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異世界転移 ~魔を狩る者~  作者: 緋色火花
第二章 港町・アシュリナ編
214/404

閑話・勇者一行編 負の種 後編

お疲れ様です。


今回で勇者一行の閑話は終わります。

そして来週からは本編に戻りますので、

今後とも応援宜しくお願いします。


あと、来週の予定を「活動報告とツイッター」に記載しておきますので、

興味がある方はご確認下さい。


ブックマークや感想など、宜しくお願いします^^

あと、ツイッターのフォローなども宜しくお願いします^^


それでは、閑話・勇者一行編・後編をお楽しみ下さい。

ミューレ村に滞在する事になった勇者一行は、

村長のはからいで小屋を借り、眠りに着いていると・・・。


闇夜に溶け込みながら、黒装束の者達4人が、

勇者達が滞在する小屋付近にその身を潜めていた。


ハンドサインで意思疎通を行い、、

その黒装束の者達は散開しその姿を消した。


黒装束の一人が小屋へと忍び寄り、

窓から部屋の中の様子を伺うと再び姿を消し、

(ふところ)から小さな魔石を取り出すと、

青い小さな光を空へと向けたのだった。


するとそれを合図に数分後の事だった・・・。


その黒装束の者達が一斉に勇者達が眠る小屋へと侵入したのだった。



黒装束の者達が勇者一行の小屋へ侵入する3分前・・・。


妙な気配に気付いた「聖剣・デスティニー」に宿っていた、

光のスピリットが目を覚ました。


(こ、この気配は・・・!?)


光のスビリットは、この気配を勇者に伝えようとしたのだが・・・。


(あ、あれっ!?ぼ、僕・・・まだマジックボックスの中にっ!?)


聖剣は冒険者ギルドに居た時から、

ずっとマジックボックスの中に居たのだった。


(ダ、ダメだ・・・こ、この中じゃ・・・)

勇者との意思疎通が出来ない光のスピリットは、

この異常な気配を知らせる手段がなかったのだった。


するとまたもや何かを感じると、

感覚を研ぎ澄まし、外の気配を探っていくと・・・。


(こ、これって・・・魔石のっ!?

 ど、どうしようっ!このままじゃ・・・このままじゃ・・・)


光のスピリットが焦り始めた時だった。


(・・・うぅーん・・・)


悠斗の指示で勇者の身体に出向していたミツチが起きてきた。


(よ、良かったっ!ミツチお姉ちゃんっ!)


(うぅーん・・・な、何よ?そんな大声出して・・・)


眠そうに目を可愛く(こす)るミツチに事の説明をすると・・・。


(えっ!?ほ、本当なのっ!?)


(は、はいっ!急いで勇者様に知らせないとっ!)


(ならどうして早くコイツに知らせないのよっ!)


(む、無理なんですっ!

 ぼ、僕はまだ、マジックボックスの中なんですよっ!)


(は、はぁぁーっ!?)


現状を把握したミツチは急いで勇者の身体から出ると、

何度も勇者の顔を叩きつつ声を出したのだが、

スヤスヤと熟睡している勇者を起こす事が出来なかった。


(こ、このバカ勇者ーっ!ほんっとに使えないわねっ!

 あっ!そ、そうだわっ!あの・・・ハ、ハゲならっ!)


ミツチは急ぎダンケルのもとへ駆け寄ると、

思いっきり耳元で大声を出した。


(ハゲーっ!て、敵が来るわよっ!

 お願いだから起きてぇぇーっ!)


ミツチの願いが通じたのか、ハゲ・・・

もとい、ダンケルは飛び起きたのだった。


「ぬぅわぁぁぁっ!い、いい一体何なのですかっ!?」


耳を抑えながら飛び起きたダンケルの視線の先に、

淡く光る何かが見えると・・・。


「えっ?・・・ひょっとして・・・ミツチ様ですかな?」


(良かった~♪って、言っている場合じゃないわっ!

