表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移 ~魔を狩る者~  作者: 緋色火花
第二章 港町・アシュリナ編
171/404

138話 目覚め

お疲れ様です。


少し手直ししていたら・・・少しアップか遅れました><

と、言う事で今回の話です。


コメディーパートが終わったので、

これから本格的な戦いとなります。



それでは、138話をお楽しみ下さい。

「お前は、もう帰れぇぇぇぇっ!!」と、絶叫する悠斗の姿があった。


「・・・まだなの?」と、律儀に待つ運命神の姿もそこにあった。


「お前・・・空気読めっ!」

「・・・す、すみません」

(空気を読むって・・・な、なんだ?)

悠斗が溜息を吐く中、チタニアが呆れた表情を見せていた。

「わ、悪い・・・仕切り直しだ」

「・・・もうお遊びはなくてよ?」


再びチタニアは魔力を(たぎ)らせ始めた。

「いいか・・・寿限無。もう遊びは終わりだ、真剣に行くぞ?

 俺がいつまでもお前のフォローをすると思うなよ?」

「わ、わかった・・・。俺だって勇者だ・・・何とかするさ」


(ククノチっ!)

(は、はいっ!な、何だよ・・・マスター?)

(悪いがこのバカ勇者に入って守ってやってくれっ!)

(何でだよっ!こいつは敵だろ!?)

(まぁ~な?何故か憎めないヤツだからな・・・頼むよ)

(わかったよ~・・・でも、ミツチだけで制御出来るのかよ?)

(ははは・・・何とかやってみるさ)

(わ、わかった・・・でもっ!マスターがヤバくなったら、

 こいつは見捨てて戻って来るからなっ!)

(・・・わかったよ)

(ちぇっ!)


ふてくされながらもククノチは悠斗の体から飛び出し、

勇者の体の中へ入って行った。


そして、こちらの様子を伺っていたチタニアは、

不意にしゃがみ込み地面に触れた。


「フフ、まずは挨拶程度よ♪受け取りなさいっ!グランドランスっ!」

地面に魔力を流し込むと、悠斗達の足元から杭が飛んできた。

「うをっ!」

「ヒャァーっ!」

何とか避けた2人だったが、その攻撃は繰り返されていった。


「このままじゃ、いい的だっ!二手に別れるぞっ!」

「わ、わかったっ!」

チタニアを左右から挟み込むように移動すると、

勇者は切り込み悠斗は火球を放った。

左右から攻めてきたチタニアは、ニヤリと笑みを浮かべていた。


「フフフ・・・そんな初歩的な作戦に一体どのような意味が?」

勢いよく突進してくる勇者と、悠斗の火球の距離を計ると、

流れるように移動し、その攻撃で勇者が自爆するように仕向けた。


そのチタニアの動きと迫る火球に、

一瞬驚きを見せ硬直したかのように見せた勇者は、薄く笑っていた。

(クトゥナほどでないが、俺だってそこそこのモノだぜっ!)

瞬身(しゅんしん)っ!」

悠斗の火球が命中する寸前、一瞬にしてチタニアの前に移動してきた。


「なっ!?」

「うおりゃっ!」

透かさず勇者は横薙ぎにチタニアを一閃した。

「おのれっ!」

油断したチタニアだったが、身を後方へ(ひるがえ)すと、

着地したのと同時に片腕を勇者に向けて振りかざした。


すると、「バシュッ」と言う音と共に、風が刃となり勇者を襲った。

「その手は喰らわないぜっ!」

勇者は腰を落とし、聖剣・デスティニーを構えると、

魔力を剣に込め、光の刃を作り出しぶつけた。

「キーンっ!」と、

まるで高品質な木炭同士をぶつけたような音が響くと、

2つの風の刃は相殺された。


「ほぅ~・・・先程私が与えた力ですわね?」

勇者は不敵に笑うと喉を掻っ切るポーズをして見せた。

「・・・私に逆らうのですか?」

「はっはっはっ!そんな余裕がお前にあるのかよっ!

