閑話 強さの序列
お疲れ様です。
・・・机に伏して寝てました^^;
時間過ぎてなくなった・・・。
今回も閑話シリーズです。
食堂にてあれやこれやと話す会となっております^^
それでは、閑話 強さの序列をお楽しみ下さい。
悠斗が旅立つ朝・・・
イリアとセルカはその旅立ちを見守っていた。
「ユウト・・・」
そうつぶやくイリアの拳に力が入っていた。
「・・・我慢する事にゃいと思うにゃ?」
「ううん・・・これは私が決めた事だから・・・
必ず強くなった姿をユウトに見てもらいたいの、だから・・・」
「・・・にゃら、強くにゃるしかにゃいのにゃ♪」
「ええ、必ず・・・」
岩場の聖域を出る悠斗にイリアは心の中で誓いを立てた。
(必ず強くなって見せるわ)
悠斗が旅立ちラウルとミスティがゲートを通って消えて行った。
二人は部屋の片隅で思いにふけっていると・・・
「ちょっと貴女達、いつまで寝ているのよっ!」
突然ドアを開け入ってきたのはプロキシオンだった。
「・・・起きてますけど?」
何かを堪え己を奮い立たせている事を察したプロキシオンは、
優しく微笑むと、イリアとセルカの頭を撫でるのだった。
「もう・・・貴女達・・・」
「クシャクシャ」っと頭を撫でられた二人は、
嫌がる素振りを見せるも、プロキシオンの優しさに感謝していた。
「ほらっ!さっさと旧・食堂に来なさいよ?」
「はーい」
「はいにゃ♪」
部屋を出て行くその後姿に懐かしさを感じていた。
「ねぇ、セルカ?プロキシオンって・・・お母さんみたいよね?」
「にゃっはっはっ♪私達のお母さんなのにゃ~♪」
「ふふふ♪」
いつの間にか笑顔になった二人は食堂へと向かって行った。
旧・食堂では・・・
アリエルが四大精霊達に指示を与えると、
各々(おのおの)が担当区域へと戻って行った。
今、この旧・食堂に居るのは・・・
今日の朝食担当の一人・・・ロゼッタとプロキシオン。
テーブルに座る、アリエル、オウムアムア、アマルテアの5名である。
しかしウンディーネだけはその場に留まると、
アリエルと話し合っていた。
「アリエル様・・・本当にユウト様をお一人にしても宜しいのですか?」
生涯傍に居ると誓ったウンディーネは、
この状況に納得していなかったのだ。
「お前の気持ちはわかる・・・私も正直これで良かったのかと、
今でも思ってはいる。
このままユウトばかりに任せる訳にはいかない・・・
ユウトが此処に残ってしまえば、また頼ってしまう。
もう甘えてばかりじゃいけないのよ・・・」
「・・・確かにそうだと思います。
だからと言って、ユウト様をお一人にするのは・・・」
そう答えるウンディーネに、「ケラケラ」と笑うモノが居た。
「・・・何が可笑しいのですか?ロゼッタ」
今日の朝食担当であるロゼッタは、
二人のやり取りを聞いて笑っていたのだ。
「何がって・・・そりゃ~あんたがバカな事を言っているからよ?」
見下すように含んだ笑いを見せるロゼッタに、
普段あまり感情を見せないウンディーネの目は怒りに満ちていた。
「私はただ・・・ユウト様がお一人では危険だと・・・」
「それが可笑しいってんだよっ!」
「なっ、何を・・・」
「いいかい?客観的にどう見たって、
ここの誰よりもユウトの方が強いでしょ?
そんなヤツに護衛でも付けようってのかい?」
正論を言われ言い淀むウンディーネにロゼッタは追い打ちをする。
「私を含め此処に居る連中が最優先でしなければならないのは、
少しでも強くなって、ユウトの足を引っ張らない事でしょ?
あんたは何を履き違えているのさ?
護衛する者が、ユウトより弱くてどうするのさっ!