 ハゲっ!もうすぐ此処に敵が入ってくるわよっ!

 早くみんなを起こしてっ!早くっ!)


「・・敵、とはまぁ~何ともまた・・・ハッハッハッ!

 ・・・んっ!?て、敵ーっ!?」


ダンケルは慌ててクトゥナを起こすと、そのまま勇者の元へ駆け寄った。

クトゥナは気配を察知すると、フォルティナの元へ急ぎ叩き起こしたのだった。


何とか二人を叩き起こすと、ミツチから事情を聞き、

武器を取り出し息を殺して襲撃を待つ事にしたのだった。


するクトゥナが気配察知を再び使用すると・・・。



「来るわよ。ダンケル・・・みんなっ!いいわね?手はず通りにっ!

 まずは一発ぶちかましてちょうだいっ!」


クトゥナが口角を上げると、ダンケルは親指を突き出して見せた。

そしてクトゥナのカウントダウンが始まった。


「4・3・2」


(まずこの(わたくし)めが、派手に先制攻撃とっ!)


「・・・1」


「ドカッ!」っと、裏口を蹴破る音が聞こえる雑妙な瞬間、


「今よっ!」


クトゥナの合図でダンケルが派手に魔法をぶっ放したのだった。


「フレイムバレットォォっ!」


凄まじい炎の(つぶて)が、裏口から侵入した、

黒装束の者達に襲い掛かった。


「なっ!なん・・・」


「バ、バカなっ!」


「ぐぁぁぁぁっ!」


「ドッドッドッドッ」っと、炎の礫が侵入者を襲う中、

正面から侵入してきた者達には、クトゥナとフォルティナが迎撃し始めた。


その間勇者は隠蔽を使用し、ダンケルが破壊した裏口から外へと出ると、

木の陰でこの状況に理解が追い付かない者が、

硬直してその場に立ち(すく)んでいた。


勇者はそのまま突っ込み剣を振りかぶった時だった・・・。


(殺してはいけませんよっ!)と、突然ダンケルの念話が送られてきた。


「ああ・・・そうだなっ!」


勇者は咄嗟に聖剣の柄を黒装束の男の首筋に打ち下ろし、

情報を吐かせる為、生け捕りにしたのだった。


「ふぅ~・・・俺達を襲うなんて、いい度胸してるぜっ!」


勇者は気絶している男の腕を掴むと、

そのままズルズルと小屋の中へと引きずって行った。


ダンケルの魔法で焼け落ちた小屋に残る火を後始末すると、

聖剣の力を使用し小屋一軒分ほどの結界を作り出した。


「しかしなんだね~・・・」っと、フォルティナが話始めると、

全員の視線がフォルティナへと集まった。


「私達がまさか襲われるなんてね~?」


その言葉に続くように今度はクトゥナが話始めた。


「そうね・・・それにしてもこいつらは一体っ!?」


そう言うと勇者が気絶した男の頬を何度か叩くと、

黒装束の男が意識を取り戻したのだった。


「・・・こ、此処は?」


「おや?お目覚めになられたようですな?」


黒装束の男がその声の主に視線を移すと、

鼻先に今にも当たりそうなくらい、

ダンケルのニヤっとした顔がその男の眼前にあったのだった。


「ヒィッ!・・・ぎゃああああっ!ハ、ハゲた化け物だぁぁぁっ!」


「だっ、誰がハゲた化け物ですかっ!し、失敬なっ!」


ダンケルは怒りをあらわにしたのだが、

仲間達は怒るどころか逆に爆笑していたのだった。


「あ~っはっはっはっ!ダ、ダンケル・・・。

 起き抜けにあ、あんたの顔がそんな近くあったら・・・プププゥーっ!」


「わ~はっはっはっ!こ、この男の気持ちにもなってごらんよ?

