165話 スピリットの意思と天然女神
お疲れ様です。
最近某サイトで「世界の料理ショー」と言う動画を見まくっていますw
かなり昔の動画のようですが、とても面白かったです^^
こう言う番組って今はないですよね~・・・。
それでは165話をお楽しみ下さい。
そしてイルミネイト教団本部では、
クトゥナ達が悠斗にこれまでの行動を全て話し終えたところだった。
「・・・やれやれ」
悠斗はそうつぶやくと、勇者を見つめ思案していくのだった。
(確かにこいつの様子はおかしい・・・。
それなのにどうしてあの独特な匂いがしないんだっ!?)
悠斗が顔を顰め悩んでいると、
その思いを察したミツチが話しかけてきた。
(マスター・・・ごめんなさいっ!
あいつと一緒に居たのに・・・わ、私、全然気づかなかった・・・)
苦悶した表情を見せたミツチに、悠斗は微笑んで見せるが、
その瞳までは笑えていなかったようだった。
(マスター・・・)
ミツチが心配そうに悠斗を見ていると、
聖剣デスティニーから光のスピリットが飛び出て、
悠斗の前まで移動してきた。
「どうした・・・んだ?」
(あ、あの・・・ミツチお姉ちゃんだけが悪いんじゃなくて。
ぼ、僕も・・・僕も全然気が付かなかったから・・・だ、だからっ!)
(・・・ピカりん)
「ピっ、ピカ・・・りん?
ま、まぁ~いいか・・・とりあえず・・・いいか・・・」
悠斗は「ピカりん」の愛称に疑問を持ってしまったが、
まずは勇者をと、その視線を向けたのだった。
そして悠斗の視線の中には、
勇者を心配して悠斗へと視線を向けるその仲間達の顔があった。
すると悠斗は軽く息を吐くと、目を閉じ思考の海へと潜って行った。
その姿を初めて見たクトゥナ達は焦り始め、
悠斗に声をかけようとすると・・・。
「待って下さいっ!」っと、アヤメがクトゥナ達に声をかけた。
そしてそのアヤメの後を追うように、ロジー達が駆け寄ってきたのだった。
視線が集まったアヤメは静かな口調でこう言った。
「今のユウト様はより集中する為、
思考の海へと深く潜っておられます」
「アヤメ殿・・・それは一体どう言う・・・?」
ダンケルがそう言うと、アヤメは微笑みを浮かべ話を続けた。
「ユウト様は思考力を上げる為、外界の音を全て閉ざしておられます。
ですから・・・今は黙って見ている他はないのです」
アヤメの言葉に一同が黙って頷くと、
沈黙を守って悠斗の帰還を待っていた。
(どうして臭わない?それが謎なんだけど・・・。
もしかして餡の中に混ぜる時、すりつぶした・・・とか?
はっはっはっ・・・いやいや、それは考えにくいな。
すりつぶしたら成長も何もないだろうし・・・。
鑑定が使えないから効果はちゃんと出ている訳で・・・。
もしかして、餡の成分の何かが影響して負の種が弱体化したとか?
んー・・・考えられない事もないけど・・・それは流石にな~)
悠斗はかなりの時間を費やして思考の海に潜っていたが、
ふと目を開けると一言項垂れながらこう言った。
「・・・ははは、さっぱり・・・わからないっ!」
悠斗が顔を上げると、そこには苦笑交じりの表情があり、
不安を感じたクトゥナが悠斗に声を掛けた。
「ユウト・・・じ、じゃあこいつは・・・?」
クトゥナの表情から悠斗は気持ちを汲み取ってはいたのだが、
どう答えていいかわからなかったのだった。
「・・・ごめ・・・」
悠斗が謝罪を口にしようとした時だった・・・。
「ユウト様・・・手はあります」
「えっ!?まじでっ!?」
冷静な口調で答えるアヤメに対し、悠斗は思いもよらない発言に、
思わず声が裏返ってしまった。
恥ずかしそうにしながらも、アヤメに尋ねてみると・・・。
「フフ、鑑定で調べる事が出来ず、
また・・・匂いもわからないのなら・・・精霊力を使えば宜しいのでは?」
アヤメの発言に悠斗は再び考え始めてしまった。
(精霊力で・・・ん~・・・。
俺の神精力は精霊力の上位互換だから・・・出来るだろうけど、
俺がやってしまっていいのかな~?
どうせなら光のスピリットにやってもらった方がいいと思うんだけどな~)
悠斗はそう思いながら視線を光のスピリットへ移しつつ、
アヤメに念話でそう伝えると、「クスっ」と笑みを浮かべていたのだった。
(ユウト様は勇者とスピリットの絆をと・・・そうお考えなのですね?)
