132話 2人への試練
お疲れ様です。
今年最後のアップとなります。
皆様の応援、本当に有難う御座いました。
来年も宜しくお願い致します。
詳しくは活動報告に記載しておきますので、
お暇な方はどうぞそちらへ^^
それでは、今年最後のアップ・・・132話をお楽しみ下さい。
「おいっ!そこの・・・ハゲっ!いい加減出てこいよっ!」
突然悠斗から発せられた言葉に、ダンケルは凍りついたかのように
固まってしまった。
ダンケルは勇者へと視線を移すのだが、その勇者は素知らぬ顔をしていた。
(お、おのれ~・・・素知らぬ顔などしよってっ!
だがしかし、僧侶であるリアーナは戦えない。
と、なれば・・・ぐぬぬぬっ!私が行くしかないのか・・・)
眉間に皺を寄せ額に汗を滲ませたダンケルは、
無言なまま震えているエルバドと目が合った。
「確か貴様、エルバドとか言ったな?」
「は、はぁいぃぃぃっ!」
迂闊にもダンケルと目が合ってしまったエルバドは、
怒りから魔力が立ち昇るダンケルの姿に恐怖したのだった。
「貴様のせいで・・・。
我々はあんなガキに醜態を晒す事になったのだぞっ!
お主・・・分かっているのだろうな?
報酬は倍額頂くぞっ!覚悟しておけっ!」
「ヒ、ヒィィっ!わ、わわ、分かりましたっ!
お、お望みのまま・・・お、お支払い・・・い、いい致しますっ!」
腰を抜かしながらも答えるエルバドに、
ダンケルは薄気味悪い笑みを浮かべた。
まるで悪魔にでも魂を売ったかのような錯覚に捕らわれたエルバドは、
呼吸が荒くなると、心臓を抑え蹲ってしまった。
(ゆ、勇者・・・。勇者とは・・・こ、こんなにも卑劣な者達なのか・・・
わ、私は、い、一体な、何をやっているのだ・・・)
すると勇者は背後に居るエルバドに振り向きもせず口を開いた。
「お前はダンケルの負の魔力に当てられたんだ・・・。
その負の魔力は、対象者を嬲り殺す力を持っている。
そのままだと・・・お前は、死ぬぜ?」
その勇者の言葉が聞こえないのか、激しい苦痛がエルバドを襲っていた、
「ゆ、勇者様っ!ど、どうかっ!どうか親父をっ!」
父親の苦しむ姿に耐えられなくなった、息子のドリューが声を荒げた。
だがしかし、勇者はドリューに視線を移す事なく返答した。
「フンっ!こいつは俺達の依頼主だ・・・。
今死んでもらっては、報酬が受け取れないからな・・・
リアーナっ!こいつを浄化してやれっ!
今死なれては困るっ!」
勇者達から少し離れて見ていたリアーナは、無言で頷くと、
視線もそのままに、エルバドに向けて浄化の光を放った。
一瞬浄化の光がエルバドの体を包むと、禍々しい煙が、
エルバドの体から離れて消えたのだった。
体の苦痛がまるで嘘かのように消えると、
浄化の光を放ったリアーナに、土下座してお礼を言った。
だがその礼に対しても、リアーナの反応は皆無だったのだ。
悠斗はそんな光景を見ながらも、ダンケルから視線をはずさなかった。
その視線に顔を引きつらせたダンケルは、ゆっくりと歩き始めた。
(鑑定・・・。鑑定終了致しました。
ダンケル。32歳。175cm。
???の下僕。聖と魔の魔法を操る魔法使い。
魔力は膨大で、近接戦闘においても、障壁を駆使し攻撃へと転ずる。
また、残虐性を秘めており、家族であろうと己の欲の為に人を殺める。
深淵の杖の効果により、魔法耐性・物理耐性を所持。
だが・・・ハゲを気にしている)
「プッ!」
鑑定の内容を聞いた悠斗は、思わず吹き出してしまった。
そんな姿を見たダンケルは、目を細め悠斗を睨んでいた。
(うわ~・・・ハゲが睨んでるよ・・・こわっ!)
「貴様如きに、私が戦う事になろうとはな・・・」
呻くように言葉にしたダンケルに悠斗は無言で睨みつけていた。
「ほう・・・。クトゥナを屈服させただけあるな?
私を前にしてもそんな目をするとは・・・フフフ、面白い。
貴様には今まで味わった事もない苦痛を味あわせてやろう・・・。
誉に思うがいい・・・私と戦えた事を・・・な」
ダンケルはご満悦なのか話を止めようとはしなかった。
そんなダンケルに悠斗は、あからさまに溜息を吐いて見せた。
「はぁ~・・・なぁ?まだしゃべるのか?
