124話 取り憑かれし者
お疲れ様です。
今日は雪が降ったりと、本格的に冬が到来なのでしょうか?
もう今年も残り僅かとなりましたが、
これからも頑張りたいと思いますので、応援宜しくお願いします。
それでは、124話をお楽しみ下さい。
「・・・敵のスパイじゃね?」
「・・・はっ?!」
サウザーの声に、悠斗とゼノとステアは、深い溜息を吐くのだった。
するとサウザーは勢いよく立ち上がると、前のめりに悠斗に詰め寄った。
「ど、どう言う事なのですかっ!まさか彼を疑っているのですかっ!」
サウザーは真剣に悠斗に抗議をしているようだった。
そしてウェズンもまた・・・
「ユウト・・・俺とあいつは友人だ。
だからこそ言えるんだが・・・あいつに限ってそんな事はねぇーぞ」
そう言い放つウェズンの目も、真剣そのものだった。
二人の剣幕にゼノが両手を机に叩きつけると・・・。
「サウザー様もウェズンの旦那もっ!いい加減目を覚ましやがれっ!
状況が全て物語っているじゃねーかっ!」
「し、しかしケリオスはっ!」
「・・・それが団長の名・・・ですか?」
「・・・はい。彼の名は、ケリオス・ベリット。
昔、ある有名な冒険者パーティーの一員でしたが、
その同じメンバーの者達と一緒に、ある貴族の騎士団に入隊し、
実力を高め、その騎士団の部隊長を務めるほどになったのです。
仲間の一人だった者が、副団長へと上り詰めたらしいのですが、
その者と力を合わせ、その貴族に尽力していたと聞いています。
ですが残念な事に・・・
その貴族は何者かの策略にはまり没落しましたが・・・」
悠斗はその話を聞くと、視線は自然とウェズンに移り、
そのウェズンも大きく頷いて見せたのだった。
「じゃ~そのケリオスって人は、その騎士団に居た仲間を連れてきたと?」
「はい、その通りです」
「前にリディさんの話の時に聞きましたが、当然面接はされたのでしょ?」
「いえ、ここでは言えませんが・・・
彼は確かな御方からの紹介状をも持っておりましたので、
面接などはしておりません」
この時悠斗は・・・(ビンゴじゃん)と思い項垂れた。
当然、ゼノやステアも同様だった。
項垂れる悠斗に変わって、ゼノが話を聞いていく。
「・・・ちょっといいですかね?
その団長さん・・・ケリオス団長は、
サウザー様の騎士団にどれくらいの期間、居られるのですか?」
「うむ・・・もう2年くらいになると思うが・・・何故だね?」
「それって・・・」
ゼノがそう言いかけた時、ステアがゼノの肩を叩いた。
振り返ったゼノに、ステアが小声で・・・。
「その話は私の方が適任だと思うわ」
「・・・そうだな。頼む」
そんなやり取りをすると、ステアがゼノに変わって話をした。
「サウザー様達もご存知なように、私は暗殺者であり密偵です。
だからこそ分かってしまうのですが・・・
その団長は、何者かの手先だと言えます」
サウザーは顔を顰めるに留まるのだが、
ウェズンはそうではなかった。
「おい・・・ケリオスはな?
2年も俺と酒を酌み交わした中だぞ?
あいつの事情や立場を色々と知っているんだ・・・
それにあいつにも飽きれられてしまったが、
身辺調査もしたしな?・・・何も問題はなかったぜ?」
「では、お聞きしますが・・・。
その事情や立場とやらを、貴方は信じたと?
それに身辺調査をしたって・・・没落した貴族の調査をどこで?
いくらギルマスだからって、そう安々とは行かないはずですが?」
その問いにウェズンは「ニヤリ」と笑って見せたのだった。
「フッフッフッ、実はよ?大きな声じゃ言えねぇーんだがな?