(ああ、寿限無は嫌なヤツじゃない・・・。
だけど色んなモノが足りていないのも事実だからね。
だからこれを機会にスピリットの絆を深めてもらって、
勇者として成長して行けば・・・って思ってるんだけどね)
(しかしながらユウト様、光のスピリットだけでは・・・)
(ああ、それはわかってる。
だったらさ?同じスピリット同士でなら・・・上手く行くかもね?)
悠斗とアヤメの念話でのやり取りが終わると、
笑みを浮かべ光のスピリットに向き直った。
「なぁ、光のスピリット・・・。
これはお前の仕事だと思うんだけど・・・どう思う?」
悠斗がそう尋ねると、光のスピリットは動揺しているのが見て取れたが、
力強い意思を滲ませると、悠斗に対しこう言ってみせたのだった。
(ほ、僕が・・・僕がやるよっ!)
「ああ、でも今のお前だと力が足りないって事はわかるよな?」
(う、うん・・・)
「じゃ~どうすればいいと思う?
お前の願いだけじゃ当然助からない・・・
お前の決意があっても力が足りない・・・なら、どうする?」
悠斗は光のスピリットに対し、その気弱な心を修正しようとしていた。
勿論それは机上の空論ではある。
だが変革と言うモノは、
ある日突然訪れるモノだと悠斗はそう理解していたのだった。
何故なら・・・悠斗自身がそうであり、変わろうとしなければ、
何も変わらないのは事実なのだから・・・。
悠斗は根気強く光のスピリットの返事をただ黙って待った。
周りの者達はこの時がどれだけ長く感じたかはわからないが、
ただ・・・黙って見守るしかないのだ。
光のスピリットは周りを眺めつつ、悠斗の言った意味を深く考えていた。
(願いだけでも、決意だけでも・・・ダメなんだ。
ぼ、僕はここで変わらないと・・・な、何かをしなくちゃ・・・
何も変わらないままだ・・・。
僕も一歩前へ・・・進まなくちゃいけないんだ・・・。
どうすればいい・・・か?
・・・そ、そんなの決まってるよっ!)
光のスピリツトが強く光始めると、ミツチに視線を向けてこう言った。
(ミツチお姉ちゃんっ!ぼ、僕に・・・力を貸して下さいっ!)
(・・・今更何言ってんのよ?
出向・・・?とは言え、私も今はこいつの中に居るんだからね?
って言うか、どうして最初からそう言わないのよっ!)
(ご、ごめんなさい)
ミツチは少し怒っては見せたものの、微笑んで了承したのだった。
そして2人は悠斗の前にやって来ると・・・。
(マスター・・・私に何が出来るかわからないけど、
出来る限りの事をやりたいの。
だから、教えて下さいっ!)
(ユウト様っ!勇者は・・・ジュゲムは僕の相棒ですっ!
だ、だから・・・僕の手で助けたいんだっ!
お願いしますっ!その方法を・・・教えて下さいっ!)
すると悠斗は2人に笑顔を向けると、
2人の精霊力を同調させ、一本のうねりとする事を教えたのだった。
(うねり?)
「ああ、負の種の弱点は精霊力であるのには間違いないと思う。
だけど一人の精霊力だけじゃ、細くて軟弱な力でしかない。
だから2人の力を同調させて、一本の太い精霊力に変えて、
こいつの身体に流し込めばいいはずだ。
精霊力には弱い・・・だからこそ、必ず反応が出るはずだ」
2人のスピリットは悠斗の説明に大きく頷くと、
ハッキリと大きな声で返事をしたのだった。
((やってみますっ!))
2人のスピリットは念話で意思疎通を行いながら、
精霊力を同調させて行った。
そして繊細な制御を光のスピリットが担当し、
ミツチが負の種の反応を探るレーダーの役割をしたのだった。
2人のスピリットが集中して行く中、
ククノチが悠斗に念話で話しかけてきたのだった。
(マスター・・・オイラ負の種の場所わかったんだけど?)
(・・・ま、まじか!?)
(う、うん・・・どうしよう?教えた方がいい?)
悠斗は少し考えると、ククノチにこう返事を返したのだった。
(いや、俺達が何んでも教えてしまったら、意味ないだろ?
まぁ~寿限無が大変な事はわかってるけどさ、
でもまぁ~ある意味・・・身から出た錆びだからな?
つらいだろうけど、ここは自分の相棒を信じて耐えてもらわないとな?)
(そうだな?マスター・・・わかったぜ)
悠斗は口角を上げつつ2人のスピリットを見守っていたのだが、
気になるものはしょうがないので、聞いてみる事にした。
(ところで・・・負の種の場所ってどこ?)
