表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移 ~魔を狩る者~  作者: 緋色火花
第二章 港町・アシュリナ編
197/405

番外編・悠斗、絵本を作る・・・

お疲れ様です。


今回は「番外編」と言う事で、

悠斗が弟子達に残した本の話ですね^^


本当は閑話・アンナ編にする予定でたが、

こっちを先に出した方が分かりやすいかと思います。


次回のアップは「活動報告」に記載とておきますので、

宜しくお願いします^^



それでは、番外編をお楽しみ下さい。

現在この「岩場の聖域」には・・・。


悠斗が書き残した「気道修練法・基礎」の本が存在するのだが・・・。

1つは悠斗が書いた日本語の原文・・・。

1つは二番弟子である亜神・オウムアムア・・・。

1つは3号弟子の剣神・アマルテア・・・。


この3冊の本が存在するのだが、実はもう1冊・・・存在する。


その本の持ち主は・・・。



そんなある日の事だった。

悠斗は机に向かい弟子達に「気道」を伝える為、2冊の本を製作中だった・・・。



「あ~・・。まじで何でこんな約束をしたんだろ?

 ・・・只今絶賛後悔中っ!

 この世界にコピー機がない事が悔やまれるっ!」


そうブツブツ言いながら気道の基礎を書いて行く。

すると「コン、コン」と、ドアをノックする音がするのだが、

悠斗はノックに気付かず没頭していたのだった。


「ガチャ!」


「・・・失礼致します。悠斗さん」


そう言って悠斗の部屋へ入ってきたのは、時空神・ミスティだった。

その手に持つ銀のトレイには、

悠斗がこよなく愛するコーヒーセットが置かれていた。


「んっ!?この匂いは・・・?」


その匂いに釣られた悠斗は、

ドアの前で微笑んでいるミスティを見つけた。


「・・・宜しいでしょうか?」


「あ、ああ・・・ありがと」


椅子から立ち上がると移動し、ソファーに腰を下ろしコーヒーを待った。


「失礼致します」


ミスティはそう言って、悠斗の前にコーヒーセットを置くと、

それとなく・・・問いかけた。


「悠斗さん、進み具合はいかがですか?」


ミスティの言葉に悠斗は何も言わずただ、苦い顔をして見せた。


「ふふふ♪ご自分から言い出したものの・・・

 面倒臭くなっているのですね?」


「ははは・・・正解です、流石はミスティだね♪」


「ふふふ♪」


ミスティは製作中のノートに視線を移すと・・・。


「悠斗さん、拝見しても宜しいですか?」


「んっ?あ、ああ・・・別に構わないよ?」


悠斗の許可を得たミスティはそのノートを手に取り(めく)った。



「・・・基礎1から基礎5まであるのですね?」


目次を見たミスティはパラパラとページを(めく)っていく。


(ふふふ♪とても丁寧にお作りになられるのですね?

 普通は目次なんて書かないでしょうに・・・♪)


コーヒーに舌鼓を打つ悠斗に視線を投げかけると、

それに気付いた悠斗がコーヒーカップに口を付けたままミスティを見た。



「・・・何ですか~?ミスティさん」


「いえ、とても丁寧に書かれているので・・・」


「・・・バカ弟子だからね?

 サルでもわかるように書かないとさ・・・」


「ふふふ♪」


照れて横を向く悠斗にミスティは笑っていた。

そして再びミスティはノートに目を落とすと、ある事に気付く。


「あの・・・これって日本語では?」


このノーブルで日本語を読める者は皆無・・・。

そう思っていると、

悠斗はコーヒーカップに口を付けたままの姿勢で答えた。



「あ~・・・それはあくまで原文だから・・・

 自分で読み返して不備がないかをチェックする為に、

 わざと日本語で書いてあるんだ」


「ふふふ♪お優しいのですね?」


「ぐっ!・・・ち、違うからっ!

 み、未完成品・・・み、みたいなモノを残したくないだけだからっ!」


「ふふふ♪」


再び照れる悠斗を横目に、ミスティは視線をノートに戻した。



「呼吸法の事も専門的な言葉で書かれているようですが・・・

 これってあの2人には伝わるのでしょうか?」


そう疑問を持つミスティに悠斗は口を開いた。


「まぁ~無理だと思うよ?」


「で、では、どのように?」


「えっと~・・・一応考えてはいるよ?