 えぇ~?高飛車な女神様よっ!」

「!?」


チタニアはふと、自分の周辺が微妙に明るくなっている事に気付いた。

「なっ!何ですかっ!今度はっ!」

振り返ったチタニアは、

悠斗がバスケットボール程の火球を出現させ笑っていたのを見た。

「いけぇぇぇっ!火球-Ⅱ」

「!?」

悠斗が投げた火球がチタニアに迫るのだが、

その速度はあまり速くはなかった。


そして余裕の笑みを浮かべたチタニアは、

数歩ほど歩くと悠斗を嘲笑(あざけわら)った。

「フフフ・・・ア~ハッハッハッ!」

だが、チタニアの嘲笑など気にする事なく笑みを浮かべると・・・。


投げた方向に手を突き出し言葉と同時に握り締めた。

「喰らえっ!爆散っ!」

「ドーンっ!」と、手前で爆発した火球はチタニアに数発直撃した。

「ぐふっ・・・わ、私とした事がっ!」

ダメージは低いが人族に喰らった事に苛立ちを見せていた。

だが、悠斗の攻撃はそれで終わる事はなかった。


チタニアに向かって、握り締めた拳に魔力を込め両腕を広げると、

爆散し四方八方に飛び散った火球達が、まるで意思を持つかのように、

その場に静止したのだった。

「!?」

「これで終わるとでも思ったのか?」

薄く笑った悠斗は、左腕をチタニアに向けて振り抜くと、

静止していた火球が速度を上げチタニアへと迫ってきた。

「えぇぇぇいっ!」

鬱陶しそうに唸ったチタニアはその火球を次々と躱して行くが、

その火球の追尾に終わりはなかった。

「鬱陶しいですわねっ!でも・・・この数では・・・ね」

悠斗の火球を躱しつつ見下した目で悠斗を見ていたのだった。

「・・・お前は俺に、誘導されていたんだよ」

冷笑を浮かべた悠斗は広げたままの右腕を勢いよく振り降ろした。


「喰らえ・・・追尾型火球弾っ!」

「こ、これは・・・罠・・・か」


悠斗の操っていた火球は、チタニアを誘導させた言わば・・・囮。

本命は地面スレスレに待機させていた火球の方だった。


迫り来る火球はその形状を変え、チタニアへと突き刺さって行く。


「ドッドッドッドッドッ!」と、まるで機関銃で放ったかのように、

鈍い音がチタニアが居た場所で響いていた。


それをまるで子供のような表情で見ていた勇者が、

その光景に興奮し悦に浸っていた。

「すげーぜっ!ユウト兄貴ーっ!やったぜっ!」


ほんの・・・ほんの一瞬だった。

「フッ・・・この程度でっ!」

「!?」

突然チタニアの声が、勇者の背後から聞こえてきたのだ。

慌てた勇者は逃げずに条件反射で振り返ってしまった。


「バッ、バカっ!逃げろっ!」

油断し、突然の出来事過ぎた勇者に、悠斗の声は届かなかった。

「消えろっ!下郎っ!」

「クッ、ククノチーっ!寿限無ーっ!」

超・至近距離からチタニアは魔力弾を放った。

「ドカーンっ!」と、土煙を巻き上げ視界が閉ざされてしまった。

「ちっ!バカヤローっ!」


チタニアの魔力弾の威力は、一度見てその恐ろしさがわかっていたのだ。

だからこそ・・・。

悠斗はその光景に顔を(しか)めていた。

だがその時だった。

まだ視界の悪い土煙の中で、一筋の輝きが見えた。

(あ、あれ・・・は!?)


「なっ、なんだと・・・!?」

そう声を発したのは、チタニアだった。

次第に土煙が晴れた時、勇者を守るように聖剣・デスティニーが、

勇者の盾となり、その身を守っていたのだった。


「な、何故・・・わ、私の与えた・・・剣が!?」

勇者はまだ身を丸めていたが、

何も起こらない現状に恐る恐る目を開いた。

「あ、あれ・・・?何も・・・あれ?」

その様子に悠斗は安心し胸を撫で下ろした。


勇者は目の前で愕然(がくぜん)としているチタニアを見上げると、

慌てて剣を取り「瞬身」で悠斗の隣に着地した。


「はぁ、はぁ、はぁ、ユ、ユウトの兄貴・・・。

 お、俺に・・・一体何が?」

悠斗はその安堵から軽く息を吐くと、勇者に事の説明をした。

「えぇぇぇっ!け、剣が・・・俺を・・・?俺を守ったぁぁぁ!?」

驚きのあまり大声で叫んだ勇者は、

悠斗に「うっさいっ!」と怒鳴られ、今日何度目かの拳を頭に落とされた。


「い、痛いっスよ・・・容赦ねーんだから・・・」

文句を垂れる勇者だったが、

その痛みを忘れ聖剣・デスティニーを見つめていた。


(こいつが俺を守った?・・・待て待てっ!

 この剣って・・・意思とかあったのか!?

