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異世界転移 ~魔を狩る者~  作者: 緋色火花
第二章 港町・アシュリナ編
141/404

118話 修練

お疲れ様です。


今回は118話ですね~。

悠斗の修練を見学する二人の神と一匹。



それでは、118話をお楽しみ下さい。

悠斗は二人と一匹の見学を結局認める事になり、

拡張した岩場の聖域に新たに建造された闘技場に来ていた。


「へぇ~これが闘技場か・・・すげーな」

予想よりも闘技場の規模の大きさに感動しつつ呆れていた。

「・・・ラウルのヤツ、ちゃんと仕事しているんだろうな?

 ミスティに申し訳なく思ってしまうのだが・・・?」


二人と一匹が苦笑する中、オウムアムアとアマルテアに

施設を案内されていく。


「シャワー室やサウナまで・・・やりすぎじゃね?」

「ほんまやな?ラウルはんはほんまに力を使うところを間違ってまっせ?」

悠斗と白斗の言い分がわかる二人の神は苦笑いを浮かべていた。


「ま、まぁ~流石に私達もこれはやりすぎだと進言したのですが・・・」

「うむ、ラウル様がおっしゃるには、これくらいの規模でなければ、

 師匠のトレーニングとして相応しくない・・・。

 そうおっしゃられておりましたので・・・」

「ラウルはんってきっと、主の為と言いながらも、

 自分自身が楽しくなったんとちゃうかな~?」

「ああ~・・・それな?俺もそう思うよ」


ざっと見回った悠斗達は体を動かすため闘技場内に移動した。

悠斗達はランニングやストレッチを終了させると、

本格的な修練に入る為、二人と一匹から離れた。


「主~っ!見学しとってもええんやんな~?」

「ああ、お好きにどーぞ」

許可された二人と一匹は、悠斗の修練を見学する事にした。

「弟子たる者、師の動きを見て学ばねば・・・」

「そうね?普段のトレーニングを見る絶好のチャンスだもの・・・

 師匠の強さの秘密を見なくちゃね?」


師たる者の動きを逃すものかと、二人の神は悠斗を凝視する。

そして白斗もまた緊張した面持ちで凝視していた。


悠斗は両足を肩幅まで開きつつ、呼吸を整えると、

気道の基本である呼吸法の修練に入っていく。


肺に軽く酸素を溜め、次に横隔膜を膨らませゆっくりと息を吐いていく。

それを数度繰り返すと、今度は心臓の鼓動に合わせて、

酸素の出し入れを始めた。

短く鼻で吸い込み口から吐いていく。

「すー・ふっ・すー・ふっ・すー・ふっ」

短く吸い込み短く吐く・・・

だがその短い動作の中でも、肺は膨れ横隔膜もまた膨らんでいた。


「ほう~・・・あれが気道の基本となる呼吸法か・・・」

「そうみたいね?でもあの呼吸法って相当難しいわよ?」

「そうなん?でも主は簡単そうにしてまっせ?」

「それは長年地道に培ってきた賜物よ」


オウムアムアは白斗を肩に乗せたまま、悠斗のまねをしてみる事にした。

「ふむ、序盤は問題ないが、心臓の鼓動に合わせる・・・・むむむ」

オウムアムアは心臓の鼓動に合わせ、悠斗のようにやってはみるが、

難易度が高過ぎて、逆に呼吸が荒くなってきた。


「・・・我にはまだ無理だ」

額に汗を滲ませたオウムアムアは気が付けば息切れをしていたのだった。

その苦しさに両手を両膝に着き、完全にバテてしまっていた。

「師匠は相当長い年月をかけて培ってきたモノだもの・・・

 いくら私達だって、おいそれと出来るモノじゃないわ」

アマルテアはそう言いつつも、

オウムアムアのように悠斗のまねをしていく。


「まだ出来ぬが、これは気道の基礎でもあるようだ・・・

 ならば鍛錬を積み習得するまでだ」

「ええ、私だってやって見せるわ・・・」

強い意志を持って臨む二人の神を見ていた白斗も、

同じように呼吸法の訓練をするのだった。

(ワシも負けられへん戦いがあるっちゅーこっちゃ!)


(おお~・・・白斗までするとは思わなかったな)

「ニヤリ」と笑みを浮かべながら悠斗も修練に精を出す。


呼吸法の修練を終えた悠斗は体術の修練に入った。

幼い頃、祖父に叩き込まれた体術である。

「悠斗よ、基本となる型は全ての武術において最も大切なものだ。

 基本なくして型にあらず、型なくして武術にあらず・・・だ。

 良いな?基本を怠ればその先は無いものと思えっ!」


厳しくも優しい祖父の言葉を守って、悠斗は今日まできた・・・。

その祖父の言葉が今の悠斗を作ってきた。


(って言うか・・・視線がすごく気になるのだが・・・?

 視線が痛いと言うか、熱いと言うか・・・隠れている意味なくね?)


