番外編 その男・・・武神につき
お疲れ様です。
今回はカロンのお話となります。
悠斗と戦った後のお話です。
楽しんで読んで頂けたら、非常に嬉しいです^^
ブックマークや感想など、宜しくお願いします^^
それでは、番外編をお楽しみ下さい。
「ピチョ、ピチョ、ピチョ」
妙に体が冷え目を覚ますと、そこは薄暗い牢の中だった。
水滴の音と寒さに目を覚ました俺は、その理由を思い出した。
「ああ~そうか・・・俺はあの人族に負けたんだったな?」
少し意識もハッキリした時、俺は自分の立場を理解した。
跪き両手は左右に広げられ、
手首と足首には壁から伸びた鎖が巻き付いていた。
「フフフ・・・そうだった俺は・・・逆賊だったな?」
薄暗い牢の中で、俺は涙を一粒石畳の床にこぼしたのだった。
俺の名はカロン・・・誉れ高きノーブルの武神・カロンだ。
昔の俺はそれこそ己の志も高く、
ノーブルに生きる生命達からも崇め奉られていた。
あの頃は・・・本当に俺も神として人族達を平等に愛していた。
だが、いつの頃からだろう?
俺がこんなに腐ってしまったのは・・・。
俺は己に抱いた志すらも忘れ、
ただノーブルに巣食う害悪ども・・・
いや、人族達に嫌悪感を抱くようになっていた。
ある日の事だった。
創造神ラウル様より招集がかかった。
このノーブルの世界を見守る神達が円卓を囲み、
創造神様の到着を待っていた。
「一体創造神は我々を集めなんの話があると言うのだっ!
俺は暇じゃないんだっ!いい加減にして欲しいもんだぜっ!」
そう声を張り上げたのは、闘神・エグゼ。
筋骨隆々だが、単細胞でただの力自慢のくだらない神だ。
「・・・少し落ち着け、エグゼ。
貴様は短気過ぎる・・・それは神としてどうなのよ?
筋肉だけの単細胞なんだから・・・」
そう言って暴言を吐くエグゼを嗜めたのは、
海を統治する神、海神・ラフォーネ。
高飛車ではあるが、才能を持つ者をこよなく愛する女神だ。
つまり、才能在るヤツは好むが、それ以外のヤツは・・・。
「ラフォーネ、お前もエグゼの事をとやかく言う資格はないと思うが?
お前は見てくれの才能にしか興味を示さない。
人族と言うモノは、もっとより深い生き物なのだぞ?」
そう言ってラフォーネを嗜めたのが、魔法神・アリエル。
見た目はただの偉そうなチビだが、その実力は計り知れん。
俺にとって敵としたくない相手だ。
そしてその他には、剣神・アマルテアが円卓に鎮座しているが、
こいつは他の神達の戯言などは気にしない。
寡黙・・・いや、ただ己の剣を磨き愛する神・・・。
頑固だが信用出来る神の一人だ。
ただ、こいつは・・・剣神は俺の同士だからな、
余計に目立つ行動を起こすとは思えない。
そして少しの時間が流れ・・・。
扉を開け中に入ってきたのは、創造神・・・ラウル。
そしてその後ろから控えるように入ってきたのは、
この神達のNo・2・・・時空神・ミスティ。
俺はこのラウルとミスティが気に入らねー・・・。
何かある度に、愛する人族、神達が愛情を与え育む子達・・・。
何かあれば壊れた玩具のようにその言葉を繰り返す・・・。
・・・反吐が出るぜ。
そして時空神・ミスティ・・・。
こいつは俺にも正直よくわからねー・・・。
普段は温厚な態度をしているが、時折氷のような表情を浮かべやがる。
それに・・・だ。
ミスティの実力は計り知れねー・・・。
俺の予想では、魔法神・アリエルなど足元にも及ばない実力を持ってやがる。
そんな神達が囲む円卓で話し合われたのが・・・。
「うむ、空席は目立つな・・・あれほど参加しろと言っておいたのにっ!
まぁ~仕方がない・・・このまま始めるか・・・。
そしてここに集まった神達には聞いてもらいたいっ!
今こそ我ら神達が一丸となって、愛する子らを守らねばならないのだっ!」
そんな事を創造神ラウルは言いやがった。
その言葉に、今まで口を閉ざしていたアマルテアが口を開いた。
「失礼ながらラウル様、人族達を守る価値を私は見出せませんが?」
険しい形相でそう言うと、それに続きエグゼもまた同意を示した。
そんな神達に溜息を吐いたラウルはこう言った。
「君達の考えはよくわかった。
今まであれほど言ってきた私の言葉を聞かないようならば、
この私にも考えがあるっ!
