139話 精霊剣
お疲れ様です。
キャンプで肉を食べたい今日この頃な緋色です。
もうそんなに冷え込まないのかな~っと思っていたのですが、
来週辺り冷え込みそうですね^^;
風邪をひかないようにして下さいね^^
それでは、139話をお楽しみ下さい^^
「・・・な、何だっ!この・・・禍々しい気配はっ!」
緊張で張り詰めた悠斗は、その力の強大さに拳を握り締めるのだった。
勇者の体から立ち昇るモノが、
かつて悠斗が経験してきたモノと同じだと感じると、
咄嗟に「コォォォォォっ!」と、気道を発動させ身構えた。
(これは、魔と同じ気配・・・
まさかこの世界にも居た・・・とはね・・・やれやれ)
立ち昇るモノが勇者から消えると、チタニアは悠斗に視線を向けた。
「ほぅ~・・・これだけの瘴気に耐えられる人族も居るのですね?
犬・・・これが何かを知っている・・・と、言う事かしら?」
「ああ・・・知っている。俺の世界にも似たようなモノが居たからな」
その悠斗の言葉にチタニアは驚いた顔をして見せたのだった。
「・・・お前の世界にも・・・居るとは・・・ね」
少し考え始めたチタニアを見た悠斗は、
ククノチの安否を心配し、念話を送った。
(ククノチっ!大丈夫なのかっ!ククノチっ!)
(・・ターっ!・・・・ず・・・だい・・・だっ!)
何かに邪魔をされ上手く念話が繋がらなかったが、
安否の確認が出来た事で、一応落ち着くことが出来た。
(さて・・・どうするかな・・・?
直接接触出来れば、何とかなるかもしれないが・・・)
そう考え始めた時だった。
チタニアが考え始めた事をいい事に、悠斗は油断してしまっていた。
突然現れた黒い大きな影に悠斗は蹴り飛ばされた。
「ぐはぁっ!」
数メートル程飛ばされた悠斗は、
地面を滑りつつ左手を着き飛び上がると、そのまま体制を整え着地した。
「痛っ・・・」
鈍く痛んだ左手に違和感を覚えつつ、蹴り飛ばしたその影を見ると、
その黒い大きな影は、変わり果てた勇者だった。
「寿限無・・・お、お前なの・・・か?」
そう言葉を漏らした時、悠斗を嘲笑う声がした。
「ハァ~ッハッハッハッハッ!流石のお前も・・・驚いたのではないか?」
「・・・ちっ」
舌打ちする悠斗は、ニヤつくチタニアに口を開いた。
「・・・あいつをどうした?」
「あいつ・・・?ああ~♪先程まで居た勇者の事ですか?」
「・・・消えたのか?」
変わり果てた姿になった勇者に視線を移しながらそう言った。
「・・・フフフ。正直にお答えするとすれば・・・
まだ消えてはおりませんわよ?
あのクズには、この子の養分になってもらわないと・・・フフフ」
(しかし、おかしいですわね?本来ならもうとっくに・・・?)
(こ、こいつ・・・素直に答えたって事は・・・その理由は?
俺の戦意を削り取り、手出しさせにくくする事・・・。
いや、違うな?助け出せると言う可能性を俺に見せ、
絶望させる事が・・・こいつの目論見・・・か)
悠斗がピクリと動きかけた時、チタニアがこう言った。
「あら?攻撃するのですか?まだあのクズは生きておりますわよ?
フフフ、1ついい事をお教えしましょうか?」
(・・・ほら、来た)
「あのクズはこの子の養分にするのには、
もう少し・・・時間がかかるのですわ♪
ですから・・・
フフフ、助け出す事は可能・・・かも、しれませんわね?」
チタニアの言葉を聞きながら、顔は俯き、
体を震えさせていたのだった。
(ミツチ・・・やってもらいたい事がある)
(ほぇ?どうしたのマスター?)
(実はさ・・・)
悠斗はミツチと会話しつつ、少し間を置き考えて見せると・・・。
「はぁ~、わかった・・・わかったよっ!」
不貞腐れつつそう言い放つと、武器を捨て両手を上げて見せていた。
「あら?意外とお優しいのですね?
こんなクズ勇者の為に・・・己を差し出すと言うのですか?」
「ふんっ!何とでも言えよっ!絶対に許さないからな・・・」
「フフフフフフ・・・ハッハッハッハッ・・・
アァ~・・・ハッハッハッハッ!
す、素晴らしいっ!素晴らしいですわっ!異世界人っ!
素直に負けを認められるその潔さっ!