 と、突然ハゲが眼前に居たら・・・わ、私も叫んじまうよっ!」


「はっはっはっ!ダ、ダンケルっ!あ、あまり笑わすんじゃねーよっ!」


クトゥナにフォルティナまでもが腹を抱えて笑っている状況に、

囚われた黒装束の男はポカーンと口を開けて固まってしまっていたのだった。


すると大きな溜息を吐くミツチへと視線が集まった。


(はぁぁぁ~・・・あんた達ね~?今はそんな状況じゃないわよ?

 早くこいつを調べないと、現状がわからないでしょっ!?)


ミツチがそう怒って見せると、勇者達はまるで躾けられた犬のように、

ミツチの言葉に従ったのだった。


勇者が捕らえた男の元へと行くと、胸ぐらを掴みつつ質問していった。


「さ~て・・・吐いてもらおうか?」


威圧する勇者に動揺しつつもその男は(かたくな)に、

口を割ろうとはしなかった。


すると今度はダンケルが不気味な笑みを浮かべると、

アイテムバッグから、いかにも怪しげなクリスタルの小瓶を取り出した。


「・・・ねぇ、ダンケル・・・それって・・・?」


ダンケルはそう言葉を漏らしたクトゥナに合図を送ると、

わざとらしい演技で怪しく話を始めた。


「フッフッフッ・・・これはですね~?

 例え神であっても口を割ってしまう・・・それほどの魔法薬なのですよ?

 フッフッフッ・・・名付けてっ!

「神でも口を割ってしまうポーションっ!」なのですよ~♪

 それとこれには解明不能な・・・毒薬が・・・

 フフフ・・・なんともまぁ~無残に・・・クックックッ・・・」」


ダンケルはその男の顔にその小瓶を近づけながらそう話した。


「や、やめ・・・や、やめてくれぇーっ!

 は、話すっ!話すから殺さないでくれっ!」


(おや?ん~・・・意外と簡単に落ちましたね?

 私としては~・・・もう少し楽しみたかったのですが・・・残念ですね?)


(あ~・・・あんなので落ちるんだ~・・・)


クトゥナとダンケルがそう思う中、

まだ何も聞いていないにも関わらず、男はべらべらと話し始めた。


詳しく話を聞くと・・・。

勇者一行にある「紙袋に入った魔法薬」を飲ませ、

こちらの言いなりになるようこの小屋に侵入し、

誰か一人を人質にする予定だったようだ・・・。


「誰でもいいって・・・あんた達、よくもそんな曖昧な手で・・・」


呆れるフォルティナに仲間達も頷いていた。

すると男は俯くと話を続けた。


「お、俺はこいつらとの面識がないんだ・・・

 だから・・・い、言われた通りにするしか・・・」


「ちょっと待てよっ!お前の仲間達じゃないのかっ!?」


「ああ、俺は最近仲間に加わった新参者なんだ・・・。

 俺はこの土地のもんじゃねーし、

 この地に連れて来られたのは昨夜なんだ。

 金に釣られて・・・

 だ、だから連中の名すらロクに・・・」


そのまま押し黙ってしまったその男に、

ダンケルは再び口を開き話を聞くと・・・。


洞窟のすぐ近くに小屋があり、

今日そこで勇者達を襲う計画が立てられた事、

そして集まった者達のリーダー格の男が年配の男性だと言う事だった。


勇者達はその男が所持していた、

「紙袋に入っていた白い小瓶の魔法薬」をダンケルが鑑定すると・・・。

「魔素」と呼ばれる魔界にある毒素が使用されているとの事だった。


すると黒装束の男が話始めた。


「お、俺ビ、ビビっちまってよ?

