番外編・悠斗、絵本を作る・・・
お疲れ様です。
今回は「番外編」と言う事で、
悠斗が弟子達に残した本の話ですね^^
本当は閑話・アンナ編にする予定でたが、
こっちを先に出した方が分かりやすいかと思います。
次回のアップは「活動報告」に記載とておきますので、
宜しくお願いします^^
それでは、番外編をお楽しみ下さい。
現在この「岩場の聖域」には・・・。
悠斗が書き残した「気道修練法・基礎」の本が存在するのだが・・・。
1つは悠斗が書いた日本語の原文・・・。
1つは二番弟子である亜神・オウムアムア・・・。
1つは3号弟子の剣神・アマルテア・・・。
この3冊の本が存在するのだが、実はもう1冊・・・存在する。
その本の持ち主は・・・。
そんなある日の事だった。
悠斗は机に向かい弟子達に「気道」を伝える為、2冊の本を製作中だった・・・。
「あ~・・。まじで何でこんな約束をしたんだろ?
・・・只今絶賛後悔中っ!
この世界にコピー機がない事が悔やまれるっ!」
そうブツブツ言いながら気道の基礎を書いて行く。
すると「コン、コン」と、ドアをノックする音がするのだが、
悠斗はノックに気付かず没頭していたのだった。
「ガチャ!」
「・・・失礼致します。悠斗さん」
そう言って悠斗の部屋へ入ってきたのは、時空神・ミスティだった。
その手に持つ銀のトレイには、
悠斗がこよなく愛するコーヒーセットが置かれていた。
「んっ!?この匂いは・・・?」
その匂いに釣られた悠斗は、
ドアの前で微笑んでいるミスティを見つけた。
「・・・宜しいでしょうか?」
「あ、ああ・・・ありがと」
椅子から立ち上がると移動し、ソファーに腰を下ろしコーヒーを待った。
「失礼致します」
ミスティはそう言って、悠斗の前にコーヒーセットを置くと、
それとなく・・・問いかけた。
「悠斗さん、進み具合はいかがですか?」
ミスティの言葉に悠斗は何も言わずただ、苦い顔をして見せた。
「ふふふ♪ご自分から言い出したものの・・・
面倒臭くなっているのですね?」
「ははは・・・正解です、流石はミスティだね♪」
「ふふふ♪」
ミスティは製作中のノートに視線を移すと・・・。
「悠斗さん、拝見しても宜しいですか?」
「んっ?あ、ああ・・・別に構わないよ?」
悠斗の許可を得たミスティはそのノートを手に取り捲った。
「・・・基礎1から基礎5まであるのですね?」
目次を見たミスティはパラパラとページを捲っていく。
(ふふふ♪とても丁寧にお作りになられるのですね?
普通は目次なんて書かないでしょうに・・・♪)
コーヒーに舌鼓を打つ悠斗に視線を投げかけると、
それに気付いた悠斗がコーヒーカップに口を付けたままミスティを見た。
「・・・何ですか~?ミスティさん」
「いえ、とても丁寧に書かれているので・・・」
「・・・バカ弟子だからね?
サルでもわかるように書かないとさ・・・」
「ふふふ♪」
照れて横を向く悠斗にミスティは笑っていた。
そして再びミスティはノートに目を落とすと、ある事に気付く。
「あの・・・これって日本語では?」
このノーブルで日本語を読める者は皆無・・・。
そう思っていると、
悠斗はコーヒーカップに口を付けたままの姿勢で答えた。
「あ~・・・それはあくまで原文だから・・・
自分で読み返して不備がないかをチェックする為に、
わざと日本語で書いてあるんだ」
「ふふふ♪お優しいのですね?」
「ぐっ!・・・ち、違うからっ!
み、未完成品・・・み、みたいなモノを残したくないだけだからっ!」
「ふふふ♪」
再び照れる悠斗を横目に、ミスティは視線をノートに戻した。
「呼吸法の事も専門的な言葉で書かれているようですが・・・
これってあの2人には伝わるのでしょうか?」
そう疑問を持つミスティに悠斗は口を開いた。
「まぁ~無理だと思うよ?」
「で、では、どのように?」
「えっと~・・・一応考えてはいるよ?
