171話 聖域化と水神モード
お疲れ様です。
とりあえずご報告です。
暫くの間、毎週木曜の0:00以降にアップしていきます。
もう少し仕事が落ち着けば・・・
それまでは、週1となってしまいます><
モチベが上がれば変わるとは思いますが・・・w
それでは、171話をお楽しみ下さい。
悠斗達はアヤメが指定した場所に辿り着くと、
ミランダ達に指示を仰いだ。
「で・・・?俺はまずどうすればいいんだ?」
「まずは結界を作ってからユウトの力を注いで行くんだけど・・・。
そうね~・・・アドバイス的な事を言うと・・・。
この本部がある敷地に蓋をするイメージをした方がいいわよ」
「・・・聖域化だもんな~?
大雑把って訳には行かないよな・・・」
そう言葉を漏らした悠斗は困り顔して見せると、
ロジーがイルミネイト本部の全体図を取り出し差し出してきた。
「ユウト様・・・これをお使い下さい。
お話によりますと、この敷地全体を把握すればいいとの事ですので、
全体図があれば問題ないかと思います」
「おお~っ!助かるよ、ロジー・・・ありがとね♪」
「い、いえ・・・礼を言われるほどでは・・・」
満面の笑みを浮かべた悠斗にロジーは顔を赤らめ照れてしまっていた。
全体図を受け取った悠斗は改めて全体図を見ると、
集中しイメージを刻みつけていくのだった。
(敷地に蓋をするイメージ・・・)
悠斗は全体図を見ながら細かく把握していこうとしていると、
カロンが突然悠斗の肩を叩いてきた。
「おいおい・・・そこは適当でいいんだよ」
「・・・はぁ?たった今、大雑把はダメだって・・・」
片眉を釣り上げた悠斗が不機嫌な言い方をすると、
少し慌てたカロンは説明し始めていった。
「え~っと・・・だな?
この本部の敷地全体に蓋をするのは大雑把でいいんだ。
問題はその後だからよ?
そんな緊張なんてしなくていいんだぜ?」
「・・・わかったけど・・・初めてだからな~?
嫌でも緊張はしちゃうんだけどね?」
肩を竦めて見せた悠斗にカロンもまた同じ仕草をして見せたのだった、
するとクロがカロンを押しのけるように悠斗の前に来て話しかけてきた。
「邪魔よっ!どきなさいっ!」
「うおっ!なっ、何だよっ!てめーはっ!」
「フンっ!私はユウト様に話があるのですっ!
邪魔しないで頂けませんかっ!」
「てっ、てめー・・・」
「ユウト様、アドバイスと言っては何ですが・・・。
まず少し練習された方が宜しいのでは?」
「・・・練習?」
「はい、緊張しなくてもいい・・・。
確かにそれはそうなのですが、先程展開された結界を大きく・・・。
いえ、広大に展開しなくてはなりません。
ですからまずは・・・練習と言うことで・・・」
悠斗はクロの話に何度か頷くと、アヤメに視線を送ったのだった。
そんな視線を送られたアヤメは悠斗の意図を察すると、
微笑みながら黙って頷いて見せた。
「・・・有難うアヤメ・・・もう少し待っててくれ」
「・・・はい。ご存分に練習なさってください」
「・・・有難う」
アヤメの言葉に甘えた悠斗は、みんなから少し離れ、
目を閉じ集中していくと、ミランダから声がかかった。
「いい?大雑把でいいと言っても、なるべく結界の厚さは均等にしなさいよ?
じゃないと・・・歪な形の聖域になっちゃうからね?」
(・・・た、確かに・・・。先に言われておいて良かった。
まじで適当に展開するところだった・・・あぶねぇ~・・・)
悠斗は目を閉じたまま口角を上げると、
ミランダは「やれやれ」と言わんばかりに肩を竦めていたのだった。
そして・・・。
「はぁぁっ!」っと、掛け声1つ悠斗の口から言い放たれると、
赤みがかった結界が展開された。
「いいか~ユウトっ!
その結界を徐々に広げて行くんだっ!焦るなよっ!」
カロンの言葉に目を閉じたままの悠斗は黙って頷くと、
少しずつゆっくりと展開した結界を広げて行った。
悠斗はカロンの言葉に頷きながら、
慎重に力を注ぎ結界を広げて行くのだが・・・。
(って言うか・・・か、硬いんですけどっ!?
