閑話・双子の精霊樹 外の世界 後編
お疲れ様です。
今回は閑話・双子の精霊樹の後編となります。
あれ?文がいくつか抜けている・・・?
前も一度あったんだけど・・・。直します><
それとちょっとお知らせです。
仕事の都合で明日のアップが出来なくなりました><
大変申し訳御座いません。
次回のアップは活動報告にて掲載したいと思いますので、
宜しくお願いします。
それでは、閑話・双子の精霊樹 後編をお楽しみ下さい。
キナリにそそのかされたミアプラは、
強さを追い求め危険な森へと入って行った。
「キナリさん・・・魔物はどこにいるの?」
「そう焦らなくてもさ?そのうち嫌なくらい出てくるから♪」
「わ、わかったわ」
緊張した面持ちで森の中を進んでいくミアプラの背後に、
薄気味悪い笑みを浮かべたキナリが居た。
暫く歩いて行くと、ミアプラが足を止め小声で話しかけてきた。
「キナリさん・・・あ、あそこ・・・」
「んー?どれどれ~?」
生い茂った草葉の陰から覗き見ると・・・。
(・・・あれってゴブリンってヤツかな?」
「キナリさん・・・どうなの?」
「そうだね。あれがゴブリンって言う弱い魔物だよ?」
「1、2、3、4・・・4体いるね?」
「はっはっ!あれくらい余裕だろ?」
軽く言うキナリは知らなかった。
たかがゴブリン・・・されど、ゴブリン。
ゴブリンには様々な種類が居る事を・・・。
ミアプラが発見したのは1体がまだ幼いゴブリンで、
2体が通常のゴブリン・・・だが残る1体は・・・ゴブリンソルジャーだった。
通常のゴブリンよりも戦闘に秀でており、その速度はやっかいな相手だった。
そんな事も知らないキナリは笑顔を向けつつ剣を抜いた。
「な~に・・・あの一番強そうなヤツを君がやればいい。
僕は残りのゴブリン共をやるからさ~?」
「わ、わかったわ・・・アレは、私が・・・」
緊張がピークに達したのか、ミアプラは喉が乾ききっていた。
(・・・は、初めての・・・じ、実戦・・・)
少しパニックになりつつも呼吸を整え集中し始めた。
(き、緊張し過ぎると・・・か、身体に力が入って逆に動けなくなる。
パパの本に・・・そう書いてあった・・・。
え、えっとあと・・・。人数が敵側が多い場合は・・・
な、なんだっけ? えっと、えっと・・・)
俯き顔色が悪く見えたキナリは、ニヤリと笑みを浮かべると・・・。
「じゃ~まずは僕がお手本を見せようじゃないか?」
そう言って、キナリは草むらから飛び出した。
「いやっほ~いっ!ゴブリンども~・・・
このキナリ様が討伐しに来てやったから覚悟しろ~」
勢いよく飛び出したのも束の間・・・。
ゴブリンソルジャーが仲間を守る為にキナリへと駆け出した。
「ギィィィエェェェェっ!」
叫び声をあげたゴブリンソルジャーは仲間の前に立ち塞がると、
すぐさま攻撃に転じていく。
「な、何だよっ!お前はっ!お前の相手は僕じゃないんだぞっ!」
「ガキンっ!」と剣と剣がぶつかり合うと、
その威力にキナリはよろけ尻もちを着いた。
「あぅ・・・わぁ、わぁわぁわぁぁぁ!
ミ、ミアプラーっ!た、助けてよぉぉぉぉっ!」
実戦経験がないキナリにとって、これが初めての実戦・・・。
当然パニックになってしまい、まともな判断など出来なかったのである。
こうなる少し前・・・。
ミアプラは悠斗がくれた絵本を思い出していた。
敵が多人数の場合・・・どうすればいいのかを・・・。
それを思い出したミアプラは、精霊力を圧縮していく・・・。
いつも通り、何百回と繰り返した練習の時のように・・・。
そして圧縮が終わった頃・・・キナリの悲鳴が聞こえた。
ミアプラは草むらから飛び出しながら、
「ウォーター・アローっ!」
キナリに襲いかかるゴブリンソルジャーに直撃した。
「バシュッ!」
その威力に弾き飛ばされたゴブリンソルジャーだったが、
ダメージは・・・軽微なモノだった。
「・・・な、なんで?・・・でもっ!」
軽症な事に驚きつつも、ミアプラは精霊力を圧縮し始めた。
だが、これは実戦だ。
敵は悠長に黙って待っている訳ではない。
ゴブリンソルジャーはその素早さを活かし、ミアプラに肉薄していく。
「ギィガァァァっ!」
叫びながら迫るゴブリンソルジャーはショートソード振りかぶった。
「コォォォォォっ!」と、突然ミアプラは呼吸音を変えると、
飛びかかってくるゴブリンソルジャーに回し蹴りを放った。
「ベキっ!」と、骨が砕ける音を響かせた瞬間、
まるで枯れ葉が舞うように、ゴブリンソルジャーは樹木に激突した。
その時・・・「グシャっ!」と、鈍い音が聞こえてきた。
(これが・・・実戦・・・)
ゴブリンソルジャーが倒されると、他のゴブリン達は逃走した。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・」
膝から崩れ落ちたミアプラは、ポタポタと地面に汗を落とし、
その荒い息をはずませていた。
「や、やったじゃないかぁぁぁっ!」
突然キナリが声を張り上げ、ミアプラの元へ駆け寄ってきた。
「なっ!なっ!?だ、だから僕が言ったろっ!?
