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異世界転移 ~魔を狩る者~  作者: 緋色火花
第二章 港町・アシュリナ編
183/406

150話 鬼の力

お疲れ様です。


部屋を片付けるかどうかで、かなり悩んでいますw

一度やり始めたら・・・終わる気がしない・・・。

でも、仕事部屋を有効に使うには・・・

そう思うのですが、これがなかなかどうして・・・><


あと、おすすめのキーボードとかってありませんかね?

まじで悩んでますw


ブックークや感想など、本当に宜しくお願いしますっ!w



それでは、150話をお楽しみ下さい。

(・・・ポ、ポンコツ・・・か・・・ははは)

そう思う事しか出来なかった。


地面に這いつくばる悠斗に、ミランダはヒールを使用した。

だが・・・その激痛が収まる事はなかった。


「あれから・・・4時間・・・ね」

そうつぶやいたミランダは、急ぎ薬を取りに行った。


「ぐあぁっ!」

悠斗は(うずくま)り、その痛みに耐えながら考えていた・・・。


(もう・・・戦えないのか?

 ははは・・・何の為・・・に・・・俺は此処に来たんだ)


薬を手に握り締め戻ってきたミランダは、薬を悠斗に飲ませた。


「!?うげっ!ま、不味いっ!!」

吐き出そうとする悠斗の口を再び抑えると、無理矢理飲み込ませた。

「ゲェェェェッ!こ、殺す気かぁっ!」

怒鳴る悠斗にミランダは涙を浮かべ黙って見ていた。

そしてその体は・・・小刻みに震えているのが見て取れたのだった。


「・・・ご、ごめん」

「・・・いいのよ」


それから何も言わずミランダは廃墟へと戻って行った。

悠斗はその悲し気な背中を見送ると、仰向けに寝転がった。


「・・・死ぬか、闇堕ちするか・・・そう言ってたな~」

薄紫の空を見上げながら、悠斗はそうつぶやいた。

それと同時にこうも思っていた。


(闇堕ちって・・・魔族みたいなモノになるのかな~?

 別に死ぬ事なんて何とも思っちゃいないけどさ・・・。

 でも死んだらラウルに申し訳ないしな~・・・

 どっちがいいんだろ?

 それに俺が居なくなった後だな~・・・。

 誰かに俺の跡を継いでもらわないといけないな・・・)


そう思いながら、悠斗はぼんやりと景色を眺めていると・・・。


「ギィィィィっ!」っと、音を立て神界のゲートが突然開いた。

「・・・誰だ!?」

悠斗は半身を起こすと、ゲートから出てきた人物に驚いたのだった。


「チ、チタニアっ!?どうしてあんたが・・・此処にっ!?」

悠斗の声に気付いたチタニアは、神界のゲートを閉じると、

その場で悠斗に頭を下げた。


近づいてくるチタニアに、悠斗は慌てて立ち上がると、

チタニアに習って、悠斗も頭を下げるのだった。


「ユウト様、貴方がこうなる事を見越して、ミランダにお願いしていたのです」

悠斗は少し驚くが、「ふぅ~」っと息を漏らすと・・・。

「・・・まぁ~思うところがない訳じゃないけどさ・・・。

 チタニアの機転のおかげで、なんとかなっているから・・・有り難いね」

「いえ、このくらいの事しか出来ないのが歯痒いですわ」


悠斗はチタニアの言葉に笑みを浮かべていた。

「ところで、あんたは大丈夫なのか?」

優しく微笑む悠斗に、チタニアは頷いた。

「そっか~・・・それなら良かった」

そう言って悠斗がその場に腰を降ろした時、

チタニアはそんな悠斗に唇を噛み締めていたのだった。


(貴方はこんな時にでも、他人を気遣うのですか?

 私には・・・

 いえ、例え他の神でも中々そう思えるモノではないと言うのに・・・)


「ユウト様・・・私の心配よりも、ご自分の心配をなされては?」

立ったままそう言ったチタニアに、悠斗は苦笑していた。

「ははは・・・だよね?