な、何・・・コレ?全然広がらない・・・。
どうなってんだよっ!?)
焦らず事を運ぼうとすればするほど、悠斗の結界の広がりは、
あからさまに遅くなって行くのだった。
悠斗が苦戦している中、全員が徐々に広がる結界を見ていたのだが、
ただ一人だけ・・・悠斗の様子を見ている者が居た。
(ユウト・・・かなりキツそうね?)
腕を組み凝視するミランダの視線に気付く様子も見せない悠斗・・・。
今の悠斗はそれほどまでに余裕がなかったのだった。
(焦ってもダメだとはわかってはいるんだけど・・・うぐっ。
そ、それにしても・・・か、硬い・・・。
少し大きく力を流せば流すほど、結界の硬さが・・・)
悠斗は目を閉じ左右に広げた両腕に力が入っていき、
その額にはいつの間にか汗が浮かび上がり、
そして流れ落ちて行った・・・。
そんな様子にミランダは見かねて数歩前に進むと声を挙げた。
「ユウト・・・それ以上は危険だからやめなさい」
「・・・えっ!?」
ミランダの言葉に驚いた悠斗が視線を向けると、
その瞳の真剣さが伝わってきた・・・。
「わ、わかった・・・」
その迫力に気圧された形とはなったが、
悠斗自身も自分の結界に違和感を感じていたので、
躊躇いもなく結界の展開を中止したのだった。
そしてミランダの言葉に全員の視線が集まったのだが、
すぐにクロの言葉に全員の視線が再び結界へと向けられた。
「ユウト・・・様?」
「ん?どうかしたか?」
「い、いえ・・・そ、その~・・・もう力は注がれておりませんわよね?」
「ああ・・・そうだけど?」
「では・・・これは一体どう言う・・・?」
クロの胸の前辺りで示された指先に視線を移した悠斗は、
その指先が示した先を追い、天を見上げていくと・・・。
「あ、あれ・・・?」
戸惑う悠斗を他所に全員が空を見上げ首を捻っていた。
「えっと・・・どうして結界が消えないだ?」
悠斗の言葉に目を細めたミランダが見守る中、
カロンが苦笑いを浮かべながら、悠斗に近寄り口を開いた。
「い、いや・・・それは俺達が聞きたいんだが?
どうして中止した結界がまだ存在してんだよ?」
「そう言われてもな~・・・俺にも・・・全然わかんないんだけど?」
広がるでもなく、収縮するでもなく・・・そして消え失せるでもなく・・・。
悠斗の作り出した赤みがかった結界は、今もそこに存在していたのだった。
唖然とする悠斗を見ていたミランダは目を閉じると何やら考え始めた。
(何となく・・・こうなるような気はしてたけど・・・。
ん~・・・これって間違いなく鬼の気が影響してるわよね?
赤みがかった結界の色といい・・・
ユウトのあのキツそうな表情といい・・・間違いないわね)
そう考えたミランダは腕を組み目を閉じたまま、
悠斗にいくつかの質問をした。
「ねぇ、ユウト・・・」
「えっ・・・?な、何?」
「いくつか質問するとけど・・・今回初めて結界を広げたのよね?」
「ああ、こんなにでかくしたのは初めてだけど?
いつもは2人分ほどの広さしかやった事ないけど?」
「そう・・・。
じゃ~今回展開した事で、ユウト自身が感じた事ってあるかしら?」
「感じた事って言われてもな~?」
そう言いながら・・・
悠斗は結界を展開し広げ始めた時に感じた手応えを思い出したのだった。
(そう言えば・・・)
悠斗はあの時感じた事を伝えていくのだった・・・。
「確か、凄く硬かったんだよな~?
抽象的で申し訳ないんだけど、ギチギチって音が聞こえる感じ?
少し広げる度に・・・そんな感覚になったんだ・・・」
「そう・・・。わかった有難う」
ミランダは言葉短くそう答えると、再び考え始めていった・・・。
(やはり鬼の気が妨げになっている事は間違いないわね?
それに・・・ユウトはもう普通の気道は使えないみたいだし・・・
困った事になったわね?)
眉間に皺を寄せたミランダを見た悠斗は、
何か参考になればと口を開くのだった。
「参考になるかどうかわからないけど・・・。
全部が広がりにくい訳じゃないみたいなんだ・・・」
悠斗の言葉にミランダの眉がピクリと反応を示すと、
そのまま話を続けていった。
「均等に・・・そう思いながらやってはいたんだけど、
多分歪つな形になっていたかもな~?
