表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移 ~魔を狩る者~  作者: 緋色火花
第二章 港町・アシュリナ編
142/407

119話 擬体

お疲れ様です。


肩こりを治す方法を教えて下さいw

と、言う訳で悠斗が旅立つまで残り2話となりましたw

それからは暫く閑話が続きます^^



それでは、119話をお楽しみ下さい。

一夜明けた朝、悠斗は一人聖域を走っていた。

「白斗のやつ・・・やっぱり起きないじゃないかっ!」

悠斗はだらしなく口を開き、幸せそうな夢を見ている白斗に呆れ、

今日もまた、一人で走っていると・・・


「おはようございます。悠斗様♪」

気配を感じさせず悠斗の後ろを走っていたのは、アンナだった。

「おはようございます。アンナさん」

アンナは悠斗に並ぶと、何気ない会話を楽しみつつ一緒に走っていく。


闘技場前まで戻ってくると、二人は体をほぐしあっていた。

「ストレッチはゆっくりと丁寧にしないとね~?」

「そ、そうなの・・・ですね?

 こ、ここまで丁寧にとは・・・初めて知りました」


アンナの申し出でストレッチを手伝う悠斗なのだが、

予想外にもアンナの体は硬かった。

ストレッチを終えるとアンナは悠斗に申し出る。


「悠斗様・・・私と組み手をして頂けませんか?」

「えっ?まぁ~別に俺はいいですけど?」

「感謝致します。なまった体を鍛えませんと・・・」

悠斗はアンナの言葉に笑みを浮かべながらも、

その力強い目に喜んで引き受けたのだった。


悠斗とアンナは場内に入ると対峙した。

「アンナさん、軽くいきますからね?」

「私はこれでも元・S級ですよ?」

その言葉に悠斗は薄く笑った。

「ご自分の現状がわかっていないみたいだね?」

「えっ?」

「では・・・いきますよ」

「えっ、ええ・・・宜しくお願いします」


悠斗はアンナが構えるのを待ってから組み手を開始した。

最初は軽く流す予定だった悠斗は、先程のアンナの言葉に

この先の危うさを感じていた。


組み手は悠斗の予想通りの展開になり、

今現在、組み手を終えたアンナは悠斗の目の前で、

完全にバテてしまっていた。


「アンナさん、これでわかってもらえたかな?」

「・・・・・・は、はい」

悠斗に顔を向けるのもやっとなほど、アンナは鈍ってしまっていた。

「元・S級ってのは、もう忘れてください」

「・・・・・・はい」

「でなければ、貴女は何もする事は出来ずに死にます」

「・・・・・はい」

予想以上に動けなくなっていたアンナは、唇を噛み締めていた。

悠斗はそんなアンナの気持ちを理解しつつも、

このまま行けば、必ず死を迎えるだろうと言う感覚があったのだ。

そう・・・アンナの元・S級だと言うプライドは必要ないのだ。


アンナは悠斗の言葉を重く受け止めると、

立ち上がり再び悠斗に組み手を申し込んだ。


「これからは一人の冒険者として、特訓したいと思います」

「だね?じゃないと・・・確実に死ぬからな?」

悠斗は言葉尻に少し威圧を込め、事の重大さを認識させるのだった。

「では、お願いしますっ!」

「かかってこいよ」

悠斗は薄く笑うと、アンナもまた薄く笑っていた。


アンナは必死に攻撃を繰り出すのだが、

その攻撃をいとも簡単に悠斗は片手で(さば)いていく。


(あ、当たらないっ!いくら鈍っているとは言えっ!)

アンナにとって戦闘での悠斗の印象は機動力が桁違いだと言う印象だ。

そしてそれを言い換えれば、「(きょ)」の動き。

(じつ)」を主とするアンナの動きは、一撃で確実に相手を倒す拳、

それに対して「虚」の動きとは、相手を惑わす事に主を置く拳である。


「虚」とはつまり体力を消費しやすい欠点を持つのだが、

今、アンナの目の前に居る悠斗の動きは、

「実」とも「虚」とも違う印象を受けた。


アンナは体力を温存させつつ悠斗がへばるのを待っていたのだが、

悠斗にその兆候は一向に現れなかった。

(どうしてなのっ!体力が落ちる様子が・・・ないっ!)


