閑話・日本神界 神達の憂い
お疲れ様です。
今回のお話で、閑話シリーズは終了致します。
明日からは本編に戻りますので、
本編を待って下さっていた方々には、
楽しんで読んでもらえるよう、頑張りたいと思います。
ブックマークや感想などお待ちしておりますので、
どうか宜しくお願いします。
それでは、閑話・日本神界をお楽しみ下さい。
此処は日本神界の片隅に在る、
紅葉が美しく彩る山中の小さな小屋の中に居た。
天照はある黒装束の男と密談をしていたのだが、
その内容は誰も知るはずもない悠斗の事だった。
「ほう~・・・では悠斗様は存在進化したと?」
「はっ!我が主のお話では、鬼人族になられたようです。
私はその旨をお伝えに参りました」
「・・・そうか、そうなのじゃな?
これでまた1段上へ昇られたと言う事か・・・良き事じゃの♪」
「はい、今の悠斗様であれば、
恐らく「不動の鎧」をも使いこなせましょう」
2人は笑みを浮かべながら、お茶で喉を潤し、
暫く打ち合わせをした後・・・。
「うむ、あいわかった・・・ご苦労じゃったの?
うぬの主にも宜しく伝えてたも~?」
「はっ!承りました。それでは、失礼致します」
「うむ」
音もなく消えた者の空間を少し見つめた後、
天照は少し目を閉じると、浮かれる感情を抑えつけ、
自分を律したのだった。
(まだ浮かれるでないわ・・・始まったばかりなのじゃ・・・
妾も存外・・・小者よのう?)
気持ちを落ち着けようと、天照は外へと出た。
「いつ見ても此処は美しいの。
妾の心を癒やす場所は、少なくなってしもうたからの~」
そうつぶやきつつ、天照は分体を作り出すと・・・。
「・・・茶を持て」
そう言って紅葉に視線を移しながら、小屋の縁側に腰を下ろした。
暫くして天照の分体がお茶を持って来ると、
その湯呑を持ち、その暖かさとお茶の匂いを堪能しながら、
そのお茶を口にした。
そしてそのお茶の苦味を味わうと・・・。
「ふぅ~・・・。悠斗様も存在進化したと成れば・・・じゃ。
そろそろ試練を与えねばならんのぉ~?
あやつが動くかは分からぬが、此れもまた悠斗様の為じゃ・・・。
妾の予想を遥かに上回る速度で、悠斗様は強くなられておられる。
想定外とは言え、真に嬉しい事なのじゃ♪」
お茶の香りと紅葉が風情をより一層深め、
心豊かに天照はしばしの刻を過ごしていると・・・。
「ん?・・・なんじゃ?」
目を細めて確かめる天照は、
紅葉が満開する山々の渓谷を見ていると・・・。
「・・・白鳥・・・かの?」
薄っすら見える程度だったその影が、
次第にその姿を現すと、ゆっくりと・・・優雅に、
天照の方へと向かっている事に気付くのだった。
「はて?何故この様な所に、白鳥なんぞが?
珍しい事もあるものじゃて・・・」
こちらへ向かっているのは偶然だと思っていた天照だったが、
どうやらそうではなかったようだった。
「ふむ・・・何者かは知らぬが・・・さて・・・」
湯呑を置き縁側から立ち上がると、天照は歩き始めた。
(・・・何者じゃ?敵意は・・・感じぬが・・・?)
天照は少し先に在る小さな池へと足を進めた。
そして到着する頃、その白鳥もまた着水しようとしていた。
「うむ、中々可憐な着水よな・・・」
そう感想を述べた時、その白鳥は光の玉と化すと、
天照の方へと向かって来た。
その光の玉は、天照の数メートル先へと降り立つと、
その光の玉は人型へと再びその姿を変えた。
「ご無沙汰しております。御婆様・・・」
「なっ!?」
その人型に変わった者がそう話すと、
天照はとても驚いた顔を見せていた。
「どうかされましたか?」
「い、いや・・・の?
あまりに驚いてしまって、何から話せば良いのか・・・」
「はっはっはっ!御婆様ともあろう御方が・・・♪」
「い、いくら妾でも、こればかりは流石に驚くであろう?
其方も意地が悪いのぉ?