後ろのページに絵を書いてわかりやすくするつもりだけど?」
「絵・・・ですか?」
「・・・まぁ~それなりには書けるので・・・」
「・・・一度見て見たいですわね♪」
「そ、そのうちに・・・ね?」
そんな会話した後、ミスティは部屋を退室し悠斗は再び机に向かった。
「さてっと・・・やりますか」
悠斗は凝り性・・・いや、ここは「職人気質」と言え変えよう。
物作りにおいて、悠斗は一切妥協する事はないのだ。
従って2人に渡すモノは・・・。
背表紙がある「ハードタイプの本」に、する予定なのだ。
「出発前までには渡したいからな~・・・」
そうつぶやきながら、悠斗は本製作に没頭した。
そしてその日の夕方・・・。
悠斗は集中して製作に没頭中である。
そんな時・・・。
「コン、コン」と、再びドアがノックされた。
「開いてますよ~」
悠斗は執筆しながらそう言うと、ドアを開け再びミスティが現れた。
視線だけ送った悠斗にミスティは微笑みかけると・・・。
「悠斗さん、お食事の時間ですよ?」
「・・・もうそんな時間か~・・・わかった。有難う」
そう言いつつミスティは入室すると、コーヒーセットを片付け始めた。
「あっ、ありがとね・・・ミスティ」
「いえ、おかまいなく♪」
机の上に散乱していた筆記用具などを片付けると、
ミスティと一緒に食堂へと向かった。
ざわざわと悠斗を待つ仲間達が雑談する声が聞こえてきた。
「悠斗さん・・・参りましょう」
「あ、ああ・・・」
食堂のドアを開け中へ入ると、騒がしかった雑談が止まった。
「・・・すまない、遅れた」
頭を下げた悠斗にイリアとセルカから・・・苦情が出た。
「ユウト~遅いわよっ!いつまでやってんのよっ!」
「ユウト様お腹が引っ付きそうなのにゃ~・・・」
「あ、ああ・・・悪かったよ」
(こ、こいつら・・・がるるるる)
心の中で強く握り拳をした悠斗だが、アンナの言葉によって救われた。
「ユウト様、ご苦労様です。
もしよろしければ、後で肩でもお揉み致しましょうか?」
「あ、有難うアンナさんっ!その言葉だけで・・・救われますっ!
俺のバカ弟子達は気が利かないからね~。
一体誰の為に作っているんだっ!と、声を大にして言いたいよ・・・」
まるでラウルのように、
そう嫌味っぽく言った悠斗は視線をバカ弟子2人に向けたのだが、
返ってきた答えは悠斗の予想出来ないモノだった。
「えっ!?ユ、ユウト様の御身体に触ってもよろしいのですかっ!?」
(そ、そっち!?まじかっ!
やれやれ・・・身の危険を感じる・・・こ、こいつはダメだ)
「うむ・・・それは思いも付かなかった・・・」
(思いつかないのならっ!・・・し、仕方がないよね?
それがオウムアムアっぽいしな~)
「・・・や、やっぱり遠慮しておくよ」
そんな話をしていると、イリアとセルカから再び苦情が入った。
その様子に笑いを堪えていた神獣達の視線が痛かったので、
溜息を吐きながら、悠斗が席に着くといつもの騒がしい食事が始まった。
ワイワイ、ガヤガヤと騒がしく話ながら食事をしていると・・・。
「ねぇ、パパ?」
「ん!?どうした~ミアプラ?」
悠斗の隣に座っているミアプラがじぃーっと見つめ話しかけてきた。
「パパはお部屋で何をしているの?
