133話 雷帝の勇者
新年明けまして、おめでとう御座います。
本年も宜しくお願いします。
と、言う事で・・・2021年も頑張って行きたいと思います。
今回からいよいよ勇者との対決になりますね。
ブックマークや感想など、是非っ!宜しくお願いします。
それでは、133話をお楽しみ下さい。
「ユウト・・・だっけか?」
威圧を込め睨んでくる勇者が悠斗達を現実へと引き戻すのであった。
「お前、一体何者なんだ?」
勇者は仲間達にも見せた事もない表情をしていた。
フォルティナとクトゥナの体は、勇者の威圧によって硬直してしまっていた。
すると悠斗は2人の前へ歩むと壁となり威圧の効力を弱めたのだった。
「ユ、ユウト・・・」
「す、すまない、迷惑を掛けてしまった」
そんな2人に振り向かず、勇者を見据えたまま口を開いた。
「気にするな・・・。早くあのハゲを連れて、サウザーさん達の元へ行け」
そう告げられた悠斗の声はどこか冷めていた。
「わ、わかったわ。フォルティナ、ダンケルを連れて行くわよ」
「あ、ああ・・・ユ、ユウト・・・大丈夫なのか?」
「・・・任せろ」
そう答える悠斗の声は、先程よりも温かさが含まれていた気がした。
2人は急ぎダンケルの元へ駆け寄ると・・・。
「2人とも危ないっ!」
悠斗の声に体が勝手に反応すると、ダンケルの手前で立ち止まった。
すると・・・。
「ドカンっ!」と火球が土煙を上げダンケルもろとも爆発し、
燃え始めたのだった。
「な、何が・・・?」
壊れた人形のように、フォルティナとクトゥナは振り返ると、
勇者が手をかざし魔法を放った後だった。
「お、お前っ!自分が何をやったか、分かっているのかっ!」
フォルティナは勇者にそう叫ぶと、その勇者の肩が小刻みに揺れていた。
「フフフ・・・ハッハッハッ・・・ア~ハッハッハッ!」
「お前・・・な、何を笑って・・・」
気が触れたかのように、突然顔を片手で覆い、声を張り上げ笑い始めた。
そして勇者の笑いが収まった時、指の間から2人に向けられた瞳は、
野獣のような残忍な瞳をしていた。
「お、お前・・・誰・・・なんだ・・・よ」
本能的に恐怖を抱いたフォルティナは、自然と後ろへ下がり始めた。
すると勇者に拳大の石礫が飛んできた。
「ガシっ!」と、勇者は受け止めた石礫を見ると、
投擲した先に視線を移した。
「ユウト・・・何のつもりだ?」
声をかけたられた悠斗は、フォロー・スルーの姿勢のまま、
勇者を睨み返していた。
「2人とも・・・少し離れてくれるか?」
2人は悠斗に言われるがまま、頷くと後方へ数歩下がった。
「水球っ!」
そう言いつつ、水球を燃えるダンケルに投げた後、
ヒールを使用し瀕死のダンケルの治療を行なった。
「へぇ~・・・お前?そんな事も出来るんだな?」
勇者は悠斗を見据えたままそうつぶやいた。
「2人とも・・・ハゲを頼む」
「「は、はいっ!」」
悠斗の迫力に2人は素直に従いその場を離れて行く。
(ユウト・・・負けるなよ?)
その場を離れる事に、後ろ髪を引かれるクトゥナだった。
そして・・・。
「おい、ペネトレー・・・いや、寿限無」
「てめー・・・何度言ったら分かるんだ?
ペネトレー・マハナ・エル・ドリエント・マカフォリアス・マグナ・
シルオルティウス・カローナマイトス・イサ・レゼントだっ!」
勇者は何度も間違えるばかりか、
妙なあだ名を付けられた事に腹が立っていた。
「なげーよ・・・それにお前見たいなクズ勇者には、
寿限無でももったいないくらいだ」
「フンっ!まぁーいい・・・決着つけるか?」
ニヤリと笑みを浮かべ背中に携えた大剣を抜いた。
「いいって事だな?」
「な、何が・・・だ?」
「決まりだな・・・今日からお前は寿限無だ。
まぁーいいって言ったのはお前だからな?」
悠斗にそう言われ、混乱する勇者だったが、
ずくに持ち直した。
「バ、バカヤローっ!まぁーいいって言うのはなっ!」
と、慌てて口にするが、悠斗には届かなかった。
「やろうか・・・寿限無」
あだ名は兎も角、悠斗からはふざけている感じは伝わって来なかった。
「ちっ!まぁーいい・・・てめーをぶっ殺すっ!」
悠斗はこちらに向かって来る勇者に鑑定を使用した。
(鑑定・・・。い、いやちょっと待てっ!
名前だけで行数を取られるのは色々と面倒だっ!
と、とりあえず、名前の後から表示してくれ)
(意味不明・・・)
(あははは・・・そこは気にしないでもらえる?)
