閑話 日本 神界 2 内通者
お疲れ様です。
今回は閑話・日本の神界の話です。
えー・・・今回実はとても不幸な事がありまして・・・
それは活動報告の方でお話させていただきますW
とても暇な方がいらしたら、暇つぶし程度にお読み下さいW
それでは、閑話・日本・神界 2をお楽しみ下さい。
天照は稲穂と別れると神界へと戻ってきた。
別邸に戻ると天照は縁側に腰を下ろし、
悠斗が穂高の為に作った紅葉の髪留めを手に取った。
「そなたの妹御はとてもしっかりとした子じゃったぞ?」
憂いに満ちた表情を浮かべ紅葉の髪留めに語りかけていた。
「うむ、そうじゃ?・・・そなたの妹御に何かしてやろうかの~?
一体何をしたら喜んでくれるのか・・・ふむ・・・」
空を眺め思案していると・・・
「姉上・・・」
「・・・月読か?何用じゃ?」
縁側で寛ぐ天照の前に月読が姿を現した。
「言わずともお分かりになるのでは?」
「ふむ・・・妾には検討もつかぬの?」
「お戯れを・・・」
月読の問いに答える様子もなく、ただ景色を眺めていた。
「姉上・・・英二様に一体何をされたのでしょうか?」
「ほう?英二に何かあったのかえ?」
「まだそのような事をおっしゃるのですかっ!」
天照は溜息を吐くと、つぶやくようにこう言った。
「うぬには分からぬよ」
そのつぶやきに月読は表情を強張らせた。
「ならばおっしゃって下さいっ!姉上のお考えをっ!
私には今の姉上がとても恐ろしく感じますっ!」
「ほぅ~?妾が恐ろしいのかの?はっはっはっ!」
「何故お笑いになるのですかっ!」
天照は笑った後、冷めた目を月読に向けた。
「可笑しくて当たり前であろう?
それが分かるぬのなら、妾に口を挟むでないわ」
「・・・・」
下界の事を全て姉である天照に任せていた月読にとって、
天照の憂いなど計り知れない事だったのだ。
「今更謝罪したところで、許してもらおうとは思っておりません。
しかしながら、英二様にされた事は、
例え神であったとしても、許されるものでは御座いません」
「許されぬ・・・か。それはそうじゃろうの?
しかしの?妾はそれでも通さねばならぬ事情があるのじゃ。
今は話せぬが、いずれ話す日が来るゆもしれんの?」
月読は思いつめた表情を浮かべる天照を見て、
その心の奥底に眠る悲しみを見た気がしたのだった。
「分かりました。いずれと言われるのであれば・・・
私は姉上を信じて待つ事に致します」
「うむ・・・すまぬの?」
「いえ・・・」
沈黙が続く中、「ざわっ」と、空気が震えると、
突然月読は眉を釣り上げ顔を引きつらせた。
そして一言「天誅」と、つぶやきながら指を「パチン」と鳴らした。
「ん?どうしたのじゃ・・・?
それに何故顔が引きつっておるのじゃ?」
「少し待って頂けますか?」
「う、うむ」
月読は懐から紙と筆を取り出すと、
何かを書くと再び指を「パチン」と鳴らした。
「・・・一体何をやっておるのじゃっ!」
「おほほほ・・・どこか突然失礼な物言いをされましたので、
贈り物の1つでもと思い、鉄アレイを送ったのです・・・おっほほ」
「う、うぬも相変わらずよの?
