155話 頼らない理由・・・。
お疲れ様です。
明日からは閑話シリーズとなります。
まずは・・・ラウルと白斗のお話からとなります^^
前後編と別れていて、謎の人物が後半に出てきますので、
楽しんで読んで頂けたら・・・幸いです^^
それでは、155話をお楽しみ下さい。
先代精霊樹が鬼人族へと存在進化した悠斗の血液で、
真・精霊樹と成りはしたが、問題はまだ・・山積み状態だった・・・。
「なぁ~アヤメ・・・さん?」
「ユウト様・・・、アヤメとお呼び下さい」
「いやいや、長く生きているんだからさ~
当然目上の人に敬語を使うのは当たり前だと思うんだけど?」
そんな事を話していると、ミランダが悠斗の肩を掴んだ。
「ユウト~?一応言っておきますけど・・・
私とチタニアだって、あんたよりはず~~っと長く生きているんだからねっ!」
「フフ・・・そうですわ♪
アヤメさんだけ・・・特別扱いと言うのも、どうなのでしょうか?」
悠斗は苦笑いしながらククノチにヘルプのサインを送るのだが・・・。
(マスター?これは~・・・マスターが悪いぜ?
だからオイラにそんな目を向けられてもな?)
「・・・冷たいやつめ」
身内に裏切られる形となった悠斗は、
渋々アヤメを呼び捨てにする事になった。
「じゃ~アヤメ?早速聞きたいんだけど・・・」
(・・・はい)
「その枝は早急に植えられる場所を探さないといけないんだよな?」
悠斗の問いにアヤメは少し考えると、微笑みながら返答してきた。
(フフ、そう急ぐ必要もありません。
確かにこのままでは存在進化した私でも、いずれ死を迎える事になります。
ですが・・・。
ユウト様の血液があればまた暫くの間は持つかと思われます)
「話だけ聞くと・・・怖いな・・・あははは」
(フフ、ですがそれはあくまで延命・・・。
大地に根付かない事には、どうしようもありませんけどね♪)
悠斗は微笑むアヤメを見ながらも考えていく・・・。
「アヤメ・・・どれくらい持つんだ?
これは大切な事だ・・・正直に隠さず答えてくれ」
(はい、・・・およそ3ヶ月くらいは現状維持できます)
「そ、そうか・・・良かった」
悠斗は思っていたよりも期間があった事に感謝した。
(だけど早目に探さないと・・・)
そう考えた時だった・・・。
チタニアが考え込む悠斗に話しかけてきた。
「ユウト様?」
「ん?」
「アヤメさんの件はとりあえず何とかなりそうなのですが・・・。
ユウト様の、神精力について考えませんと・・・。
そして存在進化し鬼人族になった事なども含め、
まだまだ難題はたくさんありますわ」
(た、確かにそうだっ!
俺が存在進化したきっかけは恐らく・・・「鬼道」だろう。
ゼツのおっさんは一体何者なんだ!?
それに「人間」・・・「日本」・・・確かにそう言った。
つまり・・・俺の居た世界の住人もしくは・・・
何らかの関わり合いがある者・・・
今度会ったら必ず聞き出してやるっ!)
そう考えていた悠斗を一同が見つめていた。
そして悠斗の表情が次第に険しくなっていくと・・・。
「ユウトっ!」
「!?」
突然大声で名を呼ばれ悠斗は我に返った。
「ミ、ミランダ!?な、何だよ・・・そんな大声なんか出してさ」
「あんた・・・また全部一人で背負い込むつもりなの?」
「えっ!?」
「そうですわ。まさしくそのお顔は・・・。
私達にも頼って下さいませんか?
それとも・・・私達では頼りになりませんか?」
ミランダやチタニア・・・それにククノチやアヤメまで、
そんな悠斗に悲しい表情を見せていた。
「あははは・・・た、頼るに決まっているじゃんか?」
「その言葉・・・信じていいのかしらね?」
「あははは・・・」
引きつらせた笑みにミランダはそう噛み付くと、
突然声を張り上げた。
「あんたっ!自分で何でも出来るって勘違いしてんじゃないのっ!
舐めないでよっ!この世界をっ!
バカにしないでよっ!この世界の住人達をっ!」
「お、俺は別に・・・バカになんてしてないし、
舐めてるだとか、そんなつもりもない」
少し俯き加減でそう話す悠斗に、ミランダ続けてこう言った。
「ならっ!どうして仲間達に頼らないのよっ!
そうすればもっと情報も集まるし、戦力ももっと増えるはずよっ!
