128話 追う者、追われる者
お疲れ様です。
仕事がハード過ぎる・・・orz
なんとかアップに間に合いましたw
それでは、128話をお楽しみ下さい。
「サウザー様っ!あんたが甘いからっ!こいつら・・・は・・・
たっ、頼むからもうっ!騒ぎだけは勘弁してくれぇぇぇっ!」
冒険者ギルドの前で、ウェズンの悲痛な叫びが街中に響くのだった。
所構わず怒鳴り散らすウェズンに、ミレイが説明し始めた。
「と、言う事なのです」
「ふむ・・・。衛兵達の目的はユウトって事なのか?」
「はい、ユウト様の推察では・・・。
エルバドの息子ドリューは、既に釈放されているはずだと・・・」
ウェズンはその話を聞くと、悠斗に視線を移した。
その視線に悠斗はただ、頷いただけだった。
「わかった。すぐに確認させよう。
それにしても衛兵のやつら・・・どこまで腐っていやがるんだ」
「私の街の衛兵まで腐っているとは・・・」
眉間に皺を寄せ唸るサウザーは、ゼノに命令すると、
傍に居た2人の騎士団員を引き連れて監房へ確認に行かせたのだった。
ゼノの背中を見送った悠斗はサウザーに話しかけた。
「サウザーさん、エルバドの屋敷にも人を行かせた方がいい」
「ん?それは何故です?」
「防御を整えているか、または・・・」
「・・・?」
言葉を切った悠斗に、サウザーを含め全員が首を傾げると、
ステアが悠斗の傍に寄り、耳打ちをした。
「ユウト様・・・。まさか・・・?」
その言葉に悠斗は静かに頷くと、小声で返した。
「ああ、こんな偶然はないよね?」
「・・・はい。そうすると、恐らく・・・」
「・・・だな」
悠斗とステアがコソコソと密談している様子を見ていたサウザー達。
その様子に苛立ち始めたウェズンが声を荒げた。
「お前らっ!何をコソコソ話しやがるっ!
何かあるのならさっさと言えよっ!ふざけるなっ!」
その物言いに、悠斗はウェズンを睨みつけた。
「ウェズン・・・」
「な、何だよ・・・」
悠斗に睨まれ思わず一歩下がってしまうウェズンに、話を続けた。
「俺の仮定が正しいとして考えて見ろよ・・・」
「正しいとして・・・?」
頭を悩ますウェズンに悠斗とステアは肩を竦めていた。
そんな時、悠斗はある視線を感じると・・・。
「・・・ポーラさん?その様子だと・・・気がついたって事だよね?」
サウザー達の後ろで、ポーラが申し訳なさそうに頷いていた。
悠斗に手招きされたポーラは、軽く息を吐くと話始めた。
「ユウト様のおっしゃっている事が正しいと仮定しますと・・・。
商人であるエルバドは勇者一行の元へと向かっていると思われます」
ポーラの言葉にサウザー達は絶句した。
「ま、まさか・・・」
そう声を漏らすサウザーに、悠斗は黙って頷くと、
ウェズンに視線を向けた。
「うっ」
その視線にたじろぐウェズンだったが、
すぐさま職員を集めると、エルバド邸と馬車の停留所へと人を行かせた。
「俺達も行って来るぜっ!」
後ろの方で話を聞いていたシーバが手を上げると、
一目散に街の入口へと駆け出して行く。
(・・・確か、朝も・・・居たよな?)