(えっと~・・・目・・・なんだけど?)
(目か~・・・なるほどね~・・・・・・んっ!?まじかっ!?)
(う、うん)
(目に負の種がっ!?あ~・・・どうすればいいんだろ?
まじで・・・わかんないんですけど?)
悠斗が静かに項垂れ思い悩んでいると、
突然その空間に響き渡る声に、悠斗は顔を引きつらせてしまった。
そしてその声を聞いた2人のスピリット達も、
手を止めてしまう事になってしまった。
「あ、あの~・・・?お取込み中~・・・申し訳~ありませんがぁ~」
「げっ!シ、シロっ!?」
悠斗のその声にカロンもまた顔を引きつらせていると、
響き渡るゆっくりとそしてまったりとした声を聞きつけ、
ゼノとレダの他、ウェズン達も外に飛び出して来たのだった。
そして悠斗を見つけるや否や駆け寄り声をかけてきた。
「ユウト様っ!い、今の声ってっ!?」
「あ、ああ・・・ゼノ、そのまさかだよ」
「あ~・・・そう・・・ですよね」
ゼノも悠斗の醸し出す空気を察したのか、
苦笑していたのだった。
すると・・・。
「あの~?聞こえて~います・・・かぁ~?」
悠斗はその声に対しカロンに視線を移すと、
気持ちを察したのか、代わりにカロンが答えた。
「よぉっ!チタニアっ!久しぶりだなっ!俺だ・・・カロンだっ!」
「・・・・・」
カロンの声に何も返答がないのを気にしたカロンがもう一度繰り返すのだが、
返事がなく、悠斗と二人首を傾げていると・・・。
「カロン・・・さんって~・・・どなた~・・・なのでしょう・・・か?」
「「・・・へっ!?」」
(あ、あれっ!?ま、前にも確かこんな事が・・・。
お、俺・・・カロンだよな?元だけど・・・武神カロンだよなっ!?)
悠斗とカロンは再び顔を見合わせると、
頭を抱え込むカロンに同情するのだった。
そして面倒臭そうにしながらも悠斗がシロに対し返答すると・・・。
「ああ~っ!やっぱり~・・・そこに~・・・
居たんじゃ~ないですかぁ~?」
「あ、ああ・・・ご、ごめん」
「フッフッフゥ~♪こちらから~・・・全部~・・・見ていたので~
そこに~・・・居る事は~・・・知って~・・・いた・・・・」
相変わらずのその遅すぎる口調に、
悠斗はまたもや苛立ちが募ってしまい、
シロの言葉が終わらないうちに・・・。
「・・・とっととこっちに来いっ!」と、叫んでしまった。
「ひ、ひゃいっ!?」
そう返事をしてから5分後の事だった・・・。
漸く神界の門が姿を現し扉が開くと、
シロがその姿を・・・あ、あらわ・・・さなかった。
顔の筋肉を痙攣させながら、悠斗は腕を組みつつイライラしていると、
その10分後・・・扉の端に手をかけた、シロの指だけが現れたのだった。
「お、おい・・・シロ・・・とっとと出て来いよっ!
こっちは時間がないんだよっ!だからとっとと出て来いっ!」
「は、はい・・・」
そう言いながらも中々出て来ないシロに、
悠斗が神界の門まで歩み始めると、門の中から声が漏れてきたのだった。
「チ、チタニア様っ!?そろそろ行きませんと、
さ、流石にこれでは・・・チ、チタニア様っ!?
そんな所でしゃがみ込まないで下さいっ!