 俺もそう思うけどさ・・・。これが俺の性分みたいだな」

頭を掻きながらそう答える悠斗に、チタニアは溜息が漏れた。


チタニアは悠斗の横に腰を下ろすと、少し血の滲んだ唇が見て取れた。

だが、そんな事も気にする素振りも見せず話していった。


「ミランダの薬が効いているようですわね?」

「ああ、あいつのおかげでまだ生きてるよ」

口角を少し上げた悠斗は、チタニアに質問した。


「なぁ?闇堕ちしたら・・・俺はどうなるんだ?」

その質問にチタニアは芝生を強く握り締め眉間に皺を寄せた。

「そ、そうですわね・・・」

答えにくそうにしていると、背後から冷めた声が聞こえてきた。

「闇堕ちしたら・・・あんたは魔族になり、私の仲間になるわ」

いつの間にか現れたミランダが悠斗の問いに答えたのだが、

その表情はとても悲しい表情を見せていた。


「お前の仲間か・・・なら、安心だな?」

悠斗が苦笑しながらそう答えると、ミランダは悠斗の胸ぐらを掴み、

怒鳴り声をあげ睨んできた。


「何バカな事言ってんのよっ!

 あんたが闇堕ちなんてしたらっ!もう仲間達には会えないのよっ!」

胸ぐらを握り締めるその手に、

力が込められているのが伝わってきたのだが・・・。


「で、でもさ?ミランダだって・・・みんなと仲良くしてるじゃんか?」

ミランダの迫力に押されつつも、悠斗は正直に答えるのだが、

そのミランダからは返事の代わりに、拳が返ってきたのだった。


「バシっ!」

「い、痛ったぁぁぁっ!何するんだよっ!」

ミランダは悠斗の言葉など聞かず、

拳を握りしめると、(きびす)を返し戻っていく。

「な、何だよ・・・あいつはっ!」

文句を垂れる悠斗に、チタニアが静かな口調で答えはするものの、

その顔は苦悶に満ちていた・・・。


「ユウト様が闇堕ちした場合・・・。

 恐らく貴方の意識は既にないかと思われます」

「い、意識?」

「・・・はい。貴方は今の貴方ではなくなりますわ。

 そしてそうなってしまったら・・・。

 本能のままに・・・人族達を襲ってしまうでしょう」


チタニアの言葉に、悠斗は押し黙ってしまった。

そして悠斗はその想像が出来てしまったのだ。


「・・・まじかよ」

「・・・はい」

「そっか・・・なら、やる事は1つだなっ!」

「えっ!?」


勢いよく立ち上がった悠斗は、チタニアに笑顔を向けた。

戸惑うチタニアは、そんな悠斗の心情が理解できなかったのだ。


「や、やる事・・・1つ・・・?」

「ああ、俺が死ぬにしても闇堕ちするにしても・・・

 今の俺の跡継ぎを育成しなくちゃなっ!

 俺・・・育ゲー得意だしさ♪」


悠斗の言葉が上手く飲み込めないチタニアは、唖然としていた。

何故なら、チタニアの前に居る悠斗からは、温もりみたいなモノが、

徐々に失われてきたかのように思えたのだった。


「ん?どうしたんだよ・・・?」

「えっ!?・・・い、いえ・・・」

悠斗に手を差し伸べられたチタニアは、その手を掴むと立ち上がった。

だがその手を掴んだチタニアは、

悠斗のその手が異常に冷たくなっている事に気付いた。


「なぁ・・・チタニア?」

「は、はい」

「あいつらの育成・・・手伝ってくれないか?」

「ユ、ユウト様・・・一体何の話を・・・?」

「どうせ倒すなら・・・さ。強い方が・・・美味しいじゃんか♪」

「・・・ユ、ユウト・・・さ・・・ま?

 た、倒す・・・?! お、美味しい・・・?!

 一体先程から何を言って・・・」


笑みを浮かべながら楽しそうに話す悠斗に、

チタニアは悪寒が走るのと同時に、悠斗の纏う雰囲気に一歩・・・後ずさった。


すると・・・。


「チタニアっ!そいつから離れなさいっ!」

背後から冷たい神力が聖域内に充満していった。

「ミ、ミランダっ!貴女・・・どうしてそんなモノをっ!」


振り返ったチタニアは、武器を構えるミランダに驚いていた。

するとミランダは悠斗を睨みつけながら問いかけた・・・。

「ユウト・・・1つ聞くわ」

「・・・突然なんだよ?」


チタニアは2人の顔を交互に見ながら戸惑っていた。

武器を構えるミランダの顔は、とても険しく悠斗を睨みつけていた。

そして悠斗は・・・。


「・・・え、えっ!?ユ、ユウト・・・様・・・?