そんな事を思いつつも顔をポーラ達に向けると・・・。
「ギルマス、恐らくもう街を出たと思われますが?」
心配そうな顔を見せたポーラにウェズンも、ばつの悪い表情を浮かべていた。
「ギルマスは冒険者の統率しか出来ませんものね?」
「・・・す、すまん」
項垂れるウェズンに、周りの者達も呆れていた。
すると悠斗はぶつぶつと何か言い始めていた。
「俺とミレイを襲わせた時点で、街を出たんだろうな・・・
状況的に考えて、時間に余裕のあるエルバドが、
高速馬車を使う確率は低いだろうな。
それに、寿限無を取り込む方法も・・・」
そうつぶやいていた悠斗を、黙って見ていたレダが、
何かを思い出すと、悠斗に声を掛けた。
「ユウト様、僭越ながら・・・」
片膝を着き頭を垂れたレダに悠斗は視線を落とした。
「ん?どうした?」
「はっ、実は私がこの街へ入った直後に、
豪華な馬車が街から出て行くところを見ました」
レダの話にサウザー達はどよめいた。
「ほ、本当かねっ!レダ君っ!」
「はっ、サウザー様・・・。
確かにこの目で確認致しました。
しかしながら、誰が乗っていたか・・・までは、分かりません。
ですが、ユウト様のおっしゃっていた事が正しいとするならば、
あの馬車の中には、その人物が居た可能性が高いと思われます」
そんなレダの言葉にサウザーは悠斗を見ると、小さく頷いていたのだった。
「んー・・・。
でも、どうして高速馬車を使わなかったのかね・・・?
早く逃げたいのであれば、高速馬車を利用すると思うのだが?
と、私には疑問に思ってしまうのだがね?」
その問いに悠斗は何度か頷くと答えた。
「恐らくそれは、勇者一行が滞在していると思われる場所が、
この街から離れている事と、今が夜だと言う事・・・。
それに・・・。
勇者一行は、穀潰し・・・ですよ?
エルバドが所有する豪華な馬車を見たら一目瞭然でしょうね?」
「「なるほど~・・・」」っと、声が重なった。
サウザーは隣に居たウェズンを見ると、とても感心した様子だった。
呆れた表情を浮かべるサウザーは、悠斗に肩を竦めて見せると、
そこに居た全員が笑っていた。
話が一旦落ち着きを見せた時、ゼノと2人の騎士団員が戻ってきた。
「サウザー様っ!報告致しますっ!」
息を荒げながら、ゼノはサウザーの前で片膝を着いた。
「うむ・・・で?どうだったのだ?」
「はっ!ユウト様のおっしゃる通りでした」
「・・・うむ」
すると・・・。
エルバド邸へと向かった者達と馬車の確認へ行った者達も
慌ただしく戻ってきた。
「ほ、報告致しますっ!既にエルバド邸は蛻の殻ですっ!」
そして馬車の確認に行った者達も息を切らせながら片膝を着いた。
「ほ、報告・・・い、致しますっ!
こ、高速・・・ば、馬車は、使用されておりませんっ!」
「うむ・・・。ユウト様が推察された通りか・・・」
サウザーが手を顎に当て考え始めた時、
通りを物凄い速度で駆けて来る者達がいた。
「ユウト兄貴ーっ!」
そう叫びながら駆けて来ると、悠斗の前に片膝を着いた。
「報告しやすっ!門兵を締め上げたところ・・・」
そう話すシーバに、悠斗は顔を見つつ会話を遮って話した。
「・・・エルバドだったんだろ?」
「な、何故・・・それを?」
「有難う・・・えっと・・・シーバさんだっけ?助かったよ」
「はっ!兄貴の役に立てて嬉しいぜっ!
じゃ、なかった・・・。こ、光栄に御座いますっ!
そ、それと・・・」
シーバは話を続けようとした時、ふと見上げた悠斗の存在感に、
圧倒されてしまって声を詰まらせてしまったのだった。
(お、俺達って、こんなスゲー人に喧嘩を売ったのか?
い、今でも震えが来る程・・・こぇぇぇ・・・)
「他に何かあるのか?」
「は、はっ!エルバドの馬車とは他に、
あと、15人ほどが乗れる馬車が2台追従しているようですっ!」
「・・・多いな。有難う・・・本当に助かったよ。ご苦労様」
「ははっ!兄貴の役に立てて・・・。
い、いえ、ユウト様の役に立てた事をほ、誉と致しますっ!」
(んー・・・。確かに何処かで見たような?)