(かしこまりました)
心の中でそう焦りつつ、アナウンスさんにそう頼むのだった。
(鑑定終了致しました。現・負の勇者・180cm。
「雷帝」の異名を持つ。
???に寵愛される者。
???に与えられた聖剣デスティニーを携える。
両刃の刀身は半透明になっており、
柄は黄金色に輝き雷をモチーフにしている。
主な能力は、身体強化系・雷撃系の魔法。
雷撃系を身体強化に上乗せした能力・雷帝装は、
身体強化時の5倍。
切り札として、雷を纏わせた雷帝剣を使用するが、
致命的要因により、2度程の使用が限界である。)
(アナウンスさん、致命的要因とは?)
(・・・スタミナ不足です)
(・・・まじか?勇者なのに?あ、あと、現・負の勇者って何だ?
(・・・不明)
(・・・やれやれ。それにしても・・・雷帝とはな・・・)
「面倒臭いな・・・」
鑑定を終了させると、悠斗から漏れ出た声が勇者には聞こえていた。
「いい度胸してるぜ・・・」
「・・・ははは、だろ?」
不敵に笑って見せる悠斗に、勇者のこめかみがヒクつくのが見えた。
勇者は大剣・デスティニーを構えると、
武器を取り出さない悠斗に目を細めた。
「ユウト・・・何故武器を取り出さない?」
「・・・剣が必要だったら取り出すけどさ・・・
まだわかんないじゃんか?」
「フッ・・・分からせてやるぜ」
怒りの表情を見せると勇者は真っ直ぐに突っ込んできた。
「キィェェェェェェェっ!」と、気合の入った一撃が振り下ろされるが、
悠斗はその攻撃をヒラリと躱して見せた。
地面に突き刺さる大剣は、まるで紙でも斬ったかのように、
見事な斬れ味を見せつけていた。
「へぇ~・・・」と、声を漏らす悠斗は、勇者に笑って見せた。
「これを見て笑えるとはな?
いずれ・・・、お前もこうなるんだ」
「フッ」と、再び笑う勇者に悠斗は肩を竦めて見せていた。
「余裕だな?」
「ああ・・・。寿限無が本気じゃないから・・・かな?」
「・・・面白い。いいだろう?見せてやるよっ!」
勇者はそう言い放つと・・・。
「はぁっ!来いっ!雷っ!」
天に向ってデスティニーを突き上げると、
勇者の咆哮により、聖剣・デスティニーに雷撃が直撃した。
「バリバリバリっ!」と、轟音を響かせたその雷は、
聖剣・デスティニーに雷撃を纏わせたのだった。
「うぐっ・・・ら、雷帝剣っ!」
汗を滲ませた勇者は、不敵な笑みを浮かべるのだった。
「本気で行くが・・・死ぬぜ、お前? 」
「・・・その予定はない」
「フンっ!フカシやがって!気に入らねーっ!」
視線に殺気を込めた勇者は再び真っ直ぐ悠斗に斬りかかった。
バリバリっと、響かせながら真横に薙いでくるが、
悠斗はそれをギリギリで躱した。
「うをっ!」
しかしその瞬間、勇者は笑みを浮かべると、切っ先を切り返し
続け様に悠斗を薙いできた。
「危ねっ!」
間一髪躱したと思った悠斗だったが、衣服の一部がヒラリと斬れていた。
切られたその一部は焦げ臭い匂いを放っていたのだった。
「・・・やるじゃん」
「・・・余裕ぶっていられるのは、今のうちだ」
(思っていたよりやるな~・・・だけど・・・さ)
距離を一度取った悠斗は、目を閉じると・・・。
(聞こえるか?)
((聞こえてるよ~♪))
悠斗の呼び声にミツチとククノチが楽しそうに返事をした。
(あの剣・・・当たったらヤバそうね?)
(そうだな)
(で?マスター・・・オイラ達は何をすればいいんだ?)
ククノチの問いに悠斗は答えた。
(ん~・・・アレをやろうと思ってさ?)
(アレ・・・?ああ~・・・でも大丈夫なの?)
(任せろっ!)
意味不明な自信を2人のスピリットに見せつけた悠斗だったが、
ミツチは不安がっているようだった。
(任せろって、マスターの任せろって言う言葉は、
いっっっつも危ういのよね~?)
(・・・ははは)
(で?マスター・・・)
ミツチが話を続けようとした時だった。
「ユウトぉぉぉっ!何を呆けているっ!」
勇者は一足飛びに悠斗に斬りかかってきた。
だがその攻撃すら悠斗を捉える事は出来なかったのだ。
「ちっ!これを躱すかよ?
