110話 想い
お疲れ様です。
110話になりますが・・・
相変わらず展開は遅いです・・・すみません><
どうやらこの展開の遅さが私の癖のようなモノなので・・・^^;
ブックマークや感想など、宜しくお願いします^^
次回のアップなどは活動報告に載せておきますので、
そちらも、宜しくお願いします^^
それでは、110話をお楽しみ下さい。
岩場の聖域を緑化すると言うラウルの提案に、悠斗は戸惑うのだった。
「りょ、緑化なんて・・・あんな岩場で出来るのか?」
「勿論だよ悠斗君♪それに都合よく、ウンディーネの為に、
泉まで作ったんだろ?」
悠斗は手を顎に当て、岩場の聖域の緑化のイメージをしてみたのだが、
緑化したあの聖域が想像出来なかった。
「んー・・・。まぁ~俺は別にいいんだけどさ?
って言うか、どうして俺に許可を求めるんだ?
あの聖域はラウル達のものだろ?」
「あっはっはっ。何を言っているんだい?あの聖域は君のモノじゃないか~♪
嫌だな~・・・管理者は君の名義になっているんだよ?
それにさ、神界の役所には岩場の聖域の登記もしてあるからね♪」
「・・・はい?」
突然ラウルから、岩場の聖域の管理者だと言われ、悠斗は混乱していた。
「ん?悠斗君・・・どうしたんだい?」
「いやいやいやっ!管理者の話や登記の話・・・全然聞いてないんだけどっ!
それに、神界って役所とかあるんだ?・・・知らなかった」
「あれ・・・?言わなかったっけ?ふむ・・・」
ラウルが自分の額に人差し指で「トン、トン」と、数回叩くと・・・
「なぁ~ミスティ?言わなかったっけ?」
ミスティは深く溜息を吐きながら答えた。
「はぁぁぁ・・・ラウル様、悠斗様にはそんな話、一度もしてませんわ。
それどころか・・・私も初耳なのですけど?」
「えぇぇぇぇぇっ!君には話したはずだよっ!?」
「いえ・・・」
ジト目でそう答えるミスティの視線は、凍てついた目をしていた。
「あはは・・・あはははは・・・まぁー・・・アレだ。
うんうん、まぁ~こう言う事もあるって事だね・・・うんうん」
ラウルが謝りもせず、ただひたすら言い訳をしている姿に呆れた。
「ラウル様・・・ちょっとこちらへ・・・」
「あ、ああ・・・わ、分かったから、そんな怖い顔しないでおくれよ~」
「悠斗さん・・・ちょっと失礼します」
そう言って、ミスティはラウルを連れ立って少しの間森の中へ入っていった。
そして再びラウルとミスティが戻ってくると、ミスティに引きずられるように、
ラウルの顔はボコボコに腫れ上がっていた。
その姿を見た一同は、ミスティの冷ややかな笑顔に凍りついたのだった。
腫れ上がった顔をパーフェクトヒールで全快させると、話に戻る。
「管理者の説明は~・・・まぁー次回にするって事にして~
とりあえず、緑化をする方向で行こう」
悠斗はラウルに緑化についての話を聞くと・・・
「つまり緑化する事によって、
プロキシオンが弱らずに済むって事なんだな?」
「それは勿論そうなんだけどね~、でもそれだけじゃなくてさ?