そう思いつつサウザー達へ視線を移すと・・・。
眉間に皺を寄せ考え込むサウザーが居た。
悠斗の視線に気付いたサウザーは、悠斗に頷いて見せると、
「・・・了解」とだけ答えた。
その声にサウザーは声を張り上げた。
「よいかっ!今、此処に居る者達だけでっ!逃亡したエルバドを追うっ!」
そう宣言したサウザーだったが、その宣言に騎士団員達が疑問を呈した、
「しかしながらサウザー様・・・。
騎士団員達を含めても僅数名ですが?」
「問題なかろう?此処には、腕の立つ冒険者達がいるのだからなっ!」
サウザーの言葉に、ウェズン達は声を高らかに上げた。
すると今度はレダが小声で周りの目を気にしながら疑問を呈した。
「しかし・・・勇者一行が・・・。
勇者に剣を向ける事は・・・神への冒涜に・・・」
不安を見せるレダにサウザーは悲し気な表情を浮かべ小声で答えた。
「勇者は・・・ユウト様が相手をしてくれる・・・。
だから・・・君は、君の出来る事をしたまえ」
感情を押し殺したサウザーの声に、レダは悠斗に視線を向けた。
「ユ、ユウト様・・・?そ、そんな事をすれば・・・
ユウト様が、神から追われる事に・・・」
わなわなと震えるレダに悠斗は親指を立てると・・・。
「任せろ」
そう応える悠斗にレダは拳を力一杯握り締めるのだった。
「も、・・・申し訳・・・ありません」
「ははは・・・これも俺の仕事・・・みたいなモノだからさ」
優しく微笑んで見せる悠斗にレダは涙を浮かべていた。
「神の加護さえ・・・なければ・・・。
運命神の加護などがなければっ!こんな私にも・・・」
その言葉に喰い付いた悠斗は、レダに詰め寄った。
「レダっ!勇者の加護神は運命神なのかっ!」
「は、はいっ!た、確かに・・・そう聞き及んでおります」
「・・・まじか・・・。だとしたら・・・」
悠斗の感情が溢れ出てきたその様子に、歯を食い縛るレダ。
それに気付いた悠斗はそっとレダの肩に手を置くと・・・。
「・・・レダが心配する事はない。勇者は俺に任せてくれ」
そう言って、サウザーを見て頷いて見せるのだった。
悠斗の言葉をサウザーが受け取ると、
サウザーは冒険者達に振り向き声を上げた。
「エルバドを追うのはっ!少数精鋭とするっ!ウェズン選抜したまえっ!」
「はっ!」
サウザーの意思の強い言葉に、ウェズンも片膝を着き応えたのだった。
それから30分後・・・。
エルバドを追う者達12名が馬に乗り、アシュリナの港町を出発した。
その頃エルバド達は・・・。
「お、親父・・・急がなくていいのかよ?」
「ふんっ!儂らが何処へ向かっているかなどわかるまい」
急ぐ様子もない父親に、ドリューは不安を隠せないでいた。
「だけどよ~親父?」
「全く・・・お前は一体誰に似たのやら・・・」
そう言いつつ、エルバドは向かい側に座る妻を睨んでいた。
その妻は、エルバドに逆らう事も出来ず、顔を伏せていた。
(儂らが勇者一行に会うとは思ってもいまい・・・。
上手く勇者達を焚き付けて、あの街を儂のモノにしてやろう。
フッフッフッ、サウザーめ・・・貴様はもうお終いだ)
薄気味悪く笑うエルバドにドリューは悪寒が走った。
「で・・・今から勇者達に会うんだろ?
俺達の味方になってくれる保証はあるのかよ?」
ドリューの話にエルバドは高笑いすると、
冷ややかな目を息子に向けたのだった。
「いいかドリュー?いずれお前も儂の跡を継ぐ男だ。
お前は儂の一人息子なんだぞっ!全く・・・だらしがないっ!
クズ見たいな連中などに負かされおってっ!
これから言う事をしっかりと覚えておけっ!いいな?」
「・・・はい」
父親の威圧にドリューは心底怯え、返事をするのがやっとだった。
「この世で商人が最も大切にしている事がわかるか?」
「・・・か、金や・・・権力?」
「それも大切ではあるがな?
