131話 誓約書
お疲れ様です。
もう世間の皆さんは休みに入られている方もいるのでしょうね?
いいな~・・・いや、まじでW
因みに次の緋色のお休みは・・・1月6日の予定ですW
それでは、131話をお楽しみ下さい。
「・・・次は、誰だ?」
その威風堂々な姿に、勇者はゴクリと喉を鳴らし汗を流すのだった。
圧倒的な力の差で、地面に転がっているフォルティナを見た勇者達。
「ちっ!あのバカが・・・だからあれほど・・・」
クトゥナが横たわるフォルティナに対し、吐き捨てるように言った。
「・・・あのガキは何者なんだ?あのフォルティナを・・・」
フォルティナを見つめながら、勇者は歯軋りをする。
すると・・・。
魔法使いであるダンケルがフォルティナの元へと歩き始めた。
悠斗は目を細めダンケルを警戒していた。
(ダンケルだっけ?あいつからは嫌な気配がする・・・
まさかとは思うけど・・・ん~・・・)
悠斗はそう思いながら見つめていると、
ダンケルはフォルティナを見つめこう言った。
「だから脳筋はっ!」
そう言い放つと、気絶しているフォルティナを無情にも蹴り飛ばした。
「お、おいっ!」
その行動に驚いた悠斗は、ダンケルの肩を掴み振り向かせた。
「仲間だろっ!」
ダンケルは悠斗の手を振り払うと、血走った視線を向けたのだった。
「な、仲間・・・?仲間だぁ~?こいつ・・・が?
この脳筋女が・・・フッフッフッ・・・仲間だってぇぇぇーっ?」
まるで気が触れたかのように、突然大声をあげ笑い始めた。
その様子に悠斗は、勇者達に視線を向けるのだが、
視線を向けたその先には、顔を背けた勇者達が居た。
(どうなってんだ?どうして顔を背けている!?)
戸惑う悠斗にダンケルがこう言った。
「何をそんなに驚いているのですか?」
「えっ?」
「フッフッフッ・・・こんな脳筋・・・もはや私達の仲間ではありませんよ?
私達は誉れ高い勇者パーティーなのですよ?
本当の仲間なら・・・こんなガキに負けるはずないじゃないですかっ!」
悠斗に対してそう言い切ると、振り向き様フォルティナに火球を放った。
咄嗟に悠斗は地面に転がるフォルティナの前に立ち塞がると、
向かってくる火球を手の甲で弾き飛ばした。
「お前・・・何・・・やってんだ・・・よ」
「ほほう・・・あれを弾きますか?
フフフッ、何をって・・・これが勇者パーティーの掟なんですよ?
関係ないお前如きに言われる筋合いはないでしょう?」
火球を弾き飛ばした拳を握り締めながら、
悠斗は再び勇者達に視線を移すと・・・。
「お前ら・・・フォルティナは仲間じゃないのか?」
怒りで震える悠斗に、勇者達は顔を顰めた。
「な、仲間ではある・・・だけどな?
弱ぇーやつは俺のパーティーには必要ねぇーんだよっ!」
その勇者の答えにダンケルは高笑いを始めた。
「あーっはっはっはっ!聞きましたか?ねぇ・・・聞きましたよね~?
うちのリーダーの言葉を?誉れ高き勇者の言葉をっ!
これが勇者パーティーと言うモノなんですよ~・・・。
・・・・・ですからっ!部外者がとやかく言うんじゃありませんよっ!」
見た目とあまりに違うその発言に、悠斗ばかりかサウザー達も、
その発言に唖然とするのだった。
「お前・・・いい加減にしろ・・・」
悠斗の口から言葉がそう漏れると、一瞬でダンケルの目の前に現れた。
「な、なにっ!」
体が仰け反り退避しようとするのだが、間に合うはずもなかった。
だがしかし、悠斗の拳がダンケルに当たる寸前に・・・。
(な、なんだ?この気配はっ!)
その一瞬をつきダンケルは姿を消し、勇者達が居る場所へと移動していた。
「ちっ」と、悠斗は舌打ちをしながらダンケルを睨むと、
その当の本人は戸惑いの表情を浮かべていた。
(だ、誰が一体私を・・・?)
(・・・誰か他に居るのか?それとも・・・)
気配を感じつつも掴めずイライラする悠斗だったが、
ダンケルに指を差した。
「次・・・お前が俺の相手だよな?」
悠斗に指名され驚くが、ダンケルは笑って見せた。
「フフフ・・・私な訳ないでしょ?
