126話 勇者の名と神獣達の紋章
お疲れ様です。
こんな寒い日に、夜キャンしたい今日この頃・・・w
焚き火の炎を見ながら・・・いいですね~w
年末ですが・・・仕事頑張ります><
またしても忘れていました。
次回のアップは、活動報告に記載しております^^
それでは、126話をお楽しみ下さい。
悠斗達はここ、アシュリナの冒険者ギルドで、
「勇者一行」についての会議が行われていた。
「ユウト・・・お前、勇者の名を知らないのか?」
「・・・知る訳ないじゃんっ!俺って異世界人だぞ?」
「・・・ははは、ユウト様が知らないのは仕方がないでしょうな」
サウザーは汗を拭いながら、勇者について話をした。
「勇者の名は・・・。
ペネトレー・マハナ・エル・ドリエント・マカフォリアス・マグナ・
シルオルティウス・カローナマイトス・イサ・レゼントです」
「・・・・・・・・・・」
勇者の名を聞いた悠斗は、黙り込んでしまった。
不思議に思ったサウザーは悠斗に声をかけた。
「ユウト様?大丈夫ですか?」
「・・・あ、ああ」
その反応に悠斗以外全員が顔を見合わせた。
首を捻るサウザーは再び悠斗に声をかけていく。
「ユウト様・・・も、もう一度言いましょうか?」
「・・・はい」
「で、では・・・コホン。
ペネトレー・マハナ・エル・ドリエント・マカフォリアス・マグナ・
シルオルティウス・カローナマイトス・イサ・レゼントです」
「・・・・・・・」
またしても反応のない悠斗を見て不安になってしまうサウザーは、
項垂れる悠斗の顔を覗き込もうとした時、
悠斗の口が「ぶつぶつ」と何かを言っているのが見えたのだった。
「・・・・ペ、ペネトレー・・・・マ、マハ・・・・やれやれ。
だぁぁぁぁっ!!なげーよっ!その長い名に意味があるのかっ!
名だけで二行使うってありえないだろっ!
寿限無かっ!えっ!寿限無なのかっ!」
「に、二行って・・・?」
ステアは悠斗の言葉の意味がわからなかった。
突然悠斗が狼狽し始めるのを見た全員が、
言葉無く固まってしまったのだった。
「ないわー・・・まじ、ないわー・・・」
と、頭を抱える悠斗の姿がここにあった。
少し悠斗が落ち着いたのを見計らっていたサウザーが声をかけた。
「ユ、ユウト・・・様?だ、大丈夫・・・です・・・か?」
「ま、まぁ~なんとか・・・で?そのペネトレー・・・なんちゃらは
いつこの街に到着するんだ?」
「ユウト様・・・
ペネトレー・マハナ・エル・ドリエント・マカフォリアス・マグナ・
シルオルティウス・カローナマイトス・イサ・レゼントです」
「・・・うぅぅぅ。もうバカ勇者の名前なんてどうでもいいっ!
もう一噌の事・・・寿限無にしようっ!」
「じゅ、じゅ・・・げ・・・む?」
サウザーを含め、残りの者達も何も言えなくなっていた。
「でっ!?その寿限無はいつ到着するってっ?」
妙な迫力にサウザー達は気圧されてしまったが、
咳払いをすると、悠斗に説明を始めるのだった。
「「勇者一行」は・・・。
この街から南へ80kmほどにある港町で揉め事を起こして出ると、
丁度中間地点である宿に滞在しております。
恐らくそこからは、高速馬車でこの街へ来ると思われますので、
・・・明日の昼過ぎには到着するかと・・・」
その話をし終わると、ステアがサウザーの話のフォローをした。
「ユウト様、勇者一行は時間にルーズだと聞き及んでおります。
従って、朝一番・・・と、言う事はないかと思われます」
「・・・なるほどね。
じゃ~ステア?聞きたいんだけどさ・・・。
その勇者一行がこの街に到着して、まず最初にやる事ってある?」
悠斗の言葉にステアは少し考え込むと・・・。
「恐らくですが・・・まずは酒場ではないかと?」
「酒場ねぇ~・・・」
「はい、今までの街での噂を考慮しますと、
まずは到着早々、酒場で夜通し酒と女を煽り、
その翌朝、領主などの力を持つ貴族や豪族、
そして商人などの屋敷に寄って、
金銭を要求する・・・と、言ったところかと・・・」
「まじか?最低なヤツだな・・・」
「・・・はい」
悠斗はステアの話を聞くとサウザーに声をかけた。
「サウザーさん、貴方はその寿限無一行をどうしたいんですか?」
(ユウト様・・・もはや勇者一行とは言わないのですね?)