 い、いや・・・今まで一度もそんな事は・・・)


すると、勇者の中に入っていたククノチから念話が流れてきた。

(マ、マスターっ!)

(ク、ククノチっ!お前・・・大丈夫なのかっ!?)

悠斗の心配する声に、ククノチは何故か照れていたのだった。

(ああ、そ、そうだ・・・。

 マスター、この聖剣にさ・・・光の精霊が宿ってるみたいだぜ?)

(はい?・・・まじか!?)

(おうともっ!大まじだぜっ!)

(わ、わかった・・・。とりあえず後で話を聞く・・・それでいいか?)

(らじゃっだぜっ!)


ククノチの話に今はどう反応していいかわからない悠斗は、

防御がなんとかなるなら・・・と、頭を切り替え集中した。


そして(いま)だ、驚きを隠せず狼狽(うろた)えている勇者に、

悠斗が口を開いた。

「寿限無・・・油断するな?次は本気で来るぞ・・・」

剣から視線をチタニアへ向けた勇者は、

体から溢れ出す禍々しい魔力に喉を鳴らしていた。


「な、何だよ・・・あれは!?

 あ、あんな魔力・・・神の御業(みわざ)じゃねーよ・・・」

驚愕する勇者だったが、悠斗は平然とその光景を目に焼き付けていた。

そして・・・、悠斗はその禍々しい魔力に覚えがあった。


(ははは・・・やっぱそうか。

 通りで・・・匂うはずだ・・・やれやれ)


半ば呆れた表情を浮かべる悠斗を横目で見ていた勇者が居た。


(こ、この人・・・何でそんなに平然としてんだよ。

 おかしいだろ?ただでさえ、相手は神なんだぞ!?

 い、いや・・・平然としているんじゃねーな・・・。

 これは楽しんでいる顔だ・・・。

 未知なる強さに立ち向かう時に見せる顔だ。

 俺は・・・もう、忘れちまった感覚だな・・・羨ましいぜ)


憧れにも似た感情に勇者は苦笑していたが、

悠斗の瞳はチタニアを捉えて離さなかった。


「寿限無っ!あいつはこれで本気になったはずだ・・・。

 もし、戦いに付いて行けなくなったと感じたら・・・

 迷わずすぐに離脱しろっ!」


「あ、ああ・・・わ、わかった、そうするぜ」

「もしそうなったら・・・、悪いが俺の仲間達の加勢をしてやってくれ」

「・・・ああ、その時は必ず加勢すると誓う」

「・・・頼んだ、じゃ・・・行くかっ!」

「・・・おうっ!」


悠斗と勇者は気合を入れるとチタニアの攻撃に備えた。

「・・さ・い・・・」

ポツリ、ポツリとチタニアから声が漏れ出した。

その聞き取れないつぶやきに、2人は緊張を走らせた。


「・・・こ、この私が・・・たかが人族程度の虫ケラに・・・

 ラウルの犬ばかりか・・・このクズ勇者にまで・・・

 遅れを取る事になるなんてね・・・フフフ・・・。

 今直ぐ・・・殺してあげるわ。

 死んでもまた殺してあげる・・・」


まるで邪悪に満ちたその魔力に、勇者はだらりと汗を流した。

その時チタニアの筋肉がピクリと動くのが見えた悠斗は、

勇者に声をあげた。


「・・・来るぞっ!」

「おうっ!」

チタニアは歪んだ笑みを浮かべながら魔力弾を放ちつつ

大鎌を取り出し悠斗達に接近してくる。


「行くぞっ!雷身っ!」

「おうっ!瞬身っ!」

ブブゥンと雷を纏った悠斗。

そして瞬身により少し離れた場所に移動した勇者は・・・。


「来いっ!雷帝っ!我が身に纏て力となれっ!」

「バリバリっ!」と、落雷を受けた勇者は、

「リヒテンベルク図形」を刻みつつ雷帝を纏った。

「ぐぉぉぉぉぉぉぉっ!」

落雷を受けた事によって、激痛が全身を駆け抜けていく。


落雷を受けている間、悠斗がチタニアを引き付けていた。

(あいつの雷帝は時間がかかるからな・・・

 ははっ・・・全く世話をかけさせてくれるよ)


苦笑しながらもチタニアと激しくぶつかり合い、

何度も剣を交差させて行く。


そんな2人の戦いを見ていた勇者だったが・・・。

(あれ!?激痛があまり・・・)