ところでの・・・タ」
「しーっ!」
天照が名を呼ぼうとした時だった。
突然その男の仕草を見て、思わず言葉を飲み込んでしまったのだ。
「んっ!?な、何か訳あり・・・と、言う事じゃな?」
「御婆様・・・壁に耳ありで御座います」
「う、うむ・・・じゃが、これくらいは良いであろう?」
「はい?」
「・・・おかえり・・・よく戻ったの♪」
天照は優しく微笑むと、両手を広げ暖かく迎え入れたのだった。
「只今戻りました、御婆様・・・」
「うむ、何はともあれ・・・よく戻ったの♪」
天照はその男を抱き締めると、喜びに頬を緩ませ、
その暖かな体温を感じた天照は、安堵の息を漏らしたのだった。
「積る話もあるからの~?まずは茶でも・・・」
「はい、そうですね」
二人は笑みを浮かべ合うと、小屋へと向かって行った。
その頃、ある場所で団子を頬張りながら、
二人の女が話し合っていた。
いや・・・これはただの女同士の雑談だった。
「最近はどうなの?」
「どうなのと言われましても・・・」
「陰キャ脱却中なのかと思ってね♪」
「だ、誰が陰キャなのですかっ!」
「フフフ・・・そう怒る事もないでしょ?」
「・・・もうっ!」
賑やかに笑い合いながら暖かい日差しが差す部屋で、
楽し気に雑談しているのは、月読と桜だった。
二人はこのところ、
英二といちかの相手で忙しい日々を送っていたのだったが、
懸念材料には事欠かなかった。
「ねぇ、桜?英二様の調子はどうなのですか?」
「ああ~・・・まぁ~悪くはないけど、問題がない訳じゃないわ。
と、言うよりも・・・
もはや問題しかないと言っても過言じゃないほどにね」
「問題って・・・まさか?」
「ええ・・・そうなのよね。
あの鬼の力・・・色々と問題があるわ」
今の今まで楽しく会話していた二人の間に、
重苦しい風が通り抜けて行った。
そしてそれは、今後の英二にとっても笑っていられない状況だったのだ。
「まず一番の問題は・・・神力が使用不可なのよね」
「えっ!?」
「鬼の力が邪魔しちゃって・・・ね」
「で、では・・・魔法はどうなのですかっ!?」
「んー・・・。一応何とかなっているけど・・・。
魔法に対する適性が・・・び、微妙なのよね」
「微妙って・・・桜の加護を受けても?」
「・・・ええ」
「・・・ど、どれだけ不器用なのでしょうか?
まぁでもそれが英二様らしいと言えばそうなのですが・・・」
「・・・そうよね。はぁ~・・・」
二人は英二の不器用さに、日本海溝よりも深い溜息を吐くのだった。
才能が無い・・・訳ではないのが厄介な事だった。
何故なら、英二の才能をダメにしているのは、
奇しくも鬼の力が要因となっているからだった。
そして再び片隅に在る小屋・・・。
喉を潤した天照は微笑みつつもその男に尋ねた。
「其方はここを飛び出して、一体どこで何をしておったのじゃ?
皆がどれだけ心配したか想像くらいは出来ようものじゃがの?」
少し悲し気な眼差しで天照は視線を向けると、
その男は苦笑しながも答えた。
「はは・・・私は別にここが嫌だからとか、
そんな理由でこの地を出た訳ではありませんよ?」
「い、いや、しかしの?」
「私の感覚で言うと・・・そうですね~・・・
ちょっと遊びに出た・・・。
それくらいの感覚なのですよ・・・御婆様♪」
その男の言い分に、天照は呆気に取られてしまった。
「どうかされましたか?」
「えっ、ああ・・・遊びにって、其方のぉ~?
数百年以上居なくなるのは、ちょっと・・・とは普通言わぬがの?」
「はっはっはっ!確かに・・・そうですね♪
ですが私にとっては、本当にそのような感覚なので、
心配されるほどの事では・・・と、そう思っております」
「フフフ・・・しかし呆れた物言いじゃの?
まぁ~良いわ・・・其方が無事にこうして戻って来たからの♪」
2人が笑い終えて少しの間沈黙が続くと、
姿勢を正した天照はその男に質問を始めた。
「今まで其方はどこで何をしておったのじゃ?
話せぬ事もあるとは思うのじゃが、妾としては聞いておきたいの?」
男は少し困った顔をしていたのだが、
いくつかの約束事を守るなら・・・と・・・。
そして了承を得たその男は話を始めるのだった。
「私は今、ある御方の元で働いております。
勿論誰か・・・と、言う事は申せませんが、
とても価値の在る仕事だと私は思っております」
「う、うむ・・・名を聞けぬのは些か気にはなるのじゃが、
まぁ、其方の目に狂いはなかろう?
