154話 邂逅の儀
お疲れ様です。
今回は一度本編に戻ります^^
2話ほど続いてから、閑話シリーズになりますので、
楽しく読んで頂けたら幸いです^^
それでは、154話をお楽しみ下さい。
邪神の女神・ミランダの簡易聖域で、
ククノチと悠斗は再び出会う事ができた・・・。
「いててて・・・ククノチ・・・も、もう少し手加減を・・・」
ククノチがめり込んだ腹を押さえながら、悠斗はそう言った。
(ははは、す、すまねーマスター。つ、つい・・・)
「お前な~?」
そう言った時だった・・・。
悠斗はククノチが目に見えて大きくなっている事に気づいた。
「あ、あれ?・・・お前、でかくなってね?」
米粒ほどの光の粒だったククノチの大きさは・・・
3cm程の大きさに変わっていたのだった。
しかも・・・。
「・・・表情とか普通に見えるんだけど?」
そんな悠斗の言葉にククノチは自分の身体を見渡した・・・。
(あれ?ほんとだ・・・いつこうなったんだろ?)
驚くククノチを見ていた悠斗は、もう一つ・・・気がついた。
「お前・・・その手に持ってるのって・・・?」
悠斗に言われ手に持つ枝を見ると、慌てて話始めた。
(あぁぁぁっ!そうだったっ!忘れてたぜっ!
マスターっ!この精霊樹の枝をっ!)
ククノチに手渡された枝を見つめると・・・。
「こ、これって・・・先代精霊樹かっ!?」
(うんうんっ!俺の中に収まりきらなかった先代様を、
精霊樹の枝と分ける事で何とかなったんだっ!)
「お、お前・・・なんて無茶な事を・・・」
(へっへーんっ!俺も少しは強くなったらしいんだぜっ!
まぁ~でも・・・破裂しなくて良かった~♪)
「・・・は、破裂!?」
驚く悠斗にククノチは満面の笑みを浮かべていると、
2人の女神が咳払いをしつつ話しかけてきた。
「あ、あの~?私達の事・・・お忘れではありませんか?」
申し訳なさそうにそう言ったチタニアの背後から、
ジト目で見るミランダの姿があった。
すると・・・。
(マスターっ!先代の精霊樹様がっ!?)
「ど、どうした!?」
(い、いや、話したいらしいんだけどよ~?
オイラの中から出られないらしいんだ)
その言葉を聞いた悠斗は2人の女神に視線を送るのだが、
首を振り「分からない」と告げるのだった。
困った悠斗はククノチに通訳をしてもらい会話をする事になった。
「ん~・・・そうだな~?
じゃ~、どうすれば出てこられるか聞いてくれないか?」
悠斗の問いにククノチは中に居る先代精霊樹に話を聞いた。
(えっとよ?この精霊樹の枝を・・・どこかに植えてほしいんだってよ?)
「そっか・・・わかった」
悠斗はククノチから精霊樹の枝を受け取ると、
どこかいい場所がないかを探し始めた。
「えっと~・・・陽当たりのいい感じな所は~・・・っと」
広い場所で陽当たりのいい場所を探して行くが見つからず、
それなりに良いと思える場所に枝を植えようとした時だった・・・。
「ユウトっ!ちょっと待ってっ!」
「えっ!?ど、どうしたんだよ?そんな大声で・・・」
悠斗が話終わる前にミランダは駆け出すと・・・。
「私の聖域内で精霊樹を植えないでっ!」
必死な形相でそう訴えるミランダに、悠斗は頭を捻って見せた。
視線をチタニアに向けると、
何か分かったのか驚いた表情を見せていたのだった。
「えっ!?チタニア・・・どう言う事だ?
それに・・・ミランダも・・・どうして植えたらダメなんだよ?」
顔を伏せたままのミランダからチタニアへ顔を向けると、
歩きながらチタニアが答えていく。
「ユウト様・・・ここはミランダの聖域なのです」
「あ、ああ・・・勿論・・・知ってるけど?」
「それが答えですわ」
「・・・はい!?」
その意味が分からない悠斗にミランダが溜息を吐きながら口を開いた。
「はぁ~・・・。あのね~?私は邪神の女神なのよ?」
「ああ、知ってるけど?」
「あ~・・・もうっ!本当に分かってないのねっ!?」
「・・・ご、ごめん」
本当に分からない悠斗に呆れ顔を見せるミランダは説明していく。
「私は邪神の女神・・・
だから当然、この聖域は邪神の神力によって作られているわ」
「あ、ああ・・・」
「だ~か~ら~っ!そんな場所に精霊樹なんて植えてもっ!