そう感じつつも勇者はデスティニーを抜き、

いつでも動けるよう構えた。


悠斗とチタニアは一度距離を取ると、相手の呼吸を見計らい、

攻撃するタイミングを待っていた。


「瞬身っ!」

「!?」

突然聞こえたその声に、チタニアは反応を示した。

そして勇者が近距離に現れるだろうと予測し、

反撃を目論んでいたのだが・・・。


「ど、どこよっ!?」

そう、チタニアが叫んだ時、先程居た場所からそう離れていない所に、

勇者は移動していた。

「フッ、かかったな?」

勇者がそう笑うと、チタニアに接近したのは悠斗の方だった。

「お、おのれっ!(はか)ったなっ!」

「・・・引っかかるお前が悪いのさ」

「!?」


ポツリと漏らした悠斗の言葉に、背筋に悪寒が走った。

「はぁぁぁっ!一閃っ!」

ロングソードで薙いだ悠斗だったが、黒く禍々しい魔力の壁に阻まれた。

「なっ!?・・・ちっ!」

壁に阻まれた悠斗をニヤリと醜い笑みを浮かべたチタニアは、

大鎌を振りかぶるとそのまま悠斗に振り降ろすのだった。


「あ、兄貴っ!」

叫ぶ勇者の声が悠斗に届く刹那の瞬間、

悠斗はバックステップで回避しながら、

左手に持っていたショートソードをチタニアの大鎌に向け投げた。


「ガキンっ!」と、ショートソードが大鎌にぶつかると、

悠斗のショートソードは砕けその大鎌は上へと弾かれた。

「ちっ!犬がっ!」


「ふぅ~・・・ヤバかった・・・」

汗が一筋たらりと流れた悠斗にチタニアは口を開いた。

「フフ・・・命拾いしましたわね?」

「はは・・・そうでもないさ」

「負け惜しみとは・・フフ、何とも情けない事ですわね?」


見下すように悠斗を冷たい眼差しで見つめていた。

「・・・お前が本気を出していないのに、俺が本気を出せるかよ」

「!?・・・な、何故、それを!?」


悠斗の言葉に動揺するチタニアは、それ以上の言葉が出なかった。

「・・・お前・・・それ、擬体だろ?」

「!?」


悠斗とチタニアのやり取りに、勇者は全く理解出来なかった。

(い、今・・・ギタイって言ったか!?

 ギタイって、何だよ・・・そんなの、今まで聞いた事ねーぜ)

困惑する勇者を尻目に、2人の会話は続いていった。


「ど、どこで・・・どこでそれを知ったのですか!?

 ああ~・・・ラウル・・・ですわね?」

「・・・ああ」


「そう言う事・・・なのね?

 擬体について、どこまでご存知かは知りませんが、

 私の擬体は、フフ、特別なのよね♪」


「それはどうでもいいんだけどさ・・・。

 あいつの仲間のリアーナって人は・・・どうしたんだ?

 お前がずっと、擬体を使っていたとは思えないからな~・・・。

 そんなに暇って訳でもないだろうし、その人はどうしたんだっ!」


それを聞いていた勇者は、リアーナが入れ替わっていた事に気づかず、

今まで()()うと過ごして来た事に愕然としていた。


(えっ!?い、いつだ・・・いつ変わった?

 いつの間に・・・う、嘘だろ?全く気づかないなんて・・・

 俺は・・・一体、仲間の何を見て来たんだ・・・)


動揺する勇者が悠斗の視界には入っていたが、

今はリアーナの生存を確認する事を優先した。


「フフフ・・・ちゃんと生きてますわよ?

 居所を教えて差し上げても良いのですが・・・困りましたわね~?

 今は記憶を全て無くしてしまわれているのですよ?

 悲しいですわね?ひどいですわね?

 フフフ・・・誰に何をされたのやら・・・ハァ~ハッハッハッ!」


悠斗達の表情の歪みを見たチタニアは高笑いを始めた。

「てっ・・・てめぇぇぇぇぇっ!リアーナに何をしたぁぁぁっ!」


雷帝モード全開で勇者はチタニアに斬りかかった。

「ガキンっ!ガキンっ!」と、勇者とチタニアの剣が何度も衝突していた。

「落ち着けっ!こいつの挑発に乗るなっ!」

悠斗は明らかにチタニアの挑発だと気付いたが、

勇者はそうではなかった。


勇者にとって仲間は家族であるが(ゆえ)

感情が爆発したのだった。


「うるせぇぇぇっ!黙れっ!俺の仲間なんだぞっ!

 俺の身内をっ!俺の家族をっ!

