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異世界転移 ~魔を狩る者~  作者: 緋色火花
第二章 港町・アシュリナ編
185/406

152話 鬼魂の門・弐(回想)

お疲れ様です。


・・・寝てましたっ!


次回のアップは「活動報告」に記載しておきますので、

宜しくお願いします^^



それでは、152話をお楽しみ下さい。

闇堕ちしかけた事がきっかけとなり、悠斗は本来の能力に覚醒する事が出来た。

だがそれは今後の戦いが熾烈を極めると予想出来る事でもあった・・・。


闇堕ちとの戦いが終わってから、精神世界での事情を、

ミランダとチタニアに説明した。


(いぶか)し気な顔をしていた2人の女神だったが、

とりあえず今は、「ゼツ」と名乗る男を渋々信用する事にするのだった。



あれから暫く時間が経過した・・・。

夜もふけ悠斗は廃墟を出て行き、一人芝生の上で寝転がると、

「ゼツ」と名乗る男とのやり取りを思い出していた。


「ゼツのおっさん・・・俺の事を「人間」って言ったよな?

 それと・・・「日本」・・・か・・・」

そのつぶやきは、簡易聖域に吹く冷たい風に溶けていった。


悠斗は目を閉じると、あの精神世界での出来事を思い返して行く。


「小僧、お前は人間にしてはかなり強いようだが、

 武道とは別に、特殊な事でもやっていたのか?」


「特殊って言うか・・・気道はガキの頃からやっているけど?

 それと鬼の力ってのは関係あるのか?」


その問いにゼツは「うむ、なるほどな」と頷くと、

少しの間黙ってしまった。


考え込むゼツに悠斗は思った事を口にした。


「んー・・・別に俺は特殊とは思っていなかったんだけどさ?」

そう口にした悠斗は、そのまま口を閉じてしまった。

悠斗の何気ない言葉に、ゼツは引っかかりを感じると・・・。


「何でもいい・・・話してみろ」

「わかった、だけど、大した話ではないから聞き流してくれていいからな?」

「ああ、それで構わん」


悠斗は頷くとそのまま話始めた。


「何から言えばいいかわかんないけどさ・・・。

 俺が気道とよく合わせて使う力があるんだ」


「・・・ほう」


「上手く言えないが、俺はある言葉を鍵として、

 自分の力に上乗せして使用しているんだけど・・・。

 えっと~・・・このノーブルで言うところの身体強化になるんだと思う」


「身体強化だとっ!?日本でか!?」


「あ、ああ・・・」


「日本」と言う言葉に悠斗は驚いた。

それを知っているのは、神以外有り得なかったからだった。


「おっさんっ!何で日本の事を知ってんだよっ!」

「・・・・・」


何も答えないゼツに悠斗は食い付くのだが・・・。


「その話はまた別の機会にでもしよう。

 今はお前の鬼の力を完全に目覚めさせる事が重要なのだからな?」


「ま、待てよっ!そっちはいいかも知れないけど、俺はっ!」


「くどいぞっ!」


「くっ!?」


悠斗はゼツの放つ威圧に顔を歪ませた。

(な、なんてプレッシャーなんだっ!?

 このおっさん・・・一体何者なんだ・・・)


「まだその話をするようなら・・・俺は帰らせてもらうが?」

静かな口調で話すのだが、その圧力は人間のソレを超えていた。


仕方がなく「わかった」と話す悠斗はそのまま話を続けた。


「えっと・・・まぁ、こっちで言うところの身体強化なんだけど・・・」


「うむ」


「俺はそれを「ゲート」って呼んでいる」


「ゲート?つまり・・・門だな?」


「ああ、俺はある言葉を鍵にそれを開き、自分の力に上乗せしているんだ。

 当然最初から使えた訳じゃないんだけどさ・・・。

 ある出来事があってから、俺は突然俺の中にあるゲートに気付いたんだ」


「・・・興味深いな」


ゼツはそう言葉を漏らし再び何かを感じると口を開いた。


「小僧よ・・・お前、何か大切なモノを失わなかったか?」


「あ、ああ・・・お、俺は一番大切な・・・(ひと)を失った」


「・・・ふむ、やはりな」


悠斗はこの時ふと・・・思い出していた・・・。

それは、悠斗の祖父と穂高の事だった。


(じぃちゃんの時はどうだったんだろ?

 俺は傷つき意識を失っていたから分からなかったし・・・

 あ~でも・・・穂高の時も、そうだったよな?