一緒に遊んでくれないから、私・・・つまんないっ!」
「うっ・・・し、視線が・・・い、痛い・・・」
上目遣いを匠に使うそんなミアプラの視線に心が痛んだ。
そんな視線を送るミアプラに、口を開いたのはエルナトだった。
「ミアプラ?お父さんは今、執筆活動中なんだ・・・。
だからそんな風に言ったら、お父さんが居た堪れないだろ?」
「エ、エルナト・・・?」
「な~に?お父さん?」
「む、難しい言葉・・・知っているんだね?」
「うんっ!ミスティ様が色々と教えてくれるんだっ!」
「へぇ~・・・ミスティがねぇ~?」
悠斗はそう言いながら、隣に座るミスティへ顔を向けると、
満面の笑みを浮かべていたのだった。
「・・・母親・・・が、代わりみたいなモノですから・・・」
「・・・はい?」
今まで騒がしかった食堂が、ミスティの発言によって時が止まった。
そして全員の視線がミスティへと向けられる・・・。
牛女と赤髪の3号弟子は、刺し殺すほどの視線を向け・・・。
魚を咥えたどこぞの猫は、尻尾を立てながら眉を吊り上げ・・・。
神界のロリっ娘は、呆れつつ溜息を吐き・・・。
ぺったんこの神獣は、頭の上に白い炎が浮かんでいた・・・。
緊迫した状況の中、口を開いたのはプロキシオンだった。
「ほ~らっ♪あんた達~・・・今は食事中なのよ?
せっかくの食事が冷めてしまうわよっ!」
「うむ、我もプロキシオンに賛成だ。
双子達の成長にも害を及ぼしかねんぞ?」
プロキシオンとオウムアムアの言葉で、一同は落ち着きを見せた。
悠斗は胸を撫で下ろすと笑顔を向け、ミアプラの問いに答えた。
「ミアプラ?今パパはね?
バカ弟子達・・・ゴホンっ!俺の弟子達に本を書いているんだよ?」
「・・・どうしてパパがご本を書いているの?」
「修練・・・えっと~、練習方法を教える為の本なんだよ?」
「ふ~ん・・・。わかったけど、パパと遊べないのはつまんないっ!」
「ははは、ですよね~?うんうん、分かってたっ!
で、でもさ~もう少しかかりそうなんだ・・・
だからさ?もう少し待っていてくれないかな~?」
「うぅぅぅ」
そう話していると、ミアプラの隣に座るエルナトが、
何やらコソコソと話すと悠斗に向き直り、渋々頷いて見せたのだった。
「わかった・・・パパ、私・・・我慢する」
「・・・ありがとな?」
食事が終わると、それぞれが自由に行動し始めた。
悠斗は勿論・・・書斎で本の製作に没頭していくのだった。
そしてその日の夜中・・・。
「出来たっ!」
悠斗がそう声に出すと、まるで分かっていたかのように、
ミスティがドアをノックし、中へと入って来た。
「失礼致します。悠斗さん、完成したようですね?」
「あ、ああ・・・やっと出来たよっ!」
そう言って、悠斗から手渡された本に、ミスティは驚いた。
(・・・か、完璧な本・・・ですわね?
そう・・・まるでプロの職人が製本したような・・・)
ミスティは完成した本と悠斗を何度も見ていた。
「まぁ~・・・久々に作ったけど、中々良く出来たと思うよ♪」
「久々って・・・?で、でも、素直に驚きましたわ」
「まぁ~しっかり製本したからね?」
「ふふふ♪流石ですわね?」
そんな話をした後、悠斗はバルコニーに出て一息着いた。
すると・・・。
(ん?こんな時間に・・・誰だ?)