妙に力が注がれる場所があったり、逆に流れにくかったりさ~・・・」
(それって~・・・もしかして・・・?)
何かに気づいたミランダは、目を開きつつ声を挙げた。
「ユウト・・・鬼の気の割合は?」
「・・・わり・・・あい?」
「コクン」と頷いたミランダに、悠斗は首を傾げ眉間に皺を寄せると・・・。
「ああ~・・・にゃるほど♪そう言う事だったのか・・・」
苦笑する悠斗にミランダは笑みを浮かべながらウインクして見せた。
「ふふ♪つまりは・・・そう言う事よ?」
「あははは・・・あ~・・・やれやれ・・・。
そんな事にも気付かなかったなんて・・・」
「ふふ♪」
悠斗の苦笑に対し、ミランダの笑みはとても無邪気だった。
すると2人のやり取りにイライラし始めたクロが不機嫌そうに口を開いた。
「ちょっとっ!そこのお二人さん・・・イチャついてないで、
そろそろ私達にもわかるように、お話して頂いても宜しいでしょうかっ!」
複雑そうな表情を浮かべるクロに、悠斗は苦笑し、
ミランダは「フンっ!」と、そっぽ向いて見せると、
悠斗がミランダに呆れながらも説明していくのだった・・・。
「えっと~・・・つまり・・・神精力と鬼の気の割合って事だよ」
そう説明する悠斗に今度はカロンが頷きながら口を開いた。
「ああ~、そう言う事か?
こいつは基本物事を戦闘メインで考えやがる・・・。
だからそんなユウトが結界を張ると、
攻撃を通しにくいように自然と強固な結界へと展開されちまう。
はっはっはっ!だから硬くて広がらなかったって訳だな~?」
悠斗を見ながらニヤニヤと笑みを浮かべたカロンに、
そこに居た全員がただ納得し頷くのだった・・・。
「みんな・・・ひ、ひどくないっ!?」
そう声を挙げた悠斗だったが、「その通りだろ?」と、
全員が笑う事になったのだった。
そんなみんなに対し、悠斗はブツブツと何かを言いながらも、
何かを思いついたようでいたずらっ子のような笑みを浮かべながらこう言った。
「・・・神衣モードで鬼の気を混ぜたらどうなるんだろ?」
「「「・・・はぁ?」」」
そう声を漏らしたのは3人の神達だった・・・。
突然の発言に神達が固まっていると、悠斗は浮かべていた笑みを消し、
真剣な表情を浮かべるのだった。
そして悠斗は意識を集中すると、全身に神精力を駆け巡らせると、
静かな口調でつぶやいた。
「神衣っ!」
「ブワン」と音が全員に届いた瞬間、悠斗は神衣を纏い神化したのだった。
白銀の衣を纏い、神独特の透き通るような白い肌・・・
それを見た者達は咄嗟に片膝を着き礼を取り頭を垂れると、
悠斗はにこりと笑みを浮かべて見せていた。
カロンは悠斗との戦いの最中、
一瞬だけ・・・その姿を目撃する事になったのだが、
勿論じっくり見るほどの余裕など、カロンにはなかったのだった。
「これがあの時見せた・・・神化ってやつか?」
そう言いながらカロンが悠斗をじっくり観察していると、
クロも歩み寄りながら口を開いた。
「ユウト様・・・でもあの時とはかなり印象が違いますわね?」
「ああ、あの時は雷神モードだったからね?
ははは、今はノーマル・モードってやつだからな~」
「ノーマル・モードですか?」
「ほう~・・・確かに威圧感はねーな?