 ど、どうして・・・そのような・・・お顔をされて・・・?」


チタニアが見た悠斗は・・・妖しく笑っていたのだった。

すると、険しい表情を浮かべながらも、ミランダは悠斗に再び質問した。


「あんた・・・大切な仲間の名を言ってみなさいよっ!」

質問された悠斗は笑顔を浮かべたまま・・・。

「な、仲間の名って・・・何言ってんだよ?

 ん!?仲間か~・・・それって・・・何だっけ?」

そう言って何かを考え始めた悠斗に、チタニアは喉の乾きを感じると、

涙を一粒こぼした。


「ユ、ユウト・・・様・・・う、嘘・・・ですよ・・・ね?」

そう声を震わせ涙を流すチタニアに、ミランダは怒鳴りつけ、

戦闘態勢に入った。


「チタニアっ!あんたは邪魔よっ!そこをどきなさいっ!」

「し、しかしっ!ユウト様がっ!」

「あいつはもう・・・ユウトじゃないわっ!闇堕ちしたのよっ!

 まだ時間があったはずなのにっ!

 それに・・・私の薬が効かないなんてっ!」


動揺が収まらないチタニアに、ミランダは舌打ちした。

「ちっ!あんたっ!運命神でしょっ!しっかりしなさいよっ!」

「・・・で、でもっ!まだ完全に闇落ちしたとはっ!」


そう反論するチタニアに、ミランダは声を荒げこう言った。

「あいつが完全に闇堕ちする前に殺さないとっ!

 私達の勝率なんてっ!ほとんどないわよっ!」


チタニアは悠斗に視線を向けると、

そこには仲間について(いま)だに考えている悠斗の姿があった。


「ん~とだな?仲間・・・ナカマ・・・仲間・・・ねぇ~・・・?

 それってさ~・・・美味しいのかな?」

真剣に考えている悠斗にチタニアは震える声で話しかけた。


「ユウ・・・ト様?あ、あなたの・・・たい・・・せつな・・・」

その声に悠斗の虚無な視線がチタニアを捉えた。

「!?」

「だレダ・・・お前?えっと~・・・なんだっけ?

 あっ、そうそうっ!大切な・・・?ンー・・・そんナノ・・・イタっけ?」


そう答える悠斗から、禍々しい魔力が溢れ始めた。

「チタニアっ!下がりなさいっ!」


チタニアは悠斗から溢れ出す禍々しい魔力に、

咄嗟にミランダが居る所まで後退した。

ミランダは身体を強張(こわば)らせながら俯くと、

(かす)れた声でつぶやいた。


「もう・・・諦めるしか・・・ない・・・わ」

「ミ、ミラン・・・ダ?」

チタニアはその時見たのだった・・・必死に涙を堪えているミランダを・・・。


「ま、まだ・・・か、かんぜ・・・んに・・・」

呻くように吐き出した言葉に、

ミランダは一縷(いちる)の望みを賭けている言葉でもあった。


そんな時だった・・・。

チタニアは悠斗に視線を移した時何か違和感を感じると、

注意深く観察し始めた。


「あっ!?ミ、ミランダっ!ま、待ってっ!」

「・・・なに・・・よ?もう・・・やるしか・・・」

「パシっ!」

「!?」

突然チタニアはミランダの頬を打った。

視線をチタニアに向けたミランダは、呆気(あっけ)に取られながらも、

その眼差しが真っ直ぐな事に驚いた。


「な、何すんのよっ!」

「よく見なさいっ!今のユウト様から溢れ出ているモノは・・・

 ただの魔力なのよっ!しっかりと見なさいっ!」

「・・・えっ!?ま、魔力・・・?・・・嘘っ!?」


チタニアに言われ悠斗に視線を移すと、

そこから漏れ出ていたのは、禍々しくはあるが、確かに魔力だった。


「えっ・・・!?赤銅色じゃ・・・ない?」


「そうですっ!まだ心の何処かで、ユウト様は抵抗しているのですっ!

 そんなユウト様を、貴女は殺すと言うのですかっ!」


「でもっ!今なら・・・私達だけで・・・」


「救える者を救わないのはっ!それだけで罪なのですっ!