次第にアンナの表情が曇りだし、拳のキレも落ちてくる。

悠斗はアンナの様子を確認すると攻撃を軽く当てアンナは膝を折った。


「アンナさん、俺へのイメージに振り回されっぱなしだったね?」

アンナは肩で息をしながらその問いに答えた。

「は、はい・・・た、確か・・・に・・・その・・・通りです」

悠斗は呆れた様子を見せると、マジックボックスから水を取り出した。

その水をアンナに渡すと、一気にその水を飲み干していく。


「ぷはぁぁーっ!」

全てを飲みほした容器を見つめると、悠斗に質問していった。

「悠斗様、私の思惑などお見通しだったと言う事ですね?」

「あっはっはっ。お見通しも何もさ?

 俺の印象を勝手に決めつけていたアンナさんが悪いと思うけど?」

「・・・・・」

「それにさ?昨日の俺達の修練を見ていただろ?」

「・・・気付いておられたのですね?」

「ああ、あんな熱心に見られるとさ?嫌でも気がつくよ?」

アンナは昨日の隠れ見ていた事がバレているとわかると、

その謝罪をし、悠斗に訓練の指導をお願いするのだった。


「んー・・・アンナさん、悪いんだけど俺には教えられないんだ」

「それはどうしてですか?」

「えっと~・・・ちょっとやる事があってさ?」

「・・・そう、ですか・・・」

項垂れてしまうアンナを見ると、悠斗は頭を掻きながら答えた。


「直接は教えられないけどさ?」

「はい?」

「ああ・・・まぁ~ 簡単に言うと、最低限、これだけはやって欲しい・・・

 って事を、アンナさんに教えておくよ」

「最低限・・・ですか?」

「ああ、ただし、毎日行って下さい。例えそれが雨でも雪でも・・・」

「わ、わかりましたっ!」

顔に陽が差したようにアンナの表情が和らいでいった。


訓練の内容などを後日教える事にして、

悠斗とアンナは闘技場で別れたのだった。


広い闘技場の真ん中で青空を眺めていた悠斗は、

ラウルの気配に気付くと、その気配の先に顔を向けた。


パチ、パチ、パチと、手を叩きながら近付くラウル。

「あははは。悠斗君も相変わらずお人好しだね~?」

「お前なぁ~?ずっと見てたのかよ?」

「まぁ~ね♪」

悪ぶれもせず笑っているラウルに悠斗は呆れるしかなかった。


「それで・・・?こんな朝早くから何の用だ?」

「ふふっふ~ん♪流石に察しがいいな~♪」


ラウルは今後について悠斗と話すべく、朝早くを狙って会いに来たのだった。


「それで悠斗君、君はやはり一人で行動するのかい?」

「ああ、とは言っても、1ヶ月はアシュリナをウロウロしてるけど、

 その後は、「嘆きの森」を目指すよ」

「・・・嫌な予感がするんだね?」

「・・・・・・・・」


言葉短くそう告げるラウルは、悠斗の顔をまっすぐ見ていた。

「・・・何だよ?まるっとお見通しって事か?」

「あははは、君の事は分かっているつもりだからね~?

