105話 それぞれの失敗
お疲れ様です。
今回は105話ですね。
イリア達の戦いの続きとなります^^
因みに全然関係ないですが、最近肩凝りがひどいですw
ブックマークや感想など宜しくお願いします^^
それでは、105話をお楽しみ下さい。
「恐らく・・・魔力をアレに吸われたのね」
アンナの言葉に驚くイリア達だった。
「アンナはんっ!どう言うことなんやっ?!」
「恐らくだけど・・・あの狼に直接触れる分には吸われないはず。
それは先程私が攻撃した時に魔力が吸われていないのが・・・その証拠ね」
アンナは黒い狼に殺気を放ちながら答えていく。
その冷静さに、イリア達は元・・・とは言え、S級冒険者の実力の一旦を見たのだった。
「イリアさん、立ち上がってっ!今度は連携で攻撃するのよっ!」
魔力が吸われただけであって、体力や生命力が吸われた訳ではなかった。
「はいっ!」
イリアはアンナの指示に従い立ち上がると、黒い狼に対し三人でジリジリ囲んでいった。
「「「身体強化っ!!」」」
そう言葉を発すると、イリア達は同時に黒い狼に突っ込んでいく。
「グルルゥゥっ!」
黒い狼も唸り始めると、イリアとセルカの攻撃を躱しながら爪で攻撃を狙うと共に、
アンナの攻撃に対し、警戒を強めた。
「ちっ!上手く躱すわねっ!」
「なんなのにゃっ!ちょこまかとっ!」
「くっ!なんて速度なのよっ!」
イリアの突きを躱しつつ、セルカの双剣の攻撃を爪で防ぎ、
アンナの蹴りを体を翻し躱した。
黒い狼は着地と同時にアンナに突進しようとするが、セルカが腰からナイフを引き抜き、
アンナへの突進を防いだ。
そのセルカの攻撃に体を撚ると、黒い狼はセルカの投げたナイフを胴体部分で弾いた。
「にゃぁぁっ!もうっ!あの体毛が鬱陶しいのにゃっ!」
セルカは再び腰からナイフを取り出そうとした時、黒い狼の視線が、
セルカの腰に動いたのを見たイリアは、アンナの対角線に移動すると・・・
「アンナさんっ!!」
そう言って、イリアは黒い狼めがけ右手でファイヤーボールを放ちつつ、
左手でロック・バレットを放った。
(分かったわっ!)
アンナはイリアの意図を理解すると、拳に魔力を溜めていく。
しかし黒い狼はイリアの高速魔法をヒラリと躱して笑みを浮かべるのだった。
そんな黒い狼の笑みを見たイリアは、逆に笑っていた。
「その余裕が命取りよっ!」
そう言い放つと、セルカに視線を送ったイリアは黒い狼の真上に飛びながら、・・・
「はぁぁぁぁっ!」と、魔力を圧縮しはじめる。
イリアに注意を向けた黒い狼は、背後で魔力を凝縮しているアンナには気付かなかった。
セルカがデコイの役目を果たしつつ、双剣を握り締め迫る。
「にゃぁぁぁぁぁっ!」
一瞬意識をセルカに奪われた黒い狼に迷いが生まれ硬直してしまうと・・・
「「「喰らえっ!!」」」
セルカは地面に転がっていたナイフを蹴り上げつつ黒い狼に飛び込み、、
イリアはセルカが蹴り上げたナイフにエンチャントしつつ、
風魔法の魔力の塊をそのナイフめがけ放った。
「にゃぁぁっ!喰らうのにゃっ!瞬身双剣っ!」
セルカの左右から剣の攻撃が迫ると同時に、頭上からイリアの剣の刃が迫る。
「「今ですっ!」にゃっ!」
イリアとセルカの声が重なった時、
全く意識を向けていなかったアンナの叫びが木霊する。
「はぁぁぁっ!ピアッシング・ツイストブローっ!」