 自分の中に何かあると気付いたのは・・・穂高を失った時・・・か)


悠斗は顎に手を当て考え込んでいると・・・。


「・ぞう・・・小僧よ・・・」

「!?」


ゼツに話しかけられていた事にも気付かず考え込んでしまっていた。


「どうしたのだ・・・?」


「わ、悪い・・・ちょっと考え込んでしまった」


「・・・そうか、では続きを話せ」


「ああ、わかった」


悠斗は気を落ち着けると、再び話を続けていく。


「俺はそのゲートから出てくる力を自分に上乗せして戦うんだけど、

 長い時間はそれを使用しては戦えないんだ・・・」


「ほう~・・・続けろ」


「あ、ああ・・・。これもまた上手く言えなくて悪いんだけど・・・

 その力を使った反動って言うのかな?

 暫くの間、全身あちこち痛いのもそうなんだけど、

 苛立つって言うか、何て言うのか・・・」


「なるほどな?お前の身体に負荷がかかり、

 その上・・・気もそれに合わせ高ぶり過敏になる・・・と、言う事か?」


悠斗はゼツの話に目を見開くと、何度も頷いて見せるのだった。

すると・・・。


「うむ、お前の力の事はだいたい理解した。

 お前は言葉を鍵とする事によって、

 その力を引き出しそれを上乗せする事で己の力に代えてきた・・・

 それがあの・・・赤銅色の力って訳なのだな?」


「・・・おっさんっ!あの力が何なのか・・・知っているのか!?」


「ああ、勿論だ」

(あれは・・・俺の力の一部だからな。

 それにしても、俺の力を何の教えもなく使うとはな・・・フフフ。

 まぁ~それでも、その力の10%程が限界か・・・

 面白い人間が居たものだな?・・・これから先も楽しめそうだ)


ゼツはこの時、思わず声をあげて笑いそうになっていた。

何故なら遥か太古の昔・・・。

ある人間と死闘の末に奪われた・・・。

鬼眼(きがん)」の事を思い出したからだった。


(フッフッフッ・・・こやつの祖先が俺からもぎ取った力か・・・。

 なるほどな、これで合点がいったわ。

 しかし面白いものだな?

 隔世遺伝・・・たしかそう言ったか?

 何代にも渡って子孫へと受け継がれ、

 それをこの男の世代で覚醒するとはな?

 いや・・・違うな。

 この男が鬼の力を覚醒させるだけの試練を乗り越えてきたと言う事か?)


ゼツは心の中で笑いと驚きが交差する感情に見舞われていたが、

「ああ、これも運命か」・・・そうつぶやいた。


「ん!?何か言ったか?」


「いや、こちらの話だ」


そしてゼツはその力の事を説明し始めた。


「お前のその力は勿論・・・鬼の力だ。

 だがとても歪で不安定なモノだ」


「・・・歪で不安定か・・・」


「ん?小僧・・・何か気付いたのか?」


「気付くって感じじゃないけど、その力をもっと上手く使えたら、

 その先があるような気はしてた」


鬼の力の話を知っているのならと、その続きを話した。


「お前の中にあるゲート・・・だったか?

 その名を「鬼魂(きこん)の門」と言うのだ・・・」


「鬼魂の門?」


「お前の遥か太古にいた祖先が、何らかの力を得て受け継がれた能力。

 そして何の因果がお前にその力が受け継がれた・・・。

 恐らくそう言う事なのだろう」


「俺の祖先・・・そして俺に受け継がれた・・・?」


悠斗は自分の両手を何度も握り締めながら、それを見つめていた。

ゼツは悠斗を見つめながら、ふと・・・思い出した。


(確か小僧の祖先のあの男・・・名は忘れてしまったが、

 あやつは先の鬼との戦いでアスラの腕を切り落とし、

 それを喰らったが故、

 鬼の力に振り回され、部下達数百名を惨殺したのだったな・・・。

 その上、この俺の鬼眼をも喰らいおった・・・。

 ふむ、それにしては・・・こやつからアスラの気を感じないのは何故なのだ?

 この赤銅色の気と鬼眼(きがん)、薄まっているとは言え、

 間違いなく俺の気なのだがな?

 謎ばかり増えて行く・・・面白いモノだ・・・フフフ)


ゼツは頭を捻りながらも悠斗を見ていると、

悠斗は顔を上げ、ゼツへと視線を向けた。


「この能力(ちから)の使い方を教えてくれないか?」


悠斗のその力強い眼光にゼツは笑い始めた。

「は~っはっはっはっはっ!