そんな戯言を言う暇があったら、
ちょっとは強くなって見せなっ!」
「・・・・」
何も言い返せないウンディーネは小さく頷き頭を下げると、
自分が守る泉へ戻って行った。
バツの悪いこの空気の中、アマルテアが口を開いた。
「ロゼッタの言う事はもっとも・・・ね」
ロゼッタは皿を拭きながら背中越しにアマルテアの言葉を聞いた。
「ふむ、だが我は少し言い過ぎだと思うのだが?」
オウムアムアの言葉にロゼッタは皿を拭く手を止めた。
「亜神殿?何が言いたいんだい?」
「我はウンディーネの申す事にも一理あると言っている」
「・・・へぇ~お優しいのね?」
「師匠より弱くとも、手となり足となる事も出来よう?」
「・・・まぁ、そう言われるとそうなんだけど」
正論を言われたロゼッタは再び皿を拭いていく。
すると扉が開き、プロキシオンを先頭にイリアとセルカかぜ入ってきた。
「ちょっと、何?この雰囲気の悪さは・・・?」
異様な空気が漂う食堂にプロキシオンが反応すると、
事の説明をアリエルが話して聞かせた。
「なるほどね~・・・それでこの空気って訳ね?」
「やれやれ」と素振りを見せるプロキシオンに、
イリアとセルカも苦笑いしていたのだった。
イリアふと食堂を見渡すと・・・
「あれ?白斗が居ないみたいなんだけど?」
イリアの質問に紅茶に口を付けたアリエルが答えた。
「ああ~、白斗ならラウルと一緒に神界に行ったわよ?」
「ラウル様と?」
「擬体の改良にどうしても白斗の能力が必要らしいわ」
「あの駄犬にも使い道があったのかにゃ?」
セルカは喧嘩友達でも白斗が居ない事に、
少し寂しさを感じていたのだった。
その意図を察したプロキシオンは、セルカを見て「クスリ」と笑っていた。
そしてイリアとセルカはテーブルに着くと、遅い朝食を取る事になった。
ふとアマルテアはクッキーを食べながら、こうつぶやいた。
「ユウト様・・・今頃何をしているのかしら?」
悠斗が旅立ってから、まだほんの2時間足らず・・・
食堂に居た全員がアマルテアに呆れていた。
「師匠の心配をして何が悪いと言うのだっ!」
全員の反応にアマルテアは抗議すると、
アリエルは可哀想な子を見るような目で答えた。
「・・・剣神・・・貴様が哀れすぎる・・・」
「アリエルっ!無礼だぞっ!」
「無礼なものか・・・剣神と言えば優雅で冷静、
礼節を重んじる神だったはず・・・だ」
「・・・今でも私は変わらないわよっ!」
その言葉に一同の動きが止まった。
「えっ!?な、何?みんなどうしたのよ?」
その言葉にある者は食事をする手が止まり、ある者は紅茶を吹き出し、
そしてある者は・・・皿を落とした。
「ちょっと・・・みんなどうしちゃったのよ?」
「おい、剣神・・・。本気で言っているのか?」
アマルテアはアリエルの言葉を聞くと、周りに居る面々を見た。
「私・・・何も変わってないわよ・・・ね?」
「貴様は変わり過ぎだ・・・」
アリエルの言葉に全員が無言で肯定していた。
「嘘・・・でしょ?兄弟子っ!私は変わってしまったのですかっ!」
「・・・・・・・う、うむ」
「兄弟子っ!どうかこの私めにお教え下さいっ!」
アマルテアは椅子から勢いよく離れると、
オウムアムアの前に跪き、頭を垂れたのだった。
それを目撃して一同は、あの誉れ高き剣神の姿とは思えなかったのだ。
その行動に耐えられなくなったアリエルが口を開く。
「け、剣神・・・貴様一体どうしてしまったのだ?」
「な、何が・・・よ?」
「な、何がって貴様・・・亜神に頭を下げているではないかっ!」
アリエル達純粋な神々にとって、亜神とは異端なる神。
その異端に頭を垂れる事などありえなかったのである。
「アリエル・・・兄弟子は異端なる神であったとしても、
ユウト様が選ばれた弟子なのよ?