あの憎たらしい創造神にも見習ってほしいモノですわね~♪
アァ~ ハッハッハッ!」
「あいつをあんまり虐めてやるなよな?」
「フフフ・・・本当にお優しい方ですわね♪
いいですわ♪あのクズと一緒にこの子の養分とおなりなさいな♪」
変わり果てた勇者の成れの果ては、チタニアからの合図を受け取ると、
黒い触手を伸ばし、悠斗に絡みついたのだった。
「・・・ぐっ!」
ズルズルと引きづられると、やがて勇者の体の中へと、
徐々に取り込まれて行った。
それを見ていたチタニアは、再び高笑いし始めた声が聞こえた。
(ククノチっ!聞こえるかっ!)
(マ、マスターっ!今度はしっかりと聞こえるぜっ!)
(良かった・・・やっぱり直接だと繋がったか)
安堵の息を漏らした悠斗だったが、ククノチはそうではなかった。
(マスターっ!何安心してんだよっ!)
怒鳴るククノチだったが、悠斗は笑いながら謝っていた。
そして悠斗は話を切り出した。
(ククノチ、あのバカは生きているのか!?)
(あ、ああ・・・だけど養分ってのは本当の話みたいだぜ?
本当に少しずつだけど溶けているみたいだ)
(・・・こいつから離す事は可能か?)
そうの悠斗の問いに、ククノチはニヤついて見せたのだった。
(へっへーんっ!飲み込まれる瞬間よっ!
このバカを精霊力で覆ってあるから問題ねーぜっ!)
(お前・・・すげーじゃんっ!
だから消化が遅かったりするんだな・・・)
(ははは、って言うかよ~・・・本当は違うんだ・・・俺はたださ~
あの聖剣に宿っている光の精霊に力を貸しただけなんだ・・・)
そう言うとククノチは悠斗に謝ったのだが、
悠斗は謝る必要はないとそう言った。
(って事は・・・分離は出来るのか?)
(ああ、それは出来るぜ?
あの女神がよ~、こいつの背中に卵を埋め込んでいたみたいだから、
それが体と離れた今なら分離させる事は可能だと思うぜ?
それによ?もうこの体とは全く別物みたいだから大丈夫なはずだ。
だけど1つだけ問題があるんだよな~)
(問題?)
(ああ、こいつの腹の所によ・・・。この魔物の核があるんだよ。
これをどうするか・・・なんだけど・・・
あっ、それと・・・ミツチはどうしたんだよ?)
(えっと~・・・実はさ?)
悠斗の説明を聞いたククノチは納得した様子を見せていた。
そして・・・。
(こいつにへばり付いている核って、動いたりするのか?)
(いや?こいつは動かねーぜ?)
(問題はだ・・・。その核がある限り、こいつは切り離せないって事か)
(ああ、核とこいつは繋がっているから、
強引に切り離すとどうなるかわからないぜ?)
(・・・にゃるほど♪)
そう言った悠斗に違和感を感じたククノチは・・・。
(で、でもよマスター?マスターが捕まっちまったから・・・)
その問いに悠斗は笑って答えたのだった。
(はっはっはっ!任せろっ!)
そんな会話をククノチとしている時だった。
チタニアは悠斗達が溶けていく様を眺めていたのだが、
その消化の遅さを不思議がっていた。
(どう言う事なの?何故こんなに消化が遅いのよ・・・?
・・・勇者が不味くて消化不良を・・・?
フフフ、まさかね?・・・でも少し調べる必要があるみたいですわね)
そう考えるとチタニアは勇者の成れの果てへと近づいた。
そして手を伸ばし黒い勇者の成れの果てに触れようとした時だった。
「・・・見せ・・・か・・・」
黒い慣れの果てと化した勇者の体の中から、
薄っすらと声が聞こえたチタニアは、その声を聞き取ろうと、
耳を体に近づけた時だった。
「気道・纏術・内経振槍っ!」
「!?」
その体の中から聞こえた声がはっきりと聞こえた瞬間、、
迂闊にも油断しきったチタニアは、
その体から突き出た悠斗の拳をまともに喰らった。
「ベキッ!」と、鈍い音をたて吹き飛んでいくチタニア。
少しして飛ばされた方向から、瓦礫の崩れる音が響いていた。
「あの女神・・・当たったのか?ラッキーだな♪」
そう口を開きながらも、その体から必死に脱出を試みた。
(もっと精霊力を振動させれば・・・
俺の「振槍」が効果あったと言う事は・・・何とかなるんじゃ・・・)
悠斗が取り込まれなかったのは、偶然にもククノチたちと同じ方法だった。
精霊力を纏う事で、吸収されないようにしていたのだった。
(まぁ~でも、それも一時しのぎだけどね。
当然対策を取っていても、時間の問題だろうしな)
精霊力は制御し、体に纏う膜を激しく振動させその中から脱出した。
「や、やっと抜け出せた・・・ははは・・・つ、疲れたな」
そう笑みを浮かべた悠斗だったが・・・。
「グゥォォォォォォっ!」と、
急に動き出した黒い成れの果ての攻撃を捌いていった。
「きゅ、急に、なんなんだっ!」
一度距離を取った悠斗に息をつかせる暇も与えず、
触手での攻撃を仕掛けてきた。
「遠距離になると触手かっ!しかも・・・再生するのかっ!」
悠斗は捨てた剣を拾いつつ・・・「気刃剣っ!」
(やっぱのこいつ俺達の世界に居た魔と同じタイプだなっ!