 邪神と言えど、貴女は女神なのですよっ!しっかりなさいっ!」


「じゃ、邪神の女神ではあっても・・・か・・・

 ・・・あぁぁ、もうっ!わかったわよっ!」


怒鳴って見せたミランダだったが、一縷(いちる)の望みを感じると、

涙を拭き笑顔を見せた。


だが、この現状を打破するほどの考えが浮かばない2人は、

完全に手詰まりだったのだ・・・。


「ど、どうすれば・・・いいのよ・・・」

「・・・ユウト様の抵抗を信じるしか・・・」

2人の視線の先には、唸りながらも何故か動けない悠斗の姿があった。



そして此処は、悠斗の精神世界・・・。

2人の悠斗が戦っていた。

同じ顔、同じ声・・・そして・・・同じ身体・・・。

瓜二つの2人が戦いを繰り広げていた。


違う所があるとしたら・・・。

それは黒く染まった目が違うと言うだけだった。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・」

片膝を着いた男は、もう一人の男を下から見上げていた。


「オマエノ・・・ヤクメ・・・オワツ・・・タ」


「ふざんけんなっ!これは俺の身体だっ!」


「チカラ・・・レキゼ・・・ン・・・ムダダ」


「まだ・・・負けて・・・ないっ!」


「サツサ・・・ト・・・ヤミオ・・・チ・・・シロ。

 コノカ・・・ラダ・・・モラツ・・・テイイ・・・イワレ・・・タ」


「誰に・・・だよっ!勝手な事言うんじゃねーぞっ!」


「カミ・・・ニ・・・イ・・・ワレタ。

 コノカ・・・ラダ・・・ヤルト・・・ソウイ・・・ワレタ」


「・・・神!?神にそう言われたのかっ!答えろっ!」


「オマエ・・・ノ・・・ヤミ・・・オチ・・・キマツ・・・テタ」


「決まってた!?俺の・・・闇堕ち・・・が!?」


「アア・・・ダカラ・・・コレ・・・オレ・・・ノ・・・ダ」


「お前にそう言ったのは・・・誰だっ!」


「オマエ・・・シラナ・・・ク・・・テイイ」


そんな会話が悠斗の精神世界では起きていたのだった。



そんな現状を知るはずもないミランダとチタニアは・・・。

「ちょ、ちょっと・・・どうすんのよ?」

「わ、私が知るはずもありませんわっ!」

「ね、ねぇ・・・」

「・・・今度は何かしらっ!」

「動かないみたいだから・・・殴って気絶させるってのはどうかしら?」

「ミ、ミランダっ!貴女はまだそんな事を言って・・・って・・・。

 ・・・え~っと・・・それは・・・いい考えですわね?」


思わぬチタニアの承諾にミランダの瞳はキラリと光ると、

不敵な笑みを浮かべていた。


「フッフッフッ~♪でしょ?でしょ!?

 それが一番の解決法なのよっ!流石私よね~、えっらぁ~いっ!」


「一番がどうかは・・・まぁ~置いておくとして・・・。

 他に手が見つからない以上・・・それしか考えられ・・・ない?

 いえっ!ダ、ダメですわっ!まだ他に何かあるはずですわっ!」


「ないわよっ!」


「ありますっ!」


「ある訳ないじゃないっ!」


「あるったらあるんですっ!」


どうにもならないこの現状に、2人はただ言い争っているしかなかった。

女同士の争いに、地球も異世界もあまり変わりはないようである。



そして再び悠斗の精神世界では・・・。


「サツサ・・・ト・・・キエロ」

「勝手な事言ってんじゃねーぞっ!」

「タカガ・・・ヒトゾ・・・ク・・・ワレニ・・・カテナ・・・イ」

「だ~か~ら~っ!まだ負けてないってーのっ!」

「シツコ・・・イ・・・ヒトゾ・・・ク・・・ダ」


再び2人の悠斗は戦いを繰り広げていったが、

精神世界では、気道が使えなかったのである。

いや、気道どころか、魔法、精霊力、神力までも使用出来なかった。

その為、悠斗は苦戦を強いられる事になっていた。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・お、お前、汚いぞっ!

 どうしてお前だけ魔力で攻撃出来るんだよっ!

 完全にチートじゃんかよっ!」


「ハッハッハッ!オマエ・・・ノ・・・チカラ・・・カミ・・・フウジ・・・タ」


「まじ汚ねーぞっ!

 でもな・・・それでもな・・・オレは負けられないんだよっ!

 必ずお前をぶっ飛ばして俺は自分の身体を取り戻すっ!」


「オマエ・・・ワレ・・・ヤレナ・・・イ。

 タダ・・・オチル・・・ダケ・・・ダ」


「・・・必ず・・・殺すっ!」


そう悠斗が言った時だった・・・。

何処からか直接悠斗の頭の中に話しかけくる声が聞こえた。


(あー、あー・・・。き・・・こえるか?)


