143話 悠斗の本音
お疲れ様です。
今日は帰宅してから気絶するように眠ってしまいましたw
ついさっき起きたところなんですけど・・・
・・・寝違えたorz
下を向くのがツライ><
それでは、143話をお楽しみ下さい。
ステアに連れられ勇者の元に辿り着いた悠斗は、
勇者の中に居るククノチと念話を始めた。
(ククノチ・・・ぶ、無事か・・・?)
(マ、マスターっ!)
(よ、良かった・・・お、お前は何ともないんだな?)
(あ、当たり前だぜっ!で、でもよ・・・マ、マスターの腕が・・・)
心配と不安が混ざり合うククノチは、今にも泣き出しそうだった。
(心配・・・するな。昔から・・・言う・・・だろ?
腕なんて・・・ただの飾りだ・・・。
え、偉い人には・・・そ、それが・・・わからんのですってな?)
(・・・言わねーよっ!そんな人族の話も知らねーぜっ!
って言うか、ふざけている場合じゃないだろっ!)
(ははは・・・すまん)
本気で怒るククノチに悠斗は心から詫びたのだった。
(で?マスター・・・。
そんな状態でこれからどうするんだ?)
(ククノチ・・・ちょっと聞きたい事が・・・ある)
(な、なんだよ?)
(お前、神水・・・使えるか?)
(あ、ああ・・・俺だって修練したんだ。
そんなのとっくに覚えているぜっ!)
(よ、良かった・・・な、何とかなりそう・・・だな?)
(ほ、本当に何とかなるのかよっ!マスターっ!)
悠斗はククノチと話を進めていると・・・。
「ユウト様っ!」と、サウザーの声が聞こえてきた。
(ははは・・・来たのか・・・。
ククノチ・・・レダの回復魔法に合わせて神水を傷口へ・・・)
(わ、わかったけどよ・・・本当になんとかなるんだよな?)
(・・・ああ、任せろっ!)
「・・・だ、大丈夫だ。
い、今・・・俺のスピリットと話していたところだ」
そう答えた悠斗は、サウザー達に引きつった笑顔を向けて覚醒した。
「「「ユウト様っ!」」」
ステアは涙を流し悠斗の頭を抱き締めた。
「ははは・・・此処は天国なのか?む、胸が・・・」
その悠斗の一言にステアの腕は一瞬緩んだのだったが、
先程よりも強い力で再び抱き締めたのだった。
その時のステアの顔は涙に濡れながらも笑顔を浮かべていたのだった。
「コホンっ!ス、ステア君・・・そ、そこまでだ」
「・・・は、はい」
少し残念そうな顔をしながらも悠斗を解放したステアは、
ゆっくりと悠斗の体を起こしたのだった。
「御気分はいかがですか?」
「・・・天国でした・・・じゃ、じゃなかった。
大丈夫だ。有難う・・・みんな」
(ククノチ・・・上手く行った見たいだ)
(・・・神水ってこんな効果があるのかよ~?
今まで全然知らなかったぜ~)
(ははは・・・俺も半信半疑だったからな~・・・。
でもまぁ~ミツチからさっき聞いたばかりだったからな?
神水の効果でただの回復魔法の効力が何倍にもなるってな~)
その話を聞いたククノチは苦笑していたが、
真剣な声で聞いてきた。
(マスター・・・なんとかなるんだよな?)
(・・・ああ、任せろっ!)