いい加減、ウザいんだけど?」
「ウ、ウザ・・・?」
顔を顰めながらもダンケルは悠斗の言葉の意味を考えるのだが、
当然、ノーブル育ちのダンケルには理解する事は出来なかった。
「い、意味はわからんが・・・。
私はな?貴様に私の凄さを教えてやろうと・・・」
「・・・いらないからね?」
「な、なんだとっ!」
悠斗は呆れた表情を浮かべると、真剣な眼差しをダンケルへと向けた。
「能書きはいらない・・・。
お前は一方的に、俺にボコられるだけ・・・だからな?」
「貴様・・・身の程を知らんと見えるな?」
ダンケルは後方へ飛び距離を取ると、魔力を集中し始めた。
(フフフ・・・。こやつはバカなのか?
私が魔力を集中している間に攻撃をしてくればいいものを・・・)
顔がニヤけたダンケルに、悠斗は察すると声を掛けた。
「おい、ハゲ・・・。お前が色々と小細工するのを待っているだけだ。
終わるまで待ってやるから、とっとと小細工しろよ」
「な、なんだ・・・と・・・。貴様っ!」
ダンケルは悠斗の言葉に顔を引きつらせると、
魔法防御・物理耐性向上・身体強化・魔力増大・威力増大
速度向上・魔力結界・気配探知・・・と、
己にバフを掛けていった。
「あ~はっはっはっはっ!バカなヤツめっ!
私に時間など与えよってっ!
もう貴様は私に指一本傷つける事は出来なくなったわっ!
己の無知を呪う事だなぁっ!」
勝利を確信したのか、ダンケルは高笑いするのだった。
満面の笑みで悠斗に視線を移した時、ダンケルの背筋に悪寒が走った。
「なっ!」
(な、何だ・・・こ、この悪寒はっ!)
ダンケルから視線を向けられた悠斗は、
ニヤリと笑みを浮かべていたのだった。
「もういいのか?」
そう声を掛けた悠斗に、ダンケルは喉を鳴らしていた。
すると、ダンケルが瞬きをした一瞬で、
悠斗はダンケルの懐に潜り込んで笑みを浮かべていた。
「行くぜ・・・ハゲっ!」
悠斗は思いっきりダンケルへと突きを放った。
何重にも重ねられた防御結界が次々と破壊されていく。
「な、何だとっ!!い、いかんっ!」
10枚ほど重ねられた防御結界は8枚まで砕けると、
残り2枚を残し悠斗の拳が止まった。
「ちっ!」
そう舌打ちすると、後方へ飛び再び構えた。
(あ、危なかった・・・わ、私の防御結界をこうも簡単に・・・
だが、私の方が一枚上手だったようだな?
クックックッ・・・これは楽しめそうだ・・・)
心の中で笑うダンケルに悠斗はブツブツと声を漏らしていた。
「あ~・・・ちと、手を抜き過ぎたな・・・反省反省っと」
そう声を漏らす悠斗に、ダンケルは再び悪寒が走った。
それを振り払うように、頭を数回振ると・・・。
「はぁぁぁぁ!」っと、魔力を集中させた。
すると、悠斗の足元に魔法陣が浮かび上がった。
(あっ、やばっ!この魔方陣結界にもなってるのか・・・やれやれ)
「フフフ・・・喰らえっ!ダーク・ソウル・イーターっ!」
ダンケルが作り出した魔法陣から、
夥しい死霊が湧き出てきた。
「グゥオーっ!アァァァァァァァっ!」
奇声を上げながら悠斗へと襲いかかる。
そして悠斗は、その夥しい数の死霊共に覆い尽くされてしまった。
それを悠斗の後方で見ていたサウザー達は・・・。
「ユ、ユウト様がっ!」
「あ、危ねぇっ!」
「いやぁぁぁっ!」
「くっ!ユウト様・・・・」
ゼノやシーバ、レダまでもが、悠斗の死を感じ取っており、
サウザーもまた・・・悠斗の死を直感してしまっていた。
すると、ステアが一歩前に踏み出し振り返ると、全員へ向けて声を放った。
「こんな事でユウト様は死にませんっ!
今までも貴方達はそれを見て来たのでしょっ!
数々の奇跡をっ!ユウト様が私達に見せてくれた奇跡をっ!