お前の次の相手は・・・クトゥナさんですよ」
「えっ!?」
突然名を呼ばれ驚くクトゥナだったが、勇者と顔を見合わせると、
黙って小さく頷くのだった。
(鑑定・・・。鑑定終了致しました。
クトゥナ・ベルグランツ。152cm 金髪ポニーテール。
元グランフォート国・没落した公爵貴族の次女。
現在・女盗賊。短剣と暗器所有。
速度重視型・風魔法。
沈着冷静だが、時折感情的になる。
現在呪詛契約により、???の奴隷)
(・・・にゃるほど♪でも呪詛契約?・・・なんだそれ?
???の奴隷か・・・。
???の部分は鑑定出来なかったって事かな?)
「い、いいわ・・・私がやる」
そう言って悠斗の前へ歩いてくると・・・。
「・・・さぁ、始めましょ?」
その無表情な顔の奥を見せないまま、クトゥナは短剣を抜いた。
「・・・わかった・・・でも、ちょっと待ってくれ」
「ん?まさか怖気づいた・・・とかじゃないわよね?」
「そんな訳ないだろ?」
そう言うと、クトゥナとすれ違い様に、悠斗は小声で話した。
「何があるかわかんないけど・・・今は耐えてくれ」
「えっ!?」
悠斗の言葉に呆然とするクトゥナだったが、
その言葉に心の中で頷く自分に気がついた。
(本当に貴方が強いのなら・・・助けて・・・)と。
悠斗はフォルティナの傍にしゃがむと、ゼノとシーバに声をかけた。
「ゼノっ!シーバっ!彼女を頼むっ!」
駆け寄ってくるゼノとシーバの後ろをレダも駆けてきた。
「ん?レダ、どうしたんだ?」
悠斗の問いかけにレダは少し微笑むとその訳を話した。
「私は聖騎士ですので・・・。
その・・・、回復魔法が使えます」
「ああ~なるほど♪じゃ~お願いできるかな?」
「はい、任せて下さい」
自信有り気に答えたレダは、横たわるフォルティナにヒールを使用した。
ゼノとシーバは念の為外傷がないかを確認していく。
「よしっと・・・見た目は問題ねーな」
「ゼノの旦那。こっちも問題ねーですよ」
確認を終えたゼノ達は悠斗に一礼すると、サウザー達の元へ戻って行った。
それを見届けた悠斗は、再びクトゥナへ歩み寄ると、
すれ違い様につぶやいた。
「あんたは神から干渉を受けているのか?」
「・・・いえ」
「わかった」
悠斗は何事もなかったかのように、通り過ぎると・・・。
「さてっと・・・クトゥナさんだっけ?待たせたね」
少し笑って見せた悠斗に、クトゥナは目を細めた。
(こいつ、どうしてこんなに平然としているんだ?
神・・・だぞ?こ、怖くないのか?)
そう考えつつもクトゥナは短剣を抜いて構えると、
悠斗もまたショートソードを抜いて構えた。
「・・・私は全力で行く」
「ああ、そうじゃないと楽しくないからね?」
「言うじゃない?でも・・・それは私の動きを見切ってから言うのねっ!」
クトゥナは体制を低くすると、軽く息を吐いた瞬間・・・駆け出した。
ゼノとレダはその動きを見る事がかろうじて出来たのだが、
それ以外の者は勇者達の他には居なかった。
「あいつ・・・いきなり仕留める気かよ」
口角を上げ薄く笑う勇者だったが、次の瞬間・・・。
勇者の顔から笑みが消えた。
「な、なんで・・・なんでクトゥナの攻撃が当たらないんだよっ!」
勇者の目の前で起こっている現実に、誰もが唖然としていた。
(あ、当たらないっ!う、嘘っ!
こいつ・・・私より速いって言うのっ!?
助けてとは思ったけど・・・こいつの強さに、私は・・・)
驚愕しながらもクトゥナは連続攻撃を繰り返していた。
最初は直線的な攻撃だったが、悠斗はその攻撃を躱していくと、
更に目を閉じ躱していった。
(・・・全くもう、こいつに私の強さを試したくなるじゃないのっ!)
そう決意したクトゥナは構え悠斗を見据えると、
その悠斗はクトゥナの気持ちを察したのか、指を曲げ挑発してきた。
・・・かかって来いよ、と。
「本気で行くわっ!」
「・・・・・・・」
クトゥナの叫びに悠斗は目を閉じ無言で笑っていた。
「ちっ!」
クトゥナは舌打ちしつつ悠斗の懐へ潜り込もうとしていたが、
それを見抜いていた悠斗は、それをさせなかった。
(スピードは認めるわ。だけどね・・・)
「はぁぁぁぁぁっ!」
一度距離を取ったクトゥナは、魔力を全身に纏わせると・・・。
「瞬神っ!」
クトゥナはそう叫ぶと、一瞬にして悠斗の背後を取りつつ・・・
(私の瞬神は認識不可の絶対領域っ!いくらあんたでもっ!)
