閑話・冒険者ギルドにて・・・1
お疲れ様です^^
今回と来週は閑話となります。
悠斗が失踪してからのギルドの動き・・・ですかね?
そして来週は捜索隊が出会った相手が・・・。
そんな話になっています。
来週のアップは活動報告に記載しておきますので、
そちらの方をご確認下さい。
それでは、閑話・冒険者ギルドにて 1をお楽しみ下さい。
悠斗が失踪した翌朝・・・。
ギラルドの街の冒険者である男の尋問を終え、
レダとゼノは冒険者ギルドに戻って来ていた。
レダはゼノを置いたまま一人・・・
ニ階へと上がるとギルドマスターの部屋をノックした。
「コン、コン」
「ん?ギルマスは留守なの?」
頭を捻りながらもレダは再びノックするのだが、
中からは返事が返って来る事はなかった。
「・・・出直した方がいいわね」
そうつぶやいた時だった・・・。
「何だ?ギルマスはいねーのかよ?」
その声の方に振り返ると、
笑みを浮かべながら近づいてくるゼノの姿があった。
「あ、ああ・・・また後で来た方がよさそうね?」
レダは踵を返すと、ギルマスの部屋の前から立ち去ろうとした。
「・・・待てよ」
ゼノの横を通り過ぎたレダにそう声がかかる。
「いや、しかし居ないのであれば・・・」
そう答えるレダに、ゼノは目を閉じ少し笑って見せると、
ギルドマスターの部屋のドアノブを回した。
「ガチャ」
「ゼ、ゼノっ!お前っ!」
手を伸ばすレダに、ゼノは部屋の中を見ると顔を向けた。
「レダ・・・ギルマスなら居るぜ?」
「なっ!何っ!?」
「チョイ、チョイ」と、ゼノに手招きされたレダは、
ゼノの後を追ってギルマスの部屋に入って行った。
「邪魔するぜ~?」
ゼノの言葉にギルマスであるウェズンは反応すら示さなかった。
ただ・・・。
机の上に両肘を着きながら項垂れていたのだった。
そんなウェズンの姿を見たゼノは、片方の眉をピクリと動かすと、
スタスタと歩み寄り、机の上に両手を激しく叩きつけた。
「バンっ!」
「うをっ!!な、何事だっ!?」
椅子を倒し勢いよく立ち上がったウェズンの眼前に、
顔を引きつらせているゼノの顔があった。
「うぉぉぉっ!ゼ、ゼノっ!お、驚かせるなよっ!」
少しキレ気味に怒鳴るウェズンは、
ゼノの後ろから呆れた顔を覗かせていたレダと目が合った。
「レ、レダも居たのか・・・」
そんな物言いにゼノは再び机に両手を叩きつけた。
「バンっ!」
「なっ!なんなんだよっ!お前はっ!」
再び怒鳴るウェズンにゼノはこう言った。
「ユウト様が居なくなったってのによっ!
ギルマスであるあんたがそんな様子で・・・示しが着くのかよ?」
そう言い捨てるゼノにウェズンは顔を顰めた。
「わ、分かってるっ!だ、だけどよ・・・」
「だけどよも、何もねーだろっ!
手の空いているやつらは、この雨の中・・・
ユウト様を探し回ってるってのによっ!それなのに・・・あんたはっ!」
怒鳴るゼノにウェズンは机の上に置かれた拳に力が入っていた。
するとゼノの後ろからレダが話に入ってきた。
「ウェズン殿・・・お気持ちはみんな同じはずでは?」
「・・・・・」
そう言われるウェズンは何も言えなかった。
「・・・全くよ~・・・これじゃユウト様も俺達に頼れるはずがねーぜっ!」
そう言いながらゼノはその部屋のソファーへと乱暴に腰を下ろした。
「「!?」」
ゼノの言葉に2人は鋭く反応した。
ウェズンは再び顔を顰め、レダは・・・。
「ゼノっ!」
「な、何だよっ!?」
レダは顎でクイっとウェズンの方へと促した。
「あっ・・・す、すまねー・・・悪気はねーんだ」
立ち上がり頭を下げるゼノにウェズンは頭を横に振った。
「いや、謝る必要はないぞ・・・。確かにお前が言う通りだからな」
情けなさそうにウェズンは力無く答えた。
そしてそのまま話を続けていく。
「異世界から来ただの、創造神様と同等だの・・・確かにすげーけどよ?