 後ろのページに絵を書いてわかりやすくするつもりだけど?」


「絵・・・ですか?」


「・・・まぁ~それなりには書けるので・・・」


「・・・一度見て見たいですわね♪」


「そ、そのうちに・・・ね?」


そんな会話した後、ミスティは部屋を退室し悠斗は再び机に向かった。



「さてっと・・・やりますか」


悠斗は凝り性・・・いや、ここは「職人気質」と言え変えよう。

物作りにおいて、悠斗は一切妥協する事はないのだ。


従って2人に渡すモノは・・・。

背表紙がある「ハードタイプの本」に、する予定なのだ。


「出発前までには渡したいからな~・・・」


そうつぶやきながら、悠斗は本製作に没頭した。



そしてその日の夕方・・・。


悠斗は集中して製作に没頭中である。

そんな時・・・。


「コン、コン」と、再びドアがノックされた。


「開いてますよ~」


悠斗は執筆しながらそう言うと、ドアを開け再びミスティが現れた。

視線だけ送った悠斗にミスティは微笑みかけると・・・。



「悠斗さん、お食事の時間ですよ?」


「・・・もうそんな時間か~・・・わかった。有難う」


そう言いつつミスティは入室すると、コーヒーセットを片付け始めた。


「あっ、ありがとね・・・ミスティ」


「いえ、おかまいなく♪」


机の上に散乱していた筆記用具などを片付けると、

ミスティと一緒に食堂へと向かった。

ざわざわと悠斗を待つ仲間達が雑談する声が聞こえてきた。



「悠斗さん・・・参りましょう」


「あ、ああ・・・」


食堂のドアを開け中へ入ると、騒がしかった雑談が止まった。


「・・・すまない、遅れた」


頭を下げた悠斗にイリアとセルカから・・・苦情が出た。


「ユウト~遅いわよっ!いつまでやってんのよっ!」


「ユウト様お腹が引っ付きそうなのにゃ~・・・」


「あ、ああ・・・悪かったよ」

(こ、こいつら・・・がるるるる)



心の中で強く握り拳をした悠斗だが、アンナの言葉によって救われた。


「ユウト様、ご苦労様です。

 もしよろしければ、後で肩でもお揉み致しましょうか?」


「あ、有難うアンナさんっ!その言葉だけで・・・救われますっ!

 俺のバカ弟子達は気が利かないからね~。

 一体誰の為に作っているんだっ!と、声を大にして言いたいよ・・・」



まるでラウルのように、

そう嫌味っぽく言った悠斗は視線をバカ弟子2人に向けたのだが、

返ってきた答えは悠斗の予想出来ないモノだった。


「えっ!?ユ、ユウト様の御身体に触ってもよろしいのですかっ!?」


(そ、そっち!?まじかっ!

 やれやれ・・・身の危険を感じる・・・こ、こいつはダメだ)


「うむ・・・それは思いも付かなかった・・・」


(思いつかないのならっ!・・・し、仕方がないよね?

 それがオウムアムアっぽいしな~)


「・・・や、やっぱり遠慮しておくよ」


そんな話をしていると、イリアとセルカから再び苦情が入った。

その様子に笑いを堪えていた神獣達の視線が痛かったので、

溜息を吐きながら、悠斗が席に着くといつもの騒がしい食事が始まった。



ワイワイ、ガヤガヤと騒がしく話ながら食事をしていると・・・。


「ねぇ、パパ?」


「ん!?どうした~ミアプラ?」


悠斗の隣に座っているミアプラがじぃーっと見つめ話しかけてきた。


「パパはお部屋で何をしているの?