育つはずないでしょっ!」
「ま、まじか・・・」
「当たり前でしょ?いくら簡易的な聖域と言っても、
邪神の女神たる私が作った聖域なんだからっ!」
悠斗はミランダの物凄い剣幕に恐る恐る手をあげた・・・。
「・・・何よ?」
「えっと~・・・もし、植えてしまったら・・・どうなるんだ?」
「簡単よ・・・朽ち果てるわ!」
「・・・まじでかぁぁぁっ!」
大声で叫ぶ悠斗にチタニアは顔を顰めつつも、
ククノチと何か話しているようだった。
そして・・・。
何かを話していたチタニアは、
未だに説教されている悠斗の元へとやって来ると・・・。
「ユウト様・・・、彼の中に居る先代精霊樹と少し話したのですが・・・」
少し深刻そうな表情を浮かべいた。
「どうしたんだよ?」
「はい、彼の中に居る先代精霊樹は言わば残存思念・・・。
いくら彼の中に居るとは言っても、あまり時間が・・・」
チタニアからその話を聞くと、みんなで話し合う事にするのだが、
話はそう簡単には進まなかった。
(マスター・・・先代様が・・・)
「まさかもう時間切れなのかっ!?」
(い、いや・・・そうじゃなくて・・・)
「ん?」
(えっと~・・・神界に居る「神界樹」様の力を借りられたらと・・・)
悠斗は神界樹と言われ、以前デビルトロールと戦った場所を思い出していた。
「ああ~・・・そう言えば前に・・・」
そう悠斗が声を漏らした時だった・・・。
ククノチは先代精霊樹から言葉を受け取ると、慌てて口を開いた。
(マ、マスター!ステータスを確認してくれってっ!)
「ステータスって、また何で?」
(いいからっ!早くっ!)
ククノチの慌てように察した悠斗は急ぎステータスを確認していった。
「えっと~・・・ステータス」
「フォン」と、音をたてながらステータスボードが目の前に現れると・・・。
「で?何を確認したらいいんだ?」
ククノチは再び先代から言葉を受け取ると、それを伝えた。
(種族だってよっ!種族っ!)
「種族って・・・俺は人族なんだけど・・・」
少し面倒臭いと思いながらも悠斗は種族名を確認すると・・・。
「なっ、何だぁ~!?」
「「(!?)」」
悠斗の驚く声に全員が驚きを見せた。
「え、えっと~・・・あれ!?俺って・・・」
「ちょっと!何なのよ!はっきり言いなさいよっ!」
「ユウト様?いかがされたのですか?」
(マ、マスター?)
悠斗はステータスボードから視線をみんなへと移すと、
その表情は困惑に満ち、引きつった笑みを浮かべていた。
「あははは・・・俺、人族じゃなくなったんだけど?」
「「(・・・はい?)」」
「えっと・・・さ。鬼人族って、書いてあるんですけど?」
ミランダ、チタニア、ククノチは、それぞれが顔を見合わせた。
そして・・・。
「ね、ねぇ・・・チタニア?鬼人族って・・・何?」
「えっ!?わ、私に聞かれましても・・・
あっ、ク、ククノチさんなら・・・何かご存知なのでは?」
(えっ!?オ、オイラが知る訳・・・な、ないよ?)
「あ、あんたが知らないってどう言う事なのよ?」
この場に居た全員が困惑していると、先代精霊樹がククノチに言葉を預けた。
(せ、先代が言うには・・・よ?
マスターが、そ、その・・・存在進化したらしい・・ぜ?)
「「「存在進化ーっ!?」」」
チタニアやミランダだけではなく、悠斗もまたそう叫んだ。
「な、なぁ~ククノチ?存在進化って・・・?」
悠斗がそう聞いた時だった・・・。
チタニアが何かを思い出すと「あぁぁぁっ!」と、叫んだ。
「な、何よっ!チタニアっ!急に大声出さないでよっ!」
チタニアの真横に居たミランダがそう抗議するのだが、
チタニアはミランダの肩を掴むと、思いっきり前後に身体を揺すり始めた。
「ミ、ミミミミミミミランダさんっ!」
「チ、チ、チチチチチチチチチチ・・・タタタタ・・・」
激しく揺すられ言葉が上手く話せないミランダは、
チタニアの頭を殴ると、興奮するチタニアを止めた。
「あんたっ!そんなに揺すられてちゃ何も話せないでしょっ!
あっ・・・クラクラする・・・わ」
「い、痛いです・・・わ」
「当たり前でしょっ!・・・で?そんなに興奮してどうしたのよっ!
もし、くだらない事だったら・・・ぶっ殺すわよっ!」
「・・・はぅ」
怒鳴るミランダにチタニアは何度か謝罪すると、
呼吸を整え話始めた。
「えっとですね?確か・・・ユウト様?」
「・・・は、はい?」
「先程確か・・・。精霊力が失くなったとおっしゃっていましたわね?」
「・・・あっ、ああ、そうなんだよ、精霊力が失くなった代わりに、
神精力ってのが鑑定で分かったんだけど?」
(!?)