反対する全ての神達に対し・・・その力を剥奪するとここで宣言するっ!」
当然神達からの抗議はラウルへと集中した。
横暴だ、なんの権利が・・・、狂ったかっ!?等、
数々の暴言を浴び続けたラウルだったが、
どうやらその意思は固いようだった。
俺はアマルテアへと念話を送ると、
とりあえずの形を取り、ラウル側に着く事にした。
今はまだ・・・時期尚早であると・・・そう判断した。
そしてアマルテアも同意を示した訳なんだが・・・。
俺とアマルテアの意見は同じだった。
そのきっかけとなったのは・・・人族達の殺戮と蹂躙。
事もあろうか、人族達は・・・地上界において最も大切なモノの1つ。
精霊樹の独占だった。
聖域に侵入し、殺戮と略奪を行った。
我ら神の代弁者たる聖教祖までも聖域にて惨殺・・・。
こんなモノ・・・許されるはずもないっ!
己の欲の為に、精霊樹は切り倒され、
その恩恵を我がモノにしたのだ。
今まではまだ・・・堪える事は出来た・・・。
だがな?もう限界だ・・・人族に生きる価値なし・・・。
俺とアマルテアはそう心に誓った。
それから俺達はラウルの願いを聞いたフリをしながら、
のらりくらり・・・と、躱していった。
そんな時だった・・・。
ある日アマルテアから伝言を受け取ると、
俺はその場所へと向かう為、そして地上界へ降りる為・・・
擬体を収める「神装空間」へと向かった。
罠があるとも知らずに・・・俺はのこのこと・・・。、
「あいつめ・・・またどうしてラグラなんだ?」
ラグラ・・・それは嘗て精霊樹がそそり立っていた聖域。
今はもう薄汚れ汚染された大地がある場所。
俺はぶつぶつ言いながら俺専用の擬体へとその身を移すと・・・。
「グギァーっ!」と、擬体の中に・・・何かが居た。
その時、俺は襲われ気を失ってしまったらしい・・・。
気がついた時には、ベッドに横たわる俺を心配そうに見ていた、
アマルテアの表情が俺の目の前にあった。
「ア、アマルテア・・・お、俺は一体っ!?」
「む、無理をするなっ!カロンっ!
今のお前は神力の半分程を失っているのだぞっ!」
「なっ、何だよっ!どう言う事だ・・・アマルテアっ!」
無理矢理体を起こした俺は、突然目眩を起こし、
そのまま再び眠りについた。
それから数日後・・・。
俺は全快するとアマルテアを探した。
そしてあいつを見つけた俺は、あの時の説明を求めたのだが・・・。
「ん?何の事だ・・・カロン?」
「い、いや・・・だって、お前、病室で・・・」
「ああ~・・・あの時の事か?
医神・サーマンに聞いたところ、神力欠乏で発作が起こったらしいぞ」
「・・・し、神力欠乏症だぁ~?
な、何だよ・・・それ!?初めて聞いた病名だぞ!?」
「私も知らなかったのだが、あのサーマンが言った事だ、
間違えるはずもない・・・だが、神力は戻ったようだな?」
「あ、ああ・・・」
「あっはっはっはっ!カロン・・・もう無茶はするなよ?」
「・・・気をつけよう」
俺はこの時・・・何故だか気付かなかった。
実に妙な話なのだがな?
あの時のアマルテアは確かに声を上げ笑ったのだが、
今思うと・・・あの時の表情は・・・
決して笑っているとは言えないモノだったな。
って事は・・・だ。
あの時のアマルテアは既に・・・何者かの手に落ちていたと言う事か?
そうカロンが薄暗い牢の中で思い出していると、
「コツッ、コツッ、コツッ」っと牢へ向かって誰が近づいて来た。
(・・・誰だ?)