と、ステアがそう思う中、サウザーが返答した。
「そうですね・・・。
私はこの街に危害が及ばないのであれば・・・と」
「危害ですか~・・・それって生温い気もするけど?」
「そう思われるかも知れませんが・・・」
曖昧なサウザーの物言いに、ウェズンも口を開いた。
「その危害ってのが曖昧過ぎて分からないのですが?」
「・・・そうね、金銭を巻き上げる事も危害に入りますから・・・」
「ああ、そうだな?真面目に頑張っている領民が、
バカを見るってのはよくある話だからな」
勇者一行に対して、穏便に済ませられるならと、
そう考えるサウザーの気持ちは、ここに居る全員が分かるのだが、
それは都合が良すぎる話でもあった。
「た、確かに私は甘いのかも知れない・・・
だが、金銭で済むのなら・・・私が全力で補填する。
領民の命がそれで済むのなら・・・私は・・・」
テーブルを強く叩き、悔しさが滲み出ているサウザーに、
全員が何も言えなくなってしまった。
だが、悠斗は違った。
「サウザーさん、金銭で済むと言う話じゃないよ?
搾取された者達の心の傷は一生・・・消えないはずだしね?
それに、補填するって言っていたけどさ、
もしその補填を上回るような事になったらどうするんだ?」
「そ、それは・・・ほ、他の貴族に・・・頼むしか・・・」
「それで間に合うの?」
「・・・・」
悠斗に現実を考えさせられたサウザーは、
膝の上で拳を握っていたのだった。
その様子を見かねたウェズンが、悠斗に声をかけた。
「ユウト・・・無理な話をするんだが・・・」
そう言いかけたウェズンに、悠斗は笑顔で答えた。
「いいよ・・・俺が・・・ヤろ・・・いや、俺が何とかしてみるよ」
悠斗は言葉を切って言い直した事に、ウェズンは頭を下げた。
「神に対して剣を向ける行為・・・すまんな?」
ウェズンの表情からは悔しさが見て取れたのだった。
「ユウト様・・・俺達にも何か出来る事は?」
そう話を切り出したゼノの目は真剣そのものだった。
「ウェズンも今、言ったろ?
勇者に剣を向ける行為は・・・神へ剣を向ける行為だってさ?」
「し、しかしですね?ユウト様にだけそんな重荷をっ!」
「んー・・・ゼノ?お前の気持ちはよく分かったけどさ、
お前達はサウザーさんの力になってやってくれ。
それがこの街の為・・・だと思うよ?」
悠斗の気持ちに全員が胸を熱くするのだった。
そしてまたその全員が、己の無力さを痛感していた。
「ほ、本当に申し訳ないっ!」
涙を流しながら言葉を漏らすサウザーの姿がとても印象的だった。
「・・・寿限無一行を見てから決めるよ」
「・・・分かりました」
絞り出すように返事をするサウザーの肩を叩くと、
悠斗は立ち上がり「じゃっ!」とだけ言って退室していった。
会議室に残った者達は、口々に無力な自分を呪っていた。
「わ、私にもっと力があればっ!」
そう呻くサウザーにウェズンが答えた。
「俺だって同じだ・・・だが相手は、勇者だ・・・俺達では歯が立たん」
「俺だってよっ!ユウト様にこんな重荷を背負わすなんて・・・
納得いってねーよっ!