 そ、その紙袋の中・・・まだ、開けてないんだ・・・。

 気丈に振る舞っては見せたがよ・・・もう怖くて・・・俺・・・」


そう話すと涙をボロボロと流し泣き崩れるのだった。



そして夜明け前・・・。

勇者達は打ち合わせすると村長達に会い、事情を説明したのだった。

村長はかなりの驚きを見せ暫く何か考えると、こう提案してきたのだった。


「今日リアーナの治療の為、医神・サーマン様がお越しになられます。

 ですから、その「魔法薬」と言うモノを、

 一度見ていただき話を聞かれてはいかがでしょうか?」


村長の提案を聞いた勇者達は、話し合いの結果、大きく頷くのだった。



そして昼過ぎ近くになると・・・。


村の高台に神界の門が姿を現し「ギィイィー」っと、その扉が開いた。

その門の中から出てきたのは「医神・サーマン」本人のようだった。


※ 医神・サーマン 男 189cm 金髪ポニーテール。

  神特有の肌の白さとゴールドの瞳、温厚だが怒ると・・・。

  研究に没頭するあまり、人族の世界にあまり興味を示さないが、

  薬物や魔法薬が絡むと、空気を読まずしゃしゃり出てくる神だが、

  人族からの信仰は厚い。


神の出迎えにと、村人達と勇者一行が片膝を着き出迎えると、

サーマンの視線が勇者達を見て止まった。


「ん?君達は確か・・・?」


すると勇者が代表して頭を垂れたまま口を開いた。


「お初にお目にかかります。

 私の名は・・・ ペネトレー・マハナ・エル・ドリエント・マカフォリアス・

 マグナ・シルオルティウス・カローナマイトス・イサ・レゼントと、申します」


医神・サーマンは何度か瞬きすると、困った表情を浮かべこう言った。


「き、君の名・・・な、長いんだね?」


「は、はい・・・そ、その・・・」


「プッ!」


「プププッ!」


この瞬間、勇者の仲間達は思わず吹き出してしまったが、

サーマンは笑顔を浮かべながら口を開いた。


「ははは・・・え、えっと~・・・た、確か君達ってチタニアの?」


「はっ!チタニア様に選んで頂いた勇者パーティーで御座います」


そう口を開いたクトゥナは現状を話し、サーマンの協力を仰いだのだった。

少し考えると医神・サーマンは、再び笑顔を向けると・・・。


「事情は分かりました。ですが私はここに治療に来たのです。

 それが終わってからでもよいのなら・・・」


「「「「感謝致します、医神・サーマン様っ!」」」」


「あははは・・・も、もう少し気楽に話してもらえると・・・、

 わ、私としては嬉しいのだがね?」


苦笑しつつそう答えた後、サーマンはリアーナの治療へと向かうのだった。


リアーナの治療の間、勇者達は村長達と今回の件について話が行われる中、

医神・サーマンはリアーナの容態を神眼を使い診察していた。


(・・・ふむ、この前診察した時よりはいいが・・・)


ベッドに横たわるリアーナから視線をはずし、

一人物思いにふけっていた。


(この娘の魂そのものが少しずつ削られていく・・・。

 それにこの娘の神経にまで悪影響を及ぼしてしまっている。

 私もこんな症例は初めてだ。

 負の魔力と魔素・・・やっかいなモノを作ったもんだな・・・

 3年は持つはずだが・・・何とか特効薬を・・・)


サーマンはリアーナに服を着るよう言うと、

背を向けつつ陽気に振る舞って見せた。


「記憶の方はまだ暫く時間がかかるだろうけど、

 それを気に病んではいけないよ?

 病は気から・・・って言うからね~・・・

 笑顔でいる事が大切なんだよ~?

 あ、それとこれを・・・」


リアーナは医神・サーマンの話に返事をしながら服を着ると、

サーマンより手渡された薬を受け取ったのだった。


「・・・サーマン様、有難う御座います」


それから少し雑談すると、勇者一行をここへ呼ぶように頼むのだった。


「サーマン様、どうも有難う御座いました。

 また来月も宜しくお願い致します」


「ああ・・・焦らないようにね?」


「はい♪」


部屋を出て行ったリアーナの背中を見送ると、

サーマンは机に手を打ち付けると、拳を握り身体が僅かに震えていた。


(何故だっ!そもそもあれはなんなのだっ!