セルカのナイフはイリアの魔法が硬化のエンチャントを掛けつつ、
風魔法の魔力の塊を纏わせる事で、アンナの拳の捻りが動力となり、
風魔法の力が、風のスクリューとなり加速させた。
アンナはナイフの小尻を拳の中央で捉えると、
黒い狼の胴体めがけ、ナイフと共に拳を突き入れた。
「逝きなさいっ!」
その声に身動きが出来なくなった黒い狼は、3人の攻撃を喰らった。
凄まじい爆音が、その振動の波で、木々を吹き飛ばしていく。
セルカの左右からの攻撃で、黒い狼の首は切断され地面に落ち、
イリアの頭上からの攻撃で背中を貫通し、
そして・・・
アンナの攻撃で、黒い狼の腹には大穴が空いた。
「ドサッ」と、音を立て崩れる黒い狼を見届けた三人は、
息を荒くしながら、その死骸を見下ろした。
「はぁはぁ・・・や、やったわ」
「強か・・・った・・・のにゃ」
「二人共、いい連携だったわ♪」
そう言って、笑顔を向けるアンナに二人も笑顔を見せた。
しかし白斗だけは違っていた。
それに気付いたイリアが声を掛ける。
「どうしたのよ?浮かない顔してるじゃない?」
「うーん・・・この程度でやられへんと思うんやけど?」
難しい顔をしている白斗にセルカがいつものように、からかい始めた。
「にゃはは♪おい、駄犬っ!活躍出来なかったからいじけているのかにゃ?」
「ふふ♪そうなの~?白斗~?」
しかし白斗はいつものように食いついてこず、険しい表情を崩さなかった。
それを見ていたアンナは・・・
(聖獣様?まさか・・・?)
アンナは浮かれる二人を放置しつつ、倒れている黒い狼の死骸を見た。
その死骸を見たアンナは「はっ!」と、すると・・・
「二人共っ!離れなさいっ!」
そう言い放ちつつアンナは死骸から距離を取った。
条件反射で後方へ飛び退いた二人は、不思議そうな顔をしつつアンナに聞いた。
「えっ?ア、アンナ・・・さん?」
「アンナ様・・・どうしたのにゃ?」
喉の乾きを覚えつつ、アンナは二人にこう話した。
「・・・この死骸を見て・・・血が流れていないわ」
「にゃはは・・・そ、そんな事にゃんて・・・」
セルカの顔は引きつりつつ、死骸に視線を移す。
そして・・・イリアもまた無言で死骸を見つめた。
「う、嘘・・・」
「にゃ、にゃんで?」
セルカの疑問する声が言い終わらないうちに、死骸となった黒い狼から、
触手が放たれる。
間一髪、白斗の防御壁が3人の命を守った。
「ふぅ~あ、危なかったでーっ!」
全く反応出来なかった3人は息を飲みつつ白斗を見たのだった。
「あんたらっ!ボ~っとしとったらあかんでっ!
こいつはまだ死んでへんっ!
ちゅーか・・・コレってアレちゃうん?
レダはんの時の、あの黒い液体っ!」
白斗の言葉に、二人はレダを乗っ取っていた黒い液体を思い出した。
「う、嘘でしょ?アレがまた出たって言うのっ!?」
「・・・にゃぁ~・・・かなり面倒臭い事になりそうなのにゃ」
「これがレダが言っていた黒い液体なの?」
また遭遇する事になったイリア達は、あの時のことを思い出すと顔をしかめた。
「あん時は主がおったさかい、何とかなっとったけど・・・
コレ・・・ヤバイんとちゃうんっ!どないすんねんっ!」
白斗から焦りを感じ取ったセルカは、白斗の動揺する姿を初めて見たのだった。
(この駄犬がこんにゃに焦るにゃんて・・・ほんとにヤバイのにゃっ!)
