141話 地力の強さ
お疲れ様です。
今日はずっと眠かった・・・orz
まぁ~でも、眠ってないですけどねw
さて今回はサウザー達の後編ですね。
あれからどうなったのかを楽しんでもらえたら嬉しいです^^
それでは、141話をお楽しみ下さい。
(あら~・・・?心配して損しちゃったわね♪
さてっと~ ・・・もう一仕事しなくちゃね♪)
そうつぶやくと、満面の笑みを浮かべていたのだった。
ステアは本気を見せたゼノに話しかけた。
「もう私のフォローは必要なさそうね?」
「ああっ!此処は俺に任せてくれっ!みんなを頼むっ!」
「クスっ」と笑ったステアがゼノの背中から離れようとした時・・・。
(ヒール・全っ!)
「えっ!?」
移動しようとしたステアが緑色の光に包まれたのだった。
「こ、これは・・・ユ、ユウト様の!?」
戸惑ったステアは周囲を見渡すが何も確認出来なかった。
ただ後ろからサウザー達がすぐそこまで来ているのが見えただけだった。
「ど、どう言う事なの!?」
驚きを隠せないステアだったが、気配を感知し真上を見上げると、
そこには水色に光る何かが居る事に気付いた。
「・・・これは何!?」
触れようとしたその時、ステアの頭の中に声が流れて来た。
(ふふ~んっ!あなたにも私が見えるようね?)
(!?)
(いい?時間がないからそのまま聞きなさいよね?
私は水のスピリットのミツチ。
マスターの頼みで、あなた達を助けに来たの。
今、あなたにもマスターから預かったヒール・全をかけたわ。
体力と魔力だけじゃなくて、ついでに色んなバフも掛けておいたから、
これからは好きに暴れていいわよ♪)
「あ、有難う・・・御座います」
(じゃあ~ねぇ~♪)
そう一方的に告げると、その水色の光はゼノの元に向かった。
まるで夢のような感覚に捕らわれていたステアの元に、
サウザー達が駆けつけた。
「ステア君、今は呆けている場合ではないぞ?
・・・私が知りうる情報は話すと約束しよう。
だから・・・今は・・・」
サウザーがそう告げた時、ステアは無言で頷くと駆け出した。
ミツチはそれから悠斗の仲間達を全て回復させた。
ゼノ、レダ、フォルティナにクトゥナ・・・。
全て回復させ終わった時・・・。
(みんなぁぁぁっ!頑張ってねぇーっ!)
と、言う元気で可愛い声が響き渡っていた。
(因みに~だけど・・・。
私のバフは5分間くらいしか効果ないんだけどね~♪)
そしてミツチの声を聞いた者達は、
唖然としながらも感謝を胸に笑みを浮かべていた。
ミツチは悠斗の元へと戻る中・・・。
(でもどうして私の声が聞こえたんだろ?
マスターのヒールに何か秘密でもあるのかしらね?)
首を傾げながらもミツチは速度を上げ悠斗の元へ戻って行くのだった。
サウザー達はミツチの力を借り、敵と激しくぶつかり合っていた。
「うぉりゃぁっ!」
突然勢いを増した男達はその攻撃についていけなくなってきた。
「と、突然なんなんだよっ!」
「こ、こいつら・・・きゅ、急に・・・」
「バ、バカなっ!俺達はチタニア様にっ!」
「・・・何だよっ!こいつらはっ!何が起こってんだよっ!」
あれだけ優勢だった男達はその状況に目を疑った。
「お前らぁぁぁぁっ!今までよくもやってくれたなぁぁぁっ!」
ゼノの叫びで男達に恐怖が伝染し始めた。
「お、俺達は・・・ま、負けるのかっ!!」
「そんなバカな事がっ!」
「めっ、女神様ぁぁぁっ!」
男達がそう叫ぶがチタニアからの返事は何もなかった。
ジリジリと男達は後退しようと模索していた時だった。
その男達の背後から女の声が聞こえてきた。
「・・・まさかとは思うが・・・逃げないわよね?」
クトゥナは短剣を構えると鋭い眼光を5人の男達に向けていく・・・。
すると・・・。
「あれだけ調子に乗ったんだ、最後まで付き合ってもらおうか?」
レダは剣の血糊を拭きながら、クトゥナと男達を挟むように、
立ち塞がったのだった。
レダとクトゥナはジリジリと5人の男達の間を詰めて行く。
恐怖を与えながら・・・。
2人がにじり寄っている時、サウザーと共にゼノは奮闘していた。
「うぉりゃぁっ!・・・てめーらっ!さっきまでの勢いはどうしたんだっ!