・・・一人で出来る事なんて、たかが知れているじゃない。
ほんと・・・バカなんだから・・・」
激しく叱咤したミランダだったが、
次第に口調は悠斗を心配するモノへと変わっていた。
そんなミランダに悠斗は本音を言おうと決断すると・・・。
「みんな、聞いてくれ・・・俺の本音を・・・」
悠斗の真剣な眼差しがみんなを黙って頷かせるのだった。
「俺は誰も・・・巻き込みたくない・・・。
本当にただそれだけなんだ・・・
それにこれは俺が受けた依頼なんだ・・・だから誰も巻き込みたくはない
危険な事は分かってるけど、俺に関わったせいで・・・
この世界の人達が傷付くのは・・・見たくないんだ。
綺麗事だと分かってるけど・・・それでも俺は・・・」
その言葉に顔を顰めたのは・・・ミランダだけではなかった。
「ユウト様・・・いくらラウル様に頼まれたからと言って、
それはあまりにも身勝手なお考えですわっ!」
(そうだぜマスター!この世界の住人達だけ何も傷つかずに・・・
そんな世界に意味なんてねーぜっ!)
(ええ、ユウト様だけが戦い傷付くなんて・・・理不尽過ぎますっ!)
「ユウト、あんたは・・・それでいいの?」
ミランダは怒る事なく冷静な口調でそう言った。
そんなにミランダに悠斗は言葉に詰まっていると・・・。
「ラウルに頼まれたから?
それとも・・・愛する者を失って死に場所を探していたから?」
「!?」
ミランダの言葉に固まった悠斗だったが、
その言葉はその他の者達をも固まらせた。
「ミ、ミランダさん・・・それはほ、本当の事なのですかっ!?」
「ええ、本当の事よ?
これでも私・・・邪神の女神なのよ?
それくらいの情報なんて・・・掴めるわよ。
本当はこんな事言うつもりなんて、これっぽっちもなかったんだけどね?」
そう話したミランダは後悔の念が見て取れた。
他にもっと良い言い方があったんじゃないか・・・?
そんな事を思いつつも、今後悠斗が一人で背負い込まないようにと・・・
ミランダはそう言ったのだが・・・。
(・・・他に言い方って、あったはずなのにね?)
ミランダは顔を顰めると溜息を小さく吐いた。
悠斗に嫌われる覚悟でそう告げたのだが、後悔が止まらない・・・。
そんな時だった・・・。
悠斗は一瞬顔を歪ませると・・・。
「ププッ!はっはっはっ!」と、突然笑い始めた。
「あんた・・・何が可笑しいのよっ!」
ミランダは怒りを滲ませ悠斗を睨みつけた。
「あ~・・・悪い悪い。
ミランダが言った事に笑ったんじゃないんだ」
「はぁ?」
「いや~・・・自分の愚かさに笑ったんだよ?」
「言ってる意味が分からないわね」
腕を組みつつ睨むミランダに悠斗は説明をしていった。
「まぁ~確かに、俺は自分勝手に色んなモノを背負い込んでた・・・。
それは事実なんだけど・・・。
俺の勘違いってのはさ?俺にしか・・・そいつを倒せない・・・
な~んて事を思っていたからなんだよ」
「ユウト様・・・そんな事をラウル様が言ったのでしょうか?」
「いや・・・。そんな事言ってないけどさ?
俺が勝手にそう勘違いしてたって事さ。
ラウルに・・・頼まれはしたけど、
よく考えたらさ、俺でも倒せるかどうか・・・怪しくね?
その異形の魔って、ラウル達にもどうしようもなかったんだろ?
そんな神相手に互角に戦えるだけじゃ・・・ダメじゃね?」
悠斗はさっぱりした顔でそう言うと、
先程の重苦しい空気は何処かへ飛んで行ってしまったかのようだった。
「そうね~・・・確かに私達と互角程度じゃね~?」
「ミ、ミランダさんっ!そ、そんな事を言わなくても・・・」
「だって本当の事じゃない?嘘を言ったって仕方がないでしょ?」
「それはそうですが・・・」
俯くチタニアの肩に悠斗はそっと手を置くと、にっこりと笑って見せた。
「俺は大丈夫だからさ?
でも俺一人の力には限界がある。
だから・・・みんな手伝ってくれ」
悠斗はそう言ってみんなに視線を送っていく。
その熱い眼差しにミランダは頬を染めながらブツブツと何か言い始めた。
「な、なによ・・・勝手な事ばっかり言うんだから・・・
あ、あんたはそれでいいかもしれないけど、
もっとみんなのペースに合わせなさいよね・・・
放っておくと一人で突っ走っていっちゃうんだから・・・」
チラチラと悠斗を横目で見ながらも頬を染め文句を言うミランダに、
チタニア達も苦笑して見せるのだった。
「フフ・・・ミランダさんも素直じゃないですわね?」
(あはは、ミランダ様ってオイラの思っていたキャラと全然違うのな?
