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異世界転移 ~魔を狩る者~  作者: 緋色火花
第二章 港町・アシュリナ編
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閑話・双子の精霊樹 外の世界 前編

お疲れ様です。


今回の閑話は双子の精霊樹の話になります。

もう少し閑話は続きますので、宜しくお願いします^^



それでは、閑話・双子の精霊樹 前編をお楽しみ下さい。

岩場の聖域で高く(そび)える精霊樹・・・。


その下で今日もエルナトとミアプラは練習に(いそ)しんでいた。


「いいわ~♪2人とも♪すご~く上達しているわ~♪

 こんなに激しいモノを見せられたら・・・わ、私・・・」


「「?」」


「う、疼いちゃう~♪」


「・・・・・」


プロキシオンの発言にミアプラの背中に悪寒が駆け抜けた・・・。


「はぁ~、ミアプラ?いい加減慣れないとダメだよ?」


練習の手を止めたエルナトが、

顔を引きつらせ小刻みに震えるミアプラにそう言った。


「あ、あれ・・・に?どうやって・・・な、慣れろって?」


クネクネと身体をくねらせているプロキシオンに指を差しながら、

ミアプラはぎこちなくエルナトへ振り向いた。


「あ、あまり深く、考えないほうがいい・・・と、思う」



そんな日々が続いたある日・・・。


日々絶え間なく練習する2人を睨みつけている者が居た。


緑化が進んだ岩場の聖域の森の陰から・・・。


「うぅぅっ!な、何故っ!どうしてなんだっ!

 あんなガキ達よりも僕の方が優れているのにっ!」


自分の怠慢を棚に上げ、キナリは恨めしそうに双子を見ていた。


「ぼ、僕だってプロキシオン様に鍛えてもらえば、

 ここに居る誰よりも強くなれると言うのにっ!

 よ、よりにもよって・・・。

 あ、あんなツルぺた白凰に指導されるなんてっ!」


様子を伺うキナリは現状を打破する為に思案していくのだった。



次の日・・・。


「はぁぁぁっ!やぁっ!はぁぁっ!」


「はぁーっ!えいっ!やぁぁぁっ!」


エルナトとミアプラはプロキシオン相手に格闘術を学んでいた。


「はぁ、はぁ・・・強いっ!」


「全然、あ、当たらない・・・」


息を荒くしながら、エルナトとミアプラは地に膝を着いていた。


「ふふ~ん♪やっぱり子供は成長が早いわね~♪

 お姉さんはとっっっても嬉しくなっちゃうわ~♪

 でもね?まだやれるはずよ?

 なのにどうして息が上がっているのかしら?」


おどけて話しているプロキシオンだったが、

その目の奥に笑みはなかった・・・。


膝に手を着き地力でエルナトは立ち上がると、

ミアプラに手を差し伸べ立ち上がらせた。


「・・・ふふ♪まだやれるのね?」


「あ、当たり前だっ!」


「つ、次は・・・当てるんだからねっ!」


「・・・いいわ、かかってらっしゃいな?」


プロキシオンの挑発に乗ったエルナトとミアプラは、

その日・・・足腰が立たなくなるまでしごかれるのだった。


精霊樹が(そび)える地の傍で、エルナトとミアプラは仰向けに倒れていた。


「うぅぅ・・・わ、私・・・悔しい・・・」


「・・・僕もだよ」



そんな日々が続いた夜の事だった・・・。


エルナトとミアプラは精霊樹にもたれ掛かり空を眺めていた。

神獣達に双子への接触を禁止されたパティーナの姿は此処にはなかった。


「ねぇ、エルナト?どうしたら強くなれるんだろ?」


「今はこれでいいんだ・・・ミアプラ。

 お父さんも言っていたじゃないか?」


「で、でもーっ!わ、私は早く強くなってっ!

 パパのお手伝いがしたいのっ!」


焦る気持ちがピークに達したミアプラは冷静な判断が出来なかった。

それもそのはずである・・・。

まだ生まれてそれ程経ってもいないのだから・・・。


だが、エルナトはそうではなかった。


「いいかい?強さなんてそう簡単には身につかないんだよ?