悠斗は先程から視線を感じ取ると苦笑するしかなかった、


悠斗は気を取り直しつつ、

体術の型をゆっくりと動作を確認しながらこなしていく。

一通りこなしていくと徐々にその速度を速めて行き、

流水の如く流れるように動いて行く。


悠斗の華麗な動きに見惚れてしまった二人と一匹は、

いつの間にか訓練を止め、悠斗の修練に見惚れていた。


「・・・な、なんかわからんけど、綺麗な動きしとんな~?

 ワシ、こんなふうに動く人間なんか見た事ないわ・・・」

「ああ、我もそう思うぞ?どれほど繰り返せば、このような事が・・・?」

「・・・日々鍛錬って事なのでしょうけど、流石は師匠ね・・・」


悠斗の修練の完成度に各々が何かを感じつつ、

その絶え間ない努力が実を結んだモノだと感じていたのだった。


体術の修練を終えた悠斗は地面に座ると座禅を組み瞑想を始めた。


「ん?白斗・・・師匠は一体何をしておられるのだ?」

「ああ~アレかいな?あれは座禅ちゅーてな?

 結跏趺坐(けっかふざ)をかいて姿勢を正して、呼吸を整え

 無念夢想の境地になり、精神を整えるっちゅーもんやな?」


「う、うむ・・・我にはよくわからぬのだが?」

「わ、私も・・・」

「あんたら神やろ?ほんまにわからんのかいな?」

「わかる訳ないでしょ?異世界の文化なんて・・・」

「うむ、我も剣神殿に同意する」


白斗は少し面倒とは思ったが、渋々説明する事にした。

「ええか?簡単に言うとやな?アレは座法ちゅーもんや。

 瞑想を行う為の座法なんや」

「座法・・・瞑想・・・」

「なるほどね?瞑想する事によって自分自身と向き合うって事なのね」

「せや、そういう解釈でええと思うわ。

 悟り・・・ちゅーもんは、人それぞれやさかいな?」


二人の神は白斗の説明に納得すると、悠斗の修練見学を続けた。

そんな時、悠斗から気が流れ始めた。


五感を研ぎ澄ませ己の気を昇華させて行く。

昇華・・・つまり気を清らかな水のように精錬する事によって、

不浄なる穢れたモノを浄化させる。

気道の本懐とは、浄化の力なのである。


「こ、これが浄化の力だと!?」

オウムアムアは悠斗の浄化の力に驚愕した。

そしてそれはアマルテアや白斗も同じだった。

「わ、私はこんな精錬された浄化など見た事はない・・・

 特殊とは言え、人族にこのような力など・・・」

「シッシッシッ♪もう~ほんまに呆れるしかないわ~

 主って一体どんな生き物やねんな?もう笑うしかあらへんな~」


感動を通り過ぎた面々はただただ呆れていた。


悠斗は気道の基礎となる修練を終えると、

瞑想姿勢のまま、今度は魔力制御を始めた。


魔力を体中にゆっくりと流して行く。

焦らず徐々にゆっくりと・・・

体が魔力の流れに慣れ始めると、その速度を上げて行く。


気道とは全く異なった力に、当初は戸惑いもしたものの、

日々鍛錬の中、その制御は達人クラスとなっていた。


「シッシッシッ♪主っていつの間に・・・」

そうほくそ笑む白斗を横目に二人の神も驚いていた。

「師匠は魔力制御に難有りと思ってはいたのだが・・・。

 うむ・・・我は認識を改めなければならぬな?」

「そうね、でも師匠ってあまり魔法を使用しない印象が強いわよね?」


二人の神がそう思うのは当然だった。

悠斗は実戦で魔法をあまり使用していない、

それなのに魔力制御は達人の域を超えていたのだった。


「あんたら何言うとんのや?主は魔導気っちゅーもんがあるやろ?」

「いやしかしアレは、阿修羅モードになる為の・・・」

「ええ、魔導気の印象って、阿修羅モードになる為の力じゃないの?」

二人の神の発言に白斗は呆れていた。


「あんたら何もわかってへんな~?

 あの魔導気ってヤツはな?めっちゃ魔力制御が難しいねんで?

 せやからそれを繰り返し使ってるっちゅー事はやな?