もっと怖い女神様かと思ったぜ♪)
(ククノチ?人は見かけによらないモノですよ?
特に・・・女性はね?)
(へぇ~・・・さすがアヤメ様だぜっ!良い事言うぜ~♪)
「あ、あんた達ーっ!人が黙って聞いていれば・・・
こ、このぉぉぉぉぉぉっ!」
チタニア、ククノチ、アヤメがそれぞれの物言いに、
顔をヒクヒクさせていたミランダの怒鳴り声が聖域内に響き渡った。
そんな様子を笑顔で見ていた悠斗は・・・。
(まずは鬼道を・・・っと言いたいところだけど、
今の俺は色々と変わり過ぎているからな~?
1つずつ確認しなくちゃな・・・やれやれ・・・だな)
悠斗達邪神の女神の聖域に居た者達は、
それぞれの力を上げる為、修練することになったのだった。
そして場所は変わり、此処は「岩場の聖域内」・・・。
悠斗に着いて行くと決めた者達が、実力を上げる為修練しているのだった・・・。
魔法神・アリエルに指導を受けているイリアは、
己の中に住まう「青き炎」の修練をしていた。
「イリアっ!まだ不安定よっ!
いい加減にその炎を安定させなさいよっ!」
「す、すみませんっ!アリエル師匠っ!」
「謝る暇があったら、とっとと安定させなっ!
あんたが一番足手纏いなんだからっ!気合入れなっ!」
「は、はいっ!」
イリアは青い炎の力を安定した状態で出現させる訓練を行っていたのだが、
思いの他、苦戦していたのだった。
そして剣神・アマルテアと組んでいるセルカは・・・。
「にゃぁぁぁっ!」
「カキンっ!」
「ふっふっふっ・・・その程度の速さじゃ・・・話にならないわね?
セルカ、もっと速度は出せるはずよっ!」
「こ、これから・・・出すところだにゃ・・・」
「なら・・・とっとと本気を見せなさいっ!
生ぬるい事言ってたら・・・ぶっ飛ばすわよっ!」
「はいにゃぁぁぁぁっ!ぶっ殺すのにゃっ! 」
「・・・今、何か言ったかしら?」
「い、言って~・・・ない・・・にゃ?」
アマルテアはセルカの長所である速度に磨きをかけるべく、
己自身が速度を徐々に上げ、セルカの瞬発力をも鍛えていた。
そして、亜神・オウムアムアと組むアンナは・・・。
「はぁぁぁぁっ!」
「ガシッ!」
「ふむ・・・今のは中々いい踏み込みだったな?」
「あ、有難う御座いますっ!」
「だがな・・・?はぁぁっ!」
「ドカっ!」
「はぅっ!」
「体重の乗りがまだまだ甘い・・・。
ゼロ距離なら尚更だ・・・。
下半身からの力を、しっかりと拳へと伝えなければ・・・な?」
「わ、分かり・・・ました」
「うむ、ならば・・・もう一度だっ!」
「は、はいっ!師匠っ!」
アンナはオウムアムアと共に、格闘術に磨きをかけつつ、
体重移動と力の伝え方の訓練に励んでいた。
そして精霊樹の傍では、神獣達と幼き双子が訓練に励んでいた。
「やぁぁぁっ!」
「パシッ!」
「おっ!?今のはかなりいいんじゃないか?」
「ほっ、本当ですかっ!?」
「ああ、腰の入ったいい拳だったぜ?」
「も、もう一度っ!お願いしますっ!」
「はっはっはっ!いいだろう・・・来いっ!」
「・・・行きますっ!はぁぁぁぁぁぁっ!」
双子の精霊樹であるエルナトは白銀竜・ラムダと格闘術の訓練に励み・・・。
「はぁぁぁぁぁぁっ!」
「そうよっ!いい感じに精霊力が凝縮されているわっ!
はいっ!そのままっ!
いい?そのまま胸元で精霊力を維持するのよっ!」
「・・・は、はいぃぃ・・・うぅぅ」
「あぁーダメダメっ!もっと硬く・・・そう・・・硬く凝縮するのよっ!」
「わ、わかり・・・ました・・・はぁぁぁぁぁぁっっ!」
古代狼・プロキシオンはミアプラと共に、精霊力の制御を行っていた。
だが、事が上手く運ばず悶々と訓練している者達が居た・・・。
「ふむ・・・あちらは順調そうだけど・・・はぁ~・・・
もう・・・誰か私と変わってよ~・・・」
訓練風景を眺めつつ、深い溜息を漏らすのは・・・。
白凰・ロゼッタだった。
「パティーナっ!もっと神力を凝縮出来るはずよっ!
