閑話 白斗編 1 怠惰過ぎる創造神
お疲れ様です。
閑話シリーズです。
今日は白斗編になります^^
楽しんで読んで頂けたら幸いです。
それでは、閑話 白斗編をお楽しみ下さい。
悠斗が旅立つ前日・・・。
いつもの通り白斗とセルカは仲良く喧嘩をしていた。
すると突然白斗に念話が入る。
(白斗君・・・ちょっといいかい?)
(なっ!と、突然びっくりするやないですか~?
ラウルはん・・・ワシに何の用でんの?)
思わぬラウルからの声がけに白斗は戸惑っていた。
(いや~・・・ちょっと君に頼みたい事があるんだけどさ~?)
(頼み・・・って、また珍しいでんな?なんでんの?)
(えっと~僕が作っている擬体の事なんだけどさ?
ちっと君の力を借りたくてね~?)
(ん~・・・まぁ~宜しいですけど?)
(じゃ~明日の早朝に迎えに行くから宜しくね~♪)
いつもの調子で飄々(ひょうひょう)と話すラウルに、
「ほんまに・・・マイペースな御人やな~」と、感心していた。
「にゃ~駄犬・・・。にゃにかあったのかにゃ?」
セルカをスルーする形でラウルと話していた白斗は、
今の出来事を説明した。
「・・・擬体かにゃ?お前の力を貸してくれだにゃんて、
余程手詰まりにゃのかにゃ?」
「なんでワシに頼んだ事が手詰まりやねんっ!」
「にゃ~でも・・・
こんにゃ駄犬にでも力ににゃれる事があって、良かったのにゃ♪」
「こら・・・猫娘っ!こんなって何やねん、こんなってっ! 」
「にゃはは~♪」
いつもの通り素直にお互いを認めない二人ではあったが、
セルカの言葉の意味を理解している白斗は苦笑していたのだった。
そして悠斗が旅立つ1時間前・・・
(白斗君・・・起きてもらえるかな?もう時間だよ~)
頭に直接語りかけてきた声に、白斗は目を覚ましたのだった。
(ふあ~~~・・・ん?・・・なんやもう朝かいな?)
気だるそうに起き上がった白斗にラウルは話し始めた。
(白斗君、直接君の目の前にゲートを開くから、
先に神界へ行ってもらえないかな?)
(ん~・・・まぁ~別に宜しいけど?)
(そかそか♪宜しくね~♪あと、ゲートを抜けた先にさ、
出迎えを待たせてあるから~♪)
(さよか~・・・了解ですわ)
白斗が了解と告げると、ラウルからの念話は切れてしまった。
ゆっくりと体を起こすと、悠斗が居ない事に気付く。
「なんや・・・主・・・おらんやん」
白斗は少し寂しさを感じながらも、今日旅立つ事は聞いていたので、
昨日のうちに挨拶を交わしていたのだった、
(主~・・・ワシ、今から神界へ行ってきますわ~。
主も気をつけなはれや~?)
(おはよう白斗・・・頑張って来いよ~♪またな~)
(頑張ってきますわ~・・・ほな~♪)
二人がそう告げると、白斗の目の前にゲートが現れた。
「・・・ちっさっ!」
白斗用とでも言うのだろうか?
体のサイズに見合ったゲートが現れたのだった。
「ワシ専用っちゅーこっちゃな?まぁ~悪い気はせぇーへんな♪」
意気揚々とゲートをくぐる白斗は神界へと到着すると・・・
「聖獣っ!」
白斗が到着した瞬間に声がかかった。
「なんや・・・ミランダはんやないですか?おはようさん」
「おは~♪今日はわざわざ悪いわね?」
「まぁ~ワシが何をするかは知りませんけど、
力になれるんやった嬉しいですわ」
「そう言ってもらえると嬉しいわね♪」
挨拶もそこそこに二人は神界のある場所へとゲートを使用し移動した。
ミランダの肩に乗っていた白斗は、目の前の光景に驚いていた。
「なっ、なんでんの・・・此処?」
「はっはっはっ!此処はラウルの擬体専用のラボよ」
「ラ、ラボって・・・
なんや、めっちゃ人体がゴロゴロしとるやんっ!」
白斗が見た光景は、部屋の至る所に人体が転がっていた。
大人、子供、男、女、老人など・・・様々な人体が転がっていたのだった。
「な、なんや・・・異様な光景やわ・・・こわっ!」
青ざめた表情を見たミランダは苦笑していた。
「ははは・・・。私も最初に見た時・・・同じ顔してたと思うわ」
「・・・めっちゃホラーやんっ!トラウマになるわっ!」
「・・・わ、わかるわ」
少しして白斗はその場の雰囲気に慣れると、
目の前に大きなベッドがある事に気づいた。
「なんや?・・・作業台?・・・いや、ひょっとしてベッドか?」
「ええ・・・そしてその上の置かれているのが、
この前癒やしの森で私が使用していた擬体よ」
「ああ~・・・あん時のやつか・・・」
二人の目の前の大きなベッドには、
癒やしの森でミランダが使用していた擬体が、
シーツを掛けられ横たわっていたのだった。
「で・・・?ワシは何をしたらええんですか?」
「んー・・・。私も詳しくは知らないのよね~?