全然歯ごたえがねーぞっ!こらぁぁぁっ!」
悠斗の気刃剣を参考に、ゼノが編み出した魔刃剣を振りかざし、
男達の剣ごと斬り倒して行った。
「せっっっかく苦労して編み出したってのによぉ~っ!
ここで終わっちゃぁぁ~つまらねーだろうがぁぁぁっ!」
一人また一人と、ゼノは魔刃剣で斬り倒して行く。
そんな中、サウザーもシーバと連携を取り渡り合っていた。
「ど、どうだっ!わ、私もな、中々なモノじゃないかっ!
わ、わっはっはっ・・・」
鼻息荒く己の力を誇示するサウザーはシーバに力こぶを見せていた。
「へ、へい・・・。な、中々なもんでやすな?」
「はっはっはっ!そうであろう、そうであろうっ!
だがな・・・はぁ~・・・これは言わば借り物の力だ・・・
男としては・・・ちょ、ちょっと・・・むなしいな~・・・」
「サ、サウザー様っ!今は落ち込んでいる場合ではねーですぜっ!」
今にも膝を抱えて座り込みそうなサウザーに、
シーバは思わず一喝してしまった。
そんなサウザーとシーバを見ていた騎士達も妙に和んでしまっていたのだった。
サウザーとシーバは気を取り直すと、次の敵を求め2人で駆けて行く。
「おらっおらっおらぁぁぁっ!これじゃ~私の疼きは収まらないよぉっ!」
サウザーに借りた剣を振り回し男達を薙ぎ払っていく。
「こ、この筋肉女っ!」
その一言にフォルティナの動きが止まると、目つきが変わった。
「なぁ~・・・そこの色男?今・・・私の事を言ったのかい?」
全身から赤い魔力を立ち昇らせながら男を睨んだ。
「ヒ、ヒィッ!」
「なぁ~あんた・・・?ユウトの様にさ~
私の渾身の一撃を受け止めておくれよぉぉぉぉっ!」
「たっ、助けてくれぇぇぇぇっ!」
背中を見せ逃走を謀った男を見たフォルティナは飛び上がり、
その男を真上から真っ二つに両断した。
「ぐぎゃぁぁぁっ!」
「・・・だらしがない男しか居ないのかいっ!?」
そう吐き捨てると、フォルティナは次の獲物を追い求め走り出した。
そして・・・。
「ザシュッ、ザシュッ、ザシュっ!」と、次々に倒れていく男達が居た。
「ザザァッ!」と、華麗に地面を滑り立ち止まり敵の気配を探っていく。
短剣を見ると、男達の血糊で斬れ味が落ちている事に気づくと、
徐に取り出した布でその血糊を拭っていった。
「・・・手応え・・・ないのね?」
そう声を漏らしながら、ステアの眼球は取り囲む3人の男達を見ていた。
「お嬢ちゃん・・・中々やるようだがな?
こんな奥まで一人で来ちゃ~おじさん達に食われちゃうぜ?」
「フフフフ。華奢な足だぜ~・・・まるで草食動物のような足だな?
