閑話 日本 1 英二とラウル
ブックマーク及び感想と有難う御座いました。
これからも日々精進していこうと思います。
今後とも宜しくお願いします。
今回は英二の閑話その1です。
楽しんでいただけたなら幸いです。
では、どうぞ^^
刻を少し遡り、ラウルが悠斗を残し英二を地上に送る時まで戻る・・・。
英二が白い光に飲み込まれ悠斗の前から姿を消した。
今まで目の前に居た悠斗が消え、英二の目の前には暗闇が広がり
鬱蒼とした樹木が立ち並ぶ・・・。
「あっ・・・」英二から声が漏れる。
急に夢から覚めたように・・・・。
夢だと思いたくても現実はそれを許さなかった。
何故なら、英二の隣には異世界の創造神ラウルが居たからだ・・・。
「戻ってきたんだな・・・」ラウルに視線を合わせることもなく・・・
「ああ、此処が君の世界だよ」少し冷たさを含んだ声だった。
英二は拳を「ギュッ」っと握り締めながら
何故自分は選ばれなかったのか?・・・未だに考えていた。
そんな英二の気持ちを考えることもなくラウルが口を開いた。
「お疲れ~~。じゃ!そう言うことで~♪」
とても軽い口調にコケそうになる英二だが
「ちょっ、ちょっと待って下さいよ!」焦りながらラウルに待ったをかける。
ラウルは少し面倒臭そうに
「ん?何かな~?僕はこれからちょっと忙しいのだけれど?」
その態度に「カチン」ときた英二だったが
今は自分の感情はどうでもいい・・・。
「あのさ、少しでいいんだけど・・・話せないか??」
良い返事をもらえるとは思ってはいない。
創造神が英二を何とも思っていないことはよくわかっているからだ・・・。
「ん~、本当に忙しいんだけどね」
英二は心の中で(だよね)と、そう思っていたが
ラウルからは意外な返事が続けて帰ってきた。
「まぁ君もさ、色々と思うところはあるのだろうけど、悠斗君が選んだ事だからね」
その言葉に英二は奥歯を噛み締めた・・・。
そして感情を抑えようとはしてみたものの
抑えきれず英二の感情が爆発した。
「あのさ!あんた達はどうして此処に来たんだ!
自分達の世界のことなんだろ?
自分達で何とかするのが筋ってもんじゃないのか?
違う世界の人間にケツ拭かせんなよ!!」
英二はラウルの目を睨みつけ殺気を溢れさせる・・・。
ラウルは冷めた声で答えてくる・・・
「気持ちはわかる・・・つもりだけどさ。
もうどうにもならないよ?それに、誰に喧嘩を売っているかわかっているのかな?」
ラウルは冷笑を浮かべながら、英二に威圧を放った・・・。
「ぐ、ぐぁ」
その威圧で英二は体の自由が利かなくなってしまった・・・。
「ふっ、この程度の威圧で動けなくなるなんてさ。
悠斗君はこれよりも強い威圧でも武器を構えていたよね?君も居たから見てるよね?」
ラウルの言葉が少し荒くなる・・・。
「この際言いたい事を言えばいいよ。残さず全て。全部聞いてあげるよ」
威圧を解き、言葉通り英二の話しを聞くようだ・・・。
英二は威圧を解かれた瞬間に、膝から崩れ落ちた・・・
息を少し荒くしながら立ち上がると
真っ直ぐラウルの目を見ていた。
「言葉遣いは気にしなくていいからさ、自分の言葉で話してもらえるかい?」
先程とは違い、少し優しさを含んだ言葉に驚いたが
「ああ、わかったよ」と、言うと英二は話し始めた。
「ラウルさんよ・・・悠斗は戻って来れるのか?」
「・・・すまない、とは思っているよ。彼の人生を僕達は奪ってしまった」
英二は顔を背け「ちっ!!」と、舌打ちしつつラウルを再び睨んだ。
「でも英吉君、恐らく悠斗君もわかっていたと思う。覚悟を決めた瞳をしていたよ」
「英吉じゃねぇーよ!英二だよ!いいかげん覚えろ!」
「ははは、ごめんよ」と、悪びれる様子もない。
英二は怒気を含ませ、今は居ない悠斗を思い出しながら
「わ、わかってんだよ!!あいつは・・・
あいつはそういうヤツなんだ!!