あいつはまだ・・・15歳なんだよな?」
「ああ・・・」
「なのによ?チタニア様から話を伺っただけだがよ、
人族として、何人分の試練を超えてきてんだよ?
それを涼し気な顔でこなしていきやがる・・・」
そう言葉を吐き捨てるように声を出すウェズンに、レダが口を開いた。
「私が最初に出会った時もそうだった・・・。
癒しの森でのあの冷静な判断力と行動・・・
そして、仲間を匠に使うその能力に・・・私は寒気がしたものよ?」
「へっへっへっ・・・寒気か?」
苦笑しながらソファーの背もたれに背中を預けたゼノは、
出会った時の事を思い出すと・・・。
(俺の時は公爵様相手に・・・無双してたっけな~・・・。
今思い出しても恐ろしいお人だよ)
「ん~・・・確かに色々と異常に思う事は当然あるけどよ?
でもよ?それがユウト様じゃねーのかな~?
仲間思いなのは間違いようがねーしよ?
だけどよ・・・」
そこまで話したゼノは、何故か言葉を切り・・・口ごもった。
ウェズンとレダは互いに顔を見合わせると・・・。
「何だよゼノ・・・そんな深刻な顔をしてよ?」
「ああ、何か思うところがあるのなら・・・私達に言ってくれないか?」
するとゼノは静かに口を開いた。
「レダ・・・お前はあの場に居たから知っているだろうけどよ。
ユウト様は自ら危険の中に安易に身を投じる傾向がある」
「ああ、お前の口からは何度か聞いたな?」
そう言うとレダは視線を感じると、ウェズンに頷いてみせた。
「今回も・・・そうだ。
あの人は、全部一人で背負い込んじまうんだよ・・・。
俺達大人が居るってーのによ?
何故なんだ・・・何故頼ってくれないんだ・・・
俺にはどうしてもその理由が分からなかった・・・。
でもよ?今回の事で俺は薄っすらだけど分かっちまったんだ・・・」
「分かったって何をだよ?
それはアレじゃないのか?
ユウトが創造神様と同格だからと言う・・・」
ウェズンがそう答えると、ゼノは机を叩きつけた。
「バンっ!」
「な、何だよゼノっ!」
「・・・・・」
「違うんだよ・・・そんなもんじゃねーんだよっ!
あの人はっ!あの人は・・・何かはわからねーが・・・
大切な何かを失くしてしまって、もう何も失いたくはない・・・
そんな気概みたいなモノを感じるんだよ」
「気概って・・・みんなそれぞれ何かしらあるだろ?」
ウェズンの言葉にゼノは睨みを利かせた。
「そんなモノじゃねーよっ!
あの人は俺達の世界をわざわざ助けに来てくれたんだぞ?
でもよ?よく考えて見てくれよ?
普通神に頼まれたからって、こんな見知らぬ世界に一人で来るかっ!?
普通は・・・来ねーだろ?」
「あ、ああ・・・簡単には来れないわね?
肉親や知人達も居るから当然一人では決められない・・・」
「ふむ・・・。まぁ~確かにそうだとも思うが・・・。
だがな?それと俺達大人に頼らないってのは関係ない話だと思うが?」
気持ちを落ち着けたウェズンはそう言った。
するとゼノはより一層深刻な表情を浮かべた。
「ゼ、ゼノ・・・?」
「・・・多分だけどよ、ユウト様には何か目的がある」
「「!?」」
その言葉に驚いた2人は顔を強張らせた。
「ど、どう言う意味だ?」
ウェズンの言葉に反応を示さないまま、ゼノは口を開いた。
「今回の失踪も含め考えると・・・。
俺達に頼らないんじゃねー・・・。頼れねーんだよ」
「ま、待てっ!お、お前、話が・・・」
「まぁー聞けよっ!」
「うっ・・・」
ゼノのその言葉に鋭く反応を示したウェズンだったが、
ゼノがその話を止めた・・・「聞けよ・・・」と。
するとゼノは扉の方へと視線を向けると・・・。
「・・・居るんだろ?入れよ・・・」
少しの沈黙の後・・・扉を開けて入って来たのは・・・、
ずぶ濡れになった勇者一行とポーラにミレイ・・・そして・・・ステアだった。
「お、お前達っ!い、いつからそこにっ!