たまんねーな、おいっ♪」
「俺達はな?先走ったあの連中達と違うんだ。
フフフ、わかるか?俺達はギラルドのA級冒険者なのさ」
「つまり・・・お前が俺達に勝てねーって事だっ!」
醜く残忍な笑みを浮かべ、3人の男達に囲まれていた。
「・・・ごめんね?おじさま方・・・私、肉食なの♪」
そう答えると、ステアは男達に蹴りを放つと風切り音が小気味よく響いた。
「ピッ、ピッ、ピッ!」
円を描くように回ったその白い華奢な足が地に触れると、
ステアの靴のつま先から、血に濡れた刃が鈍く光り血溜まりを作っていた。
「・・・ん?何かしたのか~?」
「へっへっへっ。その白い足がたまんねぇ~な~」
「・・・何かしたようだが、非力なお嬢ちゃんには無理なようだな?」
男達はそう薄ら笑いを浮かべた時だった・・・。
ステアは目を閉じ男達に背を向けると小さくつぶやいた。
「・・・死の輪舞」
「・・・へっ!?」
「ありゃ・・・あ?」
「・・・ゴフッ!そ、そんな・・・」
男3人の首が「ストン」と地面に落ちて転がった。
血しぶきを上げながら男達の体は地面に崩れると、
その血を浴びたステアだけが冷笑を浮かべつつ、
転がり落ちた男達の首に言葉を吐き捨てた。
「ごめんなさいね?貴方達のような腐肉は趣味じゃないのよね♪
こう見えて私・・・グルメなのよね♪」
口に入った血を吐き捨てると、ステアは次の獲物を求め駆け出した。
そして5人の男達を挟み込んだレダとクトゥナは・・・。
2人の威圧に耐えられなくなった一人の男が悲鳴を上げながら逃走した。
「ヒッ、ヒィッ!む、無理だーっ!ま、まだ死にたくねぇーっ!」
そう叫びながら駆け出した男に・・・。
「ドスッ、ドスッ、ドスッ!」と、ナイフが3本突き刺さっていた。
右足、脇腹・・・そして首と・・・。
呻き声も漏らす事が出来ず、逃げ出した男は絶命した。
「フッ、あたいの影ナイフを躱したヤツなんていないのさ・・・」
そう笑みを浮かべた時・・・。
「いや、そう言えば・・・一人だけ・・・居たわね?フフフ♪」
目を閉じその男の顔を思い出した時、自然と笑みがこぼれていたのだった。
隙きを伺っていた男がクトゥナへと剣を振り上げた。
「死ねやぁっ!」
その男の叫び声を合図に残された3人の男達も攻撃を仕掛けていく。
「・・・瞬神」
クトゥナは無表情なまま、斬りかかってきた男の前から姿を消した。
「えっ!?き、消え・・・た?」
「その程度で、あたいが殺れるとでも?」
クトゥナの声を聞いた瞬間、
その男は首から血しぶきをあげながら絶命した。
レダに向かって駆け出した男が叫びながら突進してきたが、
「う、うぉーっ!」
レダは慌てる事なく腰を据えると、相手の呼吸に合わせ、
すれ違い様に斬りかかってきた男の胴を薙いだ。
「うっ・・・う・・・そ・・・だろ」
「ドサッ!」っと音を立て男の上半身がずれ落ちた。
「・・・この程度なのね?」
倒れた男にレダは冷たい表情を浮かべながらそう吐き捨てた。
「私も修練の成果を試すいい機会だと思っていたけど・・・
そうでもなかったわね」
その眼差しと、その圧倒的な力の差に、
2人の男は腰を抜かし、地べたへと座り込んでしまった。
「な、何故だ!?なっ、何故なんだよっ!
さ、さっきまで・・・ついさっきまでよぉーっ!
お、おおお俺達が圧倒的・・・だったのによっ!」
そんな呻き声が聞こえたレダは、振り向くとその問いに答えた。
「ああ~、それね?押されていたと思ったの?」
「ど、どう言う・・・事だ」
冷たく笑みを浮かべたレダは説明した。
「押されていたのは事実よ?でも・・・ちょっと違うのよね?」
「ち、違う?」
「ええ、簡単に言うと・・・。
地力を上げたかったのよ・・・言っている意味・・・分かるかしら?
