125話 新たなる能力と謎の敵
お疲れ様です。
寒波が来襲しましたね・・・。
明日、原付きのメンテなのですが・・・大丈夫かな?
今から少し心配な緋色でした。
それでは、125話をお楽しみ下さい。
徐々に力を失いつつある異形な目玉の背後から声が聞こえてきた。
「やれやれ、また・・・お前か?
まぁ~・・・でも、試すには丁度いいか・・・な?」
そう聞こえた時、一瞬だけ悠斗は自分の思考の海に潜った。
(ミツチ・・・聞こえたな?)
(うん♪聞こえたよ♪アレを・・・やるのね?)
悠斗は体の中に宿るスピリットのミツチに語りかけた。
(制御のほうはオイラに任せておきなよ♪)
(ああ・・・頼むぞ?ククノチ)
(へっへーんっ!)
(万が一の時は・・・ミツチ・・・お前に任せた)
(精一杯頑張るわっ!
でも・・・3人の精霊力を合わせても、それでもまだ足りないわ。
その分は・・・どうするの?)
(足りない分は・・・ちゃんと考えてあるよ♪)
(ふふ♪それなら大丈夫そうね?)
(じゃ~・・・やるぞっ!)
((おうっ!!))
悠斗は心の中で2人のスピリット達と話し終えた。
思考の海に潜った時間は、僅か・・・5秒ほどだった。
思考の海から戻ってきた悠斗は、
分身ザルの追跡中に、ある訓練をしていた事を、
思い返していた。
悠斗は精霊種との親和性が異常に高い。
それを活かした新たなる力の開発に取り組んでいたのだ。
悠斗の中に宿る2人のスピリットに協力してもらう事によって、
得られた新しい・・・能力。
(・・・まだ未完成だけどっと・・・)
「精霊力・・・解放っ!」
悠斗がそう発すると、全身から白銀の光が吹き出しのだった。
「ぐぁっ!・・・な、何度やっても・・・な、慣れな・・・いな」
異形なる目玉の背後で、顔を顰める悠斗の姿があった。
(グギャァァァ!ナ、ナニ・・・ヲシタッ!)
「・・・お前達はなんだ?」
異形なる目玉の背後から、顔を顰めつつ悠斗が問う。
(ギャァァァ!・・・ハ、ハナ・・・スコト・・・ハ・・・ナイ)
「そうか・・・なら、消えろ」
そうポツリとつぶやくと、悠斗は目を閉じ集中した。
(・・・白き・・・炎よっ!)
悠斗が目を開くのと同時に異形なる目玉から、
白銀の炎が吹き出した。
「くっ・・・きつっ!」
悠斗はその力に一瞬視界が歪んで見えた時だった。
(マスターっ!ちゃんと考えているって・・・コレかよっ!)
(ははは・・・精霊の力だけで足りないなら・・・
神獣達の力もって・・・そう思ったんだよね)
(・・・無茶しないでよっ!マスターっ!
私達は平気でも、マスターはただじゃ済まないわよっ!)
(ま、まぁ~・・・やるだけやってみないと・・・ね)
(しょうがねぇーなっ!おいっ!ミツチっ!
オイラ達で全力でフォローするぜっ!)
(わ、分かってるわよっ!バカククノチっ!)
白銀の炎に焼かれていく異形なる目玉は、
まるで拷問を食らっているかのように絶叫していた。
(ギャァァァっ!ア、アツイっ!コノ・・・ワ、ワタシガ・・・
ヒ、ヒトゾク・・・ナ、ナドニっ!ウギァァァァァっ!)
「もう・・・しゃべるな。鬱陶しい」
悠斗は異形なる目玉の背後から、嫌悪の眼差しを向けると、
掴んでいたその手に力を込めて・・・握り潰した。
(ギャァァァァっ!・・・ア、・・・アス・・・ラ・・・サマ)
白銀の炎で焼かれた異形なる目玉は悠斗の手の中で塵となった。
悠斗は掌を見つめると・・・
(アス・・・ラ?それがボスの名か?
なんだろ?何処かで聞いたコトがあるような・・・?)