(ちぇっ、またそれかよ~♪)
文句を言いながらも悠斗は笑って見せた。
そしてサウザー達にも笑顔を見せると、
ステアに体を支えられながら立ち上がった。
「さてっと・・・状況は?」
悠斗の問いにサウザーが答えた。
「はっ、只今チタニアと交戦中で御座います。
遠距離からミレイ君とダンケルの魔法攻撃に加え、
近距離戦では、ゼノとクトゥナ君の波状攻撃を行なっております」
「ん?フォルティナやシーバは?」
「はっ、フォルティナ君とシーバは、ミレイ君達を守っております」
話を聞きながら、悠斗はチタニアとの戦闘を見ていた。
チタニアはゼノとクトゥナの攻撃に翻弄されており、
ミレイとダンケルの遠距離攻撃に対処するのが精一杯のように見えた。
「・・・ひょっとするとこのまま押せるのではないかと?」
そう嬉しそうに言ったサウザーだったが、
悠斗は真剣な眼差しを向けたままだった。
すると悠斗の体を支えるステアが口を開いた。
「・・・サウザー様のおっしゃるようには運ばないとお考えですか?」
「・・・ああ」
そう言うと、悠斗はチタニアに接近戦を挑んでいるクトゥナを指差した。
「あれってクトゥナのスキルの瞬神・・・だよな?」
「・・・はい。先程あの者達との打ち合わせした時、
クトゥナはそう言っておりました」
そう答えつつ、ステアと共にレダは悠斗の体を支えるのだった。
「・・・有難う」
「い、いえ・・・」
悠斗はレダに顔を向けると、笑顔で礼を述べたのだった。
レダは少し顔を赤らめていたのだが、悠斗はすぐさま戦闘に視線を移した。
「元々あれはクトゥナが単体で仕様するものなはずだ。
だから二人分の体をあの速度で移動すると言うのは、
相当キツイはずだろ?」
「で、ですが・・・それを言い出したのはクトゥナ自身なのです」
サウザーは慌てたように会話に入ってきた。
「って事は・・・」
悠斗は視線を落とし少し考えると・・・。
「はぁ~・・・あいつめ・・・」
いきなり含んだ笑みを浮かべる悠斗に、その場に居た者達は顔を見合わせた。
するとレダが悠斗に聞いてきた。
「・・・ど、どう言う事なのでしょうか?」
「あ~・・・あいつはただ、時間稼ぎをしているだけなんだよ」
「時間稼ぎ・・・ですか!?」
そう聞いてきたステアに苦笑混じりの笑顔を見せるのだった。
「ははは、あいつは俺が必ず戻ってくると思って、
こんな無茶な事をやっているんだよ」
そう言った悠斗にサウザーは口を開いた。
「私から見ると上手く翻弄していますから、
ひょっとすると、このままいけるのではないかと?」
そのサウザーの問いに、レダとステアも悠斗の答えを待っていた。
「んー・・・。まず無理だな」
そう言い切った悠斗にサウザーは顔を顰めた。
「ユウト様・・・御言葉ですが・・・。
もう少し彼らを信じてあげてはいただけませんか?」
少し苛立ったサウザーは口調を少し荒げていた。
「ははは、サウザーさん・・・。俺はあいつらを信じいるよ?
見てわからないかな?
全力であの2人は回避しているって事にさ」
「か、回避・・・?」
「ああ、身体強化で全力で移動と回避をしている。
それを魔法使いの2人がサポートしている・・・と、言ったところかな?」
そう言うと、悠斗は顔をこちらに向けているレダに言った。
すると・・・。
「フフ・・・流石ユウト様ですね?おっしゃる通りです」
レダは少し苦笑しながらそう答えた。
「ど、どう言う事なのだね?私に説明してくれないかね?」
そんなサウザーの問いにレダは説明していく。
「今あの場所で戦っている者達は、ユウト様のおっしゃるように・・・。
かなり・・・無理をしているはずです」
「わ、私には善戦しているようにしか見えないのだがね?」
そう答えるサウザーにレダは苦笑して見せた。
「見た目・・・そう見えるのでしょうね?
私達は打ち合わせしていましたから、此処までは作戦通りです。
しかしミレイ達は知りませんからね?
でも戦いの様子を見てミレイ達は悟ったのでしょう・・・。
明らかに戦い方が変わっています」
レダの話にサウザーはミレイ達に視線を向けた。
「・・・た、確かに攻撃の仕方が変わっている」
「でしょ?近接戦闘班をサポートするように、大きな魔法ではなく、
手数の多い魔法へと変えているようです」
「な、なるほど・・・」
納得し始めたサウザーにステアが口を開いた。
「手数が多い攻撃魔法を撃つ事によって、
近接戦闘班への負担が減らせるのです」
そう説明が終わるとサウザーは悠斗に頭を下げるのだった。
「も、申し訳御座いませんでした。
私めの浅はかな考えでユウト様にご無礼な・・・」
そう謝り始めたサウザーに悠斗は笑顔を向けた。
「謝る必要なんてないよ?サウザーさんが仲間をいかに想っているか・・・。
それが現れただけだからさ?気にする事ないってば・・・」
「はっ、あ、有難う御座います」
そう話していた時、ふとステアが悠斗に聞いた。
「ユウト様・・・これからいかがなさいますか?」
その問いに悠斗は軽く息を吐いて見せると・・・。
「そうだな~・・・そろそろ交代しますかね~?
結構ギリギリって感じだしね?」
おどけて見せた悠斗に、その場に居た者達が声を荒げた。
「こ、交代などとっ!いけませんっ!