あの聖域が緑化されると、
その影響を受けて周りも活性化するんだ。
あの荒野と化した場所も、力を取り戻すって事になるんだよ」
ラウルの大雑把過ぎる説明を受けた悠斗は、緑化する事をOKした。
「その緑化ってのは、俺に出来るのか?」
「ふっふっーんっ!今回活躍してもらうのは~四大精霊達なんだよ~」
「・・・・・・どう言う事?」
「彼らに協力してもらい緑化する事によって、大きく手間が省かれるんだ」
悠斗はシルフ達大精霊を見ると・・・
「ユウト~♪私達に任せなよ♪」
シルフはユウトに力こぶを作って見せてアピールしていた。
「でもさ?そう言う事なら、
まずこの狭間の森を復活させてからでいいんじゃないか?」
「悠斗君、此処はもう僕の力を使っても、
自然に治る速度が多少増すだけだからね?」
「ふむ、この世界も色々とあるんだな・・・」
悠斗は苦笑混じりに笑みを浮かべると、
ラウルが岩場の聖域へ行くメンバーを集めた。
岩場の聖域へ行くメンバーは、
四大精霊と神獣のプロキシオン、ラムダ、ロゼッタ。
それと神達・・・ラウル、ミスティ、アリエル、アマルテア、オウムアムア。
それらのメンバーを集めた時、悠斗がラウルに声をかけた。
「あ~・・・ラウル?」
「ん?どうしたんだい悠斗君?」
「俺だけちょっと遅れて行くよ・・・」
「えっ?」
ラウルは悠斗の様子を見て何となく察しがつくと、笑顔を見せ了承してくれた。
まずは岩場の聖域に入れるよう、悠斗はメンバーに許可を出すと、
プロキシオンにゲートを出してもらい、一人・・・癒しの森へ戻って行った。
「さて~みんな。今から全員で悠斗君の岩場の聖域へ移動するよ~。
はい、だからみんな~もっとこっちへ寄ってもらえるかな~?」
ラウルはまるで引率の教師のように全員を集めると、
ゲートを開き、岩場の聖域へ案内するのだった。
そして悠斗は・・・
プロキシオンに出してもらったゲートをくぐると、癒しの森へ到着した。
悠斗は目を閉じると、先程感じた気配を探る。
(え~っと・・・あいつはっと・・・)
少し顔を綻ばせながら気配を探っていく。
悠斗は白い魔石を取りだすと軽く握った。
(あっ、居た)
悠斗は気配を感じると、瞬間移動でその相手の目の前に姿を現せた。
「へっ?き、きゃあぁぁぁぁぁっ!!」
「!?」
悠斗は突然の悲鳴に両耳を塞ぐと、そのまましゃがみ込んだ。
(う、うるせぇぇぇっ!)
悲鳴が終わった頃合いを見て、目を開け視線を上げると・・・
「えっ、えっ?ユ、ユウト?」
悠斗は両耳を塞ぎながら、しゃがみ込んだ姿勢のまま大きく頷いた。
そして悠斗は立ち上がり、笑顔を向けてこう言った。
「こんな所で誰かお探しですか?セルンさん♪」
悠斗の爽やかで温かい笑顔にセルンは少し見惚れていると・・・
「おーい・・・セルン?ぼう~っとしてどうしたー?」
「え、えっ?あ、え、えっと・・・」
顔を赤らめながらモジモジし始めたかと思うと、急に怒り出し背中を向けた。
「きゅ、急に出てこないでよっ!び、びっくりするでしょっ!」
「怒る事ないだろ~?わかったよ、俺が悪かったよ・・・」
悠斗は突然怒り出すセルンに謝る事になった。
「わ、わかってもらえたなら、いいけど・・・」
セルンはブツブツ言いながらも悠斗に顔を向けるのだが、
先程よりも顔が赤く見えた。
「それで?どうしてこんな所に居るんだ?」
悠斗の問いに、再びもじもじとし始めた。
「え、えっと・・・アシュリナ邸の監視をしていたんだけどね?
ちょっとの間、離れていたら・・・あの連中が居ないじゃない?
それで慌ててイリアに付けてあった魔石の反応が動いているじゃない?