それを信じないでどうするのですかっ!」
ステアの叫びは全員の心に響いては来たが、
今、目の前で起こっている現実に、
全員は受け入れられる事が出来なかった。
だがしかし、そのステアの言葉に同意する者達が居た。
それは・・・。
「はっはっはっ!あんたっ!良く言ったじゃないかっ!」
そう声を張り上げたのは、いつの間にか意識を取り戻していた
フォルティナだった。
「ああ、そうさ・・・。ユウトはこんな事くらいで死なないわ。
戦った私達がよく分かってるもの・・・」
フォルティナに続きステアの声に応えたのは、クトゥナだった。
そんな2人にステアは深々と頭を下げるのだったが・・・。
「はっはっはっ!・・・お嬢ちゃんそういうのは止めなよ?
あの男を信じる者同士・・・そんな固っ苦しい事はいらないよ」
頭を下げるステアの肩を叩くと、フォルティナは笑顔を向けるのだった。
「有難う・・・有難う御座いますっ!」
「フフ・・・。私達はただ・・・。あいつを信じていればいいのさ」
クトゥナもまたそう言って、ステアに笑いかけていた。
「はいっ!」
「いい返事だ・・・」
悠斗を信じる者達は、再び阿鼻叫喚する魔法陣を静かに見つめていたのだった。
「わーっはっはっはっ!バカめっ!
私に楯突くからこうなるのだぁぁぁっ!
わっはっはっ!見たかガキっ!そして・・・お前達っ!
私に敵う者などおらぬのだぁぁぁっ!」
陶酔しきったダンケルは、己の強さを誇示し、
勇者達の待つ所まで引き返そうとしていた時・・・。
「バリンっ!」
と、魔法陣に亀裂が入り一瞬にして全てが消え去ってしまった。
そして辺り一面・・・白いモヤに包まれていた。
「な、何が・・・?一体何が起こっているのだ!?」
悪寒が走り小刻みに震えだしたダンケルは固唾を飲んでいた。
すると、その白いモヤの中から人影が見え始めると・・・。
「ステアっ!奇跡なんてまだ一度も起こしてないからなっ!」
「ユウト様っ!」
「「ユウトっ!!」」
その聞き覚えのある声に、ステア達は歓喜し、
また、ダンケル達は唖然とするのだった。
「バカなっ!バカな、バカな、バカなっ!
ありえんっ!ありえんぞぉぉぉっ!あの死霊の群れの中をっ!
ど、どうやってっ!どうやってぇぇぇぇっ!」
ゆっくりとダンケルへ向けて歩いて来る悠斗の姿に、恐れ慄いた。
そしてモヤが晴れ威風堂々と白き衣を纏った悠斗の姿があった。
「そっ、その・・・その姿はなんだっ!」
腰を抜かし震えながら声を上げたダンケル。
「ハゲに説明する訳ねーじゃんっ!バーカっ!」
「はっ、ハゲだとぉぉぉぉっ!」
ハゲと言われ勢いよく立ち上がったダンケルに、悠斗は拍手を送っていた。
「はっはっはっ・・・全然元気じゃんっ!良かった良かった♪」
お気楽モードの悠斗に、サウザー達は頭を抱えていた。
「そ、そんな虚仮威しなどぉぉぉっ!」
「・・・因みにだが・・・これは使わないからね?」
「・・・はっ?」
そう言って悠斗は白き衣を解いた。
「な、何故だ?何故解いたのだ?
その装備ならば・・・私に勝てたはずだろうっ!
それなのに、何故なのだ!?」
ワナワナと震えながら問いてくるダンケルに、悠斗は笑顔で答えた。
「はっはっはっ!何でって・・・
それは、こんなのを使わなくても勝てるからに決まってるじゃんか?」
「か、勝てる・・・だと?」
「ああ、あの魔法陣が丁度良かったからさ?
色々と練習させてもらったんだ。
いや~・・・いい、練習になったよ・・・サンキューな♪」
「れ、練習・・・だと!?自惚れるなぁっ!はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
魔力を溜め始めたダンケルは何重もの防御結界を張り巡らせていく。
(クックックッ・・・今度は聖と魔・・・2つ同時に放ってやろう。
私と貴様・・・どちらが強いか思い知らせてやるわっ!)
悠斗はショートソードを抜き、身構えると・・・。
「お前はこれから・・・俺に傷一つ付ける事は出来ない」
「・・・貴様・・・戯言をっ!」
悠斗はニヤっと笑みを浮かべると、こう言った。
「さぁ・・・行こうか」
悠斗はゲートを開くと駆け出した。
「させるかぁぁぁっ!はぁぁっ!」
掌から無数の魔力弾を出現させると、悠斗目掛け放って行く。
「死ねぇぇぇぇっ!」
迫る魔力弾を難なく躱しつつ、ダンケルの周りを駆け巡る。
「・・・しっかり狙えよなっ!」
「ぐぬぬぬ・・・き、貴様っ!愚弄しおってぇぇぇっ!」
無数の魔力弾が悠斗を襲うも、
その速さにダンケルは全く付いて行けなかった。
(何だこの速さはっ!