 貴様ぁぁぁっ!ぶっ殺してやるぅぅぅっ!」

感情が爆発した勇者は、魔力の制御も忘れ、

チタニアに襲いかかって行く。


「ちっ!バカ勇者がっ!チタニアの思うツボだぞっ!」

口ではそう言ってはいるが、勇者の感情と行動は充分に理解していた。

それは悠斗の過去にも、同じ事があったからだった。


(俺のじぃーちゃんの時も、そうだったんだろうな・・・

 そして・・・穂高の時もまた・・・)


昔を思い出した悠斗は顔を引きつらせていたが、

それでもこのまま勇者の暴走を放っておく事は出来なかった。


「やめろぉぉぉっ!」

そう叫びながら悠斗は勇者とチタニアの2人の剣撃の中へ飛び込んだ。

「ガキンっ!」と、勇者の剣を、

再び取り出したショートソードで受けつつ、

ロングソードでチタニアの大鎌を受けると、そのまま蹴り飛ばした。

「あぐぅっ!」


「おいっ!目を覚ませっ!」

「うるせぇぇぇっ!邪魔をするならっ!お前も殺すぞっ!」

血走った勇者の目は、明らかに先程とは違っていた。

一瞬その事に気付いた悠斗だったが、

勇者に隙を突かれ蹴り飛ばされた。


「ぐはっ!」

ゴロゴロっと地面を転がり顔を上げたその時だった。

チタニアに攻撃を仕掛けたはずの勇者は、剣を落とし、

そのチタニアの手で首を捕まれ身動き1つ出来なくなっていた。


「寿限無ーっ!」

そう悠斗が叫ぶ中、チタニアの顔は歪み笑みを浮かべていた。


「フフフ・・・ハァ~ハッハッハッ!

 やっと・・・捕まえましたわ♪

 あれだけ(あお)ったんですもの・・・フフフ。

 (わたくし)は、この時を待っていましたのよ?

 貴方達の憎悪が・・・限界を迎えるのを心待ちにしておりましたの♪

 まぁ~、あの男には効果がありませんでしたが、

 フフフ、流石私が選んだクズ勇者ですわ~♪

 期待通りの行動をして頂き、このチタニア・・・

 今、まさに~っ!感無量ですわっ♪」


チタニアは手の中でだらりと力無く項垂れる勇者を見ていた。

そしてその視線を悠斗に向けて「ニヤ~」っと、

薄気味悪い笑みを浮かべ舌舐(したなめず)りをしていた。


「お前・・・こいつに何をしやがったっ!」

「フフフ・・・今にわかりますわ♪

 もう少し・・・。もう少しだけ、そこでお待ち下さいな♪」


悠斗の中で、今までにないほどの警鐘が鳴り響いていた。

「・・・その手を離せ」

呻くように発しながら、悠斗はゆらりと立ち上がった。

「・・・おい、そこのクズ女神・・・その手を離せっ!」

悠斗の怒りが頂点に達しようとした時だった。


「さぁ~・・・私の可愛い坊や・・・目覚めなさいな?

 クズ勇者に宿した負の王よ・・・目覚める時は、今なのですよ?」


チタニアの問いかけに応えるように・・・。

勇者の体からドス黒い負の魔力が渦を巻いて立ち昇って行くのだった。


「・・・な、何だっ!この・・・禍々しい気配はっ!」

緊張で張り詰めた悠斗は、その力の強大さに拳を握り締めるのだった。




ラウル ・・・ うむっ!今回はシリアスだね~♪

ミスティ ・・・ 悠斗さんも何か思案していらっしゃるようですし・・・。

ラウル ・・・ だね~♪彼はただで転ぶ事はしないからね~

ミスティ ・・・ ですが困りましたわね?勇者が我を失うとは・・・。

ラウル ・・・ 全くだね・・・。悠斗君にどれだけの負担が・・・><

ミスティ ・・・ 私達がもっとしっかりせねば・・・。

ラウル ・・・ ああ、それには君がもっと頑張ってもらわないとねっ!

ミスティ ・・・ ラウル様?どうして私なのでしょうか?

ラウル ・・・ それはね?この世界は君で持っているようなモノだからだっ!

ミスティ ・・・ は、はぁ・・・そ、そうですか・・・。

ラウル ・・・ 分かれば宜しいっ!



ってなことで、緋色火花でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ドス黒いモノとの対決に、悠斗なりに試行錯誤しているのでしょうね。 悠斗は脳筋ではなく知将ですねー、素晴らしい♡ この後の展開も楽しみにしています♪
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