 一緒に遊んでくれないから、私・・・つまんないっ!」


「うっ・・・し、視線が・・・い、痛い・・・」


上目遣いを匠に使うそんなミアプラの視線に心が痛んだ。

そんな視線を送るミアプラに、口を開いたのはエルナトだった。



「ミアプラ?お父さんは今、執筆活動中なんだ・・・。

 だからそんな風に言ったら、お父さんが居た(たま)れないだろ?」


「エ、エルナト・・・?」


「な~に?お父さん?」


「む、難しい言葉・・・知っているんだね?」


「うんっ!ミスティ様が色々と教えてくれるんだっ!」


「へぇ~・・・ミスティがねぇ~?」


悠斗はそう言いながら、隣に座るミスティへ顔を向けると、

満面の笑みを浮かべていたのだった。



「・・・母親・・・が、代わりみたいなモノですから・・・」


「・・・はい?」


今まで騒がしかった食堂が、ミスティの発言によって時が止まった。

そして全員の視線がミスティへと向けられる・・・。


牛女と赤髪の3号弟子は、刺し殺すほどの視線を向け・・・。


魚を咥えたどこぞの猫は、尻尾を立てながら眉を吊り上げ・・・。


神界のロリっ娘は、呆れつつ溜息を吐き・・・。


ぺったんこの神獣は、頭の上に白い炎が浮かんでいた・・・。


緊迫した状況の中、口を開いたのはプロキシオンだった。



「ほ~らっ♪あんた達~・・・今は食事中なのよ?

 せっかくの食事が冷めてしまうわよっ!」


「うむ、我もプロキシオンに賛成だ。

 双子達の成長にも害を及ぼしかねんぞ?」


プロキシオンとオウムアムアの言葉で、一同は落ち着きを見せた。

悠斗は胸を撫で下ろすと笑顔を向け、ミアプラの問いに答えた。



「ミアプラ?今パパはね?

 バカ弟子達・・・ゴホンっ!俺の弟子達に本を書いているんだよ?」


「・・・どうしてパパがご本を書いているの?」


「修練・・・えっと~、練習方法を教える為の本なんだよ?」


「ふ~ん・・・。わかったけど、パパと遊べないのはつまんないっ!」


「ははは、ですよね~?うんうん、分かってたっ!

 で、でもさ~もう少しかかりそうなんだ・・・

 だからさ?もう少し待っていてくれないかな~?」


「うぅぅぅ」


そう話していると、ミアプラの隣に座るエルナトが、

何やらコソコソと話すと悠斗に向き直り、渋々頷いて見せたのだった。



「わかった・・・パパ、私・・・我慢する」


「・・・ありがとな?」


食事が終わると、それぞれが自由に行動し始めた。

悠斗は勿論・・・書斎で本の製作に没頭していくのだった。



そしてその日の夜中・・・。


「出来たっ!」


悠斗がそう声に出すと、まるで分かっていたかのように、

ミスティがドアをノックし、中へと入って来た。


「失礼致します。悠斗さん、完成したようですね?」


「あ、ああ・・・やっと出来たよっ!」


そう言って、悠斗から手渡された本に、ミスティは驚いた。


(・・・か、完璧な本・・・ですわね?

 そう・・・まるでプロの職人が製本したような・・・)


ミスティは完成した本と悠斗を何度も見ていた。



「まぁ~・・・久々に作ったけど、中々良く出来たと思うよ♪」


「久々って・・・?で、でも、素直に驚きましたわ」


「まぁ~しっかり製本したからね?」


「ふふふ♪流石ですわね?」


そんな話をした後、悠斗はバルコニーに出て一息着いた。

すると・・・。



(ん?こんな時間に・・・誰だ?)