そう思いつつ、悠斗は拳を握り締めると、激痛が走った。
「痛っつ・・・!」
悠斗は自分の手を見た瞬間、掌が焼けただれていた事に気付いた。
「ははは・・・もっと修練積まなくちゃな」
そうボヤいた時、ゼノ達が悠斗の元へ駆け寄ってきたのだった。
「ユウト様っ!あ、あれは一体・・・何だったんですかっ!」
ゼノは悠斗に迫ると己の中の疑問を最優先でぶつけてきた。
すると、ステアがゼノの頭を殴りつける。
「ゼノっ!貴方はバカなのですかっ!
今は一刻でも早く、ユウト様の治療をするのが先決でしょうにっ!」
「い、痛てーよっ!ステアっ!それは分かってるからよっ!
も、もう少し手加減してくれてもいいじゃねーかよっ!
痛て、ててて・・・」
そんな2人がやり取りしていると、ウェズンが大笑いしていた。
「はっはっはっ!お前達・・・まるで夫婦みたいだな~?」
ウェズンの言葉に2人は赤い顔をして目を背けてしまった。
悠斗はそんな光景に少し笑うと、負傷した手にヒールをかけた。
完治したかと思われた左手を握ると、激痛が再び走った。
「痛っつっ!」
その激痛で悠斗の膝が一瞬崩れたが、何とか堪える事が出来た。
「お、おいっ!ユウトっ!回復したんじゃねーのか?!」
ウェズンは見た目完治している左手を見て目を細めた。
「なぁ、ユウト・・・見た目は何ともなってねーぞ?」
此処に居た全員が悠斗の手をまじまじと見ていた。
「んー・・・。俺が無茶したせいだとは思うんだけど・・・」
(これってやっぱり・・・?)
心で漏らしたその疑問に答えたのはスピリット達だった。
(マスター・・・いくら何でも無茶し過ぎだぜ?)
(そうよ、そうよっ!ククノチの言う通りよっ!
覚えたての精霊力なのに、それなのに神獣の力も使うなんてっ!
いくら私達が制御したって、これじゃ~意味ないじゃないのっ!)
(いや、だってさ?・・・いけそうな気がしたんだけど・・・)
言い訳じみた物言いに、スピリット達は呆れてしまっていた。
(ミツチ・・・マスターはこう言う人なんだぜ?
これはある意味、手遅れってヤツなんだと思うぜ)
(はぁ~・・・。もう言うだけ無駄って事が分かったわ。
でも、マスターの左手の原因を探らなくちゃ・・・
ククノチ、手伝ってもらえる?)
(おうっ!勿論いいに決まってるだろっ!)
悠斗を一人残して、ミツチとククノチが原因を調べる事になった。
そして2人のスピリット達が、その場から移動しようとした時・・・。
(マスター・・・今日はもう無茶すんなよ?
それと、暫く原因を調べるのにかかると思うから、
それまではおとなしく・・・なっ!)
(次からは・・・気をつけてよね?)