迷いなく短剣を振り下ろした。
「・・・えっ!?」
たった今までクトゥナの目の前には、背中を無防備に見せる悠斗が居た。
だが、短剣を振り下ろした瞬間・・・悠斗の姿はなかったのだ。
消えた悠斗を探そうとした時だった、クトゥナの背後から声が聞こえた。
「・・・悪いけど速さだけなら、うちのセルカの方が速い」
その声にクトゥナは咄嗟に飛び退いた。
「い、いつ・・・私の背後に?」
「・・・さぁ?」
「こ、こいつ・・・強い」
苦虫を噛み潰したような表情を見せるクトゥナに、
悠斗はショートソードを構えた。
「・・・行くよ?」
悠斗がそうつぶやいた瞬間、クトゥナは悠斗が暗闇に溶けるのを見た。
「・・・えっ!?居ない」
そう言葉を漏らした時、クトゥナは背後から右肩に衝撃が走ると・・・
「うがっ!」
そのまま片膝を降り、動けなくなってしまった。
「白鷲流・剣術・闇烏」
そして再び悠斗の声が背後から聞こえた。
激痛に顔を歪ませ、その衝撃により声が出なくなっていた。
すると悠斗はクトゥナに手をかざしヒールを使用した。
「これで大丈夫なはずだけど・・・話せる?」
クトゥナは優しく話しかけてくる悠斗のそんな声に安堵していた。
「あ、ああ・・・有難う。回復したわ」
体の状態を確かめるように、クトゥナはゆっくりと立ち上がった。
「ユウト・・・だったわね?」
「・・・ああ」
「あんた・・・一体何をしたの?」
その問いに悠斗は素直に答えた。
「あんたの攻撃を躱した時は、ただの体捌きだよ?
そして今あんたを倒した技は、気配遮断と体術と剣術の複合技だ。
あんたの「瞬神」だっけ?あれに近い技だと思ってくれていいよ」
悠斗の解答にクトゥナは驚いていた。
「わ、私の「瞬神」を躱したのは、ただの体術!?
う、嘘でしょ?わ、私のあれって・・・亜空・・・。
い、いえ・・・何でもないわ。
ユウト・・・悪いわね?ここじゃ話せないの」
クトゥナは自分のスキルの秘密を、思わず話しそうになったのだが、
他の者達を気にして話すのを止めたのだった。
「ああ、構わないよ?」
「そう言ってもらえると助かるわ・・・
ユウト・・・あんた、強いわね?」
「・・・どうも♪」
そんな話をしていると、悠斗の背後から罵声が聞こえてきた。
「クトゥナっ!貴様まで何をやっているんだっ!」
そう声を張り上げているのは、またしても魔法使いのダンケルだった。
「貴様も勇者パーティー失格だっ!」
そうダンケルが叫んだ時だった・・・。
突如殺気が込められたドス黒く感じる視線が悠斗へと向けられた。
その視線に悠斗は身動き出来なくなり、
ダンケルが放つ火球に反応出来なかった。
「か、体がっ!」
「ユウトっ!」
悠斗への攻撃にクトゥナは前へ出ると、その火球を蹴り飛ばし、
短剣をダンケルへと向けてこう言った。
「あんた・・・ダサい事をするんじゃないわよっ!」
その反抗的な言葉に、ダンケルは怒りに震えていた。
「貴様・・・もうそのガキに取り入ったのか?
これだから盗賊如きをパーティーに入れるのは嫌だったんですよ。
何様ですか?たかがっ!女盗賊の分際でっ!」
「ダンケル・・・ユウトはね、負傷した私を回復させてくれたのよ?
敵によ?敵であるユウトが私を回復させた・・・。
それなのに、あんたは・・・何?
罵声を浴びせたかと思うと、いきなり魔法で攻撃してくるなんて、
あんたこそっ!勇者パーティーに相応しくないわっ!」
クトゥナの言葉にダンケルは怒り狂っていた。
「き、ききき貴様ぁぁぁぁっ!誰にそんな口をっ!
わ、分かりました・・・分かりましたよっ!
クトゥナ・・・これを覚えていますか?」
怒り狂いながらも、ダンケルは懐からある巻物を取り出した。
「そ、それはっ!」
クトゥナは咄嗟に手を伸ばしたのだが、すぐに引っ込めると・・・。
「ふんっ!やりなよ?私はあんた達に脅されて、それのおかげでっ!