私はただ、あんたが擬体に関して手伝う事と、
こっちに来るから案内を頼むって・・・ラウルに言われただけなのよね?」
「そうでっか・・・」
白斗は擬体の制作を手伝ってくれと言われはしたが、
自分に何が出来るのかと疑問を持っていた。
それを察したミランダが口を開く。
「・・・まぁ~不思議なのは当然よね?
私もどうしてあんたがって・・・思うもの」
「・・・ワシに何をせいって言うんやろ?」
「擬体の制作に関しては、私も素人だから何とも言えないわね?
私はただ擬体のテストをやっているだけに過ぎないから・・・」
「・・・さよか~」
暫くその部屋でミランダと雑談していると・・・
「トン、トン」と、扉が叩かれた。
ミランダは「はい」と答えると、天使が一人入ってきた。
「・・・此処に置いておきます」
小さなテーブルにティーセットを置くと、その天使は退室した。
「なんや・・・愛想のない天使でんな?」
「・・・まぁ~私が居たからだろうね」
ポツリとそうつぶやくミランダの顔はとても悲しそうだった。
「・・・なんでミランダはんが居たらそうなるんや?_」
「何故って・・・ほら、私って邪神の女神じゃん?」
「ああ~・・・そうでしたな?すっかり忘れてましたわ~♪」
「・・・どうして忘れてんのよ?」
白斗の言葉に不思議だというミランダ。
そんなミランダに白斗は意味有り気に笑って見せた。
「何でって・・・ミランダはんは主とは戦友ですやん♪
戦友に邪神の女神なんて関係あらへんやろ?」
そう言い放つ白斗に、ミランダは苦笑するしかなかった。
「・・・そうか。ありがとね♪」
「あんさんは主の恋人候補の一人やさかいな~?
ワシもちゃんとコミュニケーション取らんとね?」
「こっ、こっ、ここここ・・・恋人っ!?」
突然過ぎる白斗の発言に、ミランダは顔を赤らめ動揺していた。
「シッシッシッ♪ミランダはんって分かりやすいでんな~♪」
「・・・・はぅ」
可愛くなってしまったミランダを見た白斗は、
この時、喧嘩友達であるセルカを思い出していたのだった。
セルカの笑顔に白斗は頭を数回振ると、その笑顔を打ち消した。
(何であんな猫娘の事を思い出さなあかんねんっ!)