そう言いつつククノチを見ると、先代精霊樹からの反応を待った。
そして暫く待つこと・・・5分・・・。
ククノチは先代精霊樹から言葉を受け取ると・・・。
(マスター・・・マスターの血・・・俺にくれないか?)
「・・・はい?ま、まさかお前まで・・・俺みたいに何かに進化して・・・。
あっ!まさかっ!吸血鬼的な精霊にっ!」
(ならねーよっ!って言うかっ!そんなモノになれねーよっ!
それにオイラが飲むんじゃねーからなっ!)
「な、なんだ・・・違うのか」
怒鳴るククノチに悠斗はジト目で見るのだが、
ククノチがそんなモノに進化している訳でもなかった。
「・・・契約の時にした感じのヤツか?」
(ああ)
「わかった」
悠斗はナイフの先で指を少し切ると、ククノチは精霊樹の枝の切れ目に、
悠斗の血を着けると・・・。
その精霊樹の枝が赤銅色の光を放つと、
それと同時にククノチからも赤銅色の閃光が放たれた。
悠斗達はその眩しさに目を閉じ閃光が収まるのを待つと・・・。
(もう目を開けても大丈夫ですよ?)
悠斗はその聞き覚えのある声に目を開けると、
目の前には、精霊樹の枝を持った先代精霊樹が立っていたのだった。
「・・・先代精霊樹っ!?」
「う、嘘・・・この人が?」
悠斗とミランダはそう言葉を漏らすと、
先代精霊樹がにっこりと微笑んでいた。
(こうして皆さんにお会い出来て、私も嬉しく思います。
ユウト様、以前お会いした時はイメージの中でしたものね?)
「あ、ああ・・・でも、会えて嬉しいよ」
(有難う御座います)
その優しい微笑みに癒やしを覚えたのは確かなのだが、
悠斗はその違和感を口にした・・・。
「ところでさ・・・何故、透けているんだ?」
(えっと・・・そ、それはですね?)
一同の前に姿を見せた先代精霊樹だったのだが、
どう言う訳か・・・全身が透けていのだった。
悠斗は鑑定を使用し、原因を探っていった。
(ん~透けてる原因がきっとあるんだよな?)
「鑑定」
ミランダ達は悠斗の鑑定結果を待つ事にした。
(鑑定終了しました。
真・精霊樹 (未成熟)存在進化体・悠斗の眷属
年齢不明 人型時・190cm
黄菖蒲色のストレートロングヘアー。
鬼人族の血液を得た枝は、邪神の女神と運命神の立ち会いの元、
邂逅の神儀が執り行なわれ、存在進化した姿。
しかし邂逅の神儀において不可欠となるモノが揃わず、現在未成熟となっている。
また、精霊樹としては、1ランク上の存在ではあるが、
邪神の女神の効果により、樹木に宿す全てのモノが神経毒を保有)
悠斗は顔を引きつらせながら、全員に見たままを伝えたのだった。
するとチタニアは思わず頭を抱えしゃがみ込んでしまった。
「も、申し訳御座いませんっ!」
突然土下座し額を地面に擦り付けるチタニアに、一同は唖然としてしまった。
そんなチタニアの様子を見ていたミランダも我に返ると、
同じ様に土下座したのだった。
「お、おい・・・2人ともどうしたんだよ?
それに、「邂逅の神儀」って・・・何!?」
邂逅の神儀・・・その言葉に2人の女神は地面に額を擦り付けながら、
盛大に顔を強張らせた。
「そ、それは~・・・ね?・・・チ、チタニア・・・さん?」
「えっと~・・・な、なんて言いましょうか~・・・ね?
ミ、ミランダ・・・さん?」
チタニアとミランダは目を硬く閉じ現実逃避でもしているかのようだった。
そんな2人の女神に悠斗は・・・尋問スキルを使用した。
「さて・・・お二人さん?
全て洗いざらい吐いてもらいましょうかね?」
「「ヒィッ!」」
悠斗の極寒な視線を浴びる2人の女神は、
顔を上げたくても上げられない状況に陥ったのだった。
そして・・・。
「なるほどね~?生命誕生時に、2人の神が立ち会った場合、
存在進化的な事が起こるって事なんだな?」
悠斗は息を軽く吐きながらそう言うと・・・。
「い、いえ。神が2人居ればいいと言うのではなく、
運命神である私が・・・必要不可欠となるのです。
生命が誕生する際、私が立ち会うことで、
その者の運命が大きく変わってしまい、
存在までもが変異してしまう・・・のです。
そして普段私が2人に分離しているのは・・・
このような事が起こらないように事前に対処していたからなのです」
「まじか・・・?2人に別れていた理由も・・・なるほどね~。
あ~・・・、そう言えば双子が生まれた時は、
チタニアは居なかったもんな~?
