96話 出会い
お疲れ様です。
今回は96話です。
相変わらず展開は遅いですが、温かい目で宜しくお願いします。
前回も言いましたが、暫くの間は1日1度のアップとなりますが、
頑張りたいと思いますので、今後とも応援宜しくお願いします。
それでは、96話をお楽しみ下さい。
「で・・・?全部話してもらおうかな?」
悠斗はセルカに冷笑で問いかける。
「こ、怖いですのにゃ・・・」
そう答えるセルカの顔もまた・・・冷笑を浮かべていた。
「セルカ・・・一体何をしたんだ?」
「にゃはは♪ロックバルとヘイルズそれぞれ1名ずつ捕らえてあるのにゃ。
ユウト様がいつでも尋問出来るようにしてあるのにゃ」
「そうか・・・それで密偵の人数は?」
「・・・ロックバルもヘイルズも10名居たのにゃ」
「密偵にしては・・・多いな。でも・・・お互いに・・・ん?」
そう悠斗がつふやくとセルカは笑っていた。
「・・・どうして笑ってる?」
「にゃはは♪流石にゃ~と思ったのにゃ♪」
「と、言う事はつまり・・・」
「はいなのにゃ♪その密偵の中には下級騎士が居ますのにゃ。
その者達は金をばらまいておりますのにゃ」
「・・・暴動か」
セルカは尻尾をブルブルと武者震いさせると続きを話した。
「はいなのにゃ、下級騎士達は恐らく金だけで動くのにゃ」
「だろうな・・・あいつらわかりやすいからな~。
きっと、ロックバル辺りがやっている事なんだろうけどね・・・やれやれ」
「にゃはは♪正解なのにゃ♪ではヘイルズの方はどう動いていると思いますにゃ?」
悠斗は「ヘイルズか~・・・」そうつぶやくと目を閉じた。
少しして目を開けると・・・
「・・・商人達か?」
「にゃはははっ!その通りなのにゃっ!」
「ん?ってことは・・・ヘイルズはロックバルの作戦をサポートしてるって事?」
「はいにゃ。漁夫の利を得ようとしているのにゃ。
そして捕らえてある者が言うには、暴動を起こさせた後、介入してくるようなのにゃ」
悠斗は額を押さえると溜息を吐いた。
「・・・な、なんて分かりやすいんだ・・・それでいいのか、この世界は・・・」
項垂れる悠斗にセルカは心配そうな顔をしていた。
「だ、大丈夫なのですかにゃ?」
「あ、ああ・・・大丈夫だよ。ってことはだ・・・
セルカはもう手を打っているって事でいいのかな?」
「はいにゃ♪」
満面の笑みを浮かべるセルカを見た悠斗は、その愛くるしい仕草に頬を緩ませた。
「つまりアレか?商人達にはセルカが話してあるんだな?」
「私はこう見えても商人達とは仲良しさんなのにゃ~♪
ただ・・・それは大きなお店限定なのにゃ・・・」
「まぁ~大店が動かないとどうしようもないからな~?
それにサウザーさんが収めるこの街は税がかなり低いらしいからね。
この街を裏切ってもメリットは少ないって事だろ?」
そう答える悠斗にセルカは驚いていた。
「そ、そうですにゃ・・・」
「まぁーヘイルズやロックバルにこの街を任せた日には、
あっという間に税も馬鹿みたいに上がるだろうからな~
商人はそんな子供騙しな手には乗らないだろ?」
「はいにゃ、でも、小さな店の連中は・・・そうは行かないはずにゃ。
成り上がりたい連中ばかりにゃ」
(まぁーこっちの世界も、そんなところは何も変わらないんだな~
面倒臭い連中ぱかりだな・・・やれやれ)
「だからユウト様、この事をサウザー様にお知らせしにゃいといけないにゃ。
駄犬に連絡を取って欲しいのにゃ」
セルカの何気ない一言が、ある者の気を逆撫でた。
{こらぁぁぁっ!誰が駄犬じゃっ!誰がっ!}
今まで念話で聞いていた白斗が「駄犬」と聞き、魔石での通信に切り替えていた。
「にゃぁぁぁっ!急に大声出すものじゃないのにゃぁぁっ!」
{あほかボケっ!主は最初っから念話でワシに聞かせとったんじゃっ!
人が大人しくしとったら・・・ほんまにーっ!って・・・
ワシ、人やないねんけどな・・・って、知らんわポケーっ!}
「私はにゃにも言ってにゃいよ?」
(本場のノリツッコミ・・・すげ~♪)
悠斗が何故、魔石での通信ではなく、念話にしていたかと言うと・・・
(・・・面白いからに決まってんじゃんっ!)と、笑顔で答えた。
(まぁ~後は、サウザーさんが聞いて何の手も打たず、
ブチギレないか心配だったから・・・なんだけどね)
「にゃ~駄犬?そこには誰が居るのにゃ?」
{誰が駄犬やねんっ!・・・イリアはんとワシだけやけど?}
「にゃんだ・・・サウザー様はいにゃいのか・・・」
{当たり前やろっ!今、何時やと思っとんねんっ!
