ?」
そう言った悠斗の表情は、先程と全く違った・・・。
とても温かな笑顔だった。
クロ ・・・ ご無沙汰しております。クロです♪
シロ ・・・ は、初めまして・・・シ、シロです。
クロ ・・・ フフフ、2人揃ってなんて・・・初めての事ですわね?
シロ ・・・ え、ええ・・・き、緊張で・・・い、胃が・・・。
クロ ・・・ あらあら~?こんな大役を任されているのに・・・。
シロ ・・・ だ、だって~・・・。
クロ ・・・ 貴女はフアンの皆様の前に出る事が多いはずですのにね?
シロ ・・・ そ、それとこれとは・・・。
クロ ・・・ 緊張なんて必要ありませんわよ?
シロ ・・・ えっ?クロ・・・それはどう言う意味なの?
クロ ・・・ だって~♪あ・の・・・ミランダさえ務まるのですから~♪
シロ ・・・ ああ~♪そうですね♪って事・・・言えませんよ~
クロ ・・・ フフフ♪
ってなことで、緋色火花でした。