ギリギリだったのは否めないけど、それでも後ろへは行かせてないわ
それが証拠にならないかしらね?」
男達は数回ほど首を振って見せた。
「あの時は身体強化も何も使用せず戦っていたのよ」
「では・・・わ、わざと・・・押されていたのかっ!」
「わざとではないわ。さっきも言ったでしょ?
それに本気で戦っても、長時間は戦えないのよね。
だからゼノが抜かれない限り、私達が本気を出す事はなかったのよ」
そう言われた男達は口をパクパクとさせながらも話した。
「う、嘘・・・。嘘をつくんじゃねーっ!」
「ドスっ!」
「お、お前ら・・・いいかげんな・・・こ・・・と・・・あれ?」
「ドサっ!」
もう一人の男が声を上げていたが、その言葉は途中で終わりを告げた。
「・・・黙りなさい」
そう静かに話したのは血に染まったステアだった。
ステアは短剣をその男の頭部から引き抜くと、
その男の血しぶきを浴び、更に血に染まっていった。
それをただ唖然と見ていたのは・・・クトゥナだった。
(い、いつ現れたのよ!?このあたいが・・・いえ、この私が、
なんの気配も感じなかったなんて・・・。
それに、地力を上げたかった?嘘でしょ!?
少なくとも私とフォルティナは、全力だったわ。
ユウトの仲間って・・・みんな化け物なの!?)
そう考えていた時だった。
殿を務めていたゼノが男を倒したのが視界に入った。
全員が納刀し、ステア達が居る場所に集まってきた。
そして全員が血にまみれた姿を苦笑していた時だった・・・。
クトゥナがユウトの仲間達にその疑問をぶつけた。
「す、すまないが・・・聞きたい事がある」
全員が顔を見合わせ驚いた表情を浮かべていた。
するとレダがゼノと顔を合わせ頷くと・・・。
「構わないわ・・・。一体何かしら?」
クトゥナは顔を伏せつつ言葉を絞り出した。
「・・・先程の話だ。この男に言った事は本当なのか?」
「・・・ええ。少なくとも、私とゼノ、
そしてステアは本気を出していなかったけど?」
「「!?」」
その言葉にクトゥナばかりかフォルティナまで驚いていた。
「確か・・・地力を上げていた・・・と、言っていたな?」
「ええ、その通りよ。ユウト様がおっしゃっていたのよ。
地力がないと、いくら強化しても意味がないらしいわ。
ここぞって時に、地力の強さがモノを言うってね♪」
「・・・地力・・・か」
「ええ、魔法やスキルに依存してしまうと、
追い込まれた時、粘れないらしいのよね?
私達はユウト様の課題を乗り越えようと努力したに過ぎないわ」
「ユ、ユウトがそんな事を・・・?」
レダが何かを言おうとした時、ゼノがレダの肩に手を置き、
レダに代わってその話の続きをした。
「俺達はユウト様のそんな言葉を聞いて、それぞれが特訓したんだ。
地力を少しでもあげようと・・・な。
だが情けない話なんだが、正直まだ長時間は戦えねーがな?」
「ユウトの言葉で?あいつに教えてもらったと言う事か?」
クトゥナの言葉にゼノは苦笑しながら首を振って見せた。
「いやいや、ユウト様は全てを教えてくれる訳じゃねーよ。
だけどよ?ちゃんとヒントは教えてもらえるんだ。
人に学ぶのはいいが、それだけでは限界が早いらしいぜ?」
そう言ってゼノはレダとステアに顔を向けた。
するとその2人もまた、苦笑混じりに頷いて見せたのだった。
「ははは・・・ずこい・・・ヤツなんだな。ユウトってヤツは?」
「ああっ!此処に居る俺達全員っ!
ユウト様の臣下になるのが夢だからなっ!」
サウザー達全員が笑っていると、フォルティナが言葉を漏らした。
「はは・・・羨ましい話じゃないか。
さっきまで私達2人は本気で押されていたと言うのに・・・。
あんた達はそんな事をやっていたなんてさ~・・・
はぁ~・・・勇者一行より強い騎士か・・・すごいわね?」
目を伏せながら漏らした声に、ゼノは苦笑しながら口を開いた。
「ははは・・・えっと~フォルティナだったっけ?