い、今のユウト様は片腕なのですよっ!?」
サウザーは悠斗に向かって怒鳴って見せた。
それに続きレダまでもが声を荒げるのだった。
「なりませんっ!一度・・・此処を離れましょうっ!」
レダの言葉に悠斗は溜息を漏らした。
「レダ・・・残った人達はどうなるんだよ?」
「そ、それは・・・」
「俺にこのまま尻尾を巻いて・・・あいつらを見捨てて逃げろと?」
悠斗の言葉にレダは拳を硬く握り決意すると・・・。
「それでもですっ!貴方は・・・大切な・・・
この世界に大切な御方なのですっ!
こんな所で失う訳には行きませんっ!」
悠斗はステアに軽く頷いて見せると、悠斗の体から離れたのだった。
「ス、ステア!?な、何をしているのですかっ!?」
レダは悠斗の後ろで控えるステアに怒鳴ったのだった。
「・・・レダ、私も正直、このまま下がって欲しいと思っています」
「・・・な、ならばどうしてっ!?」
「ユウト様が・・・それを望んでいるからです」
「「なっ!?」」
ステアの発言にサウザーとレダは言葉に詰まってしまった。
「主と決めた御方の御言葉です・・・。
それに従わないのは・・・従者としての恥・・・私はそう考えます」
ステアの言葉に反論しようとした2人だったが、
そのステアの姿に何も言えなくなってしまった。
そのステアの姿とは・・・。
頭を下げ表情まではわからなかったが、声と肩が震え、
スカートを硬く握り締めるその姿に何も言えなくなってしまったのだ。
「あ、貴女はそれほどまでに・・・」
「・・・はい」
ステアの説得を諦めた2人は、悠斗に視線を向けた。
そのステアに向ける悠斗の表情は、とても優しいモノだったのだ。
「・・・ユウト様、分かりました。
いえっ!本当は分かりたくないのですっ!
ですがっ!・・・ですがステア君が耐えているのです・・・
私が此処で声を荒げて見せても・・・」
サウザーもまた頭を下げ、震える声でそう言っていた。
「・・・みんな、ごめんね?
だけどさ・・・あいつを見過ごす事は、俺には出来ないんだよ。
あいつを見過ごすと・・・ラウルが消される・・・」
「「「!?」」」
悠斗のその発言に全員が緊張し固まってしまった。
「だからさ・・・あいつは何があろうと、此処で消す。
たださ?これだけは言っておくけど・・・。
俺は死ぬつもりもないし、その予定もない・・・。
あんなヤツの為に、死ぬなんて事は・・・ありえない。
だからちゃんと戻って来るからさ?」
「「「・・・・・」」」
「って言うか・・・あんなクズ女神にっ!
俺の冒険者ライフをめちゃくちゃにされてたまるかぁぁぁっ!」
悠斗のその叫びに、全員が「ぽかーん」としてしまった。
その反応を見た悠斗は言葉を漏らした。
「えっ!?な、何!?俺・・・何か変な事言った!?」
慌てる悠斗に全員が溜息を吐いて見せた。
「な、何で揃いも揃って溜息なんか吐くんだよっ!」
悠斗の言葉に再び溜息を吐くと・・・。
「ユ、ユウト様・・・本音・・・ですよね?」
「へっ!?」
「いえ、だから今の言葉ですが・・・」
そう言ったのはサウザーだった。
そしてそれに続きレダも口を開いた。
「創造神様の御命より・・・冒険者活動が優先なのですか?
と、御聞きしたのですが?」
そのレダの冷たい眼差しを浴びつつ悠斗の言い訳が始まった。
「え、えっと・・・えっとさ?
も、勿論ラウルの命は守らなくちゃ・・・いけない・・・
うんうん、わかってる・・・勿論それは大切な事だからわかってる。
だけどさ?俺はこっちの世界に来て・・・ね?
冒険者として生きて行きたい訳で・・・。
た、楽しみにしていた冒険者・・・ライフなんだよ?
それなのにさ・・・ずーっと、トラブル続きでさ?
それに休みもないし・・・俺だって自由に生きたいじゃん?
わ、分かるよ?みんなのその・・・言いたい事は分かるけどさ・・・
そ、その~なんて言うのかな~?」
失った左腕を可愛くプラプラさせながら、
突如として言い訳を始めた悠斗に、全員が大声で笑い始めたのだった。
「はっはっはっはっ!な、なるほど・・・はっはっはっ!」
「ププっ!フフフフ・・・はははははっ!」
「・・・ププっ、ユ、ユウト・・・さ、ま・・・ププっ」
「な、何でそんなに笑うんだよっ!