それと・・・キナリ、あんた・・・やる気あるのっ!?」
「も、申し訳ありませんっ!」
「や、やる気って言われても・・・これで精一杯なんですけどっ!」
「キナリっ!グダクダ言わないのっ!あんたはすぐ弱音を吐くっ!
もう少し双子ちゃん達を見習いなさいよっ!
それと・・・パティーナっ!あんたはもっと集中しなさいよっ!
双子の事を気にし過ぎよっ!」
訓練のハードさに音を上げるキナリと、
双子の精霊樹の事を必要以上に気にし過ぎるパティーナに、
ロゼッタは頭を抱えていたのだった。
そしてその日の訓練を終えた者達は風呂に入り食事を終えると・・・。
一人の女性が闘技場内を歩いて行く・・・。
「・・・待ったかしら?」
赤髪をなびかせ、ラフな格好で声を欠けてきたのは、剣神・アマルテアだった。
「うむ、女性の風呂は長いと相場は決まっている・・・。
我は全く問題ない」
闘技場内に置かれているベンチに腰を下ろしていた亜神・オウムアムアは、
そう言ってベンチから立ち上がった。
「準備はいい?」
「ああ、問題ない」
そう言うと、アマルテアとオウムアムアは闘技場内を走り始めた。
「・・・やってるわね?」
そう言って現れたのは時空神・ミスティだった。
ミスティに気付いた2人は挨拶をしようとした時、それを止めた。
(私に構う事はありませんわ、
あなた達の修練を邪魔するつもりはありませんから・・・)
(あ、有難う御座います。ミスティ様)
(感謝致します。ミスティ様)
念話で送られてきた言葉に、2人は感謝しつつ再び走り始めた。
すると・・・。
「ん?ミスティ・・・来ていたのね?」
そう言って背後の入り口から出てきたのは魔法神・アリエルだった。
「ええ、2人が気道の訓練をしていると聞いたものですから・・・」
「ああ、毎日欠かさず朝と夜とやっているみたいだ」
「ふふふ♪頼もしいですわね?」
「ああ」
闘技場内を走る2人の姿を見ながらミスティは微笑んでいた。
そしてまたアリエルも、同様にそんな2人に笑みを浮かべていたのだった。
「それで・・・?アリエルの方はどうなのですか?」
「どうって言われても・・・な?
ただ、前回カロンの時のような失態をするつもりはないわ」
「そうですわね?私も色々と勉強になりましたから・・・」
「その言い方だと、あんたも?」
「ふふふ・・・ええ、私なりに励んでいますわ」
意味有り気な笑みを浮かべるミスティとアリエルは「ふっ・・・」と笑った。
「ところでミスティ・・・、ラウル達はどうなっているの?」
その問いに今日初めて、ミスティはアリエルに視線を移した。
「それが・・・神界の「閉鎖空間」に閉じ籠もっているみたいで・・・、
全く連絡が着きません」
「・・・あいつめ、ちゃんとやっているんだろうな?」
「・・・まぁ~白斗ちゃんが一緒だがら、
真面目にやっているとは思いますが・・・はぁ~・・・」
「あ、ああ・・・閉鎖空間に入ったら、連絡取りようもないわね?
白斗がしっかり見張っている事を願うしかないわね・・・」
「・・・ですわね?」
ミスティとアリエルは夜空を見上げながら、
ラウルが真面目にやっているかどうかの心配をしているのであった。
そして此処・・・神界にある「閉鎖空間」では・・・。
「ラウルはん?そこ・・・繋がってへんのとちゃう?」
「ん~・・・どうしてもここが断線するな~?
な~んでだろ?
あっ・・・、白斗君?ここをさ・・・君の力で保護する事って出来るかな?」
「ん~・・・せやな?出来るっちゃ~出来るんやけどな?
ラウルはん?でもここは関節部分やからあかんのんとちゃいますか?」
「んーーーーーっ!」
「ワシの力やと固める事は出来ても、柔軟性はあらへんからな~?」
「だ、だよね?・・・はぁ~・・・構成やら素材やら・・・
また一から始めないとダメだな~・・・」
溜息をもらしつつ、2人は試行錯誤を繰り返すのだった。
次回からは再び閑話シリーズのスタートです。
ラウル ・・・ んー・・・一応それらしい事は言っていたけれど・・・。
ミスティ ・・・ どうかされましたか?
ラウル ・・・ いや~・・・悠斗君の事だよ?きっとまだ他に・・・ね?
ミスティ ・・・ そうでしょうね?それは私も感じますわ。
ラウル ・・・ これからどうなって行くのか・・・不安だね~?
ミスティ ・・・ ・・・で、ですわね。
ってなことで、緋色火花でした。