妾は信じておる故・・・の?」
「はい、御婆様の顔に泥を塗る行為ではないと断言致します」
「うむ、ならばそれで良かろう♪
じゃがの?もしも・・・もしもじゃ・・・
何か困り事がある時は、まずは妾を頼るのじゃぞ?」
「はい、その時が来ましたら・・・茶菓子持参で参ります♪」
「ふっふっふっ・・・相変わらず言いよるの~?」
この時の天照は心から喜び笑っていた。
(ここまで笑ったのは、いつぶりじゃったかの?)
天照とその男は、時間が来るまで会話を楽しんだのだった。
そして再び、月読と桜は・・・。
団子を手に取り頬張る桜に、月読は呆れて苦笑していた。
「桜って本当に「花より団子」ですね?フフフ・・・」
月読にそう言われむせると、湯呑を慌てて取り、
喉の奥へと押しやった。
「ごほっ、ごほっ!・・・も、もうっ!急に変な事言わないでよねっ!」
「フフフ・・・これは失礼しましたね?」
「何よ・・・もうっ!
あっ、って言うかさ・・・それよりいちかの方はどうなのよ?」
「どう・・・と、言われても困ってしまいますが・・・。
そうですね~・・・とてもいいセンスをお持ちだと思いますよ?」
「ふ~ん・・・流石は悠斗の一番弟子ってところかしらね~?
英二もいちかくらいのセンスがあったらって思うわね~」
「フフフ・・・」
月読は湯呑を手に取り一口飲むと、神妙な面持ちへと変わっていった。
そしてその表情は険しいモノへと変わっていったのだ。
「な、何!?どうしたのよ?」
「・・・そ、それがですね~・・・」
「・・・深刻な問題・・・だったりする?」
「・・・はい」
月読は湯呑の中のお茶を見つめると、
その問題を抱える胸の内を話始めた。
「実は・・・悠斗様とのリンクがキレてしまいまして・・・」
「・・・えっ?・・・えぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
月読は桜の大声に思わず顔を顰めてしまった。
「い、いいい一体っ!どう言う事なのよっ!」
「ここ最近はですね?私もいちかの事で手一杯だったのですが・・・。
ある日悠斗様に話しかけてみたところ・・・。
全然繋がらなかったのです」
「あ、あんたっ!な、何のんびりと話してるのよっ!?
ま、まさか・・・悠斗は・・・」
桜が最悪を予想して口を開こうとしたのだが、
月読は黙って頭を左右に振って見せた。
「い、生きてるのね?」
「はい、私も悠斗様には加護を与えていますから、
もしもの時の場合は、私にも当然感知できます。
ですが、何か強い力に阻まれ・・・話す事が出来なくなっています」
桜は月読の話を聞きながら目を閉じ考え込んでいた。
そして・・・。
「・・・生きているのならいいけど、
あっ、そうだわっ!私が悠斗の様子を見に行ってくるわ」
「・・・いけません。桜?また問題になりますよ?
前も無断で悠斗様に会いに行って、
色々な方達に叱られたばかりじゃないですかっ!」
「だ、だけどっ!」
「いけませんっ!これ以上貴女にも負担をかける訳にはいかないのですっ!
貴女には貴方のやるべき事があるはずです。
もう少し自重してくださいね?」
月読の強い口調に、桜は頷く事しか出来なかった。
だが、月読の悲し気な表情に、そのつらさが桜には伝わってきたのだった。
「・・・何か手はないの?
あんたならきっと何かいい手を思いつくはずよね?」
「はぁ~・・・それが正直思いつきません。
手がない訳ではありませんが、何かと阻まれてしまうのです」
「だ、だったら・・・やっぱり・・・私が・・・」
「ですがっ!1日でも早く・・・英二様達をあちらへ送る事が出来れば、
何とかなるのてはないか・・・と、そう思っています」
「そう・・・貴女の気持ちは分かったわ。
最悪、いちかだけでも向こうに送ると言う決断をするしかないわね?