セルカは喧嘩友達でもある白斗の焦りが本物であると確信していた。
「イリアっ!白い炎の浄化を試すのにゃっ!」
「!?」
セルカの言葉に、この癒やしの森で、白凰・ロゼッタに与えられたスキルを思い出した。
「い、いきなりそんなスキルが使えるのっ!?」
「やれる事は全部やるのにゃっ!それが一か八かでもにゃっ!」
イリアとセルカも神獣達からスキルの恩恵をもらっていたのだが、
身の丈に合わないと言い、そんな理由から練習はしていなかったのだ。
「貴女達っ!何か出来る手段はあるのね?! 」
アンナの言葉にイリアとセルカは頷くのだが・・・
「あるにはあるにゃっ!でも・・・練習はしていなかったのにゃ・・・」
「わ、私も同じですっ!で、でも・・・」
自信がない二人の心情を察したアンナは苦笑しつつも言い放った。
「・・・無いよりマシよっ!今はそれに賭けるしかないわっ!」
アンナは再び身体強化を使いながら、魔力を拳に纏わせる。
「私が囮になりますっ!二人はその間にっ!はぁぁぁぁぁ」
アンナは黒い液体めがけ突進する為に大地を蹴った。
その瞬間、白斗は瞬間移動を使い、アンナの肩に乗り移った。
「聖獣様っ!」
「あんたは攻撃にだけ集中しときーっ!
防御はワシに任せとったらええねんっ!」
「は、はいっ!」
アンナと白斗は囮になる為黒い液体の注意を引きつけた。
それを見た二人は、顔を見合わせ頷くと・・・
「イリアっ!」
「・・・やるしかないわね」
二人はロゼッタから白い浄化の炎の使い方を聞いていた。
しかし、実践で使用出来るかどうかは別の話である。
(確か・・・魔力をある一定のレベルまで圧縮して・・・それから・・・)
(にゃ、にゃんだっけ?・・・そ、そうにゃっ!後は白い炎のイメージだったにゃっ!)
(白い炎のイメージ・・・)
(白い炎なのにゃ・・・)
二人がイメージする間、アンナと白斗は黒い液体の触手攻撃を捌きつつ、
攻撃に転じる隙を伺っていた。
「アンナはんっ!今は我慢でっせっ!」
「は、はいっ!聖獣様っ!」
アンナの動きに合わせ、白斗は絶妙な防御をアンナに展開していった。
(す、すごいっ!私の動きに合わせ、絶妙にフォローして下さっているっ!)
白斗の優秀さにアンナは尊敬の念を抱きながら、
白斗の指示に従いヒット・アンド・ウェイを使い、
黒い液体の攻撃を翻弄していった。
(・・・イメージが固まらない・・・くっ)
(わ、私のイメージが貧困過ぎるのにゃ!)
イメージが固まらず焦る二人にアンナは横目で見ながら囮役をこなして行った。
(このままじゃ駄目ね・・・一体どうすれば・・・)
焦れば焦るほど、二人の失敗は重く積み重なっていった。
一瞬迷いが生まれたアンナに容赦ない黒い液体の触手の魔の手が迫る。
「アンナはんっ!あかんっ!」
白斗の言葉に我に返ったアンナは足を止めてしまった。
「ベコン」と、鈍い衝突音が聞こえた瞬間、アンナの額から汗が流れ落ちた。
間一髪白斗の結界で守られはしたものの、
自分にとって、ありえないミスに愕然としていた。
(この私が・・・こんなミスを?嘘でしょ?この私が?)
考え込んでしまうアンナに白斗の怒号が耳元でつんざいた。
「ちっ!あんたもええ加減にしなはれっ!ちゃんと集中せいっ!」
「も、申し訳ありませんっ!」
アンナの謝罪に白斗は珍しく舌打ちをした。
(あかん・・・こんなんジリ貧やんっ!あの二人も何を手こずっとんねんっ!
日頃から鍛錬せーへんから、いざっちゅー時に使いもんにならへんねんっ!)
日頃のトレーニングに対し、口に出さずにいた自分を呪っていた。
(・・・これはワシのせいでもあるな・・・甘かったわ・・・
今更ながら後悔しっぱなしやっ!)
アンナの呼吸は徐々に乱れ、回避速度も落ちていった。
(私がこれくらいで・・・)
此処に居る全員が、日頃の鍛錬を怠っていた事を悔いていた。
だがしかし・・・今更である。
アンナは白斗に意見を求めた・・・
「聖獣様・・・一体どうすれば?」
白斗は少し唸りながら考えていく。
(このままやったらほんまに詰んでまうでっ!)
そして再び手こずる二人に視線を移すと、ふと思い出した事があった。
それは、前に悠斗が白斗に聞いた言葉だった。
(あっ!ワシのこの結界であいつを身動き取れんようにしたら・・・?)