 魔力制御もそれだけ上達するっちゅーこっちゃがなっ!」


「う、うむ・・・さ、流石師匠だな」

「・・・規格外にもほどがあるわね?」

「・・・あんさん達、もう少し人族を認めなあかんのとちゃいますか?」

「「・・・は、はい」」


そんな会話をしている時、悠斗は魔力制御の次の段階へと移行していた。

体中に巡らせた魔力を制御しつつ、

悠斗は白い魔力球を体の周りを囲むように作り出していた。

その直径10cm程の球を展開させると・・・


「火・・・水・・・土・・・風・・・雷・・・」

悠斗の体を円で囲んだ白い魔力球に、一つ一つ属性を与えていく。

属性を与えられた白い魔力球は色を付け始めると、

その属性特有の力を纏っていた。

そして最後に悠斗は、自分の頭の真上に白い魔力球を出現させると・・・

「・・・重力」

そう言葉を発した時、真上にある魔力球は黒くその色を変えた。


それらの魔力球を額に汗を滲ませながら安定させると、

悠斗は目を閉じたままオウムアムアに声をかけた。


「オウムアムアっ!的を頼むっ!」

突然の頼みに驚くオウムアムアだったが、

すぐに的となる3mほどの岩を悠斗の10m先へ出現させた。

すると悠斗は「カッ!」と目を見開くと魔力球に指示を出した。


「行けっ!魔力球っ!」

悠斗の指示に従うように魔力球は的である岩へ目掛け飛んで行った。

「ドス、ドス、ドス」っと、魔力球は岩に突き刺さるのだが、

岩の表面を穿(うが)つだけでそれほどの威力はなかった。

突き刺さっては離れ、ただひたすらそれを繰り返していた。


「んー・・・なんやろ?思っとったより威力はあらへんな?」

白斗は期待に胸を膨らませていた分、その威力の小ささに肩を落としていた。

「ふむ。確かに師匠の攻撃を考えると、かなり見劣りはするが、

 これが出来るだけでもすごいと言えると思うのだが・・・?」

「そうなんかな~?主の事やからもっとこう~・・・な?」


白斗とオウムアムアが話をしている中、

アマルテアだけがその表情を固くしていたのだった。


(あの魔力球というモノには、まだ何かあるはず・・・よね?

 それぞれの属性が宿っているにも関わらず、岩はたた穿たれているだけ・・・

 それならなぜ・・・属性を宿しているのかしら?

 理由もなく師匠が修練の為だけにやるとは思えないわね)


アマルテアが悠斗の修練を凝視する気配を感じとった悠斗は、

薄く笑っていたのだった。

(ははは、流石にアマルテアは不思議がるよな?

 まぁ~まだ未完成なんだけど・・・見せるかな)

悠斗は坐法を解くとゆっくり立ち上がった。


「まだ未完成だけど・・・」

そうポツリとつぶやくと、悠斗は魔力球に向かって手をかざすと、

魔力球は的である岩から離れ、岩の周りを回っていく。

「・・・行け、火球」

悠斗の言葉に鋭く反応する魔力球は、

岩を穿った瞬間、魔力球の中から湧き出るように火を纏っていた。

「・・・ふっ」

悠斗はそう笑うと、視線をアマルテア達に向けたのだった。

(アマルテアの疑問はこれで解消されたかな?)


悠斗は視線を再び岩である的に移すと、全ての属性を解放させていった。


悠斗に悟られたアマルテアが注目する中、

魔力球の能力に驚いていた。


「・・・はっはっはっ、ま、まさかそんな力があるなんて・・・」

予想もつかないその力にアマルテアは感動していたのだった。

「あの球って、そんな隠された力があったんやな~?

 ワシはもう意味わからんわ・・・ほんまに呆れるわ」

「師匠の発想は飛び抜けておりますな・・・感服致しました」


二人と一匹の感想を他所に、悠斗の修練はその後も続いていく。


気道を使用しての体術や武器での修練や、

魔力を使用しての身体強化など、テンポよくこなしていくのだった。

悠斗の修練が終わり一息ついていると、二人と一匹が近づいてきた。


「主~お疲れさんやな~?」

「師匠、大変勉強になりました」

「・・・流石としか言いようがありませんね?お見事です♪」

タオルを取り出し汗を拭っていた悠斗はそんな言葉に笑って見せた。


「まぁ~今日は簡単な訓練だからね?

 早めに切り上げて、明日からの話をしなくちゃいけないからね?」

そう言うと、二人と一匹も同意し悠斗を残し戻って行った。

(・・・あの人も帰ったみたいだな。

 でもさ・・・今はそんなに焦る必要ないと思うんだけど、

 あの人はどう思っているんだろ?

 まぁ~本人に聞けばいい事なんだけど、

 修練に身が入らないからな~・・・堂々と見学すればいいのにな?)


悠斗は熱心に隠れて見ていたあの人を頭に浮かべると、

溜息を吐きつつ困った表情を浮かべていた。


そして闘技場を出た悠斗は夜空を見上げ風を感じながら、

エルナトとミアプラが眠る悠斗の部屋に帰っていくのだった。

(さてっと・・・これからどうするかな~?)






ラウル ・・・ ふむ、悠斗君の修練か・・・

ミスティ ・・・ あの連中が邪魔になっていない事を祈るばかりですわ

ラウル ・・・ あっはっはっ・・・流石に邪魔にはならないだろうけどね?

ミスティ ・・・ 油断大敵と言いますわ。

ラウル ・・・ その連中よりも、覗き見る目もあるみたいだけどね?

ミスティ ・・・ わ、私じゃありませんわっ!

ラウル ・・・ わ、分かってるってば・・・^^;



ってなことで、緋色火花でした。

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― 新着の感想 ―
[一言] こういう戦闘系はお詳しいですね♪ 閑話もそうですが、いろんなカラーの話を同時進行で操る、マルチタスクな脳みそお持ちで感心します。 それが最終的に統合されるところ、楽しみにしています♪
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