そんな人を見下す事など、私にはできないわ」
「なっ、なんだ・・・と・・・」
唖然とするアリエルに全員が言葉を失った。
「私が一番に想うのは・・・師匠のユウト様よ。
末弟である今の私は剣神とは言え、序列3号弟子の身分。
2号弟子であるオウムアムア殿を尊敬するのは当然な事よっ!」
アリエルはアマルテアの言葉に軽く立ち眩みを覚えた。
「そ、その・・・3号弟子と言うのはなんなのよ?」
「えっ?私は3番目の弟子だからだけど?」
「ならば普通3番弟子と言うのではないのか?」
「まぁ~そうなんだけど、ラウル様が3号弟子って言っていたから」
「・・・・」
アリエルが言葉を失ってしまった時、プロキシオンがオウムアムアに聞いた。
「ねぇ、亜神ちゃん?1号弟子って方もいるのよね?」
「ああ、プロキシオンよ。1号弟子ではなく・・・一番弟子だ」
「えっ?えっと・・・どうして1号弟子じゃないのよ?」
「うむ。ラウル様がおっしゃるには、かっこいいからだ・・・と」
「・・・・」
アリエルに続きプロキシオンまで言葉を失ってしまった。
ラウルの発言は様々な場所で色々な影響を与えてしまうのだ。
「だがこうも言っていた。序列は大事なのだと・・・」
そうオウムアムアが言った時、イリアが思い出しながら口を開いた。
「そう言えば・・・ユウトが前に言っていた事があるわ」
その言葉に「ピン」と来たセルカも口を開く。
「にゃ~♪アレのことかにゃ?」
「ええ、ユウトの言っていた・・・聖域ランキング♪」
「「「「「聖域ランキング~?!」」」」」
イリアの発言に見事シンクロした面々。
詳しい内容を聞くとこうだ・・・。
少し前のある日・・・
悠斗とラウルが楽しそうに話をしている時の会話で
序列は大事と言う話と、仲間内で強さのランキングを決めると、
向上心が働き、上を目指せるのではないか?
そう言う話がされていたらしい。
悠斗は少人数でやっても意味がないとの言葉にラウルは、
「じゃ~聖域に居るみんなでしようじゃないか?楽しそうだよね~」
悠斗的には、この場限りの楽しい会話だと思われたが、
しかしラウルは違っていた。
悠斗と別れた後・・・
「うむ。聖域ランキングか・・・いいね~♪」
焚き火の前で「ニヤリ」と笑う怪しい笑みは、
焚き火の炎がラウルの笑みを更に怪しくされていたらしい。
先程も言ったが・・・
ラウルの発言は様々な場所で色々な影響を与えてしまうのだ。
「うむ。聖域ランキングとは・・・
しかしそれでは、目先の強さに固執してしまうのでは?」
オウムアムアは聖域ランキングの危険性を懸念していたのだった。
それに対しアマルテアは・・・
「しかしオウムアムア殿?指標は必要かと思われますが?」
「うむ・・・確かにな」
すると黙って様子を伺っていたロゼッタが話に加わる。
「確かに指標は必要だよ?
自分の強さに溺れる者も出るかもしれないけど、
それは当人の怠慢が招くことだからね?」
一同がロゼッタの発言に頷くと、アリエルも口を開く。
「定期的に・・・と、言うのであれば、意味があると思うが?」
「私は賛成なのにゃ♪もっと強くなって、牛女をギッタギタにするのにゃ♪」
「な、なんで私なのよっ!っていうかっ!牛女って言わないでよっ!」
一同笑っていたのだったが、2名ほどがセルカの発言に喰い付いた。
そして、その視線はイリアの胸へと注がれた。
「あ、あの・・・アリエル様、ロゼッタ?
と、とても視線が怖いのですが・・・?」
顔を引きつらせその視線の先に、イリアは胸を覆い隠した。
「牛・・・女・・・ねぇ~・・・」
ロゼッタの視線に殺意がこもっていた。
「ロゼッタ・・・私も手を貸そう・・・」
そう言ったのはアリエルだった。
そしてアリエルの視線もまた・・・。
するとアマルテアが提案してきた。
「胸は兎も角・・・」
「「はぁ~?!」」
そう言った時、殺気が練り込まれた視線がアマルテアに向けられる。
しかしアマルテアはその視線に飲み込まれる事なく話を続けた。
「2ヶ月後・・・聖域内ランキング・・・やりましょう。
勿論・・・参加したい者だけでいいと思います。
暴力が嫌いな者も居るでしょうからね?