も、もしかして・・・バフを、無数のバフを掛けているのでは?)
ダンケルは悠斗に無数のバフが掛かっているのではと、
そう疑念を抱くと・・・・。
(ならばだっ!聖魔法で設置型のバフ解除の魔法陣をっ!
ついでに・・・弱体化のデバフも・・・)
薄気味悪い笑みを浮かべたダンケルは、
右手で魔法弾を放ちながら、
左手でバフを解除する魔法陣を設置したのだった。
(クックックッ・・・これで貴様もっ!)
そう心の中で北叟笑むダンケルだったが、
悠斗もまた・・・。
(あー・・・あれって設置型のトラップか何かか?
って言うか・・・バレバレなんだけど?
面倒臭いから引っかかって見るか・・・やれやれ)
一瞬口角を上げた悠斗は、わざとダンケルが用意した魔法陣へと飛び込んだ。
「かかったなっ!」
そう叫ぶダンケルは、聖魔法を発動させると、
悠斗は魔法陣中で光に包まれた。
「あーはっはっはっ!これでバフの効力もっ!」
そう言った時だった・・・。
「バフって・・・何の話だよ?」
輝きが収まった魔法陣の中で、平然としていた悠斗が居た。
「貴様・・・何ともないのか?」
「俺・・・バフとか使ってないんだけど?」
「・・・はぁ?」
(ま、まさか、弱体化も効果が?そんなバカなっ!何故なのだっ!)
悠斗はダンケルへ向けて歩き出した。
「もう飽きた・・・やっぱりハゲと戦うのはつまらないな」
再びハゲと言われ激怒したダンケルは・・・。
「み、見せてやろう・・・」
そう声を漏らすと、魔力を圧縮し始めた。
(この私の最強の一撃をっ!
聖と魔2つの魔法を同時に放つ事が出来るのだっ!)
魔力の圧縮がおこなわれている最中・・・。
悠斗は歩みを止め立ち止まった。
「いいぜ・・・撃って来いよっ!」
そう声を漏らすと悠斗は・・・。
マジックボックスからもう1本ショートソードを取り出した。
「気刃剣っ!そしてっ!魔力剣っ!」
夥しい魔力がショートソードに流れるのを感じたダンケルは、
思わず顔を引きつらせていた。
(な、何だ・・・あれはっ!ガキの分際でっ!
どんな小細工をしたかわからんが、私に敵うと思うなよっ!)
だがしかし、ダンケルはもう1本の剣に何があるのかが認識出来なかった。
「荒れよ魔界の門っ!轟けっ!神界の門っ!
はぁぁぁっ!デッド・フラッシュっ!グロリアス・フラッシュっ!」
右手から禍々しい黒い光と、左手からは神々しい光が悠斗に放たれた。
そんな魔法に悠斗はニヤリと笑うと・・・。
「はぁぁぁぁっ!はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
ダンケルの攻撃目掛け、悠斗はショートソードを振り降ろした。
その瞬間・・・。悠斗の2本のショートソードは力尽き崩れ去った。
そして黄色味がかった刃と紫色をした刃が、
ダンケルの放った攻撃とぶつかった時・・・。
「ズパッっ!」と、悠斗の放ったそれぞれの刃が、
ダンケルの最強の魔法を斬り裂いた。
そしてその刃は威力を落とさず、
ダンケルへと向かって飛んで行くと・・・。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁっ!」と、断末魔の声が聞こえた。
それと同時に、ダンケルの後方で爆発音が鳴り響いてきた。
その叫び声に全員が視線を集めると、
そこには、両肘を切断されたダンケルが藻掻き苦しんでいた。
「ぎゃぁぁぁぁっ!う、腕がぁぁぁっ!私の、私の腕がぁぁぁっ!」
大量の血液が、切断された両肘から吹き出していた。
そんな姿を悠斗は冷めた目でただ見つめていたのだった。
「くるり」と、踵を返すと悠斗は、
フォルティナとクトゥナに声を掛けた。
「・・・この後の事は、2人に任せた」
突然任せたと言われたフォルティナとクトゥナは、
互いの顔を見合わせると・・・。
「・・・ま、任せたって・・・突然言われても・・・な?」
「・・・いや、ユウトの言った通りね。
あいつの始末は私達が決めないと・・・」
そう言うと、クトゥナは藻掻き苦しむダンケルの元へと歩いて行った。
そしてそんなダンケルを見下ろすと・・・。
「お前には腐るほど借りがあったな?」
「た、助けてくれっ!ク、クトゥ・・・ナ・・・・」
涙を流し懇願してくるダンケルに、クトゥナは顔を顰めた。
そして遅れて駆け寄ってきたフォルティナが口を開いた。
「あんた・・・今まで色々と世話になったね?}
「き、貴様・・・ら・・・な、仲間・・・では、ないのか?