って事はあれか?まだ色んなモードがあるってか?」
「まぁ~・・・ね」
「お前・・・器用過ぎんだろっ!?」
「ははは・・・あ~あ・・・」
カロンの言葉に苦笑して見せた悠斗に、
そのカロンはニヤリと笑みを向けていたのだった。
そんなやり取りをしていると不機嫌そうなミランダから声がかかった。
「いつまでダベってるのかしら?」
片眉を少し釣り上げていたミランダに悠斗は苦笑いして見せると、
空を見上げ自分の結界に視線を移した。
(さてっと・・・この結界を広げて聖域へと昇華しなくっちゃな~。
でもこのままだとアヤメにどんな影響が出るかもわかんないし・・・。
それに成長も促進させるとなると・・・)
何か考えながら悠斗は視線をアヤメへと向けると、
アヤメを見据えたまま、誰に聞くでもなしに口を開くのだった。
「やっぱりアヤメの事を考えると、水系がいいよね?」
「「?」」
カロンとクロは頭の上に?マークが見て取れたのだったが、
ミランダはクスって笑みを浮かべながらに悠斗の問いに口を開いた。
「ふふ♪そうね?私もその方がいいと思うわ♪」
「そっか・・・わかった」
言葉短くそう答えた悠斗は、呼吸を整え集中すると、
「ブクブク」と音を立てて酸素の泡が悠斗の頭の中に、
感覚として流れ込んできた。
「カッ!」と、目を見開き声を挙げた。
「はぁぁっ!水神神衣っ!
神衣・水神モードっ!」
悠斗か纏っていた白銀の衣が薄い青色に染まりつつ、
ロングドレスのように変貌し、
一瞬にして伸びた長髪の色もまた薄い青色へと変わったのだった。
しっとりとした白い肌・・・そして青いその瞳・・・。
その姿に全ての者達が深く・・・そして熱い溜息を吐き胸を熱くしたのだった。
ミランダもその美しさに少し頬を染めながらも口を開いていく・・・。
「あ、あんた・・・本当に何でもありになったわね?」
「・・・ははは」
苦笑する悠斗の姿は・・・本人は全く気付いていなかった。
そんな姿に全ての者達の熱い溜息も納得できるモノだった。
そして悠斗は視線をアヤメと移し近づくと声をかけた。
「アヤメ・・・今から聖域化するからな?」
「あ、有難う御座います」
(ユウト様・・・あぁ~・・・とてもお美しい・・・)
「ははは・・・俺達は家族だ・・・。
だからそんな礼を取る必要はないんだよ?」
アヤメが言葉を理解する前に悠斗は、天に右手を突き上げて見せた。
そして一度視線をミランダへと移すと、
何かを確認したかのように、ミランダは頷いて見せたのだった・・・。
(まずは水の神精力と鬼の気の割合っと・・・。
もう・・・ちょい気を抑えて・・・うぐっ!
き、きつい・・・な。
これでもまだ・・・足りないのかっ!?)
悠斗は水の神精力と鬼の気の割合を手探りで探りながら、
力を調整して鬼の気の力を水の神精力で中和していった。
そして暫くすると・・・。
「・・・これなら・・・どうだっ!はぁぁぁぁっ!」
悠斗からそう声が漏れると、赤みがかった結界が、
突如無色となり、一気にイルミネイト本部の敷地を覆ったのだった。
「で・・・出来た・・・」
そう悠斗から声が漏れると、一同が立ち上がり歓喜の声を挙げ、
その澄んだ空気に皆が晴れやかな笑顔を見せたのだった。
「わ、私達のこの本部が・・・」
「ロジー様・・・おめでとう御座います」
「な、何だよ・・・空気が・・・美味く感じる・・・」
「おいおい・・・ユ、ユウト・・・これって浄化の力じゃっ!?」
そんな声が上がる中、サウザーはロジーの肩に手を乗せると、
真剣な眼差しを向けながら父として話をしていった・・・。
「ロジー・・・よく聞きなさい。
これで名実と共にこの土地はユウト様によって聖域化された。
だがしかしそれはお前にとって責任重大って事なのだぞ?
お前のその双肩に伸し掛かる責任はとても重大だと言う事を、
しっかりと肝に銘じておきなさい」
「は、はい・・・お父様・・・ロジーは肝に銘じます。
そしてこの地を聖域化して頂いたユウト様の名に恥じないよう・・・。
これからも私・・・いえ私達は精進して参ります」
そう言って頭を垂れるロジーに、サウザーは我が子の成長に感動し、
その瞳を潤るませていたのだった。
そして悠斗はそんな光景を見つつ微笑みを浮かべると、
アヤメに声をかけていく。
「なぁ、アヤメ?こんな感じで良かったかな?