白斗の様子にミランダは心配して声を掛けてきた。
「大丈夫?調子が悪いんだったら・・・」
「・・・ちゃうちゃうっ!調子悪いんやなくて・・・」
傾げるミランダに白斗は苦笑いするしかなかった。
そんな時、突然扉が開かれた・・・。
「やあ、二人共・・・お待たせ~♪」
満面の笑みで入ってきたのはラウルだった。
「ラウル・・・遅かったじゃないの?」
少しジト目で見るミランダに、ラウルは苦笑しつつ答えた。
「はっはっはっ、ちょっと例の彼に会ってきてね~?」
その言葉にミランダは訝しい顔を見せた。
「まぁ~君が言いたい事もわかるんだけどさ?」
「・・・信用出来るんでしょうね?」
「・・・多分、大丈夫でしょ?」
「多分って・・・あんたね・・・」
手を顔の横でひらひらとさせながら近づくと・・・
「あれ?お茶・・・してないの?」
テーブルに置かれているティーセットを見るとそう言った。
するとミランダは顔を少し背けながらこう答えた。
「飲める訳ないでしょ?」
「どうしてだい?」
「・・・その紅茶・・・毒入り・・・よ」
ミランダの言葉にラウルは目を見開き紅茶を鑑定した。
「・・・す、すまない・・・ミランダ」
「・・・いいわよ、別に・・・」
ラウルは顔を顰めると、無言で退室していった。
「・・・ほっといてええのん?」
「・・・いいんじゃない?私の知った事じゃないわ」
「・・・さよか」
「あんたも狙われたのかも・・・ね?」
「・・・・」
その言葉に無言になった白斗に少し罪悪感を持ったミランダは・・・
「ご、ごめん・・・あんたが狙われる訳ないわね?」
謝罪するミランダに白斗は真顔を向けてこう言った。
「・・・ワシに毒物なんか効かへんけど?」
「・・・はぁ?!」
「いや、だから・・・ワシに毒物の類は効かへんねんって・・・」
「えっ?だって・・・あんたって、ただ小さいだけの犬じゃん?」
ミランダの言葉にこめかみをヒクつかせた白斗は・・・
「犬ちゃうわっ!ボケっ!聖獣や聖獣っ!」
「プフッ・・・」
白斗の反応にミランダは思わず吹き出してしまったのだ。
「こらこらこらこらっ!笑いすぎやっちゅーねんっ!
ええか?ワシは防御と回復の特化型やからな?
毒物とかそんなもん・・・ほっといても勝手に治るんや。
せやからこんなもん・・・ワシには無害に等しいねん」
改めて白斗が聖獣なんだと認識したミランダは素直に謝った。
謝罪を受け入れた白斗は、ラウルが戻ってくるまで待つはめになった。
「・・・なぁミランダはん?ラウルはん・・・遅いでんな?」
「・・・だね」
それから時間が過ぎ1時間後・・・
漸く戻ってきたラウルは、
毒物を紅茶に混入した天使を連れてきた。
狙われたのはやはりミランダだった。
天使の言い分としては・・・
「創造神様が邪神とつるんでいるのが気にいらなかった」
その言葉にミランダはただ、ただ・・・呆れるしかなかった。
ミランダは面倒臭いからと言い、天使に対してお咎めはなかったが、
ラウルの瞳はそれを許すはずもなかった。
後にこの天使は降格処分となり、惨めな生活を送る事になるのだが、
それはまた別のお話である。
気を取り直した3人は、ミランダの使用した擬体へと向かうと、
掛けられていたシーツをめくり取った。
そこには体の表面にある外装パーツははずされており、
中の構造が丸見えとなっていた。
「・・・なんか・・・めっちゃボロボロやんか?」
「そうなんだよね」
白斗とラウルがそう声を漏らした。
「それでラウルはん・・・ワシに何をさせたいんや?」
目を細めてそう言うと、ラウルは微笑んで答えた。
「いや~・・・僕もまだ考えがまとまっていないんだけどさ?
君の能力を使って、この擬体を強化出来ないかと思ってね?」
「ワシの力をって、そう言われてもな~?」
「えっと~君の防御結界って、
ただ硬く強固に出来るだけじゃないんだろ?」
「まぁ~・・・それはそうやけど・・・」
白斗はラウルが言わんとしている事が理解出来なかった。
白斗の結界は防御の盾や壁を自由自在に変形させるばかりではなく、
自在にその強度も変えられるのだった。
「まぁ~ラウルはんが、何でそんな事を知っとるんかは置いとくけど、
ぶっちゃけワシの防御結界は、ナノサイズまで縮小したりできるで?」
「・・・そんなサイズまで出来るとは・・・君、すごいね?」
「シッシッシッ♪おだててもあかんで?
ワシはそこらへんの安~い聖獣と一緒にしたらあかんで?
ナリは小さいけど、めっちゃ有能な聖獣やからな~♪」
白斗を上手く調子づかせたラウルは、少し口角を上げると、
ミランダに擬体使用時の感想を聞いたのだった。
「そうね?中に入っている時の感想から言わせてもらうけど、
正直・・・反応が鈍過ぎて、ロクに戦えたモノじゃなかったわ」
正直に答えるミランダに製作者側の気持ちなどはわかるはずもなかった。
「そ、そうかい?き、君の能力が高過ぎただけだと思うのだけれど?」
「だとしてもよっ!もう少し何とかならないものかしら?