鉄アレイとな?まだ凝りずに鍛えておるのかの?」
「おほほ・・・嫌ですわ姉上・・・筋肉は正義なのですよ?」
「う、うむ・・・妾にはよく分からぬのじゃが、
これ以上突っ込んでも意味はないようじゃの?」
天照は心の中で月読に対して合掌しながら、
鉄アレイを送られた者に同情したのだった。
その送られた者が英二だとは知らずに・・・
そして再び月読の気が怒りで膨れ上がると・・・
「ま、また・・・かの?」
「・・・はい♪」
その冷めた笑みに呆れていると、下界から神力を纏った声が聞こえてきた。
いや、正確には怒鳴り声だった。
「月読よ?今の声は・・・桜・・・かの?」
「おほほ・・・姉上、気のせいですわ♪」
「そ、そうか・・・の」
天照もまた引きつった笑みを浮かべた時、
耳を微かにかすめる音に気がついた。
「月読よ?妾はそろそろ奥に戻ろうと思うのじゃが?」
「分かりました姉上。私は此れにて失礼致します」
「うむ・・・またの」
「はい」
天照は立ち上がると部屋に戻っていき、月読もまた戻って行った。
天照は月読が帰った事を確認すると障子を閉めこう言った。
「もうよいぞ?」
そうつぶやくと暗がりから人影が浮かび上がった。
「失礼致します」
「うむ、ご苦労じゃの?」
顔に布を巻いた女性と思われる者は、天照に礼を取ると頭を垂れたのだった。
「で・・・?ラウルの様子はどうなのじゃ?」
「はい、相変わらずでは御座いますが、
悠斗様の為に精力的に動いておられます」
その言葉に天照は何度か頷き座敷に腰を下ろした。
「うむ・・・その動きと言うのは、擬体の事じゃな?」
「はい、例の黒い液体に対抗する手段として制作しております」
「・・・うむ。なるほどの・・・まさかとは思うが、
こちらの事には気付いておらぬじゃろうの?」
「はい、それにつきましては問題無いかと思われます」
「気取られる訳にはいかぬからの?くれぐれも用心するのじゃぞ?」
「はい」
天照は扇を取り出し広げると話を続けていった。
「して・・・例の神達の動向は?」
「はい、まだ主だった動きは見せてはおりませんが、
水面下では、こちらの思惑通りに動いているものと思われます」
「うむ・・・まぁ~あやつらは放っておいてもいいじゃろうが・・・
朱羅の動向は気になるの~?」
天照は扇を「パチン」と畳むと、空をただ見つめ思案していった。
すると頭を垂れた女性は天照に「朱羅」について話を始めた。
「朱羅の動向ですが・・・」
「ん?何か分かったのかの?」
「はい、朱羅は・・・「嘆きの森」へ向かったようです」
「ほう~・・・あの森へ・・・?なるほどの」
天照はそう言うと思いつめた表情を見せた。
その時、無意識に天照はこうつぶやいた。
「穂高の所とは・・・の」
その言葉に頭を垂れた女性は「ピクリ」と反応したのだった。
(穂高って・・・あの?どうしてその名が?)
思わぬ名が天照より飛び出し困惑するのだが、
その女性は決して顔には出さなかった。
「それにしても朱羅のヤツめ・・・
妾の予想を上回るほど強くなりおったの・・・
今の悠斗様では・・・ふむ・・・勝てぬの・・・」
「しかしながら天照様・・・」
「なんじゃ?」
「悠斗様にはあしゅ・・・いえ、赤銅色の御力が御座いますが?」
天照は頭を垂れる女性が思わぬ事を口にしかけ、
眉が「ピクリ」と釣り上がっていた。
「失礼致しました」
「うむ、構わぬが・・・次はないと思うがよいぞ?」
「はい」
「うむ・・・悠斗様のあの力は、まだ第一段階じゃからの?
その程度の力では、立ち打ちなど出来ようはずもないの」
悠斗の力が及ばないほどと聞き、その女性は不安の色を濃くした。
「ふっふっ・・・裏切り者である、そなたが心配するのかえ?」
「・・・・」
「まぁ~良いわ。そなたも立場と言うモノがあるじゃろうて?
そなたは陰ながら尽くすが良かろう♪」
「はい」
その女性は天照の大義の為、助力すると決めたのだが、
天照の無慈悲な振る舞いに、心を鬼と化し耐えていたのだった。
(私が自分で決めた事・・・まだこの方の真意は見えてこない・・・
それが見えるまでは・・・でも・・・)
苦悩するその女性の心は泣いていたが、自分を殺す事で、
無表情を貫く事が出来ていたのだった。
「して・・・先程の話なのじゃが?」
「先程の・・・と、言いますと?」
「擬体の事じゃ・・・。擬体の戦闘特化と言う発案は悠斗様なのかえ?」
「はい。その事に気付いた悠斗様が、ラウル様に報告し、
ミランダを被検体とする事で、確証を得る事になったのです」
「ふっふっふっ♪流石は悠斗様じゃの?
戦闘においては普段の天然さは何処かへと行ってしまうのじゃな?」
楽しそうに悠斗の話をする天照。
しかし天照の瞳の奥底には、深い悲しみが宿っていた。
そしてその悲しみは怒りの炎となり、
無慈悲な神へと変貌を遂げたのだった。
「天照様・・・何故悠斗様をノーブルへ?