実戦で経験を積めば強くなれるってさっ!」
「・・・・・」
まだ呼吸を整えていないミアプラは返事すら出来ない状態だったのだが、
キナリはお構いなしに上機嫌に話を続けていた。
(たった・・・たった1度戦っただけで・・・こ、こんなに?)
疲れ果て立ち上がれないミアプラは、実戦の恐ろしさを感じるのだった。
そして此処、岩場の聖域では・・・。
分体であるウンディーネが、本体からの念話を受け取っていた。
「・・・はい・・・はい・・・そう伝えます」
念話を終えた分体が口を開いた。
「本体からの念話がありました。
ミアプラ様の精霊力の波動を感知したそうです」
その話を聞いた一同がざわめいた。
「ね、ねぇっ!ミアプラは・・・ミアプラは無事なのっ!?」
縋り付くように聞いてくるエルナトに微笑みかけつつ、
そのまま話を続けた。
「此処からおよそ西南へ50kmの場所にある森に居るようです。
ですがその森は・・・ゴブリンの大集落がある事で有名な森なのです」
「・・・えっ?」
エルナトが言葉を失っていたその時、本体から情報をもらった者達が、
一斉にその森がある場所を目指していた。
その連絡を受けた分体は事の説明をし終わった頃、
エルナトが決意を新たにすると口を開いた。
「・・・ぼ、僕をその森へ・・・連れて行って下さいっ!」
だがその願いは叶えられないと、そこに居た者達全てにそう言われた。
悔しさを滲ませ俯き拳を握るエルナトにかける言葉はなかった。
そんな時だった・・・。
「ギィギィー」と、神界の門が開かれると、
姿を現したのは、時空神・ミスティだった。
「おおよその話は理解していますわ。
エルナト・・・私と共に参りましょう・・・」
「えっ!?」
驚いたのは勿論エルナトだけではない。
そこに居る全ての者達が唖然とするほど驚くのだった。
「お、お待ちください。ミスティ様・・・」
オウムアムアの呼び止めに、ミスティは冷ややかな視線を送った。
「・・・何か?」
「し、失礼ながら・・・。エルナトにはまだ時期尚早かと・・・」
片膝を着き礼を取るオウムアムアは、
ミスティの威圧に冷や汗を流していた。
「・・・まだ幼いから・・・と?」
「はっ!ま、真に仰せの通りで・・・」
威圧が弱まったミスティに、オウムアムアは思い直してくれたと、
そう思い、胸を撫で下ろしたのだったが、
だが・・・それは違っていた。
「エルナト・・・参りましょう♪」
「なっ!?」
「・・・はいっ!」
ミスティの声を受けたエルナトは歩み始めると・・・。
「お、お待ち下さいっ!ま、まだエルナトはっ!」
「・・・くどいっ!!」
ミスティの声と共に衝撃波がオウムアムアを襲った。
「ぐぁぁぁぁっ!」
その衝撃波によって弾き飛ばされたオウムアムアは、
樹木に激突し倒れた。
「・・・実戦を経験する事を私は肯定致します。
今、この時だから出来る事なのですっ!
いつまで甘やかした生ぬるい考えを持っているのですっ!
そ、それにもうっ!・・・」
ミスティは何かを言いかけて言葉を切った。
その時のミスティの表情が苦悶に満ちていた事を、
この場にいる全員の印象に残ったのだった。
そしてそのすぐ後・・・。
ミスティに誘われるまま、エルナトは神界の門へと消えて行った。
神界の門がその姿を消した時・・・。
「ミスティ様のあの表情は一体・・・?」
その言葉に一同同じ事を思っていたのだった。
そして此処はゴブリンの大集落がある森の中・・・。
強い意思を持ってミアプラはゴブリンを討伐し回っていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・」
疲労で言葉すら出なくなったミアプラが、
木の根本に腰をかけ休息を取っていると・・・。
「ミアプラ・・・どうだい調子の方は?」
様子を伺うように、キナリはミアプラを見回した。
(・・・こ、こいつは怖くないのかっ!?