その思いつきをアンナに伝えると、行動に出た。
「アンナはんっ!ワシのこの結界の盾を使こうて、あいつの動きを封じてみますわ。
成功するかはまだわからへんけど・・・やってみる価値はあると思うんやけど?」
アンナは白斗の提案を受け入れると、内容を確認し行動に出た。
「聖獣様・・・行きますっ!」
「よっしゃぁぁぁっ!」
気合を入れた白斗は瞬間移動で黒い液体を見下ろす木の枝に移ると、
結界魔法でまず黒い液体を囲って動きを封じた。
「ここからワシの腕の見せ所やっ!アンナはんっ!少し休んどきっ!」
「は、はいっ!」
気合を入れ、白斗は細かい作業に移っていく。
(まずは核の位置を特定せなあかん・・・・ねんけど・・・
一体全体どこにあいつの核があんねんっ!)
白斗は空間に無数の大きな盾を出現させると、その盾を黒い液体めがけ放った。
「ドス、ドス、ドス」っと、大きなな盾が黒い液体の体に突き刺さっていく。
(くっそぉぉっ!なんの手応えもあらへんやんけっ!)
ボヤキながらも白斗は必死に盾を生成しては黒い液体に撃ち込んでいった。
この時、アンナは信じられないモノを見ていた。
それは・・・
(ん?少し・・・黒い液体が大きくなったような気が・・・)
白斗はここで思考する・・・
(あかん、このままやったら・・・あっ、でも待てよ?
小さい盾にしてそれを撃ち込んで行けば・・・ええんとちゃうんっ!)
白斗は自分の考えを絶賛しながら、今度は小さい盾を生成し始め・・・
「ローラー作戦やっ!」
そう叫びつつ無数の盾を撃ち込んでいく。
そして・・・
「カキン」と、僅かながら核であるモノに手応えを感じた白斗は、
これまでよりも多い小さな盾を生成すると・・・
「うぉぉぉぉっ!いてまえぇぇぇぇっ!!」
気合を乗せた白斗の盾がとてつもない速度で突き刺さっていく。
(も、もう少しやっ!)
白斗は勝負を焦り、大切な事を見逃していた。
その失敗はこの戦いにおいて、致命傷となる失敗だった。
それに気付いたのは、アンナただ一人だけ・・・
(ん? あ、あれは・・・?)
白斗が気合を乗せた盾を無数に放った瞬間・・・
「せ、聖獣様っ!いけませんっ!」
そう叫ぶアンナだったが、今の白斗にその声は届かなかった。
「もろたでっ!」
白斗がそう叫んだ瞬間、白斗が放った盾は、瞬時に黒い液体に飲み込まれていった。
その状況が理解出来ない白斗は無駄に大量の魔力を消費していく。
(な、何でや?一体何が起こってんねんなっ!)
焦りが暴走してしまった白斗は、凄まじい勢いで魔力を消費している事に気付かなかった。
そして・・・
白斗の盾は次第にその生成される数を減らしていった。
「あ、あれ?・・・ワ、ワシの盾が・・・なんでなん?」
魔力切れを起こした白斗はそのまま意識を失い、
木の枝の上から地面へと落ちていった。
「危ないっ!」
そう叫びながら白斗を救うべく、アンナは飛び込み白斗を救出するが、
勢い余ってそのまま・・・木に激突しアンナもまた意識を手放した。
「だ、駄犬っ!」
「アンナさんっ!」
気絶した二人へと迫る黒い液体から、あざ笑うような声が聞こえてきたのであった。
ラウル ・・・ 失敗か~・・・確かに色々と悔やまれるよね~
ミスティ ・・・ 私もどんなに注意を払っても、やってしまいますものね。
ラウル ・・・ 大切なのは、そこで何を学ぶか・・・それに尽きるだろうからね^^
ミスティ ・・・ 今回はまともな事をおっしゃいましたね?
ラウル ・・・ えっと・・・何やら目が冷たい気がするのだが?
ミスティ ・・・ スノーボードの件を教訓として・・・頂ければ・・・と。
ラウル ・・・ は、はいorz
ってなことで、緋色火花でした。