玄関側を覗き込んだ悠斗は、2人の姿に驚いた。
「お、おいっ!2人ともっ!」
「し、師匠!?こんな時間までっ!?」
「ユウト師匠~♪」
「・・・ま、まぁ・・・いいや・・・。
2人とも、ちょっと上がって来てくれ・・・」
「「?」」
悠斗に呼ばれた2人は、急ぎ部屋へと来ると中へ入った。
「はい・・・これ」
ぶっきら棒に差し出された本を2人が手に取ると・・・。
「こ、これはっ!?」
「こ、こ、この本・・・なんて完成度なのっ!?」
驚き・・・いや、驚愕と言ってもいいだろう。
それ程こだわりが見て取れる完成度の本だった。
「これは師匠がお一人で!?」
「んっ?当たり前じゃん」
「こ、これ程の製本を・・・」
「こだわりましたっ!」
その言葉に2人の神は片膝を着き頭を垂れた。
「なんのマネだよ?」
「・・・このオウムアムア・・・家宝に致しますっ!」
「・・・か、家宝は気が重いから止めてくれ」
「・・・毎日一緒に寝ます♪」
「い、いや・・・そ、それはやめてくれ・・・頼むっ!」
2人に本を渡し終えた悠斗は、その後、深い眠りに着いたのだった。
そしてその早朝・・・。
いつもの如く、悠斗は朝練をしていると・・・。
「おはよう御座います。師匠」
「おはよう御座います。ユウト師匠♪」
悠斗の朝練に加わった2人の手には、
こだわりを持って製作された「気道」の本があった。
「ははは・・・早速持って来たんだね?」
「はい、この本を読んでいましたら、
いつの間にか、夜が明けておりました」
「・・・まじか」
「わ、私は・・・」
「さて・・・朝練するぞ~っ!」
「ちょっ、ちょっとーっ!ユウト師匠~♪聞いて下さいよ~っ!」
「しーらないっ!」
走り終わった後、その本の説明をしながら悠斗達の朝練が始まり、
暫くした後、朝練を終えると朝食を取りそれぞれの時間を過ごして行く。
悠斗は風通しのいい場所で、のんびりと寝て過ごしていると・・・。
「パパ~?ねぇったらぁーっ!寝てる・・・の?」
少し黙った後、悠斗は薄く目を開け口を開いた。
「・・・パパは只今・・・お昼寝中なのだ・・・」
「もうっ!起きてるじゃないっ!」
「ははは・・・ゆ、ゆっくりしたい・・・」
そう心の中で涙を流しながら悠斗はミアプラに告げるのだが、
そんな事は、子供達には関係ないのだ。
有り余るパワーと有り余るスタミナの前に、
「のんびり過ごす・・・」と、言う文字は存在しないのだった。
「お父さん・・・ちょっといいですか?」
「んっ!?エルナト・・・改まってどうした?」
エルナトのその真剣な声に、流石の悠斗も身体を起こした。
ふとエルナトの顔を見ると、緊張した面持ちだったのだ。
(んー・・・。何か覚悟を持って話しかけてきた・・・そんな感じだな?)
そう思った悠斗は、面倒臭がらず話を聞く事にした。
「エルナト・・・そんな緊張してないで、まずは座りなさい」
「は、はい」
その場に座ろうとしたエルナトに、
悠斗は「そこじゃない、こっちだよ?」と、優しく声を掛けると、
エルナトを胡座をかく自分の膝の上に乗せたのだった。
そして頭を撫でながらエルナトの話を聞いた。
すると羨ましかったのか、ミアプラも悠斗に抱きつくと、
同じように反対側の膝の上に座って笑顔を向けた。
(こ、こいつら・・・まじ天使っ!
・・・精霊樹だけど・・・それでもまじ天使っ!)
顔には出さず笑顔を2人に向けるのだった。
そしてエルナトは話を切り出した。
真剣に、そして緊張しながら・・・。
「お父さん、ぼ、僕達にも・・・本を・・・下さいっ!」
「・・・はい?」
「パパ~・・・私達もご本が欲しいのっ!」
「・・・えっと・・・物語とか童話とか?」
悠斗はその昔、童話全集なる本を見ていたため、
そう言う本が欲しいのかと思ったのだが違ったようだった。
話を聞くと双子達は、悠斗が製作した本を
アマルテアが見せびらかせてきたらしい・・・。
見せてくれないアマルテアに対し、オウムアムアがその本を見せてくれた。
内容はとても専門的でわからなかったが、
双子は「気道」にとても興味を持ったらしい・・・。
それならば・・・と、
たまたま偶然・・・?通りがかったミスティに相談すると・・・。
(偶然じゃない気がするんだが?)
双子は悠斗に直接言いに来たと言う事だった。
(まじか~?まさか2人が気道に興味を持つとは・・・
だが何故だ?双子の背後にミスティがいる気がするんだけど?)