俺がケイオスの事を調べていると聞きつけた御方が居てよ。
ケリオスの為って事で、俺に力を貸してくれる事になったんだ。
だから俺はその御方の力を借りて、調べる事が出来たんだ」
ウェズンのその話に、悠斗は伏せた顔を上げると・・・。
「その御方って人・・・誰なんだ?」
「い、いや、それは言えねぇーよ。
その御方との約束があるからよ・・・。身バレは出来ねぇーよ」
悠斗は少し威圧を込めるともう一度聞いた。
「ウェズン・・・俺には話せないのか?」
「い、いや・・・お、お前だけなら・・・話せるが?」
ウェズンがそう言うと、悠斗と二人、部屋の隅で話すと・・・。
「・・・!?」
ウェズンから名を聞いた悠斗は、とてつもない怒気に包まれた。
「なっ、ユ、ユウトっ!何だよ急にっ!」
その怒気に反応したのは、勿論この会議室に居る全員が息を飲んだ。
「ユ、ユウト様っ!一体・・・ど、どうされたのですかっ!」
サウザーの顔が青くなっている事が誰の目にも分かるくらいに、
「ガタガタ」と震えていた。
悠斗はウェズンの目を真っ直ぐ見ると。
静かな口調とはうらはらに、その怒気を強めていった。
「・・・それって、まじだよな?」
「あ、ああ・・・ま、まじだっ!う、嘘は言ってねぇー・・・よ」
悠斗は一度軽く息を吐くと、魔石を取り出し連絡を取った。
そしてその悠斗の行動に、一同が釘付けとなるのだった。
{・・・ゴリアテか?}
{ん?ユウトか?もう港町には着いたのか?}
悠斗が魔石で連絡を取ったのは・・・
昨夜世話になった分身ザルのボス、ゴリアテだった。
{ど、どうしたんだユウト?お前・・・何だか・・・}
{あ、ああ・・・悪い。ちょっとお前に聞きたい事があってさ?}
{聞きたい事?俺に分かる事なら・・・何でも聞いてくれ}
{すまないな?感謝する。
本題に入るが・・・お前の昔の飼い主の名って、確か・・・}
{そんな話か?名はリヒテルだ}
悠斗は微かに顔を引きつらせると、話を続けた。
{そいつの事をもう少し詳しく話してくれ}
{・・・ああ、俺の話がユウトの役に立つなら話すが?}
{・・・頼む}
{わかった}
ゴリアテの話を魔石を通して詳しく聞いていく。
リヒテルはその昔、ある有名な冒険者の旅団で副団長をしていたが、
そんなある日・・・貴族の依頼を受けたリヒテル達は、
自分の旅団をリヒテルに賛同する仲間と一緒に壊滅させたと・・・。
そうゴリアテに自慢するように話したのだった。
その話に興味を持ったゴリアテは、
リヒテルに話しの続きを強請ったそうだ。
すると、リヒテルは上機嫌になり・・・話の続きをしたらしい。
その内容は・・・。
旅団を仲間達と壊滅させる前、
リヒテルはある護衛依頼を受けていた時、
夢の中に出てきた神に、能力を授かったとの事だった。
その神に、今の旅団を壊滅させるよう言われた他、
ある貴族の騎士団に入隊し滅ぼせと命令されたらしい。
その後・・・。
リヒテルは今の騎士団・・・つまり、ヘイルズ騎士団へと入り、
ゴリアテの飼い主として君臨し、確固たる騎士団長へと昇り詰めたのだった。
ゴリアテが能力の話を聞こうとしたが、それは話してもらえなかったらしい。
話をある程度聞いた悠斗は・・・。
{ゴリアテ・・・そいつは何歳だ?}
{・・・本当かどうかは知らないが・・・それでもいいか?}
{ああ・・・構わない}
{わかった。当時の話で悪いんだが・・・
ヤツの年齢は確か・・・50歳くらいだと言っていたが、
でもどう見ても・・・20歳かそこらにしか見えなかったがな?}
{・・・50か。それで見た目が20歳くらいって・・・。
なぁ?そいつの仲間の名を覚えていないか?}
悠斗は可能性が薄いと思ってはいたが、
ゴリアテの記憶力に賭けた。
{んー・・・。あまり覚えてはいないが・・・}
{・・・そうか}
{あっ、全員の名は覚えてはいないが・・・3人くらいなら・・・}
{教えてくれっ!}
{あ、ああ・・・。わかった、印象に残ったヤツは覚えているんだ。
確か・・・エリナリナって言う、隻眼で20歳くらいの女と・・・
ケリオスって言う当時、16歳くらいのハンマー使いの若い男だろ・・・
それから・・・ウォルスって言う25歳の短剣使いの男だったと思うが?}
ゴリアテが記憶を辿り口にした名の中に・・・ケリオスが居た。
{ゴリアテ・・・お前が居たのは、今から何年前だ?}
{あ~・・・そうだな?今から・・・22~24年前の話だが?}
すると悠斗は、ゴリアテに少し待つように言うと、
ウェズンに視線を向け口を開いた。
「ウェズンっ!ケリオスの年齢はっ!」
突然悠斗から発せられた声に、ウェズンは体を「ビク」付かせた。
「・・・よ、41だ」
ウェズンからケリオスの年齢を聞いた悠斗は、
思考の海へ潜って行った。
「お、おいっ!ユウトっ!説明はないのかっ!お、おいっ! 」
説明もない悠斗に、ウェズンは怒鳴るのだが、
そんな悠斗の行動を見たサウザーはウェズンの肩を掴んだのだった。
「待ちたまえっ!ユウト様は今・・・例の癖が出ているようだ」
この時・・・。
(グギャ・・・グギィ)
一瞬サウザーは頭に流れる声と息遣いを聞いたのだが・・・。
(き、気の所為・・・か?)