そ、それと・・・ステア・・・。目が覚めたんだな?」
ステアに気遣うウェズンがそう言うと、ステアが軽く頭を下げた。
「ご迷惑をおかけ致しました」
そう謝罪するステアに、そっとミレイがステアの肩に手を置いた。
そして・・・。
「突っ立ってないで・・・座って話を聞けよ」
ゼノの言葉に全員がソファーへと腰を下ろすと、ポーラがお茶を持って戻るまで、
一時話は保留となったのだった。
紅茶を配り終えたポーラが椅子に座るとゼノが話をし始めた。
「お前達がどこまで話を聞いていたかは知らねーけどよ。
とりあえず・・・続きから話すわ」
そう話を切り出すゼノに一同は無言で頷いた。
「ステアには実感として分かると思うが・・・。
ユウト様のあの目は・・・何かを追う者の目だ・・・」
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
ゼノの発言に全員が驚きを見せた。
「し、しかし・・・確証は・・・?」
そう話すウェズンにゼノは視線をステアに移すのだった。
するとステアは軽く息を吸い込むと・・・。
「・・・でしょうね?
私もユウト様のそんな目に、薄々ではありますが気づいていました」
「なっ、何だよ2人ともっ!なら、何故俺達にっ!」
机を叩き立ち上がるウェズンにゼノは視線だけを送り座らせた。
「す、すまねぇ・・・つい・・・な」
「構わなねーよ?でもよ・・・黙っててくれねーか?」
威圧とも殺気とも違うそんな迫力に、ウェズンは固唾を飲んだ。
「で、話の続きだけどよ?
恐らくそれがユウト様の足枷になって、
俺達に頼れないんじゃねーかな?」
「そうですね?それは私もそう思います」
ステアの意見と一致したゼノは、再び話を続けた。
「で・・・だ、今回の話になるんだけどよ?
そう考えると完全に今回のユウト様の失踪は・・・
単純に・・・俺達を巻き込まない為だろ?」
すると勇者がゼノの話に入って来るのだが・・・。
「いや~だってよ?それくらいは誰でも考え付くんじゃねーのか?」
そんな勇者の言葉に、苛立ちを見せたのはレダだった。
「勇者殿・・・軽はずみに言っていい言葉ではありませんね?」
「はぁ?何言ってんだよ?
理由があるにしろ無いにしろ、仲間を思うなら当然分かる事じゃないのか!」
そんな容赦のない発言に今度は・・・クトゥナが話に加わった。
「おい・・・そう言う話ではないと思うけど?」
「ん?何だよクトゥナ・・・お前まで・・・?」
「いい?考えても見なさいよ?
ユウト・・・様は、私達を誰一人・・・殺さなかったのよ?」
「だから・・・それがなんだってんだよ?」
「・・・だからあんたはバカ勇者だって言うのよっ!」
「て、てめぇ・・・」
勇者の怒気に一早く反応したのは・・・ミレイだった。
「バカ勇者さん・・・」
「なっ!?」
「まずはその口を閉じなさいよ。
敵であるあんた達を殺さない道理はないのよ?
それくらいバカでも分かるわよね?」
「お前・・・誰にモノを言っているのか、分かってんだろうなぁぁぁっ!」
立ち上がりミレイに睨みを利かせた勇者に、ミレイはたじろぎもしなかった。
「いい?バカ勇者っ!ユウト様はね、
今まで最小限の者達しか殺めてないのよっ!」
「だ、だから何だってんだよっ!俺達だってっ!」
ミレイの発言に勇者も対応して見せたのだが、ふと頭によぎったのだった。
「お、俺達は・・・」
睨み合っていた勇者とミレイだったが、
いつの間にか勇者はその視線を反らしていた。
そんな勇者にクトゥナが口を開いた。
「気づいた?」
「あ、ああ・・・」
そんな勇者を見たミレイは座り直すと話を続けた。
「ユウト様は何も己の都合で命を奪わなかったんじゃないわ。
違う世界の人達に危害を与えたくないからよ・・・。
さっき扉の前で話を聞いた時・・・私も気づいたわ。
何か目的があっての行動って・・・」
そんなミレイの言葉に、この部屋に居る全員が黙ってしまった。
すると、突然扉が開かれ、ギルド職員が慌てて入ってきた。
「ドンっ!」
「どうしたっ!」
「た、只今1階フロアに・・・ベ、ベ、ベルフリード公爵様がっ!」
「な、なにぃぃぃぃぃぃっ!こ、こんな時に何だってこんな所にっ!」
ウェズンの声がフロアに響き渡ると・・・。
「・・・失礼する」
そう言って入ってきたのは、公爵であるグラフィス・ベルフリードと、
その息子、ナイアド・ベルフリードだった。
突然の登場に一同が席を立ち、グラフィスの眼前に並び片膝を着いた。
「こ、公爵様が・・・と、突然このような場所に・・・」
脂汗を流すウェズンは、混乱しながらもそう言い始めると・・・。
「はっはっはっ!今、そのような作法など必要ない」
「し、しかしながら・・・」
頭を垂れ顔を上げない者達に、
グラフィスとナイアドは困り果てていると・・・。
「今はそのような場合ではないのです」
聞き覚えのあるその声に、ウェズン達は顔を上げると・・・。
「ロ、ロジー嬢っ!ど、どうしてこんな所にっ!」
そう声を発したのはウェズンだけではなく、
アシュリナ邸で働く者達や顔見知りな者達は声を上げた。
するとグラフィスとナイアドがロジーに頭を下げながら、
2人の間を歩いて来た。
「皆さん、いつまで此処で話をされているのですかっ!?