もう息も絶え絶えじゃないか・・・?
い、一体どうして、こんなにまでなって・・・やれるんだよっ!)
キナリは前で戦うミアプラに恐怖すら抱くようになっていた。
「い、今更言うのもなんだけど・・・。
も、もうこのくらいにしておかないと・・・君が持たないよ?」
ミアプラはマジックボックスの中から水を取り出すと、
一気に飲み干していく。
深く息を吐いた後、キナリに対し口を開いた。
「キナリさん・・・まだやれます」
「し、しかしそんな状態じゃ・・・。
それにもうゴブリン共は50匹以上倒しているじゃないか?」
実際ミアプラの活躍は凄まじかった。
気道をメインとし魔法を織り交ぜ戦っていた。
一方キナリはと言うと・・・。
(ぼ、僕なんて・・・まだ2匹だけだし・・・どうなってんだよっ!
一体こいつと僕の何が違うってんだよっ!)
キナリはそう思いながらミアプラを見た時だった・・・。
「ギィィァァァァァァ!」っと、すぐ傍でゴブリンの叫びが聞こえた。
「「!?」」
ミアプラは咄嗟に地面に置かれたショートソードに手が触れた瞬間、
側面より飛び出してきたゴブリンが、ミアプラに体当たりを行った。
「・・・ゴフッ!」
直撃したミアプラは、まるで地面を転がるボールのように、
何度も弾み転がって行った。
「ミアプラっ!き、貴様ぁぁぁぁっ!」
キナリはゴブリンに向かって怒鳴ったのだが・・・。
「・・・えっ!?こ、こいつ・・・た、ただのゴブリンじゃ・・・ない」
「グフフフフ」ニヤリと笑みを浮かべたそいつは・・・。
「こ、これって・・・ハ、ハイ・・・ゴブ・・・リン?」
そのゴブリンの容姿は、ソルジャーゴブリンの3倍近く大きな体格と、
身体中に入れ墨が施されており、手にはロングソードが握られていた。
「う、嘘だ・・・こ、こんな所に居るなんて・・・き、聞いてない・・・」
さっきの威勢も打ち消されたキナリは、尻もちを着くと、
ただガタガタと震えるしかなかった。
キナリを見て笑って見せたゴブリンだったが、
視線をすぐに横たわるミアプラに移すと、ゆっくりと歩み始めた。
(こ、こいつ・・・ミ、ミアプラ・・・を・・・
た、助け・・・な、なくちゃ・・・
ぼ、ぼぼぼ僕の・・・せ、せ、責任だ・・・で、でも・・・
か、体が・・・うご・・・かない・・・)
ふと視線を自分の足へと向けた時、ハッキリした。
(そ、そうか・・・ぼ、ぼぼ僕は・・・こ、こ、ここ怖い・・・んだ)
自分の状態に気付いたキナリは、
白凰・ロゼッタに言われた事を思い出していた。
{キナリっ!少しは真面目にしないと、大切な人を守れず、
一生後悔する事になるんだよ?}
{はっはっ!僕がそんな後悔なんてするはずがないだろ?
僕はあの神と同等であるユウトってヤツに覚醒させられたんだよ?}
{覚醒だって?あんた、何バカな事言ってんのさ?
あれはただ、人化する為の力をもらっただけじゃないか?
それと・・・ユウトをバカにするヤツは、私が許さないからね?}
(何がユウトだよっ!僕がたかが人族如きを尊敬するはずないだろ?
ラムダにごまをすれば・・・イチコロだったしな~・・・
全く・・・騙されやがってよ)
キナリはハイ・ゴブリンの背中を見ながら、
ふと、そんな事を思い出していたのだった。
「大切な・・・モノ・・・ね。
はっはっ!わ、笑っちゃうよ・・・」
キナリはガクガクと震える足を叩きながら樹木に掴まり立ち上がった。
「ぼ、僕だって・・・ま、守る・・・事くらい・・・わ、訳ないさ」
ショートソードを抜いたキナリは震える声で叫んだ。
「・・・ま、待て・・・よっ!