(はい・・・ごめんなさい)
スピリット達に怒られた悠斗は、言い分はあるのだが、
今回は素直にミツチとククノチに謝ったのだった。
心の中で会話していた悠斗は、ウェズンの声に反応して戻ってきた。
「あっ、悪い・・・で?どうした?」
まるで他人事のように話す悠斗に、ウェズン達も呆れていた。
「お、お前なぁ~?自分の体の事だろ?」
「あははは・・・そうだね。一応これでも少しは反省しているんだけどね?」
反省の様子が全く見て取れない悠斗に、ゼノが口を開いた。
「ユウト様?もう少し自分を大切にしたほうが・・・」
「・・・大切にか・・・そうだね」
ゼノの言葉に悠斗は少し悲しげな目をした。
そしてその目は、何かを思い出しているような目だった。
「ユウト様・・・?どうかされたのですか?」
悠斗の状態に気付いたステアが心配そうな表情で覗き込んできた。
「あ、いや・・・何でもない」
「・・・そうですか」
「まぁ~今回は慣れない力を使った挙げ句、
違う力も同時に使っちゃったからね~・・・
無茶をしたとは思ってないんだ、出来ると思ったから使ったんだけど、
認識が甘かったね」
そう話す悠斗を見た3人は、
どこか悠斗が命を粗末にしている気がするのだった。
(最初に会った時から、こいつは自分の命を軽く見てやがる。
何故かは俺にはわからねーが、こいつにも色々と事情があるのだろう)
ウェズンはこのギルド本部で出会った時、何故かそう直感していたのだった。
(ユウト様の戦い方は正直ヤベェー・・・。
ベルフリード家とやり合った時もそうだった。
自ら死地へ向かって行ってしまう。
本人は気付いていないようだが、ユウト様からは死の匂いがする)
ゼノもまた悠斗と出会った時の事を思い出していた。
戦っている時の異常に冷めた目・・・。
その眼差しにゼノは本能的にそう直感していたのだった。
(ユウト様は死地を求めている気がするわね・・・。
異世界より神によって送り込まれた救世主だものね。
ユウト様を守る者が必要だわ・・・。私にもっと力があれば・・・)
ステアは元、暗殺者・・・。
それ故に、死地へと赴く悠斗の行動が理解できた。
しかしそれをステアは是とはしなかった。
冒険者ギルドの会議室に、重苦しい空気が漂っていた。
「・・・な、なに?この雰囲気・・・?
みんな怖い顔しているんだけど・・・大丈夫?
みんなはちゃんと寝ているの?無理はダメだぞっ!」
悠斗は空気を読んでいて、実は全く読んでいなかったその発言に、
全員のこめかみが「ピクリ」と脈打った。
「てめー・・・ユウトっ!みんなお前の事を考えてだなっ!」
「そうだぜっ!ユウト様っ!みんなあんたの事を心配してんだぜっ!?
そ、それなのに、あ、あんたって人は・・・はぁ・・・」
「・・・ユウト様、もう少し空気を読んで下さい」
それぞれが言いたい事を言うと、3人は同時に深い溜息を吐くのだった。
「えっ?・・・悪いのって・・・俺なの?」
「「「はぁ~???」」」
「・・・す、すみません」
3人の迫力に気圧された悠斗は、素直に頭を下げるのだったが、
その時、頭を下げたその視線に、サウザーが倒れていたのだった。
「あぁぁぁっ!サウザーさんの事・・・忘れてたっ!」
「「忘れてたのかよっ!!」」
本気でそんな事を言った悠斗に対し、
ゼノとウェズンは、思わずシンクロして突っ込んでしまった。
それを見ていたステアはポツリと・・・。
「・・・だと、思いました」
冷静に悠斗を見ていたステアは出来るメイドさんだった。
そして此処は、とある失われた種族の地底宮殿。
「・・・御館様申し上げます」
石で出来た重く大きな扉を開け、一人の男が入ってきた。
「・・・何かあったのか?」
そう答える男は、見事な彫刻が施された石の王座に鎮座していた。
扉から入って来た男は、王座に座る者の前に膝を着くと、頭を垂れた。
「はっ、只今報告が入りました」
「・・・うむ」
「サウザー・アシュリナと言う領主に取り憑いていた、
ギョルスの反応が先程消失致しました」
頭を垂れる男がそう報告すると、鎮座した男が目を細めていた。
「・・・これで2体目か・・・この世界の者の中にも・・・
能力を持つ者が居ると言う事だな?」
「はっ、左様で・・・」
「うむ、面白いではないか・・・暫く見物するとしよう」
「はっ、かしこまり・・・」
「ただしっ!」
「は、はっ!」
「・・・誰も手出しする事は許さんからな?」
そう言って鎮座する男は、口角を上げていたのだった。
不思議に思った男は問う・・・。
「何故で御座いましょうか?」
「・・・我々の力はまだ戻ってはおらぬ。
そしてギョルスを倒した者が居るとなると・・・
将来が楽しみではないかっ!はっはっはっ!」
鎮座する男は、気分が高揚し高笑いした。
「た、楽しみとは・・・またなんとも・・・」
その高笑いに含まれた威圧に、頭を垂れた男は冷や汗を流していた。
「誰かはわからぬが、それはそれで面白いからな?