 ああ、良いぞ・・・お前にはその権利がある。

 お前のその能力の使い方を教えてやろう」


「・・・サンキューなっ!おっさんっ!」


「う、うむ・・・」


ゼツはおっさんと言われた事に気にはするのだったが、

まずは使い方の伝授をすべく説明し始めた。


「まずはだな?お前の言うところの・・・ゲートを思い浮かべろ」


「・・・わかった」


悠斗はゲートを開く要領で、鬼魂の門を思い浮かべた。


「うむ、その次だがな?

 お前は鬼魂の門から力を引き出す時、言葉によって引き出すと言ったな?」


「ああ」


「それは(あなが)ち間違いではない。

 本来なら、鬼の力を使用すれば・・・必ず我を失い暴走するはずだ。

 しかし、人間とは面白くもズル賢いモノでな?

 鬼の力を引き出す為の言霊(ことだま)を編み出しおった」


「そ、それって・・・俺で言うところの・・・?」


「ああ、そうだ。「強ち・・・」そう言ったのはそう言う事だからだ」


「なるほど・・・」


「では、本格的に教えよう」


そう言うと、ゼツは悠斗に能力の引き出し方を伝授していった。


「小僧よ?お前の中に在る、己の魂に刻まれた鬼魂の門を呼び出せ」


「・・・はい」


「お前は人間だ・・・だからお前も例外ではなく、言霊を使用するのだ」


「・・・はい」


「その言霊とは・・・。

 魂に刻まれし鬼魂門(きこんもん)を開き、その力を示せ・・・だ」


悠斗は己の前に赤く(そび)える鬼魂の門をイメージしていく・・・。


(でかっ!鬼魂の門って・・・こんなにでかかったのか!?)


悠斗はその門の正面に立つと、聳えるその大きさに驚愕していた。

そして悠斗はゼツに教えられた言霊を心の中で念じていく・・・。


すると、「ギギィィィィっ!」と、両開きの門が開くと、

赤銅色の煙が悠斗へと向かって流れてきた。


「いいか?耐えなくていい・・・全て受け入れる心積もりでいろ。

 まだ定着させるのは無理だろうからな?

 俺がお前のサポートをしてやろう」


「・・・わ、わかった」


「イメージするならば・・・そうだな?自然体で居ろ」


「し、自然体・・・」

(一番難しい事言いやがってっ!

 でも・・・必ず習得してやる・・・)


悠斗はゼツに言われるがまま、赤銅色の煙を自然体で受け入れて行くのだが、

その圧倒的な力の前に膝を折りかけた。

だがそのフォローをゼツがする事によって、クリアする事が出来たのだった。


「フッフッフッ・・・。小僧が本能的に引き出した力だ。

 これくらいは出来て当然だな?」


そう笑うゼツに、悠斗は目を開けると笑って見せた。

そして左の赤く縦に割れた鬼眼(きがん)も妖しく光っていたのだった。


「ギ、ギリギリな気もするけど・・・こ、これで・・・いいのか?」


ゼツは満足そうに笑みを浮かべると、

悠斗に今の状態を維持するようにと伝え、再び説明を始めた。


「まず俺が何故お前にそれを維持するように言ったかと言うとだな?

 今まではお前が無意識に拒絶した分、中途半端な鬼の力に振り回され、

 容量不足による不具合が生じたのだ。

 だから身体と精神にダメージが蓄積されていったのだろうな」


「ま、まじか・・・つまり俺はアレにビビったと言う事なのか?」


「ああ、しかしそれは当然の事であろう?

 人間が鬼の力を行使するのだぞ?

 その余りある力の強大さに、恐れ(おのの)くのは当然だろう?」


「・・・なるほど」


悠斗は己の緊張を解きほぐす為に、大きく息を吸い込んだ。


「スゥゥゥゥゥゥ・・・ハァァァァァ・・・」


(フッフッフッ・・・中々見所があるやつだ・・・。

 しかし・・・ふむ。

 それはこやつがそれだけ苦難を乗り越えた証拠でもあるのだがな?)


精神の制御が己とのバランスを保てた事を確認したゼツは、

話を続けた・・・。


「よし、小僧よ・・・そのまま維持していろ」


「ああ、わかった」


「次だ・・・。お前が今、開けたその赤い鬼魂の門は・・・

 「鬼魂一之門(きこんいちのもん)」と言う・・・」


「この赤い門の名は・・・一之門・・・」


「ああ、そうだ。「鬼魂一之門」と書いてあるだろう?

 それとだ・・・鬼魂の門1つにつき・・・二門の力が存在する」


悠斗はゼツにそう言われると、開いたその赤い一之門の先を見つめた。

すると、(かす)かに見えるその奥にある力・・・。


悠斗は必死でその力を得ようと手を伸ばすのだが・・・。


「だ、ダメだ・・・届かない。何故だっ!俺はこんなにも力をっ!」


そう苦悶に満ちた顔を見せたのだった。

ゼツはその悠斗の表情を見ると、薄く笑っていたのだった。


「フッフッフッ・・・小僧よ?