今の段階で英二を送るなんてそんな無茶はできないし・・・」
「確かにそれは悪手ですね。
何か手を考えないと、悠斗様の身にもきっと・・・」
月読も桜が言うようにそうしたかったのだが、
いちかもまた問題を抱えている為、そうは上手く行かなかったのである。
「・・・実はね・・・桜?」
「ん?」
「いちかも英二様と同じなのです」
「・・・同じって?」
桜の言葉に月読が困惑するような表情を浮かべると、
月読の悩みが自然と理解する事が出来たのだった。
「ま、まさか・・・?」
「・・・はい、その・・・まさかです」
「・・・嘘でしょっ!?」
「本当です。いちかにも・・・鬼の力が・・・」
「本当にどうなってんのよ・・・はぁ~・・・」
2人揃って溜息を吐くと、前途多難な日々に肩を落とすのだった。
そして神界の片隅では・・・。
天照が男と一緒に、のんびり歩きながら景色を楽しみつつ、
先程の池へと向かっていた。
「御婆様・・・そちらも何やらあるようですが?」
不意に放たれた言葉に、天照は動揺していた。
そしてその表情を見つつその男は目を細めていたのだった。
「・・・そ、そうじゃ・・・の。
確かに妾も少々あるのじゃが・・・今のところは・・・の?」
「そうですか、それなら良いのですが・・・」
俯き地面を見ながら歩く天照は、
まるで乙女のように小さな声でつぶやいた。。
「も、もしもじゃ・・・もし妾が困った事になったら・・・
そ、其方は妾に・・・ち、力を貸してくれるか・・・の?」
天照のその口調に少々驚くのだが、男は微笑んで見せると小さく頷いた。
「そ、そうかっ!?そ、其方ほどの男であれば・・・
妾も心強いのじゃっ!
何かあれば、妾の力になってほしいのじゃっ!」
喜びを見せた天照に男は再び微笑むと、
天照に向き直り右腕を胸に当て頭を垂れたのだった。
「その時は・・・私が力になるとお約束致します
この私が御婆様の剣にも盾にもなってご覧に入れましょう」
「うむっ!頼むのじゃっ!」
天照はその男の手を強く握ると、感謝の言葉を述べたのだった。
そして男は再び白鳥の姿に変えると、
見事な紅葉の山々の中へ消えて行くのだった。
そして月読と桜は・・・。
「ねぇ、具体的に話を聞かせてもらえない?」
目を閉じ一息着くと、月読は話始めた。
「彼女の場合は、悠斗様の弟子となり覚醒した・・・
そう言って間違いはないと思います。
しかし、どう言えばいいのか・・・。
彼女の場合は影響を受けやすいようで、あまりにも多くの時間、
あの赤銅色の力を浴び続けた為・・・だと思われます」
「ん~・・・いくら影響を受けやすいとは言ってもね~?
それだけでいちかが自ら赤銅色の気を放つなんて・・・ね?」
「私もそう思うのですが、でも・・・。
彼女にも魔力がある・・・それらを考察して見ても、
悠斗様のあの赤銅色の影響かと・・・」
「・・・鬼の力・・・ね」
2人は悠斗の赤銅色の・・・鬼の力の事を考えていた。
だが、いくら考えてみたところで、何もわからないのは当然だったのだ。
「私達が鬼の力の事を考えても分かるはずもありません。
いくら他所の世界の存在の話だったとしても、
私達神の怠慢が今回の事を招いたと言っても過言ではありませんから・・・」
「でもさ~月読?考えても見てよ?
この世界の事だけで正直精一杯だったって事もあると思うわよ?」
そんな桜の問に、月読はあからさまに顔を顰めて見せるのだった。
「・・・な、何よ?」
「桜・・・貴女、本当にそう思っているのですか?」
「そう思ってって・・・どう言う意味よ?」
「神達がこの世界に対して精一杯だと胸を張って言えますか?」
「うっ・・・そ、それは・・・」
桜の視線が泳いでいたのに対して、
月読の視線は真っ直ぐ桜に向けられていた。
「私も他の神達の事は正直言えた義理ではありませんが、
人間と言う存在をほったらかしにしていた事は、周知の事実です。
今更弁解のしようもありません。
桜・・・貴女は姉上の配下です。
だから色々とあるでしょうから、力を貸せとは申しません。
ですが私はもう我慢ならないのです。
せめて・・・貴女とは敵対する事がないよう、私は願います」
「・・・つ、月読・・・あんた・・・」
桜は月読の決意に何も言えなかった。
ただ、自分はこれでいいのかと、自問自答するしか出来なかったのだった。
緋色火花です。
最近ちょっとストレスてんこ盛りな状態が続いておりますw
カラオケにも中々行けませんしね~><
この話もかなり続く予定なのですが、
・・・コメディーが書きたいっ!
と、最近思っております。
ひたすら、ふざけまくりたい・・・そんな今日この頃ですw
あと・・・肉・・・食べたいw
そんな感じのなのですが、
今後とも応援のほど、宜しくお願い致します^^
ってなことで、緋色火花でした。