おま、おまおま・・・お前の相手・・・は・・・俺・・・だぞっ!」
ガタガタと震えながらキナリは剣を構えたのだが、
ハイ・ゴブリンは一度振り返ると、再び歩み始めた。
「む、無視す、するんじゃねーよ・・・
無視っ!してんじゃねーぞっ!このゴブリン野郎ーっ!」
キナリの渾身の叫びがハイ・ゴブリンに届くと、
その足を止め顔を引きつらせながら振り返った。
「は、はっはっ!・・・
か、かかって・・・かかってきやがれっ!
こ、この・・・キ、キ、キナリ・・・様が・・・と、討伐してやるっ!」
「ギィィィィ」
唸るハイ・ゴブリンは目標をキナリへと変更した。
「き、きやがれっ!ぼ、僕はっ!僕はぁーっ!
お、お前なんか・・・こ、こ、こわ、怖くないんだぞっ!」
強く、そして硬く握り締められたショートソード。
キナリの状態を確認したハイ・ゴブリンは笑みを浮かべた。
「ギャッ、ギャッ、ギャァァァ!」
笑い始めたハイ・ゴブリンに、キナリは震えながらも先制攻撃をした。
「い、いけーっ!ペガサスフレイムっ!」
「ボッ!」と、音を立て放たれた火球はハイ・ゴブリンの足元に落ちた。
「ギィァァ?」
「・・・う、上手く・・・よ、避ける・・・じゃないかっ!」
キナリはテンションが上がり過ぎ、思考が追いついていかなくなっていた。
すると、突然ハイ・ゴブリンは木製の笛を取り出すと、
それを上空に向け吹いた。
「ビィィィィィィっ!」
その音に引き寄せられるように、4匹のゴブリンが駆けつけると、
そのハイ・ゴブリンはキナリの方を差すとなにかを言っていた。
「ギィーギィギィ!」
「・・・ギィっ!」
そう返事をしたゴブリン達は、キナリを取り囲むと一斉に飛びかかった。
「くっ、来るなぁぁぁぁっ!」
半狂乱状態で剣を振るキナリに、迂闊に近寄れなくなったゴブリン達。
するとそのうちの1匹がキナリの背後に回ると、
飛び蹴りをかましキナリはふっ飛ばされていった。
「ギァーハッハッハッ!」
「ごほっ、ごほっ・・・」
キナリは這いつくばりながらも、吹き飛ばされた茂みの中から出てきた。
そのみっともないキナリの姿に、ゴブリン達の笑いが木霊する。
ゴブリン達はキナリの腕を掴み、茂みの中から引張り出すと・・・。
(くっそぉっ!も、もうダメだ・・・)
「ギィェェェェっ!」
気合を込めたゴブリンの一撃が振り下ろされた瞬間・・・。
「はぁぁぁぁぁぁぁっ!うぉりゃぁぁぁぁっ!」
「!?」
「ベキッ!」
ハイ・ゴブリンの横を駆け抜けると、
強烈な一撃をゴブリンの顔面へと入れ、
そのゴブリンの頭は、首から離れて飛んで行った。
「ドサッ!」と倒れるゴブリンの死体を見る事もなく、
ミアプラは口から血を流しつつも、キナリの前に立ち塞がった。
「キナリ・・・さん、だ、大丈夫・・・ですか?」
颯爽と現れたミアプラだったが、既に精霊力も尽きている状態だった。
「こ、ごめんなさい。さ、最後の精霊力で回復しちゃったから・・・」
「か、回復って・・・?」
回復したと言っていたミアプラの様子は・・・。
息も荒く顔色も青ざめてまともに動けそうには見えなかった。
「キナリさん・・・ここは私が。
だから・・・に、逃げて・・・」
(これは僕の責任だ・・・僕がくだらない嫉妬なんてしたから・・・。
だから・・・こんな事に・・・。
ごめんね?ミアプラ・・・。今からでも僕は・・・)
キナリはガクガクとフラつきながらも立ち上がって見せた。
「・・・僕は・・・今から・・・変わるんだ」
消え入りそうな声で気力を振り絞りそう言った。
「・・・キィィィィっ!」
いつの間にか座り込んで様子を見ていたハイ・ゴブリンは、
ゴブリン達に声をかけると、一斉に飛びかかって来た。
「はぁぁぁっ!」
「く、来るなぁぁぁっ!」
2人は気力を振り絞り、襲いかかるゴブリンを迎え撃った。
数秒にも満たないその攻防は、数時間ほどにも感じられたのだった。
だが・・・。
「バキンっ!」と、2人の剣が砕けた・・・。
ミアプラはキナリを庇い後ろに追いやるのだが、
キナリはそれを振り払って、ミアプラの前へ出た。
この時、キナリの身体からは震えは収まっていた。