すると、そこに現れたのは・・・・
「ラ、ラウル・・・様!?」
「やぁ、カロン・・・目覚めたようだね?気分はどうだい?」
拍子抜けするほど、ラウルの飄々とした声に、
カロンは言葉を失った。
「んっ?どうしたんだい?具合でも・・・?」
「い、いや・・・いえ、大丈夫・・・です」
「はっはっはっ!いいよ、別に敬語なんかいらないからさ、
普段通りの言葉でしゃべってくれ」
「・・・わ、わかった」
カロンがそう答えると、ラウルは突然牢を開け中へと入ってきた。
「ラ、ラウルっ!どうして中へ・・・!?」
驚くカロンを他所に、中へ入り石畳の上に座ると、
笑顔を浮かべつつカロンに手をかざした。
すると、両腕を広げられ拘束させていた鎖を消滅させたのだった。
「これでよしっと・・・」
そうつぶやくとラウルはマジックボックスから、
銀のトレイに乗った食事を取り出した。
「腹・・・減ってるよね?」
「あ、ああ・・・」
ラウルに手渡された銀のトレイを受け取ると、
2人揃ってその場で食事を取り始めた。
「・・・ラウル、どう言うつもりだ?」
「まぁ~その話は後にしよう・・・。食事が不味くなるからね?」
「・・・わかった」
2人はそのまま食事を取り、紅茶をすすめられ飲み干すと・・・。
「うむ、じゃ~少し話をしよっか?」
「・・・な、何が聞きたいんだ?」
ラウルは少し腕組みをしながら考えると、その口を開いた。
「そうだね~・・・とりあえず君の処遇から話そうか?」
その言葉にカロンは反応すると、溜息を吐いた。
それと同時にこうとも思った。
(何故だ?何故・・・俺の背後関係を聞かないんだ!?)
「・・・俺から情報を聞き出さなくていいのか?」
「はっはっはっ!そんな必要はないよ」
その言葉を察したカロンは、アマルテアの事を聞いた。
「アマルテアも捕まったのか?」
「ああ、悠斗君のおかげでね?
何事もなくって言えば語弊はあるけど、彼女は捕らえたよ」
「・・・そうか。捕らえたって事はつまり・・・無事なんだな?」
「ああ、勿論無事だよ?悠斗君には迷惑をかけてばかりだよ」
「・・・あの人族か」
そう声を漏らすと一瞬・・・刹那の一瞬・・・。
ラウルの神力が膨大に膨れ上がったのだが、
何事もなかったかのように、笑顔を向けるラウルの姿があった。
カロンはその力の強大さに「ゴクリ」と喉を鳴らしたのだが、
ラウルは興味なさそうに話を切り出した。
「君の処遇は・・・死罪だ」
ラウルの言葉にカロンは息を吐きながら苦笑した。
「ん?驚かないのかい?」
「ああ、そりゃそうだろ?ラウルに反旗を翻したんだからな?
それにお前の使徒であるユウトの仲間達をも傷つけたんだ。
死罪と言うのは俺にでも予想できるさ」
「・・・では聞こう・・・武神・カロン」
「・・・なんだ?」
「君もまた・・・覚えていないのだろ?」
「・・・ああ~そう言う事か?
そうだな・・・面目ない話だが・・・その通りだ。
神装空間までの記憶しかねーよ。
肝心な記憶は・・・ほぼないと言ってもいい・・・」
「ふむ、やはり君もそうか・・・」
カロンの話を聞いたラウルは再び腕を組むと考え始めた。
その様子を伺うカロンだったが、
どこかもう、どうでもよくなっていたのだった。
(俺が今更どうジタバタとした所で、何も変わりはしねー・・・。
ただ・・・最後に神として誰かの役には立ちたかったが、
俺にそんな資格は・・・フフッ、ねーからな?
いや、違うな?本音を言うと俺は・・・ユウトに借りがある。
だからそれを返したい・・・手伝いたい・・・のか・・・俺は?)
苦笑し含み笑いを浮かべるカロンにラウルの視線が止まっていた。
(はっはっはっ・・・彼も悠斗君の虜になっちゃったみたいだね~♪
ならばだ・・・。僕は彼の役に立とうじゃないかっ!
ここで僕の偉大さを感じてもらえれば・・・悠斗君もきっと、
僕を見直してくれるだろうからね~・・・
って言う、冗談は置いておいて・・・彼には手駒がいるからね。
一人でも多い・・・強い仲間が必要だ)
そしてラウルはカロンに口を開いた。
「カロン・・・君に選択肢をあげよう」
「・・・せ、選択肢!?」
「ああ、このまま死罪を選ぶか・・・もしくは・・・だ。
悠斗君の力になるか・・・だ。
それを君に選ばせてあげようじゃないか♪」
ラウルの提案した選択肢に唖然としたカロンは、
胸が熱くなるのを感じるのだった。
「もし・・・だ。
もし君が悠斗君を選ぶのだったら、
期間限定の生命ではなく、人族としてその生涯を真っ当するといい」
「・・・いいのか?」
「・・・ただし、神としての能力は勿論剥奪させてもらう。
ただ、同じ人族として・・・悠斗君の力になればいい」
「・・・・・」
「突然の事で君も気持ちの整理があるだろうからさ、
また後日来るよ?