 その力が簡単に手に入ると思うのか?

 欲するだけでは・・・な?」


「力を欲するだけでは・・・か・・・」


その言葉に「はっ!」とした悠斗は、再び集中していった・・・。


(そうだった・・・。自然体で受け入れる事が大切なんだったよな?)

悠斗は再び集中していく・・・。


(そうだ・・・俺は勘違いをしていた。

 欲するだけじゃ力の暴走に成りかねない・・・それはあまりにも危険だ。

 ならばだ・・・どうすればいい?

 欲するでも、願うだけじゃダメなんだ・・・じゃあ・・・後は・・・?)


悠斗が思考を更に深め集中して行く。

それを何も言わず黙って見つめるゼツの姿があった。


(そうだ、それでいい・・・欲望に身を委ねればそれは負となる。

 負の力もまた強大ではある。アスラのようにな?

 だが、負の力では更に先へは進めない・・・。

 それに気付けるかはこいつ次第だが、

 さて・・・その手に掴めるか否か?)


ゼツがそう思っている時だった・・・。


「カっ!」と見開かれた左の眼が、鬼眼と化していた。


「来いっ!二門っ!」


そう叫んだ悠斗は、赤い一之門と書かれたその門の奥から、

赤銅色が濃度が増した煙が流れ出して来る事に気付いた。


そして「バシュッ!」と音が響くと、悠斗の身体から、

更に濃度を増した赤銅色の気が吹き上げた。


「はっはっはっ!手に入れる事が出来たようだな・・・?」


ニヤリと笑みを浮かべるゼツに、

汗を滲ませながらも、悠斗もまたニヤリと笑みを返したのだった。


「そうだ、己の魂に刻まれたモノだからな?

 欲するのではない、そしてまた・・・願うのでもない。

 お前の魂はお前だけモノなのだっ!

 ならばだっ!」


「・・・従わせれば・・・いいっ!」


「そうだっ!それでいいっ!

 元は鬼の力と言えど、もうそれは既にお前のモノなのだっ!

 拒否など認めるなっ!力で捻じ伏せてしまえっ!

 今の主は・・・小僧っ!・・・貴様なのだからな?」


悠斗は黙って頷くと、再び目を閉じ集中し始めた。


「ん!?どうした・・・?」

目を凝らすゼツに、悠斗は無言で片手をあげると、

待つようにと合図を出した。


悠斗の合図に気付いたゼツは、黙って見守る事にしたのだった。


(何か気付いたのか?それとも・・・まさかっ!)


何かに気付いたゼツは声をあげようとした瞬間だった・・・。


「パキンっ!」と、まるで硝子でも割れたかのような音が鳴り響いた。


「う、嘘・・・だろ?ありえ・・・いや・・・。

 はっはっはっ!こやつならば・・・充分にありえような」


ゼツが漏らしたその声に、「カっ!」と見開かれた左鬼眼がゼツを捉えた。


「この力も・・・!?」


その悠斗の声は驚きに満ちていた。

そしてゼツもまた・・・。


「お、お前・・・その力・・・一体どうやって!?」

驚愕するゼツに悠斗は答えた。


「赤い一之門の先に・・・新しい門・・・つまり、二之門を見つけた」


「フフフ・・・はははは・・・わ~はっはっはっ!」

突然大きく笑い始めたゼツに、悠斗は唖然としていた。

すると・・・。


「鬼魂の二之門まで開けてしまうとはな?」


「あ、ああ・・・開くかどうかは分からなかったけどさ・・・」


そう答える悠斗に、ゼツは身体を見渡した。


(うむ・・・こいつは驚いたな?

 あとはその力に溺れずどこまで精進出来るか・・・だがな?)


悠斗は赤銅色とは違い、限りなく真紅に近い赤い鬼の気を纏っていた。

それは、一之門とは違い、溢れるでもなく、吹き上げるでもない。

ただ、自然体に近い状態で、薄く身体に纏っていたのだった。


「小僧っ!まずは足元を固めてから焦らず力を着けるんだぞ?」


「ああ、それは充分に分かっている」


「そうだな?それなら1つ・・・アドバイスをしてやろう」


「ああ、おっさんの言う事だ・・・。有り難く聞かせてもらうよ」


「鬼の力を使うにあたって、やはり人間のお前には言霊が必要だ。

 だから鬼魂の門を解放する時、今のうちに何かワードを考えておくのだぞ?