(誰だっ!今度は何だよっ!)

(ん!?聞こえるようだな?)

(だから・・・あんたは誰なんだよっ!)

(はっはっはっ!活きが良いじねーか・・・人間の小僧)

(・・・に、人間・・・!?)


もう一人の悠斗が嘲笑(あざわら)い一人で話している頃、

突然聞こえたその声の話は続いた。


(名乗るほどの者じゃねーがよ?

 おっとその前に・・・時間をだな・・・。

 とりあえずOKだな・・・え~っと、何だっけ?

 そうそうっ!俺の事は~・・・ん~・・・。

 そうだな・・・(ぜつ)・・・とでも、名乗っておこうか?)


(・・・ゼツ?)


(ああ、そうだ・・・)


ゼツと名乗る男に、悠斗は眉間に(しわ)を寄せた。


(・・・で?俺に何か用でもあるのか?

 悪いが今、すっげー忙しいんだよ?

 だからあんたに構っている場合じゃないんだよっ!

 話があるなら後にしてもらえるか?)


(まぁ~そう邪険(じゃけん)にするな。

 お前に良い事を教えてやろうとだな~・・・)


(あ~・・・うち、そう言うの間に合ってますんでっ!)


まるでしつこい勧誘を断るようにその申し出を断る悠斗に、

ゼツと名乗る男は笑い始めるのだった。


(あっはっはっはっ!人間の小僧・・・中々面白いヤツだな?

 俺の思った通りの男のようだ・・・)


(うっさいっ!俺は今、まじで忙しいんだよっ!

 あいつを倒さないといけないんだよっ!

 だからあんたは引っ込んでろよっ!)


するとゼツと名乗る男は、声のトーンを落とし話した。


(ああ・・・分かってる。そいつを倒したいのだろ?)


(ああ、だからあんたに構っていられな・・・)


(黙って聞けっ!人間の小僧っ!)


突然怒鳴られた悠斗はその迫力に言葉を飲み込んだのだった。


(お前・・・鬼の能力(ちから)が使えるのだろ?)


(なっ!?な、何故それをっ!?し、しかも・・・お、鬼の事までっ!?)


(まぁ~俺の話を最後まで聞け・・・いいな?)


(あ、ああ・・・わかった)


(鬼の力の使い方は・・・ああ~そうか?

 お前達人間は確か・・・阿修羅とか言っていたな?)


(そ、そんな事までっ!?)


突然悠斗の阿修羅モードの力を口にしたゼツと名乗る男に、

悠斗は警戒するのだった。

だが、その力が使えるとなれば・・・

黙って聞くしか選択の余地はなかったのだ。


(ああ~それと・・・。小僧の先の戦いを見せてもらった。

 人間にしてはやるようだがな?まだまだ赤子のレベルだな)


(わ、悪かったな・・・赤子でさ)


(はっはっはっ!まぁ~そう怒るな?

 今、小僧の居る世界では、普通の力は使えんはずだからな?

 だが、鬼の力は別だ・・・)


(べ、別って・・・どう言う事だ?)


(今は詳しく話すのは止めておこう。

 小僧は俺の言う通り鬼の力を使いヤツを倒すのだ)


(言われなくってもあいつは・・・殺すっ!)


(はっはっはっ!いいぞ、小僧・・・その調子だ)


(で・・・?どうやって使うんだ?その鬼の力ってヤツをっ!?)


悠斗は何故かこの時、その声の主に懐かしさを感じていたのだった。

そんな気持ちになりつつも、ゼツと名乗る男から、

鬼の力を使う方法を聞くのだった。


そして・・・。


(お前がまず成す事は・・・己の魂に刻まれた鬼の力を呼び出す事からだ)


(己の魂・・・そして鬼の力を呼び出す事か・・・なるほどね)


(はっはっはっ!)


(あ~・・・悪いんだけどさ?自分の魂って・・・どこにあるんだ?)


(・・・えっ!?)


(い、いや、だからさ・・・自分の魂の場所が分からないんだけど?)


(・・・ぐはっ)


(あっ・・・と・・・なんか、ごめん)


(・・・・・)


その後、悠斗はゼツと名乗る男から、鬼の力の使い方を学んだのだった。

コツを掴むのに多少の時間がかかったが、

ある意味、悠斗はそれに慣れていた。


それは・・・後に語られるであろう。



(はっはっはっ!もういけるようだな?)