今は一刻でも早く、ユウト様の捜索をするのが先決でしょうにっ!」
事態が飲み込めない面々に、ナイアドが口を開いた。
「司教様・・・そのくらいに致しませんと・・・」
ナイアドが頭を垂れながらそう言った。
ウェズン達全ての者達が混乱しロジーの顔を見上げたまま、
口を開け動けなくなってしまったのだった。
「ナイアド、今は立場などこの場では不要です」
「はっ!御意」
しかしグラフィスとナイアドは片膝を着き礼を取った。
すると・・・。
「ウェズン殿っ!」
ロジーから突然名を呼ばれたウェズンは、その迫力ある声に起立し、
何故か敬礼を取ったのである。
「伝えます・・・」
「はっ!」
「これよりただちに、ユウト様の捜索隊を編成し、
数班に分け行動に移しなさいっ!」
「はっ!し、しかし・・・我々は冒険者ですので・・・」
渋い顔をするウェズンにロジーは少し考えると話を続けた。
「確かにそれは道理ですね?でしたら・・・グラフィス殿」
「はっ!」
「ユウト様の捜索依頼を出す為の資金提供をお願い出来ますでしょうか?」
(お嬢・・・む、無茶だぜっ!相手は公爵だぞっ!)
ゼノは顔を引きつらせグラフィスの顔色を伺い・・・。
(いやいやいやいやいやっ!ロジー嬢・・・お、お前何言ってんだっ!?)
ウェズンは眼が血走り、より一層脂汗を垂れ流し・・・。
(お嬢様・・・あ、相手が・・・)
痛々しい顔をしながらレダはロジーに唖然としていた。
そして最後に・・・。
(ロジーお嬢様、流石の采配です。
今はユウト様を捜索する事が先決なのですから・・・)
ステアはそんなロジーに尊敬の眼差しを送っていたのだった。
この時グラフィスとナイドの他の者達は、
ロジーの言葉に驚愕したのだった。
そして更に・・・その驚愕は続く。
「はっ!ユウト様の為とあれば・・・いくらでもっ!」
この時全員が・・・真っ白に染まっていたのだった・・・。
「私達イルミネイトはっ!全力を持ってユウト様を捜索致しますっ!」
そして此処に・・・ロジー率いる狂信教イルミネイトが、
その旗を掲げるのであった。
サウザー ・・・ アシュリナ領主、サウザー・アシュリナです。
ロジー ・・・ 皆様、お初にお目にかかります。ロジー・アシュリナです。
サウザー ・・・ ロジーよ、1つ言いたい事があるのだが?
ロジー ・・・ 何でしょうか?お父様・・・。
サウザー ・・・ あまり公爵家に無茶な無理難題を申すのではないぞ?
ロジー ・・・ お言葉ですがお父様?ユウト様の為には手と手を取り合わねば・・・。
サウザー ・・・ それは分かるのだ・・・だがな?
ロジー ・・・ お父様は分かっておりませんっ!体裁など今はどうでもいいのですっ!
サウザー ・・・ い、いや・・・あ、あのな?私は・・・
ロジー ・・・ そんな弱腰でどうするのですっ!今は行動すべき時なのですっ!
サウザー ・・・ は、はい・・・わ、分かりました・・・。
ロジー ・・・ さぁ~お父様・・・光に向かって歩いて行きましょう♪
サウザー ・・・ ひ、光!?ど、どこにそんなモノが!?
ロジー ・・・ ふふふ♪嫌ですわ~お父様?御冗談を・・・。
サウザー ・・・ えっ!?あははは・・・はぅ。
ってなことで、緋色火花でした。