今、夜中の2時やぞ?まだお天道さんも寝てるっちゅーねんっ!}
悠斗はセルカと白斗が馬鹿な会話をしている中、
コーヒーを飲みながら今後の予定を考えていた。
(んー・・・。とりあえず今回の事は、俺が居なくても問題ないだろうな~。
セルカに状況を伝えに行かせて~・・・
あっ、ついでに捕まえた連中も一緒がいいか・・・。
後は~・・・グラフィスさんに連絡しておかないとな~。
イリアの仲間を帰しに行かないといけないしな・・・ふぅ~忙しいな・・・)
悠斗はいい加減黙らない二人を嗜めると、今考えていた事を話して、
明日、サウザーに伝えてもらうように言った。
(イリア・・・一言も話さなかったな?とりあえず今はいいか・・・)
少し不安に思った悠斗だったが、当人達の問題なので介入はしなかった。
そして次の日の朝・・・
セルカに詳しく説明してもらう為、ギルドに依頼を出し、
捕らえた者達の護衛を連れてサウザー邸へと向かって行った。
悠斗はギルドに依頼を出し終え、ギルマスに状況を説明した後、
一人街中をぶらつくと、聖域へ戻ってきた。
「ふぅ~・・・とりあえずこれでいいんだけど・・・」
そうつぶやくと、何かを考える時いつもの場所でバドニングをしながら思考していく。
(なんだろ?胸騒ぎがする・・・ま、まさか・・・ふ、不整脈かっ!)
と、自笑しながら焚き火に薪をくべていく。
そして時は遡る・・・
白斗とセルカの言い争いに悠斗が終止符を打った後・・・
「ほなイリアはん、全ては明日の朝って事で宜しいな?」
「・・・ええ」
(ほんまに勘弁してーなっ!ワシこんな環境で眠れる訳おまへんがなっ!
ワシってめっちゃ繊細なんやでっ!ほんまにもう~かなわんわ~)
そう吠えていた白斗だったが、1分も経たずに爆睡していた。
イリアはあっという間に寝てしまった白斗を指で撫でるとバルコニーヘ出た。
空を見上げると綺麗な星空と、冷たくなってきた風がイリアを癒やしていった。
(私だって頭ではわかってるのよ・・・意固地になっている事もわかってる。
だけどこの苛立ちは・・・)
イリアは一度部屋に戻りアイテムバッグ持って戻ってきた。
そしてバルコニーに設置してある椅子に座ると、バッグからティーセットを取り出した。
お湯を注ぎ紅茶を入れると口を付ける。
「ふぅ~」っと、溜息混じりな吐息が漏れると、
再び空を見上げ己の醜さに腹を立てていた。
そんな時・・・
「ねぇ、貴女?私にも紅茶を頂けないかしら?」
突然聞こえてきた声にイリアは目を見開くと剣を取り出し構えた。
周囲を探るが何も掛からない・・・
「ど、どこなのよっ!」
イリアの焦りは言葉にも出ていた。
「ふっ」と、笑う声が聞こえた方へ振り向くと・・・
屋根の上に、黒いローブを纏った者が居た。
「何者っ!」
イリアは黒いローブを纏った何者かに殺気を放つが無駄に終わった。
一瞬瞬きをした間に、その者の姿はそこには居なかった。
慌てて探そうとするイリアのすぐ背後から・・・
「慌てなくてもいいわ・・・イリアさん?」
「ちっ」
気配もなく背後に居た者に対し、イリアは剣を振り向きざまに薙いだ・・・
だが手応えはなく空振りに終わると・・・
「ねぇ・・・いきなり攻撃するの?物騒な人なのね?」
その肝が座った物言いにイリアはゆっくりと振り返る。
「・・・あんた、何者よ」
先程までイリアが座っていた場所に、その者は座ってフードを取り脚を組んでいた。
「あ、あなた・・・エルフなの?!」
ローブの間から組まれた脚が顔を覗かせていた。
そしてその耳は・・・尖っていた。
「ええ、そうよ?それが何か問題でもあるのかしら?」
平然と答えるエルフにイリアは軽く息を吐くと剣を納めた。
「問題はあるでしょ?貴女は不審者なのよ?」
「そうね・・・確かに不審者だわ♪」
イリアはエルフの女を睨むのだが、相手にはされなかった。
「貴女も座ったら?それとその殺気・・・むず痒いから止めてもらえると嬉しいのだけど?」
「あなた何者なのよ?それにどうして私の名を・・・」
「紅茶・・・頂けないかしら?」
エルフの女はイリアの問には答えず、マイペースに事を進めていく。
「不審者に出す訳ないでしょ?」
「ふぅ~・・・それもそうね♪私はユウトの友達よ♪」
突然言われた名前にイリアは反射的に剣に手をかけた。
「ふふふ♪貴女はとても分かりやすいのね?