 その事に関して、僕は誰にも話す気はないから安心しておくれよ」

「・・・信用してるよ」


微笑むラウルと苦笑する悠斗。

ラウルはテーブルなどをセッティングすると、悠斗を座らせた。

「なぁ、ラウル?ミランダの件なんだが・・・」

「ああ~そうだね?まずはその報告をしようかな?」

「そうだな・・」

悠斗は出されたコーヒーに口を付けると、ラウルの報告に耳を傾けた。


「結論からまず言うと・・・君の思っていた通りだったよ」

「・・・だろうね」

「擬体を使用すれば、我々神でも奴らを認識する事が出来た。

 だけど懸念はあるよ?」

「懸念って?」

ラウルはそう聞かれると、悠斗の頭の中に映像を送った。

その映像とは、ミランダが使用した擬体の損傷が、

ひどい状態に映っていた。


「・・・ひどいな?」

「だろ?僕も流石に驚いちゃったよ。

 そんなやわには作ってないはずなんたけどね~?」

「擬体のしくみは分からないけど、これって内側から潰れているのか?」

悠斗は頭の中に流れている映像の損傷箇所に違和感を感じていた。


「その通りだよ?擬体は元々戦闘用には出来ていないんだよ。

 だから想定外だったとは言いたいところだね?」

「んー・・・戦闘用なんて作れるのか?」

「そこなんだよね~?そんなの想定している訳じゃないからさ~?

 一応それを考慮して作って行くしかないね?」

「手探り・・・って事になるのか~・・・事は上手く行かないな~」

「まぁ~僕もやれるだけの事はやるよ♪」

「・・・・・・そうだな」


二人は青空の下、テーブルを囲み次々と意見を躱していく。

擬体に関して様々な意見も交換していった。


そして暫くすると・・・

一息着く二人に突然の来訪者がやってきた。


「パパみーーーーっけっ!」

悠斗を指差しながら、満面の笑みを浮かべていたのは、

昨日、悠斗の子供になった二人の精霊樹が居た。


「お、お前達・・・どうして此処に?」

「パパ、僕達を置いて行くなんてズルいよ~」

「そうよ、そうよっ!私達だってパパと一緒に居たいのにぃ~」

不貞腐れるエルナトとミアプラの表情に、ラウルは大笑いするのだった。


「あっはっはっはっ!流石の悠斗君も二人にはかたなしだな~?」

「・・・まぁ~・・・ね」

ラウルに大笑いされた悠斗もまた不貞腐れるのだった。


ラウルは微笑ましく二人を見ている悠斗を見て、小声で話しかけた。

「悠斗君、二人の事はどうするんだい?」

悠斗は視線をじゃれ合う二人から離さないまま答えた。

「連れては行けない・・・行けるはずもない。

 二人には俺がちゃんと言い聞かせる。

 まだ生まれたばかりなんだ・・・」

「・・・そうだね」

「それに、人族の世界ではあの二人は生きては行けないだろうしな?

 この聖域だけは何があっても守らないと・・・」


悠斗の表情に迷いはないと判断するラウルは、

悠斗にある提案をしたのだった。


「えっ!?・・・そんな事が出来るのか?」

「出来るよ?ただし・・・あの二人にも特訓させないといけないけどね?

 でも無理にさせる訳には行かないからね?」

「ああ、分かってる。その話もしてみるよ」

「・・・分かったよ、それは君に任せるよ」


ラウルはそう告げると悠斗を見た。

そこには力強い意思が見て取れたのだった。

(ははは・・・何だか本当の父親のような顔をしているね?

 君がどれだけ苦悩したかは僕には分からないけどさ・・・

 でも君の意思は必ず、あの子達には伝わるはずだよ?)