い、今まで・・・ゆ、勇者パー・・・ティーで、
や、やってき・・・た・・・ではない・・・か」
「都合のいい事を言うんじゃないわよっ!」
「ふざけるなっ!この外道がっ!」
「ぐぬぅぅ」
2人は拳を力一杯握り締めつつも、
身を屈めダンケルの怪我の処置をしていった。
「許して助けるんじゃないっ!あいつは・・・
ユウトはっ!私達に任せると言ったのよっ!」
「ああっ!ユウトは私達を治療したっ!
あいつは誰の死も・・・望んでいないのよ・・・」
フォルティナはそう言いつつ、ダンケルの肘を止血しながら
声を張り上げていた。
そしてダンケルの処置が終了すると、
背中を向けたままの悠斗にクトゥナ達は声をかけた。
「ユウト・・・これでいいのよね?」
「ユウト・・・私達に任せたのは・・・試す為だったの?」
その問いかけに悠斗は振り向くと、2人に笑顔を向けた。
「ああ、2人なら・・・勿論助けると思ってたよ♪
試すと言うよりも、試練みたいなモノ・・・かな?」
「そうか・・・試練か・・・。ユウト、お前ならどうしたんだ?」
真剣な眼差しを向けてくるフォルティナに悠斗は答えた。
「ん~そうだな~・・・?
もう少し虐めてから、助けた・・・かな?」
「い、虐めてって・・・あのな~ユウトお前ってヤツは・・・」
項垂れるフォルティナに、悠斗とクトゥナは笑っていたのだった。
そして今度はクトゥナが悠斗に頭を下げ礼を述べた。
「本当に有難う・・・。心から感謝するわ」
「ああ、ユウト・・・あんたはいい男だよ」
2人の言葉に悠斗は照れてしまっていた。
そんな悠斗を見た2人は突然抱きついてきた。
「お、おいっ!ふ、2人ともっ!」
「はっはっはっ!いいじゃねぇーか~このくらいよ~♪」
「フフ・・・ユウト・・・あんたの事、気に入ったわ♪」
「・・・やれやれ」
その衝撃的過ぎる光景を目撃したサウザー達は・・・。
「ユ、ユウト様は、じ、実に・・・その何と言うか・・・」
呆れつつも言葉にならないサウザーに、全員が苦笑いしていた。
「はっはっはっ!流石俺達のユウト様だぜっ!器がでけーなっ!」
ゼノは悠斗の心意気に益々臣下となる事を胸に抱いていた。
「へっへっへっ・・・ああ言う御方ですからね~?
みーんな巻き込まれちまうんでさ~・・・すごい御人だぜ」
シーバは少し涙ぐんでその光景に声を漏らしていた。
「うむ・・・あの御方の度量には驚かされるわね。
私も聖騎士として、ユウト様を見習わないと・・・」
レダは悠斗を模範とし精進する事を誓っていたのだが・・・。
ただ1人、皆とは違う反応を示していた者がいた。
「・・・羨ましい」
「「「「「はぁ~!?」」」」」
思わず言葉がこぼれたステアに、全員から視線を浴びる事となった。
取り繕うステアに、サウザー達の笑いが聞こえた頃・・・。
「ユウト・・・だっけか?」
威圧を込め睨んでくる勇者が悠斗達を現実へと引き戻すのであった。
ラウル ・・・ お疲れちゃん♪ラウルだよ~?
ミスティ ・・・ ミスティで御座います。
ラウル ・・・ 地球では「オショウガツ」と言う名の餅を堪へるイベントが・・・
ミスティ ・・・ どこでそのような戯言を?
ラウル ・・・ だって、緋色君が言っていたんだけど?
ミスティ ・・・ 違いますっ!オショウガツとは、豆を投げて海へ潜ると言う・・・
ラウル ・・・ 色々と混ざっている気がするんですけど?
ミスティ ・・・ あら?そうなのですか?それは失礼致しました。
ラウル ・・・ ではっ!来年も僕を宜しくね♪
ミスティ ・・・ 皆様の応援をお待ちしております♪
ってなことで、緋色火花でした。