やりたくもない事をずっとやらされて来たんだ・・・。
それに・・・何の関係もない者達まで・・・始末してきた・・・。
それから解放されるならっ!今此処で始末されてもいいわっ!」
そう言い切ったクトゥナにダンケルは指先に火を灯すと、
その取り出した巻物に近づけて行った。
「フフフ・・・いいでしょう・・・クトゥナ、お別れですね?」
狂気に満ちたその笑みに、クトゥナは顔を歪ませていると・・・。
「止めろっ!ダンケルっ!」
そう叫びつつ、勇者がその巻物を奪ったのだった。
「な、何をするのですかっ!」
「・・・こんな卑怯な手は使うなっ!」
「い、今更何を・・・貴方と言う人は・・・」
勇者達が言い争っていると、その背後から声が聞こえた。
「・・・それ、もらうね?」
咄嗟に飛び退く勇者達だったが、一瞬早く・・・悠斗がその巻物を奪っていた。
「き、貴様ぁぁぁっ!い、一体どこから!?」
「お前、さっきの戦い見てなかったのかよ?」
そう言うと再び闇に溶け込み消えると、クトゥナの傍に現れた。
「お、おのれ・・・ガキの分際でっ!」
「ユ、ユウト・・・それ便利だな?私にも教えてくれないか?」
「えーっ?嫌だよ・・・」
「フフ、そう固い事を言うなってっ!私とお前の仲だろ?」
「仲って・・・さっき会ったばかりなんですけど?」
「フフフ・・・あっはっはっはっ!」
突然声を上げ笑い始めたクトゥナは、目に涙を滲ませていた。
「笑った、笑った~・・・こんなに笑ったのはいつぶりかしらね?」
そう言って微笑むクトゥナに悠斗も笑っていた。
「あっ、それと・・・この巻物・・・」
そう言って勇者達から奪い取った巻物をクトゥナに手渡した。
「えっ!?い、いいの?私・・・あんたの敵なのよ?」
「敵って・・・。たった今、クトゥナは勇者パーティーを首になったじゃん」
そう言って普通に答えてきた悠斗に、クトゥナは・・・。
「フフフ・・・そうね?そうだったわ・・・。
ユウト有難う・・・感謝してるわ♪」
そう笑みをこぼしながら答えると、クトゥナはその巻物を破り捨てた。
(これで解放されたわ・・・。有難うユウト♪)
「因みにそれってなんなんだ?」
「誓約書よ・・・とても悪質でヘドが出るほどのね。
この誓約書は・・・ね?神が・・・」
「あー、言わなくていいからね?予想ついてるし・・・
でも・・・にゃるほどね♪」
「貴様らぁぁぁっ!」と、突然奇声がその笑いに紛れ込んできた。
「なんなのよっ!五月蝿いわねっ!このてっぺんハゲっ!」
突然叫んだダンケルにクトゥナは怒鳴っていた。
「て、て、てっぺんハゲだとぉぉぉぉっ!貴様ぁぁぁっ!」
急に顔を真っ赤に染めながら怒鳴り散らすダンケルに、
クトゥナは舌を出してその声に応えた。
悠斗は首を捻ると・・・。
「あいつ・・・ハゲなのか?」
「え、ええ・・・。あのフードの中の頭ってね?
てっぺんだけハゲてんのよ~もう最初はフォルティナと笑ったモノだわ♪」
「あははは、それはいい事を聞いた・・・いいね~♪」
そう笑うと、悠斗はクトゥナの肩を軽く叩き一歩前進した。
「・・・次、やるのね?」
「ああ・・・あいつらをぶっ飛ばすっ!」
首をパキポキと鳴らしながら後ろに居るクトゥナに手を振って見せた。
「気をつけなさいよ?あいつは・・・」
「・・・言わなくていいよ。後で何言われるかわかんないしね~
じゃ、また後でな~」
「・・・もうっ!人が心配してるのにっ!知らないっ!」
「はっはっはっ」
そう言って歩くと立ち止まりダンケルに指を差した。
「おいっ!そこの・・・ハゲっ!いい加減出てこいよっ!」
突然悠斗から発せられた言葉に、ダンケルは凍りついたかのように
固まってしまった。
ラウル ・・・ いやはや、あのてっぺんハゲ・・・いいキャラしてるね♪
ミスティ ・・・ そうですか?私は見ていてイライラ致しますわ
ラウル ・・・ はっはっはっ。君は勿論嫌いだろうけどね~
ミスティ ・・・ あのハゲを焼け野原にしたくなりましたもの♪
ラウル ・・・ ミ、ミスティ・・・。目付きが危ないってばっ!
ミスティ ・・・ ふふふ、つい・・・ですわ♪
ラウル ・・・ あははは・・・(まじで怖いんですけどっ!)
ってなことで、緋色火花でした。