だけど、今は敵と対抗出来るだけの人材が必要なのです。
より多くの強き者を集めねばなりません」
「うむ。我も同意しよう。
戦う事で己の長所や短所もはっきりするだろう。
序列と言うモノは、己の鍛錬次第でどうとでもなろるだろうしな?
怠慢はすぐさま反映されるだろう」
オウムアムアとアマルテアの発言にアリエルが口を挟んだ。
「二人共待て。その序列を決めると言うのであれば、少し待て」
アリエルの発言に一同が耳を傾ける。
「私達も戦うとなると時間がかかる可能性がある。
だからまず・・・アナザーのメンバーだけで行うのが良いのではないか?」
今は時間的余裕はない。
神同士が熾烈を極めると、それこそ時間が足りなくなる。
アリエルはそれを懸念していたのだった。
食堂に居る全員が頷き納得した時食堂のドアが開いた。
そして中に入ってきたのは・・・
「その話・・・私も賛成ですわ♪」
ミスティの登場に一同は驚いたのだが・・・
(あの登場の仕方は・・・ドアの前でスタンばっていたわね)
アリエルはジト目でミスティを見ており・・・
(にゃはは♪少し前からドアの前に気配があったのにゃ♪
タイミングを図っていたのにゃろうけど・・・
スタンばっていたのは明白なのにゃ♪)
セルカは気付いていたのだが、面白くなりそうだと思い黙っていた。
(あら~時空神様も、そんなお茶目さんな事するのね?
スタンばって居るなんて・・・可愛いところもあるじゃない♪)
プロキシオンは時空神の可愛い行動に頬を緩ませていた。
(ミスティ様ってこう言うところがあるのよね~?
スタンばっているなんて・・・ふふ♪)
イリアはミスティとの付き合いも長くなり、その行動に納得していた。
(ミスティ・・・スタンばってるのバレバレだから・・・
どうしてあんなドヤ顔で登場出来るのよ?
私には・・・無理だわ~・・・恥ずかしくて無理っ!)
ロゼッタは・・・もう何も言うまい。
この場に居る全員が同じ事を思っていた。
それは・・・もう「スタンばっていた」と、言う事だった。
そしてミスティの心の声は・・・
(この絶妙なタイミングっ!スタンばっていて正解だったわね♪)だった。
つまり・・・皆さん大正解だった。
そしてこの時、この瞬間悠斗は・・・
癒やしの森の調査が終わりある近くの森へと足を進めていた。
そして遅めの朝食を取ると、ふと木の上にある実の存在に気付いた。
「アレって・・・」
そうつぶやくと鑑定を使用した。
「ん?パイモモって・・・?」
詳しく鑑定すると、もちもちとした手触りで柔らかく、
お菓子の原料となる木の実・・・だ、そうだ。
悠斗はジャンプするとその木の実をもぎ取った。
そしてこの時、その木の実を狙う者と視線が絡み合う。
「サ、サルっ!?」
飛び上がった目の前にサルが、こめかみをヒクヒクさせていたのだった。
すると目の前に居たサルが体を震わせると、
そのサルは分身して数十体となっていた。
悠斗はその光景に驚き油断してしまったのだった。
その瞬間、パイモモを奪われそのサルは逃走した。
「あっ!こらぁぁぁっ!それは俺のもんだぞっ!」
悠斗は咄嗟に木の枝に掴まると、鑑定を使用しそのサルを見た。
「分身ザル・・・数十体の分身になり、モノを奪う。
奪うとそのまま逃走する。攻撃力は低いが、集団である」
「・・・にゃるほど♪」
因みに、この木に実っているパイモモの実はたくさんあるのだが・・・
「それは俺のだっ!」と、悠斗は滾せていたのだった。
ニヤリと笑う悠斗は「パイモモ」奪還のため駆け出した。
アシュリナへ行くのは何時になるのだろうか?
と、思う今日この頃だった。
ミスティ ・・・ ドヤ顔のミスティですorz
アリエル ・・・ ・・・もう引きずらなくていいんじゃないか?アリエルです。
ミスティ ・・・ まさかドアの前に居たのがバレていたなんて・・・
アリエル ・・・ あはは、それはまぁ~今更言っても・・・な?
ミスティ ・・・ 次回頑張りますわっ!
アリエル ・・・ 何をだよっ!
ってなことで、緋色火花でした。