もっと力を付けて、俺の前に現れて欲しいものだな・・・」
鎮座する男は、将来相見えるであろうその者に、
期待をするのであった。
そして・・・。
ここは再び港町アシュリナの冒険者ギルド会議室。
異形なる目玉に取り憑かれていたサウザーは、
それから暫くして意識を取り戻した。
ウェズンは事の説明をサウザーにしていく。
そして自分がおかしなモノに取り憑かれていた事を知ると、
苦悶の表情を浮かべて、頭を抱え込んでしまったのだ。
「サウザー様・・・仕方ないですよっ!」
ゼノは落ち込んだサウザーを励ますのだが、効果はなかった。
「サウザー様・・・ユウトが居なかったら、俺達は今頃どうなっていたか・・・」
その言葉に「はっ」としたサウザーは顔を上げ、悠斗に謝罪した。
「ユウト様、これまでどれほど貴方様に救って頂いた事か・・・。
それなのにまた・・・また救って頂き、誠に感謝しておりますっ!」
サウザーは悠斗の傍に寄ると、膝を着き頭を垂れた。
「サウザーさん、別に気にしなくていいからね?
前に一度、あの目玉には会った事があったからさ・・・
相手の強さも分かっていた事だし、そんなに気にしなくてもいいよ?」
「し、しかしっ!わ、私は領主としてっ!なんと不甲斐ない・・・」
涙を浮かべるサウザーに悠斗は膝を着くと、
サウザーの肩にそっと手を置いた。
「まだあいつらが何者なのかは分からないけど・・・
必ず俺が潰しますから・・・だからもう・・・」
悠斗の暖かな手がサウザーに伝わるとゆっくりと顔を上げた。
「はい、宜しくお願いします」
サウザーを立たせ席へ座らせると、ウェズンが口を開いた。
「前に一度戦ったって事で間違いないんだな?」
「まぁ~ね。あの時は神に取り憑いてかなり苦戦はしたけどさ、
でもまぁ~あの目玉本体は、そこまで強いって訳じゃないよ」
悠斗の言葉に全員が唖然としていた。
すると、ゼノから声が漏れるのだった。
「か、神に・・・とり・・・つい・・・た?」
「ああ、武神カロンってやつなんだけど?」
「「「「武神・カロンーっ!」」」」
今日何度目かのシンクロを聞く事になった悠斗だったが、
本人は相手が神であろうが関係ないとの事だった。
そしてある程度、カロンとの闘いの話が済むと、
明日到着予定の「勇者一行」についての会議が行われたのだった。
紅茶を口に含み潤わせた悠斗は、
カップの中の紅茶を見つめポツリとつぶやいた。
「勇者か・・・あっ・・・名前すら知らないな・・・」
「「「「はぁー?」」」」
そして再び冒険者ギルドの会議室に、シンクロした声が鳴り響くのだった。
(い、いや・・・知らなくて当然だと思うんだけど?)
と、思う悠斗だった。
ラウル ・・・ オッス!オラ、ラウル・・・わくわくすっぞっ!
ミスティ ・・・ ミスティです。今回も宜しくお願い致します。
ラウル ・・・ スルーは、止めてくれないかな?流石にキツイので・・・。
ミスティ ・・・ なら、ふざけるのは止めてください。
ラウル ・・・ お茶目な一面を見せたくてさ?
ミスティ ・・・ 真面目な面をあまり拝見した事がないのですが?
ラウル ・・・ み、見せないようにするのも大変なんだけどね~♪
ミスティ ・・・ で、先にその真面目な一面とやらを見せて頂けませんか?
ラウル ・・・ そ、そそそそんな気安くは・・・み、見せられないのさっ!
ミスティ ・・・ 年に一度くらい真面目になって下さい・・・。
ラウル ・・・ うぅぅっ・・・み、見せられるもん。僕だってやれば出来るもんっ!
ミスティ ・・・ まぁ・・・無理でしょうけどね・・・。
ってなことで、緋色火花でした。