その時、君の返事を聞かせてもらおうじゃないか」
「・・・わかった」
その夜の事だった。
カロンは悠斗について考えると、
いつの間にか己が笑顔でいる事に気付くのだった。
(ははは・・・嘘だろ!?
この俺があいつの事を考えて笑ってた・・・だと!?
俺はそんなにあいつの力になりたいってのかっ!?)
俺はこの時、まさに驚愕だったんだ。
ユウトの事を考えると、俺も一緒にあいつと戦いたい・・・
そう思っている俺が居たんだ。
まさに・・・驚愕だったぜ・・・。
俺はユウトの力になると決心して、ラウルが再びやってくるのを待った。
・・・待ったんだ・・・物凄く待った。
だけど・・・あのバカ創造神・・・来ねーでやんのっ!?
あいつ・・・絶対に俺の事を忘れてやがるっ!
苛立つ日が暫く過ぎると、
俺はラウルの話が夢じゃないかと思うようになっていた。
(ははは・・・俺は自分に都合のいい夢を見ていたのか・・・。
なんて情けねー男なんだ・・・)
すると・・・。
「コツッ、コツッ、コツッ」と再び足音が響いた。
そして俺の前に現れたのは・・・ラウルだった。
ラウルは俺に笑顔を向けると・・・。
「ごめーんっ!約束忘れてた~♪許して・・・ね♪」
「はぁぁぁぁぁーっ!?
てめーこのっ!ラウルーっ!
俺がどんな思いで待っていたと思ってんだよっ!
そ、それを・・・わ、忘れてただァァァーっ!?
あ、ありえねーだろっ!
てめーっ!ちょ、ちょっとこっちに来いよっ!
ぶっ飛ばしてやるからよぉぉぉーっ!」
そんなやり取りがあったんだが、俺はめでたく牢から出され、
神を剥奪され地上へと追放処分となった。
神界の門をくぐる時・・・。
「カロン・・・悠斗君の力になってやってくれ。
彼はトラブルに愛されちゃってるからさっ♪」
「わかったよ・・・俺が何とかしてやるよ。
このまま地上に降りて、あの樹木の下でユウトを待てばいいんだな?」
「ああ、そう時間はかからないはずだからさ♪
宜しく頼むよ」
「・・・わかった」
そう言われ俺は神界を後にした。
だが、ラウルはアマルテアの情報を何も教えてはくれなかったんだ。
考えて見ればそりゃ~そうだよな?
俺はもう・・・神じゃねーんだから・・・よ。
さらばだ・・・神界よ・・・そして武神・カロンよ。
そして俺はラウルが指定した樹木の下でユウトを待った。
待った・・・待った・・・んだ・・・。
し、しかも・・・2週間もだっ!
ラ、ラウルのやつ・・・ま、またかっ!?
ラウルーっ!てめーっ!
ぶっ飛ばしてやるから今すぐ降りてきやがれぇーっ!
まぁ~・・・当然、降りて来るはずもねーんだがな?
雨の日も、風の日も・・・俺はユウトが通るのを待った。
あのバカ創造神のずさんな計画に俺は踊らされる事になった。
その間、俺は自分のステータスを確認し、
ユウトを待ちながら訓練をして時間を潰していた。
来る日も来る日も、俺は武を磨き己を鍛えた。
そんなある日の事だった。
何気なくステータスを見た時、俺は驚いた。
それは・・・俺は人族・・・25歳の人族だったのだが、
創造神の加護の他に・・・だ。
俺のステータス刻まれた称号は・・・「武神」だった。
えーっと、今回はですね、
ストーリー上、書いておいた方がいいと思いまして、
番外編と言う形で書かせて頂きました。
円卓に出てくる神や出てこない神・・・。
後々出てくる事にはなるのですが、楽しみにしてもらえると、
非常に嬉しく思います。
第2章もラストに向け頑張って行きたいと思いますので、
今後とも応援のほど、宜しくお願いします。
ってなことで、緋色火花でした。