 父さんも言っていたじゃないか?

 「いいかお前達?焦せっても何もいい事はないんだぞ?

 悔しかったら、頑張るしかないんだからな?」・・・ってさ」


だがそう答えるエルナトもまだ・・・幼いのだ。

ミアプラの焦りを気遣えるはずもない。


「もういいっ!エルナトのバカっ!」


「ミアプラっ!」


エルナトはそう叫び駆け出すミアプラを止める気力はなかった。

何故なら、エルナト自身も心の中では同じだったからだった。


その様子を伺っていた男が居た・・・キナリだ。

(・・・はっはっ・・・見てろよ・・・ガキども・・・)

怪しく目を光らせるキナリは準備を進めていくのだった。



それから3日程経った頃・・・。


いつものように訓練を終えたミアプラは、1人聖域を歩いていた。

ここ最近のミアプラとエルナトの関係は思わしくない。

そんなタイミングを見計らっていたキナリがミアプラに近づいてきた。


「やぁ、ミアプラ・・・1人なのかい?」


「・・・別にいいじゃない」


「みんなが心配しているよ?何か悩みでもあるのか?」


薄気味悪い笑顔を浮かべながら、キナリは問いかけた。


「べ、別に・・・。キナリさんには関係ない事だもん」


「はっはっはっ!君が強くなりたいって思う気持ちは、

 僕にも分かるからね~?」


「・・・・・」


「そこで・・・だっ!

 そんな君に強くなれる方法を教えようと思ってね?」


「えっ!?そ、そんな方法があるの?」


「あるよ~?それは実戦経験を積む事だよ」


「実戦・・・」


ミアプラはキナリの言葉に目を細めた。

それがキナリの罠とも知らずに・・・。


(クックックッ・・・いい感じに喰い付いてきたぞ~)


「そうさっ!やはり実戦に勝るモノはないからね~?

 どうだい?興味があるのなら教えてあげてもいいんだけど?」


「で、でも・・・」


「強くなりたいんじゃないのかい?」


「・・・・・ど、どうすれば・・・いいの?」


キナリはニヤリと笑みを浮かべると話をし始めた。



「この聖域を出て魔物が住む森で戦えばいいんだよ?」


「えっ!?こ、ここを・・・出るの!?」


「ああ、そうだよ?そうすればいくらでも強くなれるんだ。

 そうなればパパはきっと誉めてくれるよ?」


「ほ、本当っ!?」


「ああ、そうさ・・・君ならすぐに・・・強くなれるさ・・・」


ミアプラはパパから誉めてもらえる・・・。

その一言に目を輝かせるのだった。

純粋が故に、まんまとキナリの誘いに乗ってしまったのだ。


「・・・どうすればいいの?」


「みんなにバレないように出なくちゃね?」


「・・・わかった」


(クックックッ・・・少し痛い目を見ればいいんだよ♪

 な~に危なくなれば僕が颯爽と現れて助けてあげるからさっ♪

 これでみんなは僕の価値に気付くんだ・・・)


キナリは自分の価値を上げる為に仕組むのだった。

だがそれは、己の首を絞める事になろうとは考えもしなかった。


その頃、木々に囲まれ、新たに作られた泉の傍では、

一人孤独に修練するウンディーネの姿があった。

あえて孤独になる事で、感覚を研ぎ澄まし高みを目指していると・・・。


「ブゥン」


「・・・!?な、何っ!?今の感覚・・・?」


何かを感じたウンディーネは違和感を感じた方へ歩いて行くと・・・。

辺りをキョロキョロと見渡しながら聖域の外へ出ていくところだった。


(あれは・・・キナリ?聖域を出てどこへ?)


違和感の正体がキナリと分かったのだが、

何故かウンディーネは釈然としなかった。


「・・・何か変ね」


そう思いながらもウンディーネは修練に戻るのだった。



その日の夜・・・。


エルナトはまだ帰らないミアプラを探し周っていた。

もうこの聖域には居ない事も知らずに・・・。


「ミアプラーっ!どこにいるんだーっ!