言っておくけどよ?此処に居る中で一番強いのは、
俺やレダじゃねーんだよな~・・・これがよ」
ゼノの思いがけない言葉に、クトゥナとフォルティナは驚き顔を上げた。
そして周りを見渡した時、ゼノの後ろに居たシーバに目が止まった。
「えっ!えぇーっ!?あ、あっしじゃねーですよっ!
あ、ああああ、あっしであるはずねーよっ!
そんなの恐れ多いですぜっ!」
「・・・・・」
そう答えたシーバから視線をゼノに向けた時、
ゼノは笑って指を差した。
「はっはっはっ、そこに居るだろ?あいつだよ・・・あいつ」
「えっ!?・・・スっ、ステア・・・なの!?」
一度ステアを見た後、フォルティナと顔を見合わせた2人は、
もう一度ステアに視線を移した。
「い、居ないっ!」
「嘘っ!今・・・居たのに・・・?」
辺りをキョロキョロとしていると・・・。
「・・・此処よ?」
「「!?」」
突然クトゥナの背後から声が聞こえてきた。
思わず尻もちを着いたクトゥナに、ステアは微笑みながら手を差し出した。
「あ、あり・・・がと」
「フフ♪」
ステアの手を借り立ち上がったクトゥナは口を開いた。
「貴女が一番強いのね?流石の私も納得だわ」
そう言ったクトゥナにステアは首を傾げると盛大に笑った。
それはステアだけではなく、サウザー達も同様だったのだ。
「フフフ・・・はっはっはっ!」
殺伐とした場所から笑いが木霊した。
不思議がる2人にサウザーが答えたのだった。
「クトゥナ君・・・だったかね?それは私が答えよう。
此処に居る者達は、言わば予備軍・・・見たいなモノだ」
「予備軍・・・だってー!?」
驚きを隠せないフォルティナがそう言った。
「はっはっはっ!まぁ~無理もないだろうがね?
でも・・・事実なのだよ。
ユウト様と共に居る事を許されているのは、他に居るのだよ」
「・・・こ、こいつらよりも・・・強いってのかいっ!?」
声を荒げるフォルティナにステアが訳あり気に答えた。
「ふぅ~・・・。本当の話だから笑えないんだけど・・・。
ユウト様のお傍に居る事が出来るのは、残念ながら私達じゃないわ。
悔しいけどね・・・。
速さや気配隠蔽だけなら、私も負ける気はしないけど、
でもそれだけじゃ、ユウト様のお傍には居られないのよ」
この時のステアの寂し気な表情は、クトゥナにとって印象的だった。
「そうか・・・」
そんな言葉しかクトゥナからは出ず、
ただ地面を見つめ拳を強く握るだけだった。
「あんた達の全力が見たいものね」
そう言ったのはフォルティナだった。
すると、突然レダが笑い始めた。
「フフフ・・・あっはっはっはっ!全力・・・ね~・・・?」
意味有り気にゼノを見たレダはニヤリと笑みを浮かべていた。
「なっ、なんだよっ!」
「ゼノはミツチ様に回復してもらった時から、結構本気だったわよね?」
図星だったゼノは顔を赤らめていた。
「うっ、うるせーよっ!男って生き物はな~?
ここぞって時に燃えねーと意味がねーんだよっ!」
「・・・あら、そう?」
「ちっ!お、女にはわからねーんだよっ!
言わば・・・だ、男の矜持ってヤツなんだぜ?