 負の魔力と魔素の混合だとっ!?

 この神の・・・わ、私が知らない薬物が存在しているなんてっ!

 い、一体あいつはいつどこでそんな知識をっ!?

 チタニアめっ!小賢(こざか)しい事をっ!)


怒りが吹き出したサーマンは、我に返ると心を落ち着かせていくのだった。

そしてそれから暫くすると、勇者達が小屋へとやって来た。


勇者達は挨拶も一通り済ませ事の説明をしたのだった。

そして黒装束の男から回収した「白い小瓶」を受け取ると、

鑑定を使用しその中身を分析していった。


「この魔法薬が何か・・・って言う事だね?」


「はい」


鑑定結果が出たサーマンはその鑑定結果に険しい顔をして見せたのだった。


「・・・サ、サーマン様?」


「あっ、ああ・・・済まないね。

 これ自体にはそれ程強くない負の魔力が込められている。

 効果としては、幻覚を見せるようだが・・・。

 ただこの魔法薬の製作者が・・・チタニアなのはどう言う事かな?」


「「「「!?」」」」


「そ、そんな・・・チ、チタニア様が何故っ!?」


「わ、私の鑑定では・・・ま、魔素としか・・・。

 私もまだまだ未熟と言う事なのでしょうな?」


「そうだね?神の鑑定ともなれば、いつどこで誰が・・・それすらも分かる。

 だけどこれは・・・」


驚きを見せる勇者達と、ダンケルが見つけられなかった事実に、

勇者達は言葉を詰まらせ黙っていると・・・。


「トントンっ!」と、小屋のドアを叩く音がしたのだった。

慌ててサーマンは薬を懐へと仕舞うと、返事をし中へ入るように促した。


そして小屋の中へと入って来たのは、バハットだった。

申し訳なさそうな表情を浮かべつつ、

ハバットは視線を勇者へと向けると口を開き話始めた。


「お忙しいところ申し訳御座いません。

 勇者様・・・先程村の人達からお話を伺いまして・・・」

(お、おのれ・・・まさか失敗しておるとは・・・の)


「・・・話?」


(やはり様子を見に来て正解じゃったな?

 でなければこのわしがあの御方に・・・)


バハットの顔を見たダンケルが1つ・・・訪ねた。


「お話の前になんですが・・・

 バハットさんは先程村の人達と一緒におられませんでしたな?」


「ああ~・・・それはもうすぐ収穫時期を迎える作物がありましてな?

 それが終わってからと思っておりましたが、なにせもう年ですので、

 思うように身体が動かずあの場所へは行けませんでしてな?」


「ほほう・・・ご苦労が忍ばれますな♪」


「ははは・・・全く年には・・・」

(ええぃっ!いつまでどうでもいい話をさせるのじゃっ!)


「これこれ、その様な話をしていては・・・」


内心ダンケルの話に苛立ちを覚えたバハットは、

表情には出さず話を切り出すタイミングを計っていた。

するとサーマンから助け舟が出される形となり、

バハットは思わぬ好機に笑みを浮かべると、

サーマンに対して一礼し、話を始めるのだった・・・。



「は、はい・・・。

 じ、実は・・・その「白い小瓶」の魔法薬なんですが・・・」


そう話始めると、勇者は一瞬眉間に(しわ)を寄せるも、

サーマンへと視線を送り、小さく頷いたのを確認してから口を開いた。


「白い・・・小瓶?・・・うむ、そうか・・・分かった。話を聞こう」


「有難う御座います。

 では、これでも召しあがりながら話を聞いて頂ければと・・・」


バハットはそう言って、籠の中から草餅を取り出し、

それぞれに配って行った。

(フフフ・・・これで勇者は・・)