でも・・・再生がウザいっ!・・・あぁーもうっ!)
悠斗は迫る触手を斬り捨てていく。
「か、数が多いっ!め、面倒臭せーなっ!」
(まぁ~でも、一応切り札はあるけどね・・・)
そう考えた時だった。
ガラガラっと瓦礫が崩れた音がしたかと思えば、
その中からチタニアが顔を歪ませ立ち上がってきたのだった。
「よ、よくも私の顔に・・・」
触手を斬り払いつつチタニアを警戒していると・・・。
「女神である私の顔によくもぉぉぉぉっ!」
ブチギレたチタニアは物凄い速度で迫ってきた。
だが、チタニアの声を聞いた成れの果ては、
触手の攻撃を止め、チタニアを見ていた。
(こいつ・・・)
今度は物凄い剣幕で攻撃を仕掛けてくるチタニアの対処に追われた。
「よくもっ、よくもっ、よくもぉぉぉぉっ!」
悠斗の拳で下顎が変形し砕けてしまったチタニアは、
その怒りで我を忘れ夢中で攻撃してきたのだった。
(やっぱり憑依していたか・・・だけどどっちだ?
本体か・・・分体か・・・ちっ!面倒臭いなぁーっ!)
悠斗のロングソードとチタニアのロングソードがぶつかりあった時だった。
「グォォォォォォっ!」と、声を発した黒い成れの果ての声に、
怒り狂っていたチタニアの動きが止まった。
距離を取り振り返るチタニアは、
黒い成れの果てと化した勇者の元へと戻った。
そして変形したその顔を更に歪めて笑みを浮かべて悠斗を見ていた。
「・・・この中に居る勇者がどうなってもいいのですか?」
「・・・ちっ」
「人質が居る事を忘れないでほしいですわね?」
したり顔で笑みを浮かべるチタニアに、悠斗はある作戦を思いついた。
頭を掻きむしりながら俯き、悠斗はチタニアの目の前まで来たのだった。
(あの魔の体の中で、どんな体制で捕らえられているか・・・
だったら・・・手伝ってももらうか・・・)
俯いた悠斗は薄く笑っていた。
そして・・・。
「なぁ?本当にその中にあいつは居るのか?」
悠斗の問いにチタニアは首を傾げていた。
「何を訳のわからない事を言っているのですか?
貴方は先程中で出会っているはずよ?」
「いや・・・?全くわからなかったぞ?
まだ生きているかどうかもわからないヤツに、
流石に命を張る訳にはいかないだろ?」
チタニアは徐に、成れの果ての中に手を入れた。
「・・・あら!?居ない・・・?」
そう言いながら腕を奥まで突っ込んだ時だった。
笑みを浮かべたチタニアは悠斗にこう言った。
「居ましたわよ?さぁ・・・どうするのです?」
「・・・あいつが見えてないのに俺が答える訳ないだろ?」
悠斗はロングソードを構えると、今度は魔力を流していった。
「魔力剣っ!」
悠斗の魔力が宿った剣をチタニアに向けて威圧を放った。
「・・・くっ!」
悠斗の威圧で少し呻いたチタニアだったが、
怒りを抑えながら勇者の腕を出して見せた。
「これで・・・おわかりかしら?」
「・・・・・・・」
無言で威圧を放ち続けた悠斗に、チタニアは苛立ち始めると、
「ズルっ!」っと、そのまま勇者の上半身を出して見せた。
「これでわかりましたわよね?
このクズが私達の手の中に居る以上、貴方は従うしかないのですよ?」
「・・・・・・」
無言になる悠斗にチタニアは苛立ち始めると、
声を荒げながら話した。
「どうするのですっ!貴方にはもうっ!選択肢などありませんわっ!