まぁ~お前さん達にはわっかんねーだろうがよ~」
「・・・何よ?その男の矜持ってのは?」
「お前なんかにわかってたまるかよっ!」
「はぁぁぁぁぁ!?そんなモノ分かる訳ないわよっ!」
ゼノとレダはいつも通りの様子を見せていた。
「お前達2人は・・・本気じゃなかったのか?」
そうクトゥナに聞かれたステアとレダは黙って頷いていたのだった。
「嘘・・・でしょ!?」
「まぁ~そのなんだ~。こいつらの言っている事は本当だぜ?」
顔をまだ少し赤らめながらもそう言ったのはゼノだった。
「どう言う事なんだよ・・・おい」
厳しい目を向けてきたフォルティナもまた、
クトゥナと同じ様に拳を握り締めていた。
「え~っとだな~。戦っていた時、
敵の誰かがサウザー様達の元に行ったヤツはいなかっただろ?」
ゼノの言葉にクトゥナとフォルティナは固唾を飲んだ。
「た、確かに・・・」
「つまりはそう言う事なんだ。
この2人は殿を務める俺が抜かれるまで、
本気は出さないと決めていたんだよ」
ゼノが肩を竦めて呆れながらもそう答えた時だった。
「来いっ!精霊・・・剣っ!」
突然聞こえた声に、全員が視線を移した。
そこには、黒い何かに緑色に光り輝く
剣を突き刺していた悠斗の姿があった。
その光景を見たゼノ達は・・・。
「ははは・・・す、すげーや・・・見てみろよ?
あれが我らの主・・・ユウト様だ」
ゼノは憧れにも似た笑みを浮かべ声を漏らしていた。
そんなゼノを見ていたサウザーが口を開いた。
「ふむ・・・しかしあの様子では、
私達が無闇に飛び込んでしまったら・・・足手纏いになりかねんな」
サウザーの言葉に全員が無言で頷くのだった。
だが一人、思い出したかのようにクトゥナが口を開いた。
「・・・ね、ねぇ・・・ところで、ダ、ダンケルはっ!?」
「あっ・・・」
今までダンケルの存在を忘れていたフォルティナは慌てて探し始めた。
すると、シーバも辺りを見回しながら、顔を引きつらせながら叫んだ。
「ミ、ミレイの姉さんもいねーっ!」
「「「「「はぁぁぁぁぁーっ!?」」」」」
全員がそれに気付いた時、そのダンケルは岩場の隙間から、
悠斗とチタニアの戦いを覗き込んでいたのだった。
(おのれ・・・チタニアめっ!)
虎視眈々(こしたんたん)と、チタニアの隙を伺うダンケルが、
攻撃するチャンスを今か今かと待ち詫びていたのだった。
そしてそのダンケルを監視するミレイも様子を伺っていた。
(あいつ・・・何をするかわかったものじゃないわっ!
ユウト様に迷惑が掛かる前に・・・何とかしなくちゃ)
だが、それに気付いた悠斗が心の中で項垂れていた。
(・・・あのハゲっ!・・・まじで邪魔っ!
ミレイまで、一体何やってんだよっ!)
そう思っていた事を、ダンケル達は知る由しもなかった。
ラウル ・・・ ふむ・・・。スピリットか・・・僕も欲しいな・・・。
ミスティ ・・・ ラウル様も欲しいのですか?
ラウル ・・・ 欲しいよ?でもどうしてだい?そんなに不思議がる事かな?
ミスティ ・・・ はっ!ラウル様・・・と、友達が・・・いないから・・・?
ラウル ・・・ ち、違うでしょっ!どうして友達を僕が欲しがるんだよっ!
ミスティ ・・・ い、居る・・・と?そうおっしゃるのですかっ!?
ラウル ・・・ 待て、待て、待てっ!僕がぼっち設定になっているでしょっ!
ミスティ ・・・ だって、いつもお一人ですよね?
ラウル ・・・ うっ、・・・そ、そんな事ないぞっ!仕事で忙しいだけだもん。
ミスティ ・・・ へぇ~・・・。
ラウル ・・・ 居るもん・・・友達・・・居るもん・・・ぐすん
ミスティ ・・・ ・・・きょ、今日はお、美味しいモノでも作りますわね?
ラウル ・・・ ぐすん・・・う、うん。
ってなことで、緋色火花でした。