お人好しで天然で面倒臭がりで、自己顕示欲の強いヤツでよ!・・・。
だけどよ!何だかんだ言って、結局誰かの為に動いてしまうんだよ!」
英二は気持ちを吐き出すと、再び消え入りそうな声で
「・・・わかってんだよ。あいつがガキの頃からずっと・・・見てきたんだから・・・な」
英二は悔しさと、自分の不甲斐なさに体が震えていた。
(俺はあいつの兄貴分なのによ。ったく!俺は役にたてねぇーのかよ!)
英二は子供の頃の悠斗の出来事を思い出していた・・・。
(あれは悠斗が中3の時だったっけ・・・
同じ学校の同級生がいじめで苦しんでいた時、
虐めていた同級生を説得しに行ったが結局、5~6人に囲まれて、
ボコボコにされていたっけ。一切、手を出さずによ。
虐められていたヤツは「僕はそんな事頼んでない」って、ぬかしやがったんだったけか?)
悠斗は困った人を面倒臭がりながらも助けていた。
英二が何度も繰り返し悠斗に言ってきた言葉・・・
「お前が全部背負うことはねぇーんだよ!お前は神じゃねぇー!
それにお前がやっている事は偽善だ!」
(あの時の悠斗の顔と言葉は今でも覚えている)
「英二にーちゃん、俺は別に偽善と言われても平気だよ。
自分のルールに従っただけだし後悔はしない。
それにさ、英二にーちゃんが前に言ってくれたよね?
人は必ず何処かで裏切るって、人ってのはそういうモノだって・・・。
だから全部わかっててやっている事だから、これでいいんだよ」
(結局それがきっかけで虐められる事はなくなったんだっけか?
でもそれは、いじめっ子が、泣きもしない、
暴れもしない悠斗にビビっただけで、根本の解決には至ってねぇー。
結局悠斗の偽善だろーがよ!)
英二はあの頃のガキの言い分にイラついていた。
黙って見ていたラウルが口を開く。
「英治郎君、先程も言ったけどさ、気持ちはよくわかるつもりではいるけど、
悠斗君が決めた事だから」
「つーか、てめぇー!英二だって何度も言ってるだろう!わざとか!わざとなのか!」
英二の突っ込みに「こりゃ失敬!(笑)」と茶化した。
「てめぇー!(笑)ってなんだー!」ぜぇぜぇ言いながら
ラウルの言葉にいちいち突っ込む英二は、もう突っ込むのはやめよう・・・そう決めた。
そして息を整えラウルに話す。
「なぁーラウルさんよ。俺も連れて行ってくれねぇーかな?頼む」
英二はラウルに頭を下げた。
ラウルも英二の気持ちは痛いほどわかっている。
(英二君では、戦いに生き残れるとは思えないし、
これ以上違う世界の人間を巻き込みたくない。
僕の気持ちはわかってもらえなさそうだな~)
暗闇の中で天を仰ぎ「あ~あ・・・」と、小さくつぶやいていた。
(僕にはまだやる事があるんだけどな~・・・どうしよ?)
英二がこのまま帰してくれそうにないので困り果てていた・・・が・・・
お構いなしに英二は「あーだ、こーだ」と、食い下がってくる。
(どーしよ?ん~・・・ああ~そうだ!)