だから慌てて後を追ってきたの」
「イリアに魔石を付けていたって・・・どういう事だ?」
悠斗の質問にセルンは説明してくれた。
一度サウザー邸で会った時、
1cmくらいの魔石をイリアのポケットに忍ばせていた。
その魔石をセルンが感知出来る範囲は最大3kmほどであると・・・
(へぇ~・・・小型発信機って感じのヤツか~)
悠斗はその方法を教えてもらおうとセルンに頼むと、
交換条件を提示された。
「教えてもいいけどっ・・・私にも通信用魔石ってヤツをもらえないかしら?」
「あ、ああ~そんなモノでいいのなら・・・」
「ふふ♪ありがと♪」
優しい微笑みで礼を言うセルンに心が癒やされる思いを感じつつ、
悠斗は、いつの間にか正式名称となった通信用魔石の使用方法を説明すると、
セルンから魔石の発振器の作り方と、その使用方法の説明を聞いた。
そしてその話が終わると・・・
「ところでユウト?私があげた魔石からの反応が、
ずっと消えていたかと思ったら、
現れたり、消えたり・・・どうなってんのよ?」
「その質問かぁ~・・・」
悠斗は頭を掻きながら、セルンに話をするかどうか悩んでいた。
「べっ、別に・・・その、言えない事ならいいんだけど・・・」
少し寂しそうな顔をしたセルンに申し訳なく思うと話す事にした。
その理由は、セルンが味方なのかどうかと言う事を確かめたかったのだった。
そして悠斗はセルンに説明していく。
神達や神獣達が作った聖域があると言う事や、
岩場の聖域の場所やどうやったら中に入れるのか・・・と、言う説明をした。
(これで聖域に何かあったら・・・セルンは・・・)
説明を終えた後、悠斗は軽く頭を振った。
(敵じゃない事を祈るよ・・・)
その様子を見ていたセルンは少し首を傾げて見せるが、
悠斗の話に納得がいくと、笑顔を向けた。
「ごめんね・・・ユウト?そんな大切な話を無理矢理聞いちゃって・・・」
「いや、別に問題ないよ?セルンが何かするとは思ってないしね?
それに、岩場の聖域の場合・・・
完全に個人的な居場所なだけで、重要な拠点って事でもないしね?」
「・・・ユウト」
悠斗は笑顔を見せつつ、テーブルと椅子をマジックボックスから取りだすと、
セルンを座らせコーヒーを入れた。
「ふふっ、美味しい・・・♪」
「それは良かった♪」
セルンがコーヒーを飲み、少し落ち着いたのを見計らって、
今日何があったのか・・・事の説明をした。
「そ、そんな事があったの?」
「ああ、おかげで暫く癒しの森に神獣達が住めなくなったんだ・・・」
「・・・ひどい」
「そのおかげで俺も走り回る事になってしまったからな~・・・やれやれ」
悠斗は少しおどけて見せるも、セルンの表情は硬かった。
「どうした?」
「黒い液体・・・その話・・・何処かで・・・」
そうつぶやくセルンに、悠斗は喰い付いた。
「セルンっ!何処でそれを聞いたんだっ!」
突然身を乗り出して迫り聞いてくる悠斗に、流石のセルンも驚いたが・・・
「あ、貴方が身を乗り出すほどの事なのね?」
「ああ、魔力や神力を食らって耐性ができるヤツなんて、ほっとけないだろ?」
「そうね、確かにこれは他人事じゃないわね」
「だろ?この世界だとヤバイ相手だからな・・・」
セルンは腕を組みつつコーヒーに口を付けると、悠斗をじっと見て、
何かを考えていた。
「聞きたい事があったら聞いてくれよ?これは情報の共有をしないと、
この世界は黒い液体にも滅ぼされる可能性があるからな」
「・・・確かにそうね。ユウト?その黒い液体の弱点はないって事になるけど、
貴方はソレを倒したのよね?」
「あ、ああ・・・確かに倒したけど・・・」
「けど・・・何かしら?」
少し言い淀んだ悠斗に違和感を感じたセルンは、少し目を細めた。
「んー・・・。俺には気道があるからさ?
強いとは言っても、俺の敵じゃない」
「そうね、でも・・・それなら貴方にしか倒せないって事になるわね?