でも・・・俺の赤銅色の力の影響だけで、前代未聞的な事が・・・。
俺って・・・なんなんだろ?
厄介な存在なのかもな~・・・やれやれ」
自笑しながらも悠斗は透けている先代精霊樹へと視線を向けると、
心の底から謝罪するのだった。
「先代・・・すまないっ!」
(フフっ・・・ユウト様、運命神様、邪神の女神様・・・
私は怒ってなどいません。
むしろ、感謝を伝えたいと思っています)
頭を下げていた3人は驚きの声を上げつつ顔をあげた。
「えっ!?そ、それはどう言う?」
(お忘れですか?私はつい先程まで・・・ただの残存思念でしたのよ?
時間ももう余りなく悩んでいた時に・・・この巡り合わせ・・・。
新たに命を与えられた私は、喜びこそすれ怒る事などありえません。
それに見て下さい・・・この髪の色を・・・
斑模様のグラデーション・・・なんと綺麗な色なのでしょう♪)
先代精霊樹は斑でグラデーションがかった髪を撫でていたのだった。
「あははは・・・気に入ってもらってるのなら良かったけどさ?
でも鑑定結果によれば何かが足りないみたいなんだけど・・・?」
悠斗が先代精霊樹にそう言うと、
未だに土下座したままのミランダが手をあげた。
「あ、あの・・・それってもしかしたら・・・土地なんじゃない?」
「土地!?・・・なるほど、それっぽいな~?」
控えめに手を上げているミランダの姿が可愛いと思う悠斗だったが、
先代精霊樹に視線を送ると、何度か頷いているのが見て取れたのだった。
すると事を見守り今まで黙っていたククノチが話に入ってきた。
(あのさ~マスター?名を・・・付けてあげないのかよ?
新たに命を宿すんだぜ?名がなければ不便だと思うぜ?)
「あ~・・・それはそうなんだけど・・・」
そう言って悠斗は全員を見渡すと・・・。
「あんたが名付けてあげればいいんじゃないの?」
「えっ!?お、俺ってば名付け・・・苦手なんだけど?」
自信がなく一度拒否した悠斗だったが、
先代精霊樹の頼みともあって渋々引き受ける事になったのだった。
「まじで知らないからなっ!」
「いいんじゃないの?気に入らなければ、また考えればいいんだし・・・」
「そうですわ♪名付けるのはもはやユウト様の運命なのですわっ!」
「・・・い、嫌な運命だな?」
悠斗はいくつかの候補を挙げるのだが、全て却下となっていった。
そしてそれから更に3時間後・・・。
「なぁ~?アヤメってのは・・・どうだ?」
「「(!?)」」
一瞬の沈黙の後・・・「「それだぁぁぁぁ~っ!」」と、
2人の女神がそう叫ぶと、悠斗は先代精霊樹へと視線を向けた。
「・・・どう・・・かな?」
渋い顔をした悠斗の問いに先代精霊樹は・・・。
(・・・とてもいい名ですね♪)
そう言って満面の笑みを浮かべるのだった。
(今日から私の名は・・・アヤメ・・・
真・精霊樹として、この世界を支える者となります。
皆様、今後とも宜しくお願い致します)
涙を流しながら頭を深くさげた先代精霊樹・・・。
いや・・・、アヤメは偶然が重なり再び命を得たのだった。
そんなアヤメに悠斗はそっと頭に手を置き撫でていると・・・。
再び黄菖蒲色の閃光を放った。
「なっ、なんだっ!?」
「「きゃっ!」」
(ま、まぶしっ!)
(わ、私の身体がっ!)
悠斗はアヤメの声を聞き目を開けると、
そこには先程よりも色濃くなったアヤメの姿がそこにあった。
「も、もしかして・・・足りないモノって・・・名付けだったり?」
「アヤメさんのお姿がかなり色濃くなられましわね?」
「でも・・・透けている事に変わりはないみたいだから、
他にもきっと何かあるんだろうし、
場所選びは慎重にしなくちゃならないわね?」
ミランダの発言に一同は唸りながら、頭を悩ませるのであった。
ラウル ・・・ 存在進化とは・・・流石悠斗君だね♪
ミスティ ・・・ 思いもよりませんでしたが・・・?
ラウル ・・・ はっはっはっ!そして新たな命まで与えていくなんてっ!
ミスティ ・・・ ラウル様より・・・神をしておられますよね?
ラウル ・・・ ちょっと待ってよっ!ぼ、僕だってちゃんとしてるぞっ!
ミスティ ・・・ あ、忘れていましたが・・・
ラウル ・・・ ん?どうしたんだい?
ミスティ ・・・ 神界のキャバクラの請求書が・・・
ラウル ・・・ ヒィッ!
ってなことで、緋色火花でした。