この擬体で人族に勝つのは問題ないけど、それ以上となるとね?」
心にある程度のダメージを受けつつもラウルは擬体を見ていく。
「うーん・・・。特に肩から胸筋にかけての筋肉繊維がズタポロだね?
あー・・・でも、主要な筋肉繊維は全部ダメになってるね」
腕を組み考察したモノが、全て口から漏れていたのだった。
するとミランダが関節部分を指摘した。
「ラウル?この左の膝関節もダメになってるわよ?
私って左足に重心がかかるから、
それでこうなっていると思うんだけど?」
「ふむ・・・。つまりその個体に合わせて、擬体を制作しなくちゃ・・・
って事になるね?」
「・・・そうでんな?でもやはりバランスは大切やと思いますわ」
「・・・バランスね~・・・悩むな~」
ラウルは頭を掻きむしりなが溜息を吐いていた。
白斗は何気に見た筋肉繊維の断裂部分に視線をやると・・・
「ん?なぁ~ラウルはん?この筋肉繊維ってみんな同じ繊維なん?」
「ん??あ、ああ~全部同じ繊維だよ?」
「さよか~・・・」
白斗が考え込む姿にラウルは首を傾げていた。
「・・・それに問題があるのかい?
僕はただ人族と同じようにしているんだけど?」
「同じようにって・・・全然ちゃいますやん」
「えっ!?そうなの?」
ラウルの返答に白斗は頭を抱えてみせると、説明を始めた。
「ええですか?簡単に説明しますけど・・・
ここの骨に引っ付いてる「腱」、
そこから「骨格筋」に繋がってるんやけど、
その「骨格筋」の中ってな?
「筋束」ちゅー筋繊維の束がいくつもあって、
筋肉として成り立っとるんやけど・・・?
簡単な説明で悪いんやけど、これくらいは知っとるよ・・・な?」
白斗の専門的な話に、ラウルは冷や汗を流すのだった。
「・・・し、知りませんでした」
「ほんまかいなっ!あんた創造神やろっ!」
「い、いや~・・・僕って創造神の中では超新米なんだよね?
このノーブルの世界を作った時、
地球の神々の先輩方に教えてもらいながらだったからさ~・・・
正直、丸投げした部分も多くてさ・・・あははは」
「あ、あんたそれでよく創造神だと言えたわね?」
「あはっ、あはっはっ・・・あははは・・・・すみませんでしたっ!」
二人の目の前には、恥も外聞もなく土下座する創造神がいた。
ラウルのとんでも発言に白斗やミランダは深く溜息を吐いたのだった。
そしてミランダは、こんなヤツに自分が作られたのかと思うと、
軽く目眩を起こし膝を抱えた。
「あ~・・・なんやろ?
ラウルはん、擬体制作はそこからやらなあかんな?」
わずか5cmで異世界の聖獣である白斗に慰められるラウル。
その背中に・・・創造神の威厳など、もはや皆無だった。
「あんた・・・怠惰過ぎますやろ?」
「はい・・・僕・・・頑張ります」
絞り出すように声を漏らすラウルに、
白斗とミランダは前途多難である事を理解したのだった。
そしてその頃悠斗は・・・
自分の身体能力だけで、赤毛の分身ザルを追いかけている真っ最中だった。
「自力をしっかりと鍛えておかないと~・・・ねってっ!」
赤毛の分身ザルに翻弄されながらも、
悠斗はノーマル状態で追いかけて行く。
「ウッキッキィ~~っ♪」
「あーっ!お前っ!今俺の事をバカにしただろっ!
ぜっっっったいに捕まえてやるからなぁぁっ!こんにゃろっ!」
悠斗は特訓も兼ねて赤毛の分身ザルを追いかけて行くのだった。
白斗 ・・・ こんちゃ~ワシ白斗言いますねん。よろしゅー♪
ミランダ ・・・ ども♪邪神の女神ミランダです♪
白斗 ・・・ ちゅーか、まさかラウルはんが人体について知らんとは・・・
ミランダ ・・・ あ~そうね?私も同じ神として正直恥ずかしいわ
白斗 ・・・ しかもでっせ?地球の神に外注って・・・謎過ぎますわ
ミランダ ・・・ それもね~私としてはお詫びしようもないわね?
白斗 ・・・ ラウルはんの話だけで何時間もしゃべれますな~?
ミランダ ・・・ ・・・まじでそれなっ!
ってなことで、緋色火花でした。