 鬼と人ではやはり力の差が有り過ぎるからな?

 その力を定着させる為にも、必要・・・と、言う訳だ」


「解放と定着か・・・わかった、考えてみる」


「いいか?お前自身の手で「三之門」を解放する事が出来れば、

 その時発動する力が・・・「阿修羅」だ」


「・・・三之門・・・それが阿修羅」


「そうだ、だがな?それは阿修羅の始まりに過ぎん。

 それを夢々忘れるでないぞ?」


「・・・わかった」


悠斗はその後、鬼化を解くと、自分の中で言霊にする鍵を考え始めた。


(まずは、鬼化・・・からだな?

 そして・・・鬼魂の門。

 それを解放・・・そして定着・・・)


悠斗が目を閉じ言霊のワードを絞っていく。

そしてその様子を見守るゼツ・・・。


「んー・・・ダメだ・・・まだ決まらないな~」


「まぁ~小僧の中でのイメージが合わないのだろうな?」


「まぁ~そんな感じかな?」


「ならばだ・・・。最初に使った言霊を使う他ないな?」


「そうなるよね~・・・?後はワードを見つけるだけだな」


悠斗は苦笑しながらも目を閉じると・・・。


「小僧・・・やって見せろ」


「・・・わかった」


悠斗は目を閉じたまま鬼魂の門を開けた・・・

「カっ!」と見開かれたその左眼は・・・「赤い鬼眼」だった。



そして現在・・・。

芝生に寝転がっていた悠斗に声が掛けられた・・・。


「ユウト様・・・」

「はっ!?」


突然掛けられたその声に悠斗は飛び上がるように起きると・・・。


「な、何だ・・・チタニアか~・・・」

目を丸くし驚いている悠斗に、チタニアは「クスっ」と笑っていた。


「こんな所で、何をされていたのですか?」

その慈愛に満ちたその声に、悠斗は微笑むと視線を外し答えた。


「・・・風が気持ち良かったからさ~」

再び「クスっ」と笑うチタニアは腰を下ろすと、

悠斗が見る同じ風景を見つめた。


「確かに心地よい風ですわね?

 ですがそろそろお食事の時間ですわ・・・戻りませんと・・・」


「もうそんな時間か・・・わかった、チタニア・・・戻ろう♪」


「はい♪」


そう言って立ち上がる悠斗は、チタニアに手を差し伸べると、

頬を赤くしたチタニアはその手を取り立ち上がった。


そんな光景を廃墟の片隅からジト目で見る女神が居た。

木製のお玉の柄の部分に(かじ)り付き、ヤキモキしていたのだった。


「むむむむむむむむっ!なっ、なっ、何よっ!

 チタニアっ!あ、あんな所で・・・イチャイチャとっ!

 ユウトもユウトよっ!わっ、わた、わたわた私が居ながらっ!」

そしてミランダは気付くのだった・・・。


「はっ!ま、まさか・・・チタニアも・・・ユウトの事をっ!?

 ど、どうしよう・・・えっと・・・えっと・・・あぁぁぁっ!もうっ!」


その瞬間・・・「バキっ!」と、音をたてて、木製のお玉が折れたのだった。

「あっ!?」

声を漏らしたミランダは、その瞬間急いで廃墟の中へと姿を消した。


そして悠斗とチタニアは廃墟へと戻っている途中・・・。

「ん?今・・・何か音がしなかった?」

そう話す悠斗にチタニアは状況を目撃し笑顔をこぼしながらも・・・。

「さぁ~?」と、そう答えたのだったが・・・。


(ミランダ・・・バレバレですわよ♪

 フフフ・・・こうなったら私も参戦致しますわよ♪)


そう考えてる事も知らず、悠斗は心地よい風に上機嫌だった。




ラウル ・・・ 実に興味深いな・・・

ミスティ ・・・ ですわね?私もゼツと名乗る者に興味がありますわ

ラウル ・・・ だが、迂闊に手を出さない方が懸命なんだろうけど・・・。

ミスティ ・・・ もう暫く様子見致しますか?

ラウル ・・・ そうだね?今は動くべきではないかもしれない・・・。

ミスティ ・・・ 承知致しました。

ラウル ・・・ でも何か情報があればすぐにでも・・・。

ミスティ ・・・ はっ!



ってなことで、緋色火花でした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 鬼の力のように、門の奥に新たな門、て感じで、まだまだ何かありそうですね♡ チタニア参戦にはミスティ様のお怒りが。。。 いったい誰が悠斗と結ばれるんでしょうね♥︎
感想一覧
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