閃いたラウルは英二に言った。
「英二君、じゃ~一つ宿題を出そう」
英二は「はい?」と答えるとラウルは話しを続ける。
「君には特別にステータスがわかるスキルを授けよう。
そしてそれをクリアしたら悠斗君の所に連れて行こうじゃないか」
ラウルがそう言うと、英二の瞳の中に火が灯るのが見えた気がした・・・。
「で・・・俺は何をクリアすればいいんだ?」
少し早口になりながらラウルに詰め寄る。
(まぁーどうせクリアできないと思うから別にいいんだけどさ・・・)
ラウルは手をかざすと英二は淡い光に包まれた。
「ステータスでわかるんだけど、君のステータスにある、
スキル・・・つまり君の今持っている技を、そうだな~・・・
全てをLV.6以上にする事・・・かな?」
まだ何も確認していない英二だがすぐに返事をした。
「レ、レベル・・・6以上だな?わかった!何だってやってやるぜ!」
(ふむ、やる気になるのはいいんだけどね。まあー無理だと思うよ)
この宿題は英二を遠ざけるためである。
(早く戻りたいんだけどな)
いいかげん飽きてきたラウルは話しを切り上げにかかる。
「じゃ~僕はそろそろ行くからね」
帰ろうとするラウルに英二が・・・
「ちょ、ちょっと!ステータスってどうやって見るんだよ!
あと、クリアできた時どうすればいいんだよ!」
(ああーー!もう!面倒臭いなー!)
早く戻りたいラウルはイライラしてきたが
これ以上、話しを引っ張られるのも嫌なのでさっさと伝える。
「ステータスは、ステータスって言うのもいいし、
ステータス・ウインドウって言って、呼び出すんだけどさ、
どっちでもいいよ。それと連絡はウインドウにメール機能があるからさ、
クリアしたらメールしてよ」
「メ、メールがあるのかよ・・・」
英二はちょっとしたカルチャーショックを感じたが
今は宿題の事で頭が一杯だった。
「じゃ!太郎君!僕は帰るから!」
そう言うとラウルは振り返り英二に「ベェ~」っと舌を出した後消えて行った・・・。
暫く消えた場所を眺めていた英二だが・・・
「なっ!て、てめぇー!俺は英二だっつったろうよ!!
太郎って何だ!太郎って!!一文字も合ってねぇーじゃねぇーかー!」
わざと名前を間違えるラウルに文句を言うが
既にあとの祭り・・・英二の声だけが暗闇にこだまする・・・。
一人残された英二は、ある事に気がついた・・・
(ここって・・・最初にラウルに出会った場所じゃ・・・?)
暗闇の中急に心細くなる英二・・・
悠斗の装備を一人担いで「とぼとぼ」歩く。
暗闇の中歩き、木々の切れ間に、月の光が差している。
ふと、立ち止まり月を見上げ・・・
戻れないと知りながら、決断した相棒のことを思い出し・・・
「・・・・・バカヤロー」と、今は隣に居ない悠斗に向かって・・・
その声は梟の鳴き声に飲み込まれてしまった。
再び歩き出した英二の足取りは重い・・・
(どうして俺は一人で歩いているんだ?悠斗の装備を担いで?なぜ・・・だ?)
何かに思い当たり、英二は天に向かって叫んだ!
「ああ!そうだー!てめぇー!ラウルー!どうせなら山の出口まで送れよー!!」
創造神であるラウルには造作も無いはずだが・・・
「ちっ!気が利かねぇな・・・気が利かねぇーよ・・・」
ブツブツ言いながら帰路を急ぐ英二は次第に心細くなり
「悠斗~まじで心細いんだけど・・・」
何処からともなく聞こえる梟の声と虫の声・・・
そして、帰りを急ぐ英二の足音と泣き言だけが響いていた・・・。
ラウル ・・・ 緋色ってさ・・・ショートスリーパーなんだね。
ラウル ・・・ これはただの独り言だから・・・ぐすん
ラウル ・・・ ごめんよ~誰か来てよ~(号泣)
ミスティ ・・・ ただいまです。あら?ラウル様?
ラウル ・・・ や、やあーミスティ、おかえり
ミスティ ・・・ 逆立ちしている暇があるなら仕事してくださいな
ラウル ・・・ 退屈だったからさ・・・
ミスティ ・・・ ならば、書類をお持ちしましたので仕事してください。
ラウル ・・・ ええ~っ!ここでするの?判子押しー?
ミスティ ・・・ トップとはそういうもの・・・です。
ラウル ・・・ 創造神・・・誰か変わってよ・・・がくっ
ってなことで、緋色火花でした。