何か不都合があるのなら・・・正直に言ってくれよ?」
そんな言葉にアヤメは頬を赤く染めながらも口を開いた。
「ユウト様・・・。この様な美しい聖域に根を下ろせると思うと、
私は感動で涙が・・・」
そう言いながらアヤメの綺麗な頬を涙が伝って行った・・・。
「何度でも言うけど、俺達は家族だ・・・
だから双子達と一緒に、この世界を支えてくれ・・・」
「はい・・・このアヤメ、ユウト様の名に恥じぬよう、
一生懸命やらせて頂きます」
涙が伝ったアヤメの笑顔はとても美しいモノだった。
そうした感動を見せる中・・・一人の男がニヤニヤと笑みを浮かべ、
悠斗に近づくと目線を下げながら口を開いた。
「ところでユウトよ~?
その立派な双丘ってやっぱり重かったりするのか?」
「はぁ?お前一体何を言って・・・」
悠斗はカロンの視線に促されるまま、その視線の先を見ると、
その胸の辺りには見慣れない2つの丘が自己主張していたのだった。
(えっと・・・これって・・・まさか?)
悠斗は見慣れないその双丘を自ら掴むと、
その感触に思わず声を張り上げてしまった。
「・・・な、なんじゃこりゃぁぁっ!?」
己の姿に悠斗は、これまでにないくらいの動揺を見せたのだった。
「お、俺のかっ、身体が・・・足元がみ、見えない・・・まじかっ!?」
悠斗のその叫びに全員の視線が集まると、
双丘を自ら掴む悠斗の姿に全員が見事に赤く染まった顔を背けたのだった。
(お、男だとわ、わかってはいるのだが・・・
そ、それに俺にはレダと言うか、彼女が・・・・)
(いかーんっ!これは・・・あ、新たな扉が・・・
ギ、ギルマスなんてやってるから女っ気なんて無かったしよ~?
も、もういっその事・・・いやいやいやっ!いかんいかんっ!)
(あ、兄貴・・・う、美し過ぎるぜっ!
い、いや?今は男じゃないから・・・あ、姉御・・・か?)
(ち、父上・・・わ、私の妻に迎えたく・・・)
(バッ、馬鹿者っ!あ、相手はユウト様だぞっ!?
い、いや・・・むしろ・・・わ、儂が・・・)
ゼノ、ウェズン、バカ勇者、ナイアド、グラフィス達が、
禁断の扉を開こうとしていたのは、また別の話だったりする。
そんな馬鹿な男共を他所に、
ワナワナと身体を震わせながら動揺しまくる悠斗に、
ミランダとクロが呆れた表情を浮かべながら近づくと口を開いた。
「水神ねぇ~・・・」
「そう・・・ですわ・・・ね?」
2人の女神は悠斗の周りを回りながら、
そのスタイルなどを厳しくチェックして行くと・・・。
「ま、負けた・・・わ・・・」
がくっ!と地に膝を折ったミランダは苦悶の表情を浮かべ、
地面に何度も拳を打ち付け・・・。
そしてクロもまた・・・。
「こ、この双丘は・・・ミスティ様と同等・・・。
い、いえ・・・ウエストがかなりクビレ・・・。
尚且その均整を考慮致しますと・・・こ、これは・・・!?」
そう言うとクロもまた膝を折り項垂れてしまったのだった。
その女神達の様子に一同が笑いに包まれる中、
アヤメは自分の本体である精霊樹の枝を悠斗に手渡しこう言った。
「ユウト様・・・植樹をお願い致します」
「ああ、わかった」
悠斗はアヤメに導かれるように、枝を持ちその背中に着いて行った。
そしてその背中は・・・微かに震えているのがわかった。
(やっと・・・落ち着けるな?
もう不安と戦う事はない・・・これからは笑って暮らせるからな?)
悠斗は心の中でそうつぶき笑みを浮かべると、
アヤメが指定した場所へ精霊樹の・・・アヤメの本体を優しく植えるのだった。
すると「ふぅ~」っと、息を漏らした悠斗に、
背後からクロの声がした。
「ユウト様・・・まだ終わりではありませんわよ?」
「・・・えっ!?」
「フフ・・・最後の仕上げ・・・この大地と力の循環を致しませんと・・・」
「ああ~・・・そうだったね?」
悠斗はクロのアドバイスに笑顔を向けると、
両手を地面に着き・・・先程完成させた力の割合と同じ量を
その大地へと注ぎ込むのだった・・・。
そんな中、ミランダからもアドバイスが飛んで来た。
「いい~?注ぐだけじゃダメよ?