だってそうだろ?あの人は異世界の人なんだぜ?
縁もゆかりもないこの世界の為にっ!わざわざ来てくれんたんだっ!
何も出来ない自分が・・・己の無力さをこんなに痛感したのは・・・
お、俺は・・・初めてかも・・・しれない・・・」
思いの丈を話すゼノの気持ちは、痛いくらいに分かっていた。
「ユウト様がもし・・・もし万が一、闇に落ちたとしても、
私はあの方にだけは、剣を向けません。
そしてもし、受け入れてもらえるのなら・・・
私の全身全霊を持って、あの方に仕えたいと思います。
例えそれが・・・神に剣を向ける行為だったとしても・・・」
ステアの言葉に、衝撃を受けたのだか・・・
その気持ちは、ここに居る全員の気持ちでもあった。
だから・・・
「もしもだ・・・。もしもそんな事になったら・・・
このサウザー・アシュリナっ!私も共に神に剣を向けようっ!
そして今、私は自分の名に誓おうっ!」
その言葉に全員が立ち上がると、
悠斗がこれからどうなろうとも、忠誠を誓うと全員が宣言したのだった。
「ユウト様にっ!」
「「「ユウト様にっ!」」」
そんな話が会議室で行われていた頃・・・。
悠斗は張り出された依頼表を見た後、冒険者ギルドを後にしていた。
「もうすっかり日が暮れたな~・・・」
宛もなくブラつく悠斗は、通りを行き交う人達を見ていた。
(みんな楽しそうだな・・・いい顔してる♪)
痛む左手を上着のポケットに入れながら歩いて行く。
すると、前に一度セルカと立ち寄った串焼き屋が目に止まった。
(あ~・・・そう言えば、腹減ったな)
噴水の広場にある屋台へ悠斗は肉の焼ける匂いに釣られ近づいた。
「へいっ!らっしゃいっ!」
串焼き屋の親父さんがそう言いながら悠斗の顔を見ると・・・
「あ、あんたはこの前セルカと一緒に来たにーちゃんじゃねーか?」
そう言いつつも、親父さんはセルカを探していた。
「ん?セルカはいねーのかい?」
「ああ、今セルカとは別行動なんだ」
「そうか・・・で?今日はどうした?」
親父さんはそう言いながら、パタパタと串焼きに風を送っていた。
「えっと~・・・その串焼きを・・・そうだな?
3本ほどもらえる?」
「あいよっ!ってか、3本でいいのか?」
「ああ、今日はそれでいいんだ」
「わかった・・・3本だな?
今、美味いところを焼いてやるからよ~?
そこのベンチにでも座って待っててくれや・・・」
気さくに話してくる親父さんの言葉に甘えると、
悠斗は店横のベンチに腰を降ろした。
悠斗は徐にマジックボックスからアイテムバッグを取り出すと、
その中身を片手だけでチェックしていく。
(そう言えば・・・
プロキシオン達から色々なアイテムをもらったんだっけ?)
中身のチェックを始めた悠斗は、
似たようなモノが3つもあると気付くと、そのアイテムの1つを手に取った。
(何だ・・・これ?)
アイテムバッグから取り出したモノは、
竜の顔が掘られたペンダントだった。
白銀の竜の細工はとても見事で、ひと目見ただけで、
その価値が高いモノだとすぐに分かった。
(鑑定・・・してみるか・・・)
(鑑定終了しました。
鑑定結果・・・。白銀竜の紋章。
紋章の力を発動すると、スキル・・・白銀の息吹を習得。
白銀の息吹は、習得者の四肢より発動する事が可能。
白銀の息吹は、あらゆるモノを氷漬けにする。
ただし、1度目以降は習得者の神力を消費する。
習得後・・・体の一部位に紋章が刻まれるとアイテムは消失する。
また、その刻まれた紋章が白銀竜の証となる)
(氷系か・・・まじか。すごいモノをもらったな・・・ありがとなラムダ)
悠斗は心の中でラムダに礼を言うと、残りのペンダント2つを取り出した。
1つは白い翼をモチーフに作られたペンダント。
そしてもう1つは・・・
(な、なんだ・・・?犬の足形・・・か?)