けど・・・ユウトはそんな貴女の何処がいいのかしら?」
そう言うと、エルフの女はイリアの体を値踏みするように見ていく。
「・・・ふぅ~。み、認めたくないけど・・・その胸ね・・・」
「がくっ」と、項垂れるエルフの女にイリアは唖然とした。
「あ、貴女、さっきから何を言って・・・」
「何をって・・・その馬鹿みたいな大きな胸の話をしているのだけど?」
「・・・へ、変態なのっ!?」
イリアは凝視される胸を顔を赤らめながら両腕で覆い隠した。
「はぁ~・・・そんな事別にどうでもいいわよ。
それよりも・・・聖域って何かしら?教えてもらえると嬉しいのだけど?」
「どうして聖域の事を・・・って、さっきの会話聞いていたのね?」
「聞いていたも何も・・・あれだけ大声で話していたら聞こえるに決まっているでしょ?」
「でも、どうして聖域の場所を聞きたがるのよ?」
「だって・・・ユウトがそこに居るのでしょ?」
「ユウトとどういう関係なのよっ!」
「そうね・・・どうしても聞きたいって言うのなら・・・答えるけど?」
イリアは自信満々なエルフの女の迫力に圧倒されてしまっていた。
(・・・な、何よっ!この自信はっ!ま、まさか・・・)
「あんた・・・」
「私の名前はセルンよ」
「セ、セルン・・・さ、さんは・・・そ、その・・・ユ、ユウトとは・・・」
たどたどしく話すイリアにセルンは呆れていた。
「あ、貴女ね・・・さっきまで何者っ!って言っていた相手に、
どうして惚れた男の事を言われたとたん、そんな態度になるのよ?」
「えっ、だ、だって・・・」
セルンはイリアのおこちゃまな態度に唖然とするしかなかった。
「セ、セルン・・・さんは・・・敵じゃないのよね?」
「・・・・・」
(セルン・・・さんって・・・この子は・・・)
気を落ち着かせたセルンは答える。
「少なくとも、私はユウトの敵じゃないわ・・・むしろ味方よ」
そう言い切ったセルンは、つい口から本音が出た事に驚いていた。
「そ、そう・・・なんだ・・・」
「貴女ね、私への警戒を解いていいの?」
「だって、敵じゃないんでしょ?」
「ユウトの・・・敵じゃないって言ったのよ?別に貴女の味方じゃないわ」
イリアはそう言われたのだが、セルンと名乗るエルフの女性が
敵だとは何故か思わなかった。
「・・・理由はわからないですけど・・・敵じゃないと思っています。
感覚でそう思っているだけで、説明は出来ないけど・・・」
「そう・・・まぁ~貴女達をどうかしようって気はないけどね。
それよりも貴女、いい加減気持ちを切り替えなさいよ?」
「えっ?!そ、それって・・・」
「貴女・・・ユウトの傍に居たいのでしょ?そんな小さい事の為に
貴女は彼の足を引っ張るつもりなのかしら?」
「・・・わ、わかってはいるんですっ!だ、だけど・・・」
「くだらないプライドね?そんなモノの為に大切な人を失うかもしれないわよ?」
「わ、私・・・どうしたら?」
セルンはイリアの態度に苛立っていた。
「ねぇ・・・どうして私に聞くのよ?」
「・・・・」
「ユウトの足を引っ張らないでほしいわね」
そうセルンは静かにイリアに言うと、席を立ち離れていく。
俯いたままだったイリアに対し、セルンは振り向かずに話す。
「次は・・・紅茶くらい出してよね?
私としては、コーヒーの方が好みだけどね♪」
目を閉じそう話すとセルンはそのまま闇に消えていった。
静かな夜の闇の中、月に照らされたイリアはただ俯く事しか出来なかった。
ラウル ・・・ んー。あの二人が出会ったのか~
ミスティ ・・・ ふふふ♪好敵手の出会いですわね?
ラウル ・・・ まぁ~それだけではないのだが・・・
ミスティ ・・・ 今後とも目が離せませんわね?
ラウル ・・・ 悠斗君が楽しんでもらえる世界になるといいね?
ミスティ ・・・ はい♪二人の愛の巣を・・・
ラウル ・・・ 君は何の話をしているんだい?
ミスティ ・・・ ふふふ♪
ってなことで、緋色火花でした。