そう思うと、再び悠斗に視線を向けたのだった。
ウェズン達も見た悠斗の癖・・・。
それは悠斗が深く思考する時、その思考の邪魔にならないように
全てをシャットアウトする行為だった。
(ゴリアテの話だと、今から22~24年前・・・
当時16歳・・・くらい・・・か。
そしてケイオスの年齢は・・・41歳・・・。
ゴリアテは確か・・・「くらい」と言った・・・って事は、
誤差の範囲って事になるな?)
思考の海へ潜る悠斗を見ていたウェズンは・・・
「ま、まさか・・・だろ?
あ、あいつが、俺に嘘を付くなんて事・・・ありえねぇーんだ」
その言葉を聞いていたステアがウェズンの目を真っ直ぐ見つめながら、
厳しい口調で口を開いた。
「・・・貴方は恐らく利用されていたのでしょう。
ここの冒険者ギルドのトップであるが故に・・・」
「し、しかし・・・冒険者の情報なんてそんな事を知ってどうするんだよ!?」
「狙いが冒険者達とは限りません。
依頼を出す貴族側の情報が欲しい・・・とも、考えられますから・・・」
そう話すステアに、ウェズンの顔色が変わった。
明らかに表情が変わるウェズンを見たサウザーが、
ウェズンに詰め寄った。
「・・・ウェズンっ!何か・・・何か思い当たる事があるのかっ!」
ウェズンの両肩を掴み、激しく揺さぶっていた。
「言うんだっ!ウェズンっ!一体何を話したんだっ!」
ゼノとステアは、激しくウェズンを揺さぶるサウザーを止めに入った。
「サウザー様っ!それじゃ~話したくても、話せないですってっ!」
「サウザー様、お止め下さいっ!」
この時、サウザーの左目の中に・・・赤い魔法陣が浮かんでいた。
すると・・・
(グギャキャっ!モ・・・ット・・・イカ・・・レ・・・
ゾ・・・ウオ・・・ウマ・イ・・・。
アノ・・・カ・タニ・・・ササゲ・・・ル・・・)
サウザーは、頭に響くその声に抗えなくなった。
そして・・・サウザーの憎悪は膨らんでいった。
二人が必死になり止めようとするが、サウザーは二人を振り払った。
「離せっ!邪魔をすルと、二人トも斬ルゾっ!」
怒りに狂ったサウザーは、腰にある剣に手をかけた。
そのサウザーの行動に、ゼノもステアも一歩後へ引き下がってしまう。
「・・・サウザー様の様子がおかしい・・・一体何が起こってんだよっ!」
「・・・サウザー様、落ち着かなければウェズンから話が聞けなくなります。
それで困るのは、サウザー様ではないのですか!?」
二人の言葉に一瞬我に返り瞳の中の魔法陣も色褪せた。
この時サウザーは頭に響く声の主に気付くのだが、
再び瞳の中の魔法陣が赤く色づくと・・・
「ウ、ウル・・・さいっ!こいツハ何かを隠しテイルんだゾっ!
こ、コイツが・・・ながっ・・・ナガした情報デ、
リョウ・・・ミンや・・・貴・・・ゾクタチに何か合っテミろっ!