は、早く行かなければ・・・使徒様に失礼ではありませんかっ!?」
「だっ、だって~・・・あ、あの方・・・怖いんですもの~。
す、すぐに~・・・怒るし~・・・それに~・・・」
「そ、それに・・・何ですか?全部おっしゃっていただかないと、
私もどうしていいか困りますっ!?」
「えっと~・・・それに~・・・・・」
「ど、どうされたのですかっ!?」
「・・・私~・・・何を言おうと~・・・していたのか~・・・
リアーナさん・・・知りませんかぁ~?」
長い・・・長い時間をかけて門の中から声がそう漏れて来ると、
突然「スッパーンっ!」と、音が聞こえた後・・・。
「知るかぁーっ!この天然女神ーっ!」
「いっ、いたぁーいっ!?」
と、声が響いて来たのだった。
その一連の会話を聞いてたクトゥナ達は、顔を見合わせると、
一目散に神界の門まで駆け出したのだった。
そしてその門の外から叫び声をあげた。
「そっ、そこに居るのは・・・リアーナなのかいっ!?」
「リアーナっ!そこに居るのよねっ!?」
フォルティナとクトゥナが力一杯そう叫ぶと、
その開けられた神界の門の中から、
ひょっこりとリアーナが顔を覗かせたのだった。
「えっと~・・・み、皆さん、お久しぶりです。
も、もう少しだけ待っていて下さいね?」
「あ、ああ・・・ま、待つけど・・・
待つのは別にいいのよ?だ、だけど・・・」
クトゥナが苦々しい表情を浮かべながらそう言うと、
リアーナは顔を少し引きつらせながら、再び顔を引っ込め、
何やらシロと一悶着あったようだった。
そしてそれから30分後、花の匂いと共に、2人が扉から出てきたのだった。
「おっ、お待たせ致しました・・・あはは」
「うぅぅ・・・リアーナさんが・・・私を・・・虐めるのです」
そう文句を言いながら神界の門から出てきたのだった。
すると、最後に姿を現したシロは、階段を降りると・・・。
「きゃあっ!?」
「ドサッ」っと、再び階段を踏み外し、顔面から落ちてしまったのだった。
「・・・・・」
(まぁ~展開はわかってたけど、それにしてもさ・・・
突っ込みどころが有り過ぎるし・・・それにこれは・・・)
一同は全員が金縛り状態になっており、
その光景に言葉など出るはずもなかった。
だが、ここに一人・・・たった一人だけ、空気を読まない男が居た。
シロが顔を押さえながらゆっくりと立ち上がり、
神界の門に振り向き言葉を発しようとした時だった・・・。
「ううぅぅぅ・・・だ、だからあれほど階段を・・・」
「おい・・・シロ」
「・・・えっ?」
悠斗に振り向いたシロを無視するように、
悠斗は神界の門に頭を下げてこう言った。
「神界の門さん・・・お疲れ様でしたっ!
あとは俺がこいつを何とかしますので、お任せ下さいっ!」
神界の門に頭を下げた悠斗に、一同が心の中でこうつぶやいていた。
(いやいやいやっ!それは門だからっ!ただの門だからっ!)っと。
だが全員のその突っ込みは無に帰す事になってしまったのだった。
何故なら・・・。
(フフフ・・・流石はユウト様ですね?
私のようなモノに対してまで、礼節を重んじるのは・・・)
神界の門からそのような声が聞こえてくると、
全員が再び固まってしまったのだった。
「いやいや、前回お会いした時の光景を見ていますからね?
ここで声をかけないのはありえないですから♪」
そう言って悠斗は神界の門に微笑んで見せると、
何故かその門は・・・薄いピンク色に染まってしまっていたのだった。
(コホン、ユウト様・・・もし良ければこの私の子と、
契約をしていただけませんでしょうか?)
「・・・えっ!?そんな事・・・出来るんですか?」
(はい、勿論出来ますよ?)
それから少しの間、神界の門と話した悠斗は、
明日、その門のお子さんと契約を結ぶことになったのだった。
そしてこの後、その出来事を目の当たりにした者達は、
口々にこう言っていた。
「ユウト様が神を超えた件について・・・」・・・と。
そして悠斗もまたこう思っていた。
(これってもしかして・・・どこ〇もドアを・・・ゲットだぜっ!)と。
こうしてドタバタとしたシロの登場から、
2時間ほど時が無駄に過ぎたのだった。
神界の門が姿を消すと悠斗から笑みが消え視線を勇者へと向けると・・・。
「茶番は終わりだ・・・」
そう声を発し、シロに鋭い視線を向けるのだった。
カロン ・・・ ういーす、カロンだ。
悠斗 ・・・ ども、悠斗です。
カロン ・・・ あっ、お前知ってるか?この原作者プチスランプらしいぜ?
悠斗 ・・・ へぇ~・・・あの人もそう言うのあるんだね?
カロン ・・・ 何でもな?仕事のストレスがかなりヤバイってよ?
悠斗 ・・・ あ~気持ち・・・よーく分かるよっ!
カロン ・・・ ん?何だか意味深だな?
悠斗 ・・・ 俺も休みないしね?冒険者ライフの夢が・・・。
カロン ・・・ なるほどな~・・・原作者と同じってか?
悠斗 ・・・ 同情するよ?あっ・・・今度ケーキの差し入れでもっ!
カロン ・・・ おっ!?それはあれか?袖の下ってヤツだな?
悠斗 ・・・ いやいや、人聞き悪いってば・・・やれやれ
カロン ・・・ はっはっはっ!俺も待遇改善を求めて袖の下を・・・。
悠斗 ・・・ だから違うってばっ!
ってなことで、ストレスMAXの緋色火花でした。