「ギィェェェェェっ!」
ゴブリン達が一斉に叫び向かって来ると・・・。
その動きがまるでスローモーションのように、2人の目には映っていた。
「・・・ごめん、エルナト」
キナリはミアプラを抱え込むように、
ゴブリンに対し盾となり覚悟を決めたその瞬間・・・。
「はぁぁぁぁぁぁぁっ!はぁーっ!」
生い茂る樹木の間を飛び抜けると、ゴブリンを蹴り飛ばした。
「グフォァっ!」
樹木に打ち付けられ地面に落ちる途中、
もう1匹のゴブリンが同じ場所に激突していた。
その2匹が地面に落ちた瞬間、声がした。
ほんの数時間しか経っていないはずなのに、
その声はとても懐かしく感じられたのだった。
「・・・大丈夫?ミアプラ?」
「「!?」」
「エ、エルナトっ!?」顔を上げたその先に、
剣を構え正面を見据えるエルナトの姿があった。
「ど、どうして・・・ここに?」
「・・・助けに来たんだ」
そう言った時だった。
「バシャーっ!」と、激しい水音が響くと、
その水溜りの中から、ウンディーネが現れた。
「ウンディーネさんっ!」
「エルナト様!?」
エルナトに気付き声をかけようとした時、
ウンディーネは背後に居るハイ・ゴブリンの気配を感じ振り返った。
「あのゴブリンは私が・・・」
そう静かに口を開いたのだが、エルナトは首を振っていた。
「あれは・・・僕がやる」
「エルナト様?しかし・・・」
そう言った時、不意に声がかかった。
「ウンディーネ・・・エルナトに任せなさい」
「!?」
聞き覚えのある声に振り返ると、そこには時空神・ミスティが居た。
「いいですね?それの相手はエルナトに任せるのです・・・」
「は、はい」
ミスティはボロボロになっていた2人にパーフェクトヒールを使用した。
そして・・・。
「キナリ・・・残り1匹のゴブリンはあなたが始末なさい」
「・・・はいっ!」
その後、エルナトは圧倒的な力の差で、
傷一つ負う事もなく圧勝して見せた。
そしてキナリもまた・・・1体のゴブリンを倒して見せたのだった。
2人を無事救出したミスティは、ウンディーネに目配せをすると、
岩場の聖域へ戻るよう全員へと念話を飛ばした。
そして此処は岩場の聖域・・・。
事の顛末を説明し終えたキナリは罰として毎日屋敷の掃除をする事になり、
ミアプラもまた罰として、屋敷の大きな風呂場の掃除をする事になった。
キナリは屋敷へと向かう前に・・・。
「ロゼッタ様・・・申し訳ありませんでした。
そしてミアプラ様・・・本当に申し訳ありませんでした」
「あ、ああ・・・」
「い、いえ・・・ど、どういたしまし・・・て?」
今までのキナリとは思えない程、姿勢を正したその姿に、
違和感を覚えざるを得なかったのだが、
それはキナリが成長した証だろうと、ラムダからの意見があった。
無事に解決したのだが、目の前で微笑むミスティに、
ただ違和感を感じるのだった。
その違和感を感じた者達は・・・。
剣神・アマルテア、魔法神・アリエル、亜神・オウムアムア・・・。
この3人の神達は、ミスティに対し今後警戒して行く事になった・・・。
そして微笑みを浮かべているミスティは・・・。
(・・・もっと戦力を整えないと、悠斗さんが・・・)
その笑みとはうらはらに、心中は穏やかではなかったのだった。
剣神 ・・・ ども~♪剣神でーす♪
亜神 ・・・ ど、どうも・・・あ、亜神・・・でーす♪・・・ぐぬぬぬ
剣神&亜神 ・・・2人揃って・・・ユ、ユウ・・・ト・・・
亜神 ・・・ す、すまぬ・・・我には・・・出来ぬ・・・
剣神 ・・・ ・・・えぇ~!?出来ないの?
亜神 ・・・ わ、我には、ハードルが高過ぎるのだ!
剣神 ・・・ 練習してユウト様にお見せしようと思っていたのに~♪
亜神 ・・・ な、ならば・・・よ、余計に・・・無理だっ!
剣神 ・・・ 兄弟子・・・これも・・・修練なのよ?
亜神 ・・・ ・・・お、おのれ・・・ひ、卑劣なっ!
剣神 ・・・ フフッ・・・さぁ、あちらでもう一踏ん張りしましょ♪
亜神 ・・・ ま、待てっ!引っ張るなっ!だ、誰かーっ!
剣神 ・・・ フフっ♪
ってなことで、緋色火花でした。