息子よ?商人に取って最も大切なのは、情報だ」
「情報?」
「ああ~そうだ。情報は途轍もない金になる。
貴族連中などは、喉から手が出る程、情報に飢えておる。
儂らにとって、取るに足らん情報に、やつらは大金を払うのだ。
フッフッフッ・・・貴族とは馬鹿な連中ばかりだ・・・。
それにお前の人生はこれからまだ続くのだぞ?
こんな事で躓ている場合ではないっ!」
横に座る息子を見ながら、
エルバドは勇者達を担ぎ上げる算段を考えていた。
(所詮勇者と言えど、世間知らずのただの馬鹿どもだ・・・。
噂通りであるとすれば、儂のこの馬車を見れば一目瞭然であろう。
問題はだ・・・。
サウザーどもを始末した後だな?
勇者に剣を向ける事は、神へのそれと同じ・・・か。
ふむ・・・。
まぁ~儂が手を汚す必要はない・・・ならばだ・・・。
暗殺ギルドの手練達に、始末してもらうか?
多少の出費は構わん・・・。
勇者どもに吸い尽くされるよりは、安く付くだろうからな・・・。
フッフッフッ・・・。
邪魔なやつらなど、儂が全て消し去ってくれるわっ!
儂はまだ終わらんっ!この国ごと奪ってやるわっ!)
エルバドは思いに耽りながら、ニヤニヤと笑みを浮かべていると・・・。
突然「ガタッ!」と、馬車が大きく揺れた。
馬車に乗る家族達は何も言わずただ座っていたのだが、
エルバドはそうではなかった。
エルバドが背にする御者台側の壁を激しく叩くと・・・。
「貴様ぁぁぁっ!儂の馬車に傷が付いたらどうするのだっ!
もっと速度を落とせっ!儂の馬車が壊れたらどうするのだっ!」
「も、申し訳、ご、ござ、御座いませんっ!」
声を震わせ謝罪する御者に苛立つエルバドは、
「これだから下民はっ!」と、ブツブツ罵ると、窓から見える闇を見ていた。
それを見ていたドリューは、そんな父親の姿を見て思った。
(お、俺は本当に親父のようになるのだろうか?
た、確かに親父の言う事はわかる・・・。
金さえあれば、誰からも馬鹿にされる事もない。
だけど・・・何か間違っている気がする・・・。
俺も将来、親父のような人族になるのだろうか?)
親父の背中を見て育ったドリューは、
そんな父親のまねをし、虚勢を張ってはいるが、
ドリューの心の中では決してそうではなかった。
そんな時ふと・・・、ドリューの前に座る母親と目が合った。
息子の心を察してか、母親はただ・・・小さく首を振ったのだった。
「母さん・・・」
そうつぶやくドリューに、母親は目を伏せたのだった。
(俺達はきっと・・・あいつらに追われているはずだ。
ほ、本当なら・・・お、俺は親父に・・・。
だけど、親父のやり方では、敵しか作らない。
財力と権力・・・そんな訳の分からないモノに振り回されている。
俺はこれでいいのか?
親父に怯え虚勢を張る日々で・・・本当にいいのか?)
ドリューは若いながらも苦悩していた。
そして・・・。
(・・・そ、そうだっ!あいつらに賭けようっ!
親父が正しいか正しくないかを・・・あいつらが・・・
いや、あいつが・・・それを証明してくれるはずだ
・・・俺を解放してくれ・・・頼むっ!)
ドリューはこの時、港町のゲート前で出会った、
悠斗と呼ばれる男に、運命のサイコロを託すのだった。
ラウル ・・・ 悠斗君達は頑張って追いかけているようだね~
ミスティ ・・・ そうですわね。あのような者が居るから・・・。
ラウル ・・・ 自分が作った世界なんだけど、悲しいとしか言いようが><
ミスティ ・・・ 地球の神々にも大変お世話になりましたからね~
ラウル ・・・ うむ・・・。いい勉強にはなったけどさ
ミスティ ・・・ 普段から勤勉だと良かったのですが?
ラウル ・・・ 頑張って修正するもんっ!悠斗君任せだけど^^;
ミスティ ・・・ はぁ~・・・。
ってなことで、緋色火花でした。