どうしようかと悠斗は悩んでいると、エルナトは話を続けた。
「お父さん、亜神様のご本の後ろのページにあった、
あの絵・・・とても分かりやすかったので、
これなら僕達にも理解出来るような気がするんだ」
「ああ~・・・あいつらが分かりやすいように書いたあの絵か?」
「うんっ!お父さんって・・・絵が上手いんだねっ!」
「うん♪私もパパの絵が上手だと思った~♪」
「そ、そうか~?あはははは」
この時、双子の精霊樹は念話で会話をしていた。
(エルナト~?ミスティ様の言う通りになったね~?)
(そうだね♪僕達も鍛えて、お父さんの力になるんだっ!)
(うんっ♪悪い人達をパパの代わりにやっつけよう~♪)
(まだそんな事は出来ないよ?
だからしっかり・・・その、練習をするんだっ!)
(はーいっ!)
(ミアプラ?厳しくても・・・頑張れるかい?)
(うんっ♪パパの為に私・・・頑張る♪)
(僕だって負けないからな~♪)
そんな会話を双子の精霊樹はしていたのだった。
悠斗は少し険しい顔をしていたのだが、
そんな双子が心配する様子を見て笑顔を向けると・・・。
「・・・わかったよ?絵本・・・2人ために作ろうかな~?」
悠斗のその言葉に、双子の精霊樹はとても喜ぶのだった。
そんな双子を優しく見つめながら・・・。
「作るとなったら、お前達の相手は出来なくなるけど・・・
それでもいいのか~?」
思わぬ悠斗の反撃に、双子の精霊樹は一瞬顔を引きつらせた。
ここで更に悠斗は追い打ちをかける。
「本当に・・・一緒に遊べなくてもいいんだな?」
「うっ・・・うぅぅぅ・・・」
唸り始め動揺を見せるミアプラだったが、
数回頭を振ると、意を決して声を上げた。
「だ、大丈夫だもんっ!
パ、パパがご本・・・作ってくれるなら・・・
ミ、ミアは・・・ま、待てる・・・もん」
少し俯き加減でそう答えたミアプラに、悠斗は優しく頭を撫でると、
2人を抱え上げ、歩き始めたのだった。
「パ、パパ・・・?」
心配そうな顔を向けるミアプラに、悠斗は笑顔を向けた。
そして・・・。
「よぉーしっ!こうなったら・・・すごーい絵本を作ってやるぞっ!」
「ほ、本当!?」
「ほ、本当なの? ・・・パパ?」
「ああっ!俺に不可能はっ!・・・け、結構沢山あるんだけどね~♪」
「ふふふ・・・なに~それ~?」
「あははははっ!お父さんおもしろーいっ!」
親子3人で沢山笑いながら、悠斗達は屋敷へと戻って行った。
その途中・・・。
「あ~でも、すごいのを作るから、1冊しか出来ないけど・・・いいか?」
悠斗の言葉に顔を見合わせる双子達・・・。
そして頷き合うと、エルナトが口を開いた。
「うんっ!1冊でいいよ?じゃないと・・・」
再び双子達は顔を見合わせると・・・。
「「一緒に遊べなくなっちゃうもんっ♪」」
「ぷっ・・・ふふふ・・・あ~はっはっはっ!
だよな~?一緒に遊びたいもんな~?