玄関側を覗き込んだ悠斗は、2人の姿に驚いた。


「お、おいっ!2人ともっ!」


「し、師匠!?こんな時間までっ!?」


「ユウト師匠~♪」


「・・・ま、まぁ・・・いいや・・・。

 2人とも、ちょっと上がって来てくれ・・・」


「「?」」


悠斗に呼ばれた2人は、急ぎ部屋へと来ると中へ入った。


「はい・・・これ」


ぶっきら棒に差し出された本を2人が手に取ると・・・。


「こ、これはっ!?」


「こ、こ、この本・・・なんて完成度なのっ!?」


驚き・・・いや、驚愕と言ってもいいだろう。

それ程こだわりが見て取れる完成度の本だった。



「これは師匠がお一人で!?」


「んっ?当たり前じゃん」


「こ、これ程の製本を・・・」


「こだわりましたっ!」


その言葉に2人の神は片膝を着き頭を垂れた。



「なんのマネだよ?」


「・・・このオウムアムア・・・家宝に致しますっ!」


「・・・か、家宝は気が重いから止めてくれ」


「・・・毎日一緒に寝ます♪」


「い、いや・・・そ、それはやめてくれ・・・頼むっ!」


2人に本を渡し終えた悠斗は、その後、深い眠りに着いたのだった。



そしてその早朝・・・。


いつもの如く、悠斗は朝練をしていると・・・。


「おはよう御座います。師匠」


「おはよう御座います。ユウト師匠♪」


悠斗の朝練に加わった2人の手には、

こだわりを持って製作された「気道」の本があった。


「ははは・・・早速持って来たんだね?」


「はい、この本を読んでいましたら、

 いつの間にか、夜が明けておりました」


「・・・まじか」


「わ、私は・・・」


「さて・・・朝練するぞ~っ!」


「ちょっ、ちょっとーっ!ユウト師匠~♪聞いて下さいよ~っ!」


「しーらないっ!」


走り終わった後、その本の説明をしながら悠斗達の朝練が始まり、

暫くした後、朝練を終えると朝食を取りそれぞれの時間を過ごして行く。



悠斗は風通しのいい場所で、のんびりと寝て過ごしていると・・・。


「パパ~?ねぇったらぁーっ!寝てる・・・の?」


少し黙った後、悠斗は薄く目を開け口を開いた。



「・・・パパは只今・・・お昼寝中なのだ・・・」


「もうっ!起きてるじゃないっ!」


「ははは・・・ゆ、ゆっくりしたい・・・」


そう心の中で涙を流しながら悠斗はミアプラに告げるのだが、

そんな事は、子供達には関係ないのだ。

有り余るパワーと有り余るスタミナの前に、

「のんびり過ごす・・・」と、言う文字は存在しないのだった。


「お父さん・・・ちょっといいですか?」


「んっ!?エルナト・・・改まってどうした?」


エルナトのその真剣な声に、流石の悠斗も身体を起こした。

ふとエルナトの顔を見ると、緊張した面持ちだったのだ。


(んー・・・。何か覚悟を持って話しかけてきた・・・そんな感じだな?)


そう思った悠斗は、面倒臭がらず話を聞く事にした。


「エルナト・・・そんな緊張してないで、まずは座りなさい」


「は、はい」


その場に座ろうとしたエルナトに、

悠斗は「そこじゃない、こっちだよ?」と、優しく声を掛けると、

エルナトを胡座(あぐら)をかく自分の膝の上に乗せたのだった。


そして頭を撫でながらエルナトの話を聞いた。

すると羨ましかったのか、ミアプラも悠斗に抱きつくと、

同じように反対側の膝の上に座って笑顔を向けた。


(こ、こいつら・・・まじ天使っ!

 ・・・精霊樹だけど・・・それでもまじ天使っ!)


顔には出さず笑顔を2人に向けるのだった。



そしてエルナトは話を切り出した。

真剣に、そして緊張しながら・・・。


「お父さん、ぼ、僕達にも・・・本を・・・下さいっ!」


「・・・はい?」


「パパ~・・・私達もご本が欲しいのっ!」


「・・・えっと・・・物語とか童話とか?」


悠斗はその昔、童話全集なる本を見ていたため、

そう言う本が欲しいのかと思ったのだが違ったようだった。


話を聞くと双子達は、悠斗が製作した本を

アマルテアが見せびらかせてきたらしい・・・。

見せてくれないアマルテアに対し、オウムアムアがその本を見せてくれた。


内容はとても専門的でわからなかったが、

双子は「気道」にとても興味を持ったらしい・・・。


それならば・・・と、

たまたま偶然・・・?通りがかったミスティに相談すると・・・。

(偶然じゃない気がするんだが?)

双子は悠斗に直接言いに来たと言う事だった。



(まじか~?まさか2人が気道に興味を持つとは・・・

 だが何故だ?双子の背後にミスティがいる気がするんだけど?)


どうしようかと悠斗は悩んでいると、エルナトは話を続けた。


「お父さん、亜神様のご本の後ろのページにあった、

 あの絵・・・とても分かりやすかったので、

 これなら僕達にも理解出来るような気がするんだ」


「ああ~・・・あいつらが分かりやすいように書いたあの絵か?」


「うんっ!お父さんって・・・絵が上手いんだねっ!」


「うん♪私もパパの絵が上手だと思った~♪」


「そ、そうか~?あはははは」


この時、双子の精霊樹は念話で会話をしていた。



(エルナト~?ミスティ様の言う通りになったね~?)