サーマンと勇者達は草餅に舌鼓を打ちながら、

バハットの話を聞いていくのだった。


その話の内容とは・・・。


4日前・・・偶然通りかかった山小屋の裏手で、

何者かが若者に白い小瓶を渡しているのを見たとの事だった。

その若者はそれを受け取るとすぐにその場を去って行ってしまったが、

その後、白い小瓶を渡した者がフードを取ると、

姿を現したのは・・・運命神・チタニアだったと言う話だった。


話を聞き終えた者達は唸り声をあげ驚いていた。

そして最初に口を開いたのは勇者だった。


「んんー・・・まさかとは思うが、あのチタニア様がな・・・」


そう言って勇者は全員に目配せをすると一同が頷いて見せた。


バハットの話に結論が出ないまま、村長達と合流する為に外へ出た。

そして再びクトゥナとダンケルに目で合図を送ると、

勇者とフォルティナ・・・そしてサーマン達と別行動を取った。


暫くの間、何気ない会話をバハットとしていると、

突然サーマンから念話が送られてきた。


(勇者君、この後はどう動くのかな?)


(はい、この者が「黒」だとはもはや明白でしょう。

 ですから村の者達の前で事実を明るみに出そうかと・・・)


(うむ、それはいい考えですね?

 私も出来る限り協力したいと思います)


そして勇者達が村人達が待つ広場へと来ると、

村長達がサーマンへの礼を終え勇者に口を開いた。


「勇者様、何かおわかりになりましたかな?」


「ああ・・・分かった事がいくつかある」


「ほほう・・・それで?」


「フフフ・・・村長?俺達を襲った者達・・・

 いや、それを指示したヤツなら分かったぜ」


「ほ~・・・それはそれは・・・して、それは誰なのでしょうか?」


何度か頷きつつ村長の目は好奇心に溢れていると、

建物の陰からクトゥナが姿を現し指を差しながらこう言った。


「私達を襲わせたのは・・・そこに居る、バハットよっ!」


「なっ、なんですとーっ!?」


村人全員の視線がバハットへと集まり、焦りの色が濃くなってきた。


「わ、わしが・・・い、一体どうしてこのわしがっ!?」


冷や汗を流しながらもバハットが釈明していくと、

クトゥナが笑みを浮かべながらバハットを睨みつけていた。


「・・・ダンケルっ!出番よっ!」


「はいはい・・・人使いが荒いですな~」


そう言って、建物の隅から黒装束を纏った男を引っ張り出すと、

ダンケルはバハットを指差しながら口を開いた。


「あの人で間違いありませんね?」


「は、はいっ!間違いありませんっ!

 あ、あの爺さんが俺達に勇者を襲って貴方達の誰かに、

 あの薬を飲ませろと・・・指示を出した爺さんですっ!」


バハットはこの後、色々と言い訳を試みるも全て論破されてしまった。

勇者は鋭い視線をバハットへ向けつつ、

小屋で聞いた疑問点を口にしたのだった。


「まず、どうしてあんたが「白い小瓶」の事を知っていたんだ?」


「そ、それは・・・あ、あの男に白い小瓶をっ!」


すると黒装束の男が大声で叫んだ。


「お、俺が紙袋を渡されたのは・・・あんたからだっ!

 そ、それに俺は・・・紙袋の中身を開けてねぇーっ!」


「なっ!?」

(バ、バカなのかこいつはっ!どうして中身を確認・・・

 えぇいっ!もういいっ!そ、それよりも・・・ま、まだなのかっ!?

 勇者に飲ませた・・・「負の種」はどうなっておるのだっ!)


バハットが押し黙ったのを見た勇者は話を続けた。


「つまりそう言う事だ・・・爺さん。

 あいつは紙袋の中身が白い小瓶の魔法薬だとは知らなかったんだよっ!