ちゃんと円運動しているかどうかを確認しながらするのよ?」
「ああ・・・サンキューっ!」
それから後・・・。
無事アヤメをこのイルミネイト本部に根付かせると・・・。
「ミッション・コンプリートっ!
これでやっっっっと冒険者ライフを送れるぞっ!」
飛び上がり喜びを身体で表現した悠斗だったが、
ある一部の者達の視線に気付くと・・・。
「ん?みんな・・・どうしたんだよ?」
顔を赤らめ俯く者達を見ていると、
カロンが再びニヤニヤと笑みを浮かべながらこう言った。
「ユウト~?今のお前・・・身体は女なんだぜ~?
そのスタイルで飛び上がって見せるなんて・・・
フッ・・・お前も罪な男・・・いや・・・女だな?」
そう言った途端・・・カロンは爆笑し始めると、
ワナワナと怒りがこみ上げた悠斗が言葉を・・・吐いた。
「・・・ぶっ殺す」
「わ~はっはっはっ!・・・へっ!?」
悠斗の漏れ出た言葉に殺気を感じたカロンは、
辺り一面が急激に冷え込むのを感じると、思いっきり顔を引きつらせた。
何故なら・・・。
悠斗の身体から冷気がゆらゆらと立ち昇り、
その身体を中心に水蒸気が立ち込めていったからだった。
立ち込めた水蒸気にカロンがその視界が利かなくなった時だった・・・。
一瞬・・・ほんの一瞬だけその水蒸気の雲の切れ間から、
顔を覗かせた悠斗の瞳から青白い殺気が立ち昇っていたのだった。
「ヒィッ!」
声をを挙げたその刹那・・・。
「はぁぁぁぁっ!ウォーター・スパウトっ!」
悠斗の繰り出した左拳から水の竜巻が巻き起こり、
カロン目掛け放たれると、一瞬にしてカロンは弾き飛ばされ、
気が付けば・・・「ベタンっ!」と、遠くから衝突音が聞こえ、
何かが地へと落下して姿が微かに見えたのだった。
それから暫くして・・・。
悠斗はみんなと別れを交わすと、
ウェズン達と共に、アシュリナの港町へと帰還したのだった。
悠斗を見送ったロジー達はどこかしんみりとしていたのだが・・・。
「ユ、ユウトーっ!俺を置いて行くなんてよーっ!
そりゃねーぜぇぇぇっ!」
顔が腫れ上がったカロンにロジー達は爆笑しながら、
クロに頭を殴られ渋々と頭を下げたカロンに、
心の隙間を埋めてもらったような・・・そんな気がしたロジーだった。
そしてアヤメはこの大地に根付く為、
暫くの間、その枝と共に深い眠りに着くのだった・・・。
悠斗の水神モードを目撃した者達はと言うと・・・。
これを境に水神のファンクラブが結成され、
水神モード時の悠斗の名を・・・
「ユウコ」と密かに名付けられる事になった事を、
悠斗本人は知る由もなかった。
ミランダ ・・・ 久しぶり~♪ミランダよ♪みんな元気にしてた~?
カロン ・・・ ういーすっ!カロンだ・・・って、何だ、お前かよ?
ミランダ ・・・ はぁぁ~っ!?何であんたにそんな事言われなきゃいけないのよっ!
カロン ・・・ はぁ~・・・俺はてっきり水神モードのユウコちゃんかと・・・
ミランダ ・・・ あ、あんた・・・モテなさ過ぎてユウトに・・・?
カロン ・・・ いやいやいやっ!俺はアマルテア一筋だっ!
ミランダ ・・・ じゃ~どうしてユウトの名が出てくんのよ~?
カロン ・・・ いや~だってよ?見た目はいい女だろうが?
ミランダ ・・・ あんた・・・本当は誰れでもいいんじゃ・・・?
カロン ・・・ 違う違うっ!見た目がいいから眼福にはなるだろうがよ?
ミランダ ・・・ ああ~・・・基本神の衣ってノーブラだもんね~?
カロン ・・・ だ、だろ~?ミスティならお断りだがよ~ユウコちゃんなら・・・
ミランダ ・・・ ふんっ!このゲスがっ!邪神槍炎舞陣っ!
カロン ・・・ ぎゃああああっ!や、焼けるーっ!がくっ
ミランダ ・・・ ざまぁぁっ!
ってなことで、緋色火花でした。