「そう伝われば良いんだけどな~?」

ラウルの心の声をまるで聞いていたかのように答える悠斗。


「え、えっ?どうしてわかったんだい?」

「どうしてって・・・そんな顔してたからさ?」

「あははは・・・これはまいったな~♪」

「俺はさ?あの子達には自分の足で立って行かせたいんだ。

 俺達に甘えるだけじゃなく、自分の意思で歩いてもらいたいんだ」

「・・・そうだね。僕もそう思うよ」


自分の足で立って行かせたいと望む悠斗の心を

守りたいと思うラウルだった。


エルナトとミアプラを他の動物達や妖精達と遊ぶように言うと、

二人は笑顔で可愛く頷くと駆け出して行った。

そして悠斗とラウルはまた話し合う事になった。


「擬体ってのはラウルにしか作れないのか?」

「んー・・・。一応ミスティも作れるんだけどね~」

「ん?ミスティに何かあるのか?」

「いや~さ?ミスティはちょっと凝り性と言うか、なんと言うか・・・」

言い淀むラウルに悠斗は首を傾げていた。


「ミスティってね?こだわりが強すぎて量産にはまず向かないんだよ。

 だから擬体を作るとなると・・・」

「ああ~・・・性格からして、コスパ悪そうだもんな~?」

「そうなんだよね~。もう少し頭を柔らかくしてほしいんだけどさ」

「でもミスティが居るからこそ、ラウルは伸び伸びと出来るんだろ?」

「それは否定しないけどさ~・・・」


そんなやり取りをしながら過ごしていると、

朝食の準備が出来たとミスティからの念話が入ったラウルは、

悠斗に告げると屋敷に向かったのだった。

その途中、エルナトとミアプラに声を掛けた悠斗は、

手を繋ぎみんなが待つ屋敷の食堂へ向かって行った。


食事を終えた悠斗は、エルナトとミアプラに声を掛けた。

その様子を見ていたラウルに悠斗は合図を送ると、

頷いて見せたのだった。

(しっかり頑張っておいでよ~♪)

心の中で応援するラウルの気持ちを察した悠斗は、

しぶ~~い表情を見せると食堂を後にした。


悠斗は精霊樹がある所まで来ると、テーブルを出し二人を座らせた。

真剣な面持ちで二人にどう切り出そうかと悩んでいると・・・


「パパ?僕達の事なら大丈夫だよ?」

「へっ?」

突然エルナトから告げられた言葉に唖然とする悠斗。

「そうよ?私達はパパの子供だもん。

 パパが私達を想う気持ちはちゃんと理解してるもん」

「・・・ははは、まじか・・・」

「寂しい事に変わりはないけど、私達はパパの子だもん。

 もう少し信用してもいいんじゃない?」


悠斗は驚きのあまり放心状態になる中、

二人は「クスクス」と笑っていた。


「どうして俺の気持ちがわかったんだ?」

「それはね?パパからもらった血液のせいだと思うよ?」

「血液?」

「うん、パパの血液の記憶って言うのかな~?

 パパがこっちに来てからの事は、ある程度わかっているよ?」

「俺の血液・・・すげーな?」

悠斗の反応に二人も大声で笑い始めたかと思うと、

急に真顔になる二人に戸惑いを見せた。


「どうした?大丈夫か?」

心配する悠斗を他所に、背後にある精霊樹が緑色の光を放った。

その緑色の光は悠斗を包み込むように広がると・・・


「私は精霊樹・・・」

「せ、精霊樹?」

悠斗は慌ててエルナトとミアプラに向き直ると、

二人の時間が止まったかのように、動きが止まっていた。

「精霊樹?一体どう言う事だ?」

悠斗は立ち上がると、精霊樹の前まで歩くと、

その幹に手を添えるのだった。


「勿論・・・説明はあるんだろうな?」

悠斗の威圧に臆すること無く精霊樹はこう答えた。

「勿論です」

短く答える精霊樹に悠斗は緑色の光に包まれると消えて行った。


ラウル ・・・ ふむ、僕も頑張って擬体の制作をしなければね。

ミスティ ・・・ 私も協力したいとは思うのですが・・・

ラウル ・・・ 君はイリア君やセルカ君の面倒があるからね~?

ミスティ ・・・ はい、それが私に出来る事ですものね?

ラウル ・・・ 君って悠斗君一筋だからね~・・・羨ましい話だよ。

ミスティ ・・・ 悠斗さんはお仕事さぼりませんものね?

ラウル ・・・ へいへい。どうせ僕は・・・orz

ミスティ ・・・ ふふふ♪



ってなことで、緋色火花でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 何気に出てた擬体にも意味があったのですね。 アンナがここからどれくらい成長できるのか、 エルナトとミアプラの今後、 などなど楽しみにしています♪ 英二君と桜のエピソードも待ってまーす♥︎…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