私は・・・ワタシハ・・・うあぁぁぁぁぁっ!!ウェズンっ!!」
その魔法陣の力に操られたサウザーは、成す術もなく剣を抜き振り上げた。
「なっ!」
「「サウザー様ぁぁぁっ!」」
「キ、キサマの・・・せイでぇぇぇっ!シねぇぇぇぇぇっ!」
その時だった・・・。
サウザー達の背後から「パシュッ!」と、音が聞こえたかと思うと、
振り下ろされた剣が弾き飛ばされ、
サウザーがその衝撃で蹲っていたのだった。
「一体・・・な、何が?」
戸惑うゼノが言葉を発すると・・・
「・・・やれやれ」
(ギィッ!?ギギッ!?)
悠斗は人差し指を向けながら、気怠そうに立ち上がると、
蹲るサウザーの背中越しに睨みつけた。
(ナ、ナ・・・ンダ?・・・コ・コノ・・・シセ・・・ン・・・ハ?)
人差し指を向けたままサウザーを見下ろす悠斗に、
ゼノとステア・・・そして、ウェズンまでもが硬直していた。
ゼノは悠斗から放たれる殺気の先にサウザーとは別のモノを感じた、
(ユウト・・・様?今のは、ユウト様が?)
「ユ、ユウ・・・」
ゼノが悠斗の名を口にしようとした時、
悠斗の視線がゼノに向けられると、口元に指を立てて見せたのだった。
ゼノは悠斗に静かに頷いて見せると、ステアとウェズンにも
悠斗に向けられた仕草をして見せた。
そして全員が頷くと・・・。
(ギィィィィっ!ウ、ウゴク・・・ノ・・・ダ・・・)
サウザーとは違う魔力が、微かに体を登っていくと、
サウザーの体は「ピクリ」と反応してフラフラと立ち上がった。
悠斗は近くに居たゼノとステアを下げさせると、
「グガァ・・・ダ、ダれ・・・ダァァァ!!!」と、
振り向き様に背後に居るであろう悠斗に襲いかかったのだが、
既に悠斗の姿はそこにはなかった。
「グゲッ?・・・ゲギィィ・・・」
サウザーは周りを見渡そうとすると・・・
「・・・そんな所に居たのか?」と、頭上から声が降りてきた。
悠斗はサウザーが振り向いた瞬間、左手で頭を掴み、
そのまま左腕一本で、サウザーの頭で倒立していたのだった。
「グカッ?」
サウザーが頭上を見ようとした時、悠斗はマジックボックスから
ショートソードを取り出した。
「気刃剣っ!」
気を剣に流し込み強化すると、サウザーが頭上へ顔を上げる刹那に
もう終わっていた。
(グギャ?!)
ピチャッ・・・ピチャッ・・・と、ドス黒い体液らしきモノが床に垂れていた。
悠斗は刹那の瞬間、サウザーの心臓辺りに取り憑いていた、
異形なる目玉を切り落とし、その目玉を壁に向けるように掴んでいた。
徐々に力を失いつつある異形な目玉の背後から声が聞こえてきた。
「やれやれ、また・・・お前か?
まぁ~・・・でも、試すには丁度いいか・・・な?」
掴まれた異形の目玉の背後からそう聞こえてくると・・・。
「精霊力・・・解放っ!」
悠斗がそう発すると、全身から白銀の光が吹き出しのだった。
「ぐぁっ!・・・な、何度やっても・・・な、慣れな・・・いな」
異形な目玉の背後で、顔を顰める悠斗の姿があった。
アリエル ・・・ 魔法神アリエルです。宜しく。
ミランダ ・・・ 味気ない挨拶ね?私は邪神の女神ミランダよっ!
アリエル ・・・ ・・・別に威張る必要がないと思うのだが・・・?
ミランダ ・・・ ここでアピールしておかないと、私の存在価値が・・・><
アリエル ・・・ まぁ~確かに、それは私も人の事は言えんが・・・。
ミランダ ・・・ でしょ?この小説のヒロインは私なんだからっ!
アリエル ・・・ ・・・いや、お前ではないと思うぞ?
ミランダ ・・・ 私以外に誰がいるって言うのよっ!
アリエル ・・・ 今、ヒロイン候補と言われているのは、結構いるけど?
ミランダ ・・・ う、嘘っ!・・・ま、まじ?
アリエル ・・・ ・・・まじよ
ミランダ ・・・ ・・・シュン。
ってなことで、緋色火花でした。