 知っているのは・・・渡した・・・あんただけだ・・・爺さんっ!

 それにな?チタニア様は4日前・・・

 俺達の・・・いや、冒険者ギルドの仲間達とずっと一緒に居たんだよっ!

 因みにだがよ・・・爺さん。

 村長には「魔法薬」としか話してねーからな?

 どんな言い訳をしたって無駄なんだよっ!」


「・・・バカな」


そう告げられたバハットは力なく膝から崩れるのだった。


バハットは近くの街の衛兵に渡すため連れて行かれる途中、

勇者が目を閉じたまま口を開いた。


「爺さんには・・教えておいてやる。

 あの魔法薬なんだが・・・。

 サーマン様が言うには、それほど強い魔法薬ではないみたいだぜ?」


「そ、そんな事って・・・ハハハ・・・わ、私は一体何の為に・・・」


バハットはそう言うと、項垂れたまま連れて行かれるのだった。


無事問題が解決した村人達やサーマン・・・そして勇者達は、

その晩、宴が(もよお)され盛大に騒いでいた。


すると勇者が立ち上がりどこかへと行こうとすると、

フォルティナが声をかけてきた。


「どこに行くんだい?」


「い、いや・・・ちょっと・・・」


フォルティナはそんな勇者に顔を向ける事なく口を開いた。


「もうリアーナには関わらないって決めたろ?

 もう私達が関わっていいヤツじゃない・・・わかってるよな?」


「・・・ああ、そうだな?ああ・・・そうだ・・・関わっちゃいけねー。

 ちょっと酔っちまったみたいだ・・・

 妙に胃がムカムカしやがるからよ、今日はもう寝る・・・」


「・・・そうかい?無理すんじゃないよ?」


「・・・ああ、わかってる。おやすみ」


「・・・あいよ。おやすみ」

(そんなに飲んでないはずなのに・・・どう言う事?)


勇者はそう言うと身体をフラフラさせながら戻って行ったのだった。


そして翌朝・・・。


勇者は少しフラフラしながらも医神・サーマンを見送り、

リアーナや村長・・・そして村人に別れを告げ港町へと戻って行くのだった。

村に滞在中、勇者一行はリアーナとの接触を最低限にすると決め、

この村で幸せを望んでの事だった。


(・・・これで良かったんだ)・・・と。



そして高速馬車の中では・・・

勇者がずっと青い顔をして調子悪そうにしていたのだった。


(お、俺・・・おかしいのか?)


するとミツチがその疑問に反応を示した。


(あんた・・・お酒って言うよりも、仲間と別れた事で精神的に参ってるのよ。

 それだけあんたにとって仲間が大切って事なのかもね?)


(ははは・・・俺って自分で思っていたよりも、

 仲間想いなヤツだったって・・・事か?笑わせるぜ・・・)


淋しげな笑みを浮かべ眠りについた勇者の馬車は、

港町へと向かい走って行くのだった。



だがこの時・・・。

勇者の身体の中では、負の種が静かに活動を始めていたのだった。

その活動を、水のスピリットであるミツチと、

光のスピリットは感知する事すら・・・出来なかったのだった。


そしてイルミネイト教団本部では、

クトゥナ達が悠斗にこれまでの行動を全て話し終えたところだった。


「・・・やれやれ」


悠斗はそうつぶやくと、勇者を見つめ思案していくのだった。



緋色火花です。


今回の閑話で悩みました・・・。

前・中・後とするかと。><


今思うと・・・分ければ良かったーっ!

と、内心思っておりますが、どうでしょうか?


もう少し詳しく書きたかったのですが・・・。



ってなことで、緋色火花でした。

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― 新着の感想 ―
[一言] そうですねー。。。 いつもより駆け足な気がしました。 読みながら、 悪い状態だった時のチタニアが連れて行った村や、 関わったサーマンを、本当に信じていいの?と、 その根拠にイマイチ納得で…
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