(ああ、あんたのおかげで何とかなりそうだ。

 ありがとな・・・ゼツのおっさん)


(馬鹿者っ!誰がおっさんだっ!誰がっ!まだこれでも若いんだぞっ!

 ・・・多分だがな?・・・フフフ)


((わっはっはっはっ!))


2人は声も高らかに笑うと、ゼツと名乗る男が立ち去ろうとした。


(待てよ・・・おっさん)


(ん?どうかしたのか?)


(俺の名は・・・カミノ・ユウトだ)


(カミノ・ユウト・・・?

 ん!?・・・何処かで・・・ああ~・・・あの時の・・・)


(ん?今何か言ったのか?)


(い、いや、別に・・・。わかった、ユウトよ。

 その力を極め上がって来いよ?)


(上がってって・・・どこにだよ?)


(はっはっはっ!)


(それとおっさん・・・この技の名前とかあるのか?)


(ユウト・・・せめて「ゼツ」と言う名を付けてくれ・・・

 ただのおっさんだと・・・ちょっとな?)


(あははは、ああ、分かったよ・・・ゼツのおっさん!

 で・・・?技の名は・・・何だ?)


(技の名は・・・「鬼道(きどう)」と言う・・・)


(・・・「気」ではなく、「鬼」か・・・

 まじであるとはな~・・・にゃるほど♪)


(では、俺は行くからな?ユウト・・・また会おう)


(ああ、サンキューなっ!ゼツのおっさん!

 って言うか・・・会えた時は、色々と聞きたい事があるからな?

 それを忘れんなよっ!)


(ああ、約束しよう・・・またな、ユウトよ)


悠斗はその声が脳裏から消えると、何とも言えない感情が押し寄せるのだった。

(おっさん・・・またな?)


そう悠斗が感慨深くつぶやいた時だった・・・。


(あっ、すまん、1つ言い忘れていたんだが・・・。

 今、お前の精神世界の時間は止めてあるからな?

 俺が居なくなったら動き出すから、ちゃ~んと準備を(おこた)るなよ?

 コホンっ!で、では・・・またな~)


(・・・こ、この・・・この、おっさんっ!

 俺の感動を返せぇぇぇぇっ!って言うか・・・死ねぇぇっ!)


苛立ちながら悠斗は目を開けると・・・。


「ははは・・・あいつ・・・固まってやんの・・・

 向こうもチートなんだ・・・こっちもいいよなぁ~?」


そう苦笑すると、悠斗は言われた通り己の魂に刻まれた、

鬼の力を呼び出すのだった。



「・・・さぁ・・・逝こうかっ!・・・鬼道っ!」


精神世界で決着をつける為、悠斗は鬼の力を(みなぎ)らせるのだった。

だが、いつもの赤銅色とは違い、限りなく真紅に近い「赤」だった。



そして「ゼツ」と名乗るその男は・・・。


ミランダによって張られた簡易聖域の壁にもたれ掛かっていた。

「フッフッフッ・・・人間の小僧・・・いや、神野 悠斗・・・だったか?

 まさか・・・生きていたとはな?

 わっはっはっはっはっ!愉快、愉快っ!」


そう笑いながら、その場所から忽然(こつぜん)と消えるのだった。




ラウル ・・・ 何か変なヤツ出てきたんですどっ!あれ・・・誰っ!?

ミスティ ・・・ ・・・た、確かにそうですわね?

ラウル ・・・ あ、怪しい・・・かなり怪しいよねっ!?

ミスティ ・・・ しかしながら、悠斗さんを助けてもらっていますから・・・。

ラウル ・・・ だとしてもだよ?何てタイミングで出てくるのさっ!

ミスティ ・・・ で、ですわね?今のところ・・・何とも言いようが・・・。

ラウル ・・・ あれは・・・敵だっ!間違いなく敵だっ!僕の本能が・・・

ミスティ ・・・ ラウル様の本能って・・・仕事をさぼる事にしか活用されて・・・

ラウル ・・・ ぼ、僕を何だと思っているのさっ!

ミスティ ・・・ 僭越ながら・・・。仕事をサボる創造神としか・・・。

ラウル ・・・ さ、さいですか・・・orz



ってなことで、緋色火花でした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 後書きには登場しますが、こんな状況の時、ラウルは何してるんでしょう(-_-;) なんか悠斗、ふびんですね(涙)
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