(鑑定・・・)
悠斗は一度に2つのペンダントを鑑定した・
(鑑定終了しました。
鑑定結果・・・。古代狼の紋章。
紋章の力を発動すると、スキル・・・古代狼の爪牙を習得。
古代狼の爪牙は、習得者の四肢より発動する事が可能。
体術及び、身体能力が一定時間向上する。
ただし、1度目以降は習得者の神力を消費する。
習得後・・・体の一部位に紋章が刻まれるとアイテムは消失する。
また、その刻まれた紋章が古代狼の証となる)
(へぇ~・・・。プロキシオンのスキルは身体強化みたいなモノか?
サンキュー・・・プロキシオン。
だけどな~・・・足形の紋章か~・・・ちょっと、恥ずかしいんだが?)
(で、最後にっと・・・。
鑑定結果・・・。白凰の紋章。
紋章の力を発動すると、スキル・・・白凰の飛翔を習得。
白凰の飛翔は、習得者が自由に飛行する事が可能。
高速飛翔で時間制限はなし。
ただし、1度目以降は習得者の神力を消費する。
習得後・・・体の一部位に紋章が刻まれるとアイテムは消失する。
また、その刻まれた紋章が白凰の証となる)
(まじか?まじで空を飛べるのかっ!キタァァァァッ!!
まじ、マーベラスっ!・・・ロゼッタっ!)
悠斗は神獣達の心遣いに感謝していた。
(今度会ったら、みんなにお礼を言わないとな・・・有難う)
3つのアイテムを鑑定し終わったところで、
串焼きの親父から声がかかると、アイテムを全て首から掛け、
屋台へと串焼きを取りに行った。
代金を払い終えると、広場の真ん中にある噴水近くのベンチに座った。
この場所は以前、セルカと共に座り、肉を頬張った場所である。
(なんでみんなは、このベンチに座らないんだろ?
何だか勿体ないな~・・・いい場所なのにさ~)
そう思いつつ、悠斗は肉を頬張った。
(うっ、うまっ!! 親父さん・・・まじ鉄人っ!
こ、この芳醇な味と香り・・・ん~実に素晴らしいっ!)
美味しそうに頬張る悠斗の姿を見た人達が見ていると、
悠斗は肉を頬張りながら、親父さんの屋台に指を差した。
「ふがっち・・・ふがふよっ!」(あっちにあるよっ!)
「よ、よく分からねーが、サンキューにーちゃんっ!」
と、見ていた人達が親父さんの店へと駆け出した。
悠斗はそんな光景に視線を移しながらも肉を頬張っていく。
3本とも食べ終わった悠斗は、アイテムバッグから水を取り出すと、
覚えのある気配と、その他のいくつかの視線に気がついたのだった。
その覚えのある気配を追って視線を向けると・・・。
「ユウト様・・・またこんな所で食べているのですか?」
呆れた声で近づいて来たのは荒波の旅団の魔法使い、ミレイだった。
ラウル ・・・ うむ・・・悠斗君は神獣達からアイテムを・・・なるほど。
ミスティ ・・・ 悠斗さんは神獣達と、とても仲が宜しいですから^^
ラウル ・・・ 僕も何か超レアにアイテムでも送ろうかな?
ミスティ ・・・ お止め下さい。ラウル様のようになられても・・・。
ラウル ・・・ ん?僕に何か言いたい事でもあるのかい?
ミスティ ・・・ 言っても聞いてもらえませんので・・・。
ラウル ・・・ 頑張って話してくれれば、言う事を聞く日が来るかもよ?
ミスティ ・・・ ラウル様はかまってちゃんって事ですわね?
ラウル ・・・ ぼ、僕を全力で構いなさいよっ!
ミスティ ・・・ 過労死してしまいますので・・・無理ですわね?
ラウル ・・・ ・・・無情だ
ってなことで、緋色火花でした。