俺にとってとっっっても大切な事なんだぞっ!」
失った左腕を可愛く動かして見せた悠斗に、
再び全員が大声で笑っていた。
「あぁぁぁっ!もうっ!そ、そんなに笑う事ないじゃないかぁぁぁっ!」
悠斗が大声でそう叫んだ時だった。
チタニアと奮闘する面々が動きを止め悠斗達の方を見ていた。
そしてまたチタニアも悠斗の大声に顔を引きつらせていたのだった。
「な、なぁ・・・クトゥナ?」
「ん、ん!?な、何だ?」
「ユウト様達・・・何やってんだろ?」
「さ、さぁ?と、当然ここからじゃ・・・な?」
「だよな?すっげー楽しそうにしていると思ったのは、俺だけか?」
「い、いや・・・わ、私も同じ意見だが・・・?」
クトゥナとゼノはチタニアとの戦闘以上に、
その光景に疲れを覚えるのだった。
そしてまたチタニアは・・・。
(あの異世界人っ!まだ生きていたのですかっ!?
な、なんてしぶとい・・・
さ、流石はラウルが選んだ者と言う訳ですか・・・納得しましたわ)
そんな者達を他所に悠斗達の笑いが収まると・・・。
「さてっと・・・そろそろ行って来るよ」
そう笑顔を向ける悠斗に、ステアが口を開いた。
「・・・片腕で、なんとかなるのですか?」
眉間に皺を寄せそう聞いてきた。
そしてその問は、サウザーやレダも同じモノだった。
「んー・・・。どうなんだろ?でもさ、大丈夫じゃ・・・ね?」
「「「!?」」」
「えっと、そういう修練は子供の頃から積んでるからさ♪」
「こ、子供の頃・・・から!?」
「はは・・・まぁーね♪
こんなのただの飾りなんです。偉い人にはそれがわからんのですっ!」
今日、二度目の言葉だった・・・。
そう言いながら悠斗はマジックボックスから槍を取り出した。
「ユ、ユウト様・・・言っている・・・意味がその・・・?」
「はっはっはっ!任せろっ!」
サウザー始め全員が言葉を失っていた。
悠斗は少し歩くとその歩みを止めた。
「距離はざっと・・・200mくらい・・・かな?」
そして・・・。
「お前らぁぁぁぁっ!全員戻ってこぉぉぉぉいっ!」
そう叫び戦闘していた者達が動き出すの待った。
その大声にゼノ達は呆然としていたのだった。
我に返ったゼノがクトゥナへ声を掛けた。
「・・・も、戻れって聞こえたんだけど?」
「き、奇遇・・・だな?私もそう聞こえた・・・」
動揺するゼノ達は、魔法で援護する連中に合図を送ると、
唖然とするチタニアに向き直り声を掛けた。
「あ、あの・・・な、なんか俺達呼ばれちゃったんで・・・
そ、その・・・も、戻りますね?」
突然の出来事にチタニアは思わず・・・。
「え、ええ・・・そ、そのよう・・・ですわね?
か、構わなくってよ?お戻りなさいな・・・」
普通にそう言われたゼノ達は、再び魔法班へ合図を送ると、
「じゃ、じゃあ・・・そ、そう言う事なんで・・・失礼します」
「え、ええ・・・ご苦労様・・・」
そう言ってゼノ達はその場を後にした・・・。
そしてゼノ達が戻る中、ゼノはクトゥナに話しかけた。
「な、なぁ・・・一体どう言う事なんだ?」
「わ、私に聞かれても・・・分かる訳ないでしょ?」
「だ、だよな~」
そう話していた時だった。
突然風を切り裂き、戻るゼノとクトゥナの間を何かが通り過ぎて行った。
「ブゥオンっ!!」
「な、なんだっ!?」
「えっ!?な、何!?今の・・・何よっ!」
すると、チタニアが居た場所から「ドカーン」と、衝突音が響くのだった。
「ちっ!流石に当たらないよな~・・・」
その口調とはうらはらに、悠斗は鋭い眼光をチタニアに向けるのだった。
ラウル ・・・ どうして悠斗君は腕を治さないんだろ?
ミスティ ・・・ ですわね?何か理由でもあるのでしょうか?
ラウル ・・・ ふむ・・・。何か理由があるにせよ・・・決着は間近だね♪
ミスティ ・・・ はい、悠斗さんには1日でも早く、冒険者ライフを・・・♪
ラウル ・・・ あははは♪巻き込まれ体質だからどうなる事やら・・・w
ミスティ ・・・ ふふふ♪楽しみですわね♪
ってなことで、緋色火花でした。