戦闘がずば抜けている事は分かるのですが・・・」
「そうじゃの・・・。妾の為であり、あやつの為でもある。
じゃがの?最終的な判断は、あの御方がそれを望まれたからじゃ。
無論、妾もそれを望んだから・・・の」
「・・・あの御方とは?」
「ふっふっふっ・・・。それはいくらそなたの頼みでも言えぬのじゃ。
すまぬの?じゃがこれもまた・・・運命なのじゃ」
「・・・運命・・・ですか?」
「うむ」
薄気味悪く微笑む天照の瞳は悲しみに満ちていた。
そんな天照を救いたい気持ちでいる女性だが、力不足は否めなかった。
(やはり悠斗様でなければ・・・)
眉間にしわを寄せ、己の力不足に自己嫌悪するのだった。
すると・・・
「こらぁぁぁっ!月読ーっ!」
突然外から怒鳴り声が聞こえた天照は、その女性にこう言った。
「よいかの?ラウルの監視は怠る事のないようにの?
それと、悠斗様の事はくれぐれも・・・の?」
「はい。承知しております」
「うむ、では・・・行くがよい。また報告を待っておるからの?」
「はっ!」
天照との話を終えたその女性は、一瞬にしてその場から消え去った。
天照は障子を開けると、怒鳴り散らす者を探したのだった。
「・・・おい、うぬは何をしに此処に来たのじゃ?」
「あっ・・・天照。あんた此処で何をしてるのよ?」
「な、何をって・・・此処は妾の屋敷じゃっ!」
「あっ・・・そうだったわね?月読の神力を此処で感じたから、
てっきり此処に隠れているのかと思ったわ」
悪びれる素振りすら見せず、淡々と話す桜に呆れていた。
「良いかの?此処は妾の屋敷・・・
まずは非を詫びるのが先ではないのかの?」
「私とあんたの仲でしょ?」
「・・・桜よ?そなたは妾の部下なのじゃぞ?」
「まぁ~そうね?・・・ところで月読はどこなのよ」
話を聞き流す桜に溜息を吐きつつ項垂れた。
「ん?あんた大丈夫なの?」
「・・・誰のせいじゃ、誰の・・・」
「えっ?私?・・・何か分からないけど・・・ごめんね」
「わ、分からぬのに、謝られても・・・の」
古い付き合いでもある桜に、いつもこの調子で振り回される天照。
ふと感傷に浸る天照に桜は真剣な眼差しでこう言った。
「あんたが何を企もうと、英二を殺させはしない・・・いいわね?」
「ふんっ、うぬの好きにすれば良いではないかの?
妾は妾の道を行くだけじゃ・・・
邪魔をする者が居れば踏み潰すまでじゃ」
「・・・わかったわ」
天照は桜にそう言うと、踵を返し部屋に戻ろうとした。
「ねぇ・・・」
「なんじゃ?」
振り向きもせず返答する天照に桜は真顔でこう言った。
「・・・月読はどこよ?」
「知るかっ!」
「ピシャッ!」と、障子を閉めた部屋の中で、
天照は拳を握り「わなわな」と震えていたのだった。
そして屋敷の外では・・・
「月読ーっ!ちょったあんた出て来なさいよっ!
英二は兎も角、私が死んだらどう責任取るのよっ!月読ーっ!」
そう騒がしく叫ぶ桜の声に天照は深く溜息をつくと・・・
「・・・英二を殺させはしないと言っておったろうに・・・
何を言っておるのじゃ、あやつは・・・」
項垂れる天照は「ぶつぶつ」言いながら、部屋の奥に消えて行くのだった。
「月読ーっ!」
暫くの間、桜の叫びが響いていたのだった。
天照 ・・・ よっ!皆の者、元気かの?妾じゃ♪
月読 ・・・ あ、姉上っ!はしたないですよっ!あっ、月読です。
桜 ・・・ ども・・・犬神の桜です。今回骨っ子1年分で呼ばれました・・・
天照 ・・・ に、しても・・・人数多過ぎじゃろ?どうなっておるのじゃ?
月読 ・・・ もはやカオス・・・ですわね?
桜 ・・・ で?此処で何を話すのよ?
天照 ・・・ このメンツで一体何を話せと言うのじゃ?コレ・・・無理じゃろ?
月読 ・・・ 此処に来るよりも家で筋トレしていた方が・・・
桜 ・・・ 白斗~?見てる~?姉ちゃんだぞ~?
天照 ・・・ ・・・無理じゃな?
月読 ・・・ 無理ですね?
桜 ・・・ 白斗~?やっほ~♪姉ちゃんは元気だぞ~♪
ってなことで、緋色火花でした。