やるじゃねーか・・・俺より速いとはな?」
「・・・ははは」
苦笑する悠斗に勇者はこう叫んだ。
「ユウトっ!今からてめーの速度を超えてやるぜっ!」
そう怒鳴ると、勇者は雷帝剣を突き上げ、天に向かって吠えるのだった。
「来いっ!雷帝っ!我が身に纏いて力となれっ!」
そう吠えた勇者に呼応するかのように、
数度カミナリが鳴ると、勇者目掛け落雷した。
「ドゴーン」と、煙を立ち昇らせ、落雷に打たれた勇者には、
「リヒテンベルク図形」が全身に刻まれていくのだった。
「ぐぉぉぉぉぉぉっ!」
勇者は全身に纏わり付く雷に苦悶の表情を浮かべ耐えていた。
悠斗はそんな勇者の様子を暫く見ていたが・・・。
(ちょっとっ!マスターっ!)
ミツチからの叫びが聞こえた悠斗は、その呼びかけに応えた。
(話の途中でしょっ!)
(ご、ごめん・・・つい)
怒鳴るミツチに悠斗は素直に謝った。
(マスター・・・ところでアレって、どれの事なんだ?)
その問いかけに悠斗は一言こう言った。
(・・・雷身からの~・・・かな?)
驚きのあまり2人のスピリットは口を開けたままになってしまった。
いち早く我に返ったミツチが不安そうな顔を見せた。
(雷身は兎も角、その後って・・・まだ未完成じゃないのよっ!)
(・・・任せろっ!)
そう答える悠斗に、ククノチが口を開いた。
(でもよ?同属性をぶつけるって・・・まじウケんぜっ!)
(はぁ~・・・雷身からの・・・ね。
はいはい、わ・か・り・ま・し・たっ!もうっ!
言い出したら聞かないんだからっ!
こうなったら・・・やるしかないわねっ!)
項垂れる悠斗にスピリット達は笑っていたが、
悠斗はサポートを頼んだ。
(・・・やるわよっ!全くもうっ!なんだからっ!)
そう文句を言うミツチの顔は何故か笑っていた。
(あははは、頼むよ)
そう言って、悠斗は去ろうとした時・・・。
(マスター聞かせてくれよ?自信はあるのか?)
ククノチは悠斗が去り際にそう言うと・・・。
(寿限無に耐えられたんだっ!俺なら・・・出来るんじゃね?)
悠斗の答えに再び固まるスピリット達。
(はっはっはっ!)
と、笑う悠斗にもはや諦めるしかない二人だった。
(根拠のない自信って・・・ある意味無敵よね?)
そう聞こえた悠斗は聞こえていないフリをしていたが、
何故か涙が出そうになっていた。
そして目を開けた悠斗は・・・。
「・・・はぁ、まだやってんのかよ?」
思わず溜息と一緒に本音がこぼれていた。
悠斗の目の前では、まだ落雷の激痛に耐えていた勇者の姿があった。
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
「・・・やれやれ。これって実践で使えるのかよ?」
悠斗がそうつぶやいた時だった。
「シューっ!」と、聞こえる音と蒸気と共に、勇者の強化は完了した。
「ふぅ・・・。わ、悪いな?待たせちまった・・・」
雷帝剣を背中に納刀すると、そう声を漏らすのだった。
勇者の姿は・・・。
髪の毛が逆立ち、体から放電している雷帝装へと姿を変えていた。
だが、その苦痛からから、勇者の額から汗が吹き出していたのだった。
「・・・すげーな」
声を漏らした悠斗に、勇者はご満悦だった。
「お前に誉めてもらえるとは・・・嬉しいぜ」
「ははは、いいモノを見せてもらったよ」
冷たい風が2人の間をすり抜けた時・・・。
(マスターっ!やるわよっ!)
(・・・よろっ!)
バリバリっと音を立てると、一瞬にして悠斗に蹴りを放った。
「ガシっ!」と、勇者の攻撃を膝でブロックすると、
勇者は容赦なく攻撃を繰り出して行った。
(こいつっ!雷帝装でも五分なのかよっ!化け物めっ!)
雷帝剣を抜かず、勇者は格闘戦に持ち込んで行き、
息を付く間も与えず攻撃を繰り出していった。
「うぉぉぉぉぉっ!」
「おっとっ!よっ!うはっ!ヒェ~っ!」
悠斗は発する声とはうらはらに、
勇者の攻撃を躱し、捌き、防いでいた。
(こ、こいつっ!半端じゃねーっ!)
暫く2人の攻防が続く中、ふと勇者は疑問が浮かんだ。
後方へ飛んだ勇者は、その疑問を投げかけた。
「ユウト、お前・・・何故感電しねーんだよ?」
その問いに悠斗は笑みを浮かべると・・・。
「ああ~、えっと~今の俺って・・・雷身だからね♪」
悠斗のその聞き慣れない言葉に、勇者は首を傾げていたのだった。
緋色 ・・・ 明けましておめでとう御座います。本年も宜しくお願いします。
ラウル ・・・ やぁやぁ、ラウルだよ~僕も頑張るから宜しくね~♪
ミスティ ・・・ ミスティで御座います。今年もお世話になります♪
悠斗 ・・・ ども・・・悠斗です。えっと・・・宜しく
ってなことで、緋色火花でした。




