86話 黒い聖騎士
お疲れ様です。
すみません。明日も仕事の都合上、午後のアップは無理そうです。
夜中はちゃんとアップしますので^^;
明日も書きますが、土曜はいつも通り夜中のみとなります。
日曜日は仕事上どうしても無理なので、
月曜の夜中からアップしますので、宜しくお願いします^^
それでは、86話をお楽しみ下さい。
あらかたフォレストウルフを片付けた悠斗達は、
森の中央にあると言う池を目指しながら、イリアの仲間達の捜索をして行く。
「ん~・・・見つかりまへんな~?ほんまに池なんてあるんやろか?」
「おい、犬・・・無駄にしゃべってにゃいで、しっかりと探すのにゃっ!」
「おい、こらっ!猫娘っ!犬とちゃうわっ!ボケっ!」
「私の肩を貸してあげてるんだから、しっかり仕事をするのにゃっ!
わかったのかにゃ?この駄犬っ!」
「駄犬ってなんや駄犬ってっ!」
この二人は相性が良いのか悪いのか全く判断できない。
そして白斗のせいなのか、セルカのせいなのかは置いておいて・・・
再びフォレストウルフの襲撃である。
「ま、またか・・・やれやれ」
「もうっ!どれだけいるのよっ!」
「ほ~ら見てみ~っ!猫娘がにゃあにゃあうるさいさかい、
敵がよ~さん出てきよるわっ!」
「ぎゃーぎゃー騒いでいたのは駄犬だにゃっ!」
悠斗達は再び剣を抜くと身体強化を使いフォレストウルフを倒していった。
「これで何匹目だ?」
悠斗は呆れ気味に言い捨てると・・・
「確か・・・500匹くらいにゃはずにゃ・・・」
「この森ってどないなってるんや?」
「・・・もう結構中に入ったはずよ?そろそろ池が見えてもおかしくないわ」
フォレストウルフの死骸を片っ端からアイテムバッグ詰め込んでいく。
「死骸の処理にまじで困る・・・って言うか・・・面倒臭い」
他の三人も同様に言っていた。
すると白斗が鼻を「スンスン」していた。
「どうしたのにゃ?」
セルカの肩に乗る白斗は、方角を見定めると・・・
「猫娘・・・こっちやっ!」
白斗の指示でセルカは駆け出す。
「お、おいっ!俺達を置いて行くなっ!」
「ちょっとセルカっ!」
悠斗とイリアはセルカと白斗の後を追う。
暫く走って行くと、セルカの背中が見えた。
「お前ら・・・一体どうしたんだ?」
「も、もうっ!はぐれたらどうするのよっ!」
何も言わずただ沈黙していたセルカの肩に手を置くと・・・
「な、何だよ・・・コレ?」
「あ、あんな・・・主・・・」
「どうしたの?ユウト・・・えっ・・・う、嘘・・・」
悠斗達の目の前に居たのは、干からびたダークエルフの死体だった。
「イリアっ!見るなっ!」
悠斗は慌ててイリアの目を塞ぐが、時既に遅くイリアは崩れ落ちた。
「う、嘘よ・・・そんな・・・」
悠斗がイリアの肩を庇うようにそっと抱くと、
イリアは這いつくばったまま、その死体へと・・・
「・・・・・」
悠斗は立ち上がりイリアの傍へ歩いて行く。
ショックのあまり言葉を失ったイリアを見て声を掛けた。
「・・・イリアの知り合いか?」
悠斗の言葉に体を少し「ビクン」と反応させると・・・静かに頷いた。
悠斗はイリアの傍にしゃがむと・・・
「この人をイリアの集落へ帰してあげよう」
「・・・うん」
悠斗はイリアを立たせると、手を合わせて合掌した後、
イリアの知り合いに声を掛けた・・・
「・・・ちゃんと連れて帰ってあげるからさ?もう少し待っててもらえるかな?」
そう言うと悠斗はダークエルフの死体をマジックボックスに入れた。
そして・・・
「少し休むか?」
悠斗はそう言ってその場に座ると、コーヒーにお湯を注いで
イリアに手渡した。
「・・・ありがとう」
消え入りそうなイリアの声に微笑むとセルカの肩に居た白斗を自分の肩に乗せた。
不思議そうな顔をした白斗に悠斗は・・・
「ちょっと偵察に行くか?」
「・・・りょ、了解ですわ」
悠斗は偵察に行く前にセルカの顔を見ると、
セルカは黙って頷いた。
悠斗と白斗は目印を付けながら歩いて行く。
「あんまり遠くに離れると、戻れんくなってまうで?」
「ああ・・・わかってるよ」
「で・・・ワシを連れてきたのは何ででんの?」
悠斗は少し口角を上げると白斗に話し出す。
「ああ、白斗・・・他に似たような匂いはなかったか?」
悠斗の言葉に白斗は苦笑すると先程言えなかった事を伝えた。
「なんや・・・気づいとったんかいな?」
「まぁ~な・・・でもな・・・」
「そうでんな~?あの場ではごっつい言いにくいわな」
「それで・・・何処だ?」
白斗は悠斗の問いに頷くと・・・「あっちやっ!」と、前足でその方角を指した。
悠斗は白斗の示す方角へ駆け出した。
(まさか・・・全滅とか・・・勘弁してくれ・・・)
悠斗は神に祈りながら白斗の示す場所へ辿り着くと・・・
「あれ?・・・ダークエルフじゃないな?」
「そうでんな?普通の騎士でんな?」
下級騎士とは違い少し豪華な装飾品を付けた騎士が、
イリアの仲間と同じように干からびていた。
「この森ってどないなっとんねんっ!」
白斗のボヤキを聞き流しながら、悠斗はその死体の前に座ると・・・
「ん?・・・この死体にも噛み跡はないな?」
「噛み跡ってなんでんの?」
悠斗は騎士の首元やむき出しになっている肌を見ていった。
「どないしたん・・・主?」
「いや・・・最初ダークエルフの死体を見た時、
てっきり体液的なモノを吸い取られたと思っていたんだけどさ」
「つまりそうじゃないって事でんな?」
「ああ・・・噛み跡も無いな。んー。おかしくないか?」
「今度はなんでんの?」
「いやいや、此処ってさ、フォレストウルフのいわば巣窟じゃんね?