(そうだね♪僕達も鍛えて、お父さんの力になるんだっ!)

(うんっ♪悪い人達をパパの代わりにやっつけよう~♪)

(まだそんな事は出来ないよ?

 だからしっかり・・・その、練習をするんだっ!)

(はーいっ!)

(ミアプラ?厳しくても・・・頑張れるかい?)

(うんっ♪パパの為に私・・・頑張る♪)

(僕だって負けないからな~♪)


そんな会話を双子の精霊樹はしていたのだった。


悠斗は少し険しい顔をしていたのだが、

そんな双子が心配する様子を見て笑顔を向けると・・・。


「・・・わかったよ?絵本・・・2人ために作ろうかな~?」


悠斗のその言葉に、双子の精霊樹はとても喜ぶのだった。

そんな双子を優しく見つめながら・・・。


「作るとなったら、お前達の相手は出来なくなるけど・・・

 それでもいいのか~?」


思わぬ悠斗の反撃に、双子の精霊樹は一瞬顔を引きつらせた。

ここで更に悠斗は追い打ちをかける。


「本当に・・・一緒に遊べなくてもいいんだな?」


「うっ・・・うぅぅぅ・・・」


唸り始め動揺を見せるミアプラだったが、

数回頭を振ると、意を決して声を上げた。


「だ、大丈夫だもんっ!

 パ、パパがご本・・・作ってくれるなら・・・

 ミ、ミアは・・・ま、待てる・・・もん」


少し俯き加減でそう答えたミアプラに、悠斗は優しく頭を撫でると、

2人を抱え上げ、歩き始めたのだった。


「パ、パパ・・・?」


心配そうな顔を向けるミアプラに、悠斗は笑顔を向けた。

そして・・・。


「よぉーしっ!こうなったら・・・すごーい絵本を作ってやるぞっ!」


「ほ、本当!?」


「ほ、本当なの? ・・・パパ?」


「ああっ!俺に不可能はっ!・・・け、結構沢山あるんだけどね~♪」


「ふふふ・・・なに~それ~?」


「あははははっ!お父さんおもしろーいっ!」


親子3人で沢山笑いながら、悠斗達は屋敷へと戻って行った。

その途中・・・。


「あ~でも、すごいのを作るから、1冊しか出来ないけど・・・いいか?」


悠斗の言葉に顔を見合わせる双子達・・・。

そして頷き合うと、エルナトが口を開いた。


「うんっ!1冊でいいよ?じゃないと・・・」


再び双子達は顔を見合わせると・・・。


「「一緒に遊べなくなっちゃうもんっ♪」」


「ぷっ・・・ふふふ・・・あ~はっはっはっ!

 だよな~?一緒に遊びたいもんな~?