俺だってお前達と遊びたいからな~♪
だけど・・・取り合って喧嘩しちゃダメだぞ?」
「「うんっ!」」
屋敷に戻る途中・・・。
そんな話をしていたのだった。
そして・・・。
屋敷に到着した悠斗達は、
玄関先でソワソワしているパティーナに出会った。
双子の姿が見えなくて心配していたらしい・・・。
悠斗達の姿を見つけたパティーナの慌てようは、正直可笑しかったのだ。
だが、心配してくれたパティーナに頭を下げ礼を述べると、
双子の精霊樹を任せて、悠斗は書斎へと向かうのだった。
書斎へと向かう途中・・・。
すれ違うミスティに悠斗は声をかけた。
「ミスティ・・・」
「・・・ひ、ひゃいっ!」
「・・・後で・・・な?」
「・・・ひゃぃっ!」
永久凍土を更に凍らせたような、そんな悠斗の声に、
ミスティは全てを察すると・・・一瞬心臓が止まった。
「・・・も、申し訳・・・」
「な~んてね?・・・ありがとな?♪」
「は、はい・・・?どう致しまし・・・て・・・?」
機嫌良さそうに書斎へと向かう悠斗はその後・・・。
「ミスティーっ!」
絵本製作に没頭する悠斗は突然ミスティを呼んだ。
「は、はいっ!い、いかがされましたかっ!?」
慌てていた為、ノックもせず入室すると・・・。
「至急、色鉛筆を買って来てくれっ!」
「は、はい!?」
「えっと・・・色鉛筆がなかったら、絵の具でもいいからっ!」
「は、はい・・・か、かしこまりました」
「急いでくれっ!じゃないと・・・子供達と遊べないからさっ!」
「・・・はいっ♪」
急ぎミスティは色鉛筆を買いに神界へと戻って行った。
そしてその後・・・。
「か、完成・・・だぁぁぁっ!」
その悠斗の叫びに・・・。
ミスティ、双子の精霊樹、パティーナ、
オウムアムア、アマルテアが慌ただしく詰めかけた。
悠斗は立ち上がった姿勢のまま、机に両手を着き固まっていた。
「ゴクリ」と、固唾を飲みつつ、
ミスティが悠斗に声をかけると・・・。
「悠斗・・・さん?」
その呼び声に悠斗は「ピクリ」と、反応を示した。
「エルナトっ!ミアプラっ!完成したぞっ!」
「出来た・・・の?」
「ああ、出来たぞっ!」
「パパーっ!」
「お父さんっ!」
悠斗の元へ駆け出した双子の精霊樹は、悠斗に飛びついた。
喜び合う3人の姿に、パティーナは目に涙を浮かべていたのだった。
微笑みながらミスティ達は、喜び合う悠斗の元へと来ると、
完成した絵本を手に取り、その完成度に全員が驚愕した。
「す、すごいっ!」
そう声を漏らしたのは・・・アマルテアだった。
そしてその言葉に続くように、次々声が漏れ始めた。
「う、うむ・・・我はこの扉絵だけで、
この絵本の価値がすごいモノだと核心できた」
オウムアムアはその扉絵だけで何故か感動していたのだった。
「さ、流石は・・・ユウト様です。
エルナト様とミアプラ様への想いに溢れています」
パティーナもまた、その扉絵だけで悠斗の優しさが伝わっていた。
「・・・流石ですわ、悠斗さん。
これはもはや・・・「聖書」と言っても過言ではありませんわね?」
大げさな事を言ったミスティだったが、
その絵本を見つめると・・・。
(な、なんとかこれを・・・複製できないかしら?)
真剣に見つめるそんなミスティが此処に居たのだった。
悠斗が完成させたその絵本は・・・。
扉絵に蝶の羽を持つ男の子と女の子の2人の妖精が、
湖の辺りの傍にある木の枝に腰をかけ、
一緒に・・・そして、とても楽しそうに、大きな絵本を読んでいる姿だった。
色鉛筆で描かれたその妖精の色調はパステルカラーで、
様々な淡い色が使用されていた。
ミスティは何気に一番最後のページを開くと・・・。
「こ、これは・・・!?」
ミスティが開いた絵本の最後のページには・・・。
3人の親子とも思える笑顔の妖精達が、仲良く手を繋いでいる・・・
そんな姿が描かれていたのだった・・・。
剣神 ・・・ ユウト様の親愛なる3号弟子のアマルテアですっ!
亜神 ・・・ 我は亜神・オウムアムアです。
剣神 ・・・ 兄弟子っ!私もあの絵本・・・欲しいのですが?
亜神 ・・・ うむ・・・し、しかしあれは・・・。
剣神 ・・・ 分かりますっ!分かるのですが・・・どうしても・・・。
亜神 ・・・ あれは双子達の所有物だからな?
剣神 ・・・ な、何かいい手はないものでしょうか?
亜神 ・・・ ならば、師匠に直接頼めばよいのではないか?
剣神 ・・・ ハッ!た、確かにっ!流石は兄弟子ですっ!ではっ!
亜神 ・・・ お、おいっ!・・・師匠に連絡しておくか。逃げろと・・・。
ってなことで、緋色火花でした。