 あ、あいつ・・・一体どこへ・・・?

 念話にも出ないし・・・ど、どうしよう・・・」


エルナトは嫌な予感を感じると、

(きびす)を返し戻ろうとした時だった・・・。


木々の間から、エルナトの声に反応したウンディーネが顔を覗かせた。


「エルナト様・・・?」


「ウ、ウンディーネさんっ!」


「いかがされたのですか?」


エルナトの慌てた様子にウンディーネも戸惑っていた。


「ミ、ミアプラが・・・見つからないんだっ!」


「・・・!?」


エルナトのその訴えに、ウンディーネの違和感が合致すると・・・。


「エルナト様?恐らくミアプラ様は外の世界に・・・」


「えっ!?ど、どうしてミアプラが外に・・・」


(私があの時もう少し気を配っていたら・・・)


「ウ、ウンディーネさんっ!」


焦るエルナトは名を叫びつつ、ウンディーネにしがみついてきた。

そんなエルナトを察したウンディーネは、

分体を作ると聖域に居る仲間達に、状況を知らせるのだった。


「今、皆さんに状況を伝えました。

 エルナト様はこのまま私の分体とお待ちください」


「・・・ウ、ウンディーさんはどうするの?」


「私は・・・キナリを追います」


「えっ!?キ、キナリさん!?」


「今は話している時間がおしいのです。

 ですから、話は分体から聞いてください。それでは・・・」


「ウ、ウンディーネさんっ!」


エルナトの事を分体に任せたウンディーネは、急ぎ聖域を出て行った。



「私がもっと気を付けていれば・・・」


そうつぶやくウンディーネは1人、キナリの跡を追うのだった・・・。



それから数分して、エルナトの元に仲間達が集まった。

焦る者達に詳しく説明を始めたウンディーネの分体は・・・。


「今、私の本体がキナリを追っています。

 どこへ行ったのか予想はつきませんが、全力で探しますので・・・」


ウンディーネの分体がそう言った時だった。

苛立ちを見せたパティーナが口を開いた。


「ウンディーネ様っ!そんな悠長な事をっ!

 こうしている間にも、ミアプラ様はっ!」


「お、落ち着いてっ!パティーナっ!

 あんたがここで騒いだって状況は何も変わらないのよっ?

 少しは冷静になりなさいなっ!」


「し、しかしっ!」


パティーナがそう言った時だった・・・。

「パチンっ!」と、頬を殴る音が響くのだった。


「・・・け、剣神・・・様!?」


「パティーナ、取り乱し過ぎよ?

 プロキシオンの言う通り、少し頭を冷やしなさい」


「・・・は、はい」


俯いたパティーナに微笑みかけたアマルテアは、

全員に意見を求めた。



「・・・みんなはどう判断する?」


「うむ、無闇に動くのは得策ではないだろうな」


オウムアムアの意見に一同は頷きはするものの、

だからと言って、ウンディーネ1人では荷が重い事はわかっていた。


各々(おのおの)が考え込む中、イリアが何かに気付き口を開いた。


「ね、ねえ・・・エルナト様?

 精霊樹同士なのだから、念話で話してみれば・・・」


「だ、ダメなんだ・・・。ミアプラのやつ・・・全然答えてくれないんだっ!