それとも・・・仲間であるこのクズを見捨てるとでも?」
「・・・・」
声を荒げたチタニアの問いに、
またしても答えない悠斗に溜息をついた時だった・・・。
「うぉりゃぁぁぁっ!」
「バキっ!」
「ピシッ!パキッ!」
突然で何の前触れもなかった・・・。
気合の入った悠斗の拳が、
黒い慣れの果となった勇者のみぞおちに炸裂し、
勇者の腹に癒着していた核を砕いたのだった。
「・・・えっ!?あ、あなた・・・い、一体・・・何・・・を?」
拳をめり込ませた悠斗は冷笑を浮かべていた。
「な、仲間を・・・仲間を見捨てると言うのですかっ!?」
半ば混乱しているチタニアは顔を引きつらせていた。
すると、悠斗は落ち着いた口調で言い放った。
「こいつは俺達の敵だ・・・助ける義理は・・・ない。
だがな・・・チタニアっ!」
悠斗のその言葉と冷たく突き刺さるその殺気に、
チタニアは思わず掴んでいた勇者の腕を離してしまったのだ。
「ここだっ!やるぞっ!」
悠斗が叫んだ声に、悠斗の体の中で準備していたミツチが応えた。
(了解っ!マスターっ!マスターとのパワーライン接続っ!
精霊力完全解放っ!はぁぁぁっ!)
「!?」
悠斗の叫びで硬直したチタニアは、
ただソレを見ている事しか出来なかった。
黒い成れの果てと化した勇者の中に、
再び引きずり込まれようとしていた勇者の腕を掴むと・・・。
「来いっ!精霊・・・剣っ!」
そう声を発した悠斗の左手には、
光り輝く緑色をした剣が握られていたのだった。
その精霊力の塊がチタニアの動きを封じ込める結果となった。
(くっ!精霊力がごっそり持って行かれたっ!)
※ 精霊剣 ・・・ 悠斗の中に宿る水のスピリットであるミツチが、
己の精霊力と悠斗の精霊力を使い作り出した剣。
柄や刃も存在しない、ロングソード。
淡く緑色の光が輝く剣は、邪悪なモノに有効。
だがその威力を含め、精霊力の消費が高く、
長時間の維持、又は、その使用時間に限りがある。
今回の場合だと、最大2分間のみ使用可能。
「ズサッ」と、深く精霊剣を突き刺すと、
悠斗はそのまま真上へと斬り上げた。
「はぁぁぁっ!」
「グゥギァァァァ!」
叫び声をあげる黒い慣れの果ての勇者。
悠斗は腕を引っ張ってみたが、
捕らわれている勇者はびくともしなかった。
「ちっ!まだ無理かっ!核を潰してもまだっ!
だかな・・・精霊力っ!完全解放っ!はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
悠斗も精霊力を完全解放し、
ありったけの精霊力を解放させ再び突き刺すと、
精霊剣が突き刺さった黒い勇者の成れの果ての腹部から、
白く変色して行った。
「今ならっ!せぇーのっ!おらぁぁっ!」
悠斗は精霊剣を抜く反動を使い、勇者を引きずり出したのだった。
ドサっと落ちた勇者を抱えた悠斗は、そのまま後方へと飛び距離を取った。
「ふぅ~・・・こ、これで何とか・・・」
そう一息ついた時だった・・・。
(マ、マスター・・・も、もう限界・・・よ)
疲れ果てた声を漏らしたミツチは、そのまま意識を失ってしまった。
それと同時に、手にしていた精霊剣が消失し、悠斗も片膝を着いた。
(あ、ありがとな、本当に助かったよ・・・ミツチ
練習していた時よりも、ごっそり持って行かれたな・・・)
ミツチの事を想っていた悠斗の視界に、
禍々しい力を垂れ流したチタニアが、
悠斗を怒りの形相で睨んでいたのだった。
「よくも・・・よくも、私の可愛い坊やをっ!」
視線を黒い慣れの果ての勇者に移すと、真っ白になったモノが、
風に吹かれ形を崩して消えて行く姿を見たのだった。
「・・・さて、クズ女神・・・。決着、着けようか?」
ロングソードを取り出した悠斗は、静かに構えるのだった。
ラウル ・・・ んー。僕の世界の住人は、基本的に悠斗君に迷惑をかけるのか?
ミスティ ・・・ た、確かに・・・そ、そうとも取れますわね?
ラウル ・・・ もし悠斗君にそう言われてしまったら・・・ぼ、僕はっ!
ミスティ ・・・ で、でもっ!それは別にラウル様が悪い訳ではっ!
ラウル ・・・ ど、どうしよう・・・?あははははは
ミスティ ・・・ わ、私も微力ながら弁護のほどを・・・。
ラウル ・・・ あっ!そうだっ!・・・某ゲームメーカーみたいな事を言おうっ!
ミスティ ・・・ えっ!?ど、どう言う事なのでしょうか?
ラウル ・・・ フッフッフッ・・・そういう仕様なのです♪
ミスティ ・・・ た、確かに有効だとは思われますが・・・。
ラウル ・・・ ふむ。今日からこの言葉をカミノ言葉と認定しよう♪
ミスティ ・・・ ・・・後でどうなっても知りませんわよ?
ラウル ・・・ ・・・あははははorz
ってなことで、緋色火花でした。