 俺だってお前達と遊びたいからな~♪

 だけど・・・取り合って喧嘩しちゃダメだぞ?」


「「うんっ!」」


屋敷に戻る途中・・・。

そんな話をしていたのだった。



そして・・・。


屋敷に到着した悠斗達は、

玄関先でソワソワしているパティーナに出会った。

双子の姿が見えなくて心配していたらしい・・・。

悠斗達の姿を見つけたパティーナの慌てようは、正直可笑しかったのだ。

だが、心配してくれたパティーナに頭を下げ礼を述べると、

双子の精霊樹を任せて、悠斗は書斎へと向かうのだった。


書斎へと向かう途中・・・。

すれ違うミスティに悠斗は声をかけた。


「ミスティ・・・」


「・・・ひ、ひゃいっ!」


「・・・後で・・・な?」


「・・・ひゃぃっ!」


永久凍土を更に凍らせたような、そんな悠斗の声に、

ミスティは全てを察すると・・・一瞬心臓が止まった。


「・・・も、申し訳・・・」


「な~んてね?・・・ありがとな?♪」


「は、はい・・・?どう致しまし・・・て・・・?」


機嫌良さそうに書斎へと向かう悠斗はその後・・・。



「ミスティーっ!」


絵本製作に没頭する悠斗は突然ミスティを呼んだ。


「は、はいっ!い、いかがされましたかっ!?」


慌てていた為、ノックもせず入室すると・・・。



「至急、色鉛筆を買って来てくれっ!」


「は、はい!?」


「えっと・・・色鉛筆がなかったら、絵の具でもいいからっ!」


「は、はい・・・か、かしこまりました」


「急いでくれっ!じゃないと・・・子供達と遊べないからさっ!」


「・・・はいっ♪」



急ぎミスティは色鉛筆を買いに神界へと戻って行った。



そしてその後・・・。


「か、完成・・・だぁぁぁっ!」


その悠斗の叫びに・・・。

ミスティ、双子の精霊樹、パティーナ、

オウムアムア、アマルテアが慌ただしく詰めかけた。


悠斗は立ち上がった姿勢のまま、机に両手を着き固まっていた。

「ゴクリ」と、固唾(かたず)を飲みつつ、

ミスティが悠斗に声をかけると・・・。



「悠斗・・・さん?」


その呼び声に悠斗は「ピクリ」と、反応を示した。


「エルナトっ!ミアプラっ!完成したぞっ!」


「出来た・・・の?」


「ああ、出来たぞっ!」


「パパーっ!」


「お父さんっ!」


悠斗の元へ駆け出した双子の精霊樹は、悠斗に飛びついた。

喜び合う3人の姿に、パティーナは目に涙を浮かべていたのだった。


微笑みながらミスティ達は、喜び合う悠斗の元へと来ると、

完成した絵本を手に取り、その完成度に全員が驚愕した。


「す、すごいっ!」

そう声を漏らしたのは・・・アマルテアだった。

そしてその言葉に続くように、次々声が漏れ始めた。


「う、うむ・・・我はこの扉絵だけで、

 この絵本の価値がすごいモノだと核心できた」


オウムアムアはその扉絵だけで何故か感動していたのだった。


「さ、流石は・・・ユウト様です。

 エルナト様とミアプラ様への想いに溢れています」


パティーナもまた、その扉絵だけで悠斗の優しさが伝わっていた。


「・・・流石ですわ、悠斗さん。

 これはもはや・・・「聖書」と言っても過言ではありませんわね?」


大げさな事を言ったミスティだったが、

その絵本を見つめると・・・。


(な、なんとかこれを・・・複製できないかしら?)


真剣に見つめるそんなミスティが此処に居たのだった。



悠斗が完成させたその絵本は・・・。


扉絵に蝶の羽を持つ男の子と女の子の2人の妖精が、

湖の(ほと)りの傍にある木の枝に腰をかけ、

一緒に・・・そして、とても楽しそうに、大きな絵本を読んでいる姿だった。


色鉛筆で描かれたその妖精の色調はパステルカラーで、

様々な淡い色が使用されていた。


ミスティは何気に一番最後のページを開くと・・・。


「こ、これは・・・!?」


ミスティが開いた絵本の最後のページには・・・。

3人の親子とも思える笑顔の妖精達が、仲良く手を繋いでいる・・・


そんな姿が描かれていたのだった・・・。




剣神 ・・・ ユウト様の親愛なる3号弟子のアマルテアですっ!

亜神 ・・・ 我は亜神・オウムアムアです。

剣神 ・・・ 兄弟子っ!私もあの絵本・・・欲しいのですが?

亜神 ・・・ うむ・・・し、しかしあれは・・・。

剣神 ・・・ 分かりますっ!分かるのですが・・・どうしても・・・。

亜神 ・・・ あれは双子達の所有物だからな?

剣神 ・・・ な、何かいい手はないものでしょうか?

亜神 ・・・ ならば、師匠に直接頼めばよいのではないか?

剣神 ・・・ ハッ!た、確かにっ!流石は兄弟子ですっ!ではっ!

亜神 ・・・ お、おいっ!・・・師匠に連絡しておくか。逃げろと・・・。



ってなことで、緋色火花でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ほっこりするお話でしたね♥︎ しかし悠斗は器用ていうか、知識が豊富というか。。。 本当の年齢でも20代なのに。。。すごいですね^^; ラウルが目をつけるだけあるってことですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