 そ、それに気配も探れない・・・」


「・・・困りましたね?」


張り詰めた雰囲気の中、アリエルが顔を上げると話を始めた。


「ならば・・・、足が早い者達が別働隊として出ればいい。

 そして足の遅い者達がこの聖域に残って連絡を待つと言うのはどうだ?」


アリエルのアイディアに頷いた一同が話を始めた。


その結果・・・。


白銀竜・ラムダと白凰は空から捜索をし、


足の速いセルカと剣神・アマルテア、それとプロキシオン達は、

四大精霊のうち・・・。

風の精霊シルフ、土の精霊ノーム、日の精霊サラマンダーを連れ、

捜索する事となった。


残る者達は、ウンディーネの分体と共に、聖域に残る事になったのだ。

各自準備を整えた者達が聖域を出ようとした時だった。


「念の為・・・これを・・・」

そう言って、ウンディーネは全員に拳大の分体を手渡した。


「・・・これは?」


「万が一と言う事もあります。

 私の分体を連絡用と言う事で持って行ってください」


ウンディーネの提案に、各自分体を持つと

聖域を出て行った。


「み、皆さんっ!ミアプラを・・・お願いしますっ!」


ウンディーネの分体から聞こえたエルナトの声に、

全員から返事が返ってきた。


「・・・任せろっ!」と・・・。



そしてその頃ミアプラとキナリ達は・・・。


キナリがペガサスへと戻りミアプラを乗せ、

岩場の聖域から50km先にある森へと飛んで来ていたのだった。


「キ、キナリさん、ここ・・・は?」


不安気な表情を浮かべるミアプラに、

キナリはほくそ笑みながらも答えるのだった。


「ああ~・・・ここかい?

 ここはゴブリンの大きな集落がある森なんだ」


「ゴブリン?」


「はっはっ~・・・心配いらないよ~?

 全然強くないし何かあってもこの僕がいるからね~?」


「う、うん・・・キ、キナリさんは・・・

 ゴブリンと戦った事・・・あるの?」


ミアプラの質問にキナリは「ん~・・・」と考えると・・・。


(んー・・・どうだったっけ~?

 僕はあの場所から出た事は無いんだけど~・・・

 でも聞いた話によると、すごく弱いってみんな言っていたからな~)


ミアプラの視線を感じたキナリは笑顔を浮かべると・・・。


「はっはっ~!心配しなくてもすごーく弱い種族だからね~?

 僕が手を出す事もなく、君だけの力でやれるはずさ♪」


「う、うん・・・わ、わかった」

(わ、私は強くなるって決めたもんっ!

 それに私は精霊樹・・・だ、だから・・・や、やれるわっ!)


「はっはっ~!僕がいるからさ~

 大船に乗ったつもりで安心して戦いなよ~」


キナリの言葉に不安がよぎったミアプラは、

エルナトへ連絡してもいいかと聞いたのだが・・・。


「えっ!?君は今の自分の現状が理解出来ていないようだね~?

 君は何の為にここに来たのかな~?

 弱虫ちゃんはいらないって・・・みんなそう思っているんだよ~?

 それに~・・・君のパパが聞いたら・・・どう思うのかな~?

 エルナト君よりも弱いと思われちゃうよ~」


言葉匠にキナリはミアプラを挑発していく。

まだ幼いミアプラには、焦りのせいで判断する事すら出来ないのだ。


だから・・・。


「そ、そうねっ!私が強くなればいいのよね?」


ミアプラはそう言って気合を入れると、

エルナトへ連絡する事はなかった。


(クックックッ・・・バーカ!

 今から少し痛い目に合ってもらうけど、

 これは君の為なんだよ~・・・クックックッ・・・見ものだな~♪)


今にも吹き出しそうになるキナリだったが、

必死に堪え先頭を歩くミアプラの後ろを歩いて行くのだった・・・。



剣神 ・・・ ども~♪愛するユウト様の3号弟子アマルテアです♪

亜神 ・・・ 我はオウムアムア、我が師ユウト様の二番弟子である。

剣神 ・・・ ねぇ、兄弟子?双子ちゃん達の強さってどう思う?

亜神 ・・・ ふむ、実戦を積んでいない今の状態ではな?

剣神 ・・・ でも話を聞くと、相当強いらしいわよ?

亜神 ・・・ 我が師の血で生まれた子供達だからな、当然ではないのか?

剣神 ・・・ も、もし私がユウト様の子をさ、授かると・・・あぁぁぁっ!

亜神 ・・・ ・・・お前はそれでいいのか?

剣神 ・・・ 何をよ?

亜神 ・・・ ・・・い、いや、何でもない・・・



ってなことで、緋色火花でした。

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[一言] ミアプラちゃんの無事を祈ります。。。
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