個体数も分からない以上、手の打ちようがないんじゃないの?」
「いや、力押しでなら・・・ダメージは与え続ける事は出来るんだ。
だけど核を見つけない限り、あの黒い液体は死なない」
「力押しって・・・そんなのいつまでも続く訳ないわよね?」
「ああ」
悠斗の話に耳を傾けながらも、セルンは黒い液体にについて、
何処で聞いたかを思い出そうとしていた。
(・・・一度本部に戻って探らないと・・・ね)
悠斗はセルンの様子を見て、何となく察しがついた。
「セルン・・・あまり無茶はするなよ?嫌な予感がするからさ?」
「・・・・・・ふふ♪優しいのね?素直に嬉しいわ♪」
「茶化すな・・・俺は真剣に言っているんだ。
今ここでお前が無茶をしても、何もわからないままだからな?」
「・・・それはそうだけど」
悠斗はセルンの顔が曇っている事に気付くと、
今まで言えないままでいた言葉を口にした。
「なぁ~セルン?俺達の元へ来ないか?」
突然悠斗から誘われた事にセルンは動揺を隠せず、勢いよく立ち上がった。
「と、突然、何をい、言い出すのよっ!」
「・・・本気で言っているんだけど?」
「ほ、本気って・・・あ、貴方・・・」
「来ないか?」
セルンは目を閉じ椅子に座ると、静かに話始めた。
「ごめんユウト・・・。それは出来ないわ」
「・・・・」
「わ、私にも、そう出来ない事情・・・が、あるのよ」
「事情か・・・。その事情ってヤツは教えてもらえないのか?」
「・・・ごめんなさい。
いくら貴方であっても、それを教える事は出来ないの。
本当は話したいけど、でも・・・」
「・・・わかった」
「ありがとう・・・ユウト」
「でも・・・いずれ聞かせてもらう」
セルンは自分が知る悠斗らしくない言葉に戸惑った。
しかしその目には、
セルンを心の底から心配する気持ちが見て取れたのだった。
(貴方って人は・・・本当にもう・・・)
悠斗の優しさが偽りではなく本物だと言う事は明らかだった。
セルンはそんな悠斗に苦笑しつつも、話せない事に心から侘びていた。
そしてその優しさに甘えられず涙が込み上げそうになると、
席を立ち背中を向けた。
「行くのか?」
「え、ええ・・・コーヒーご馳走様」
「ああ・・・」
二人の会話に沈黙が訪れる。
(ユウトの気持ち・・・有り難く受け取っておくわ。
私も・・・本当なら・・・貴方と一緒に・・・)
拳を握り締め、気持ちすらも伝えられない自分に苛立ったが、
すぐに拳から力を抜き、振り返った。
「黒い液体の情報を何か掴んだら、必ず連絡するわ・・・この魔石でね?」
「ああ、でも無茶はするなよ?今はまだ動く時じゃないと思うしな?」
「そうね・・・それは・・・そうね」
「何かあれば、必ず連絡してくれよ?」
「ユウト・・・」
悠斗の想いが伝わるセルンは、涙が溢れそうになるのをこらえると、
再び悠斗に背を向け歩き出した。
「必ず連絡しろよっ!!」
椅子から立ち上がり、歩いて行くセルンの後ろ姿を見つめながら、
悠斗は何もしてやれない自分に苛立つのだった。
(有難うユウト・・・)
セルンは背中を向け歩いたまま右手を挙げて手を振った。
悠斗に感謝しつつその想いにセルンの目からは、
止める事が出来なくなった涙が、ボロボロと流れ落ちて行くのだった。
ラウル ・・・ 今回はセルン君の登場なんだね~
ミスティ ・・・ 相変わらず美味しいところを持って行きますわね・・・
ラウル ・・・ それが彼女の持ち味でもあるからね~♪
ミスティ ・・・ 正直、そういう方は羨ましく思いますわね?
ラウル ・・・ へぇ~君でもそんなふうに思うんだね~ふむふむ。
ミスティ ・・・ 君・・・でも・・・とは?
ラウル ・・・ あははは・・・ははは・・・はは・・・すみませんでしたっ!
ミスティ ・・・ (今度どこかの森にでも埋めてみようかしら?ふふふ♪)
ってなことで、緋色火花でした。