なのにどうして・・・争った形跡がないんだろ?」
「ほんまや・・・どないなっとんねん」
悠斗は周りの違和感を感じると、地面に耳を付けた。
「白斗・・・気づいているか?」
「気付くって・・・何をそんなに・・・」
すると白斗もその違和感に気づいた。
「主・・・狼共が逃げて行きよるっ!」
「ああ、この森で何かが起こってる・・・そういう事なんだろうな?」
「せやかて、今は何の情報もあらへんで?どないしますのん?」
「んー・・・。とりあえず戻ってイリアを見てから判断するしかないな」
「そうでんな・・・」
悠斗は少し考えるが、現状では手の打ちようがない為、
騎士の死体も回収してイリア達の元へ戻った。
「「ただいま」」
「あっ、ユウト様おかえりなのにゃ♪・・・あと、駄犬も・・・にゃ」
「お、己ーーっ!こ、この猫娘めっ!ふがぁぁっ!」
悠斗は白斗の口を指先で摘むと、イリアの様子を聞いた。
「にゃ~・・・今は駄目かもしれないにゃ」
「そうか・・・一度引き返すか?」
そう言った時、イリアが口を開いた。
「大丈夫よ。心配かけたわね?」
「イリア、無理は駄目にゃのだ。一度戻ってからでもいいと思うのにゃ」
イリアは無言で首を振る。
「そうか・・・わかった」
悠斗は白斗をイリアの肩に乗せると、その意思を尊重し出発した。
暫く進むと・・・
「にゃ?」
先頭を歩くセルカが何かに反応し動きを止めた。
「どうした?」
セルカは鼻を「スンスン」させるとこう言った。
「腐った水の匂いがするのにゃ・・・後、誰かが戦っているにゃっ!」
「ほんまやっ!これって水なんか?完全に腐っとるでっ!」
セルカと白斗はそう言うと悠斗を見た。
「・・・慎重に進もう。俺も妙な圧を感じるし、無闇に戦闘はしたくないしね」
そう言うと、慎重にその方角へ進むと・・・
「ユウト様っ!」
セルカの声で悠斗は隠れながら様子を見ると、みんなが見た光景は、
4人の騎士達が、黒い何かと戦っていたのだった。
悠斗達はそのまま静観する事にした。
「貴様らっ!それでも騎士かっ!」
戦わず怒鳴っている男の騎士が、部下達を焚きつける。
一人騎士が仲間をかばい負傷すると・・・
「ちっ!この役立たずがっ!だから女はっ!」
物凄い勢いで部下達を罵倒するが、その男は戦う素振りさえ見せないでいた。
「にゃ、にゃんにゃのにゃ?あの男はっ!」
「ほんまですな、一番上司にしとうないタイプやわ」
「・・・私ならとっくに斬ってるわ」
三人とも思っている事は同じなようである。
「で・・・どないしますのん?」
「助けるしかないだろうな?だか・・・」
悠斗は途中まで言うと言葉を繋げるのをやめた。
「イリア、セルカ・・・俺が食い止めている間にあの三人をっ!」
「ユウト様・・・あの男はどうするのにゃ?」
「しらね・・・」
そうつぶやくと悠斗はロングソードを取り出すと駆け出した。
「行くぞっ!」
「「「らじゃっ!」」」
「ピューイっ!」
悠斗は飛び出した瞬間、注意をそらすため指笛を鳴らした。
「おい・・・こっちたぜ?」
黒い何かを挑発するように手招きすると、小石を取り出し黒い何かにぶつけた。
かなり大きな衝突音が森の中で響き渡る。
そんな時・・・怒鳴っているだけの男が口を出してきた。
「おいっ!何処の誰かは知らんがっ!邪魔をするなっ!」
悠斗は男を睨むと・・・「ヒィッ!」と言って腰を抜かした。
(あんなヤツが騎士って、この国大丈夫なのか?)
黒い何かの注意が男の方へ移ってしまうと・・・
「白斗っ!結界だっ!」
「任せときっ!」
白斗は悠斗の指示で三人の騎士を結界で守る。
悠斗は再び石を投げた瞬間・・・「身体強化Lv.6」そうつぶやくと
黒い何かに接近して斬りつけた。
「ぎゃぁぁっ!」っと、人間のような悲鳴をあげた。
「は、はぁ?・・・どうなってんだ?」
悠斗が距離を取り構えると、防御結界に守られた騎士達が叫ぶ。
「そ、その魔物は・・・聖騎士様なのですっ! 」
「はい?」
悠斗は思わず振り返ってしまった。
黒い何か・・・いや、黒い聖騎士が悠斗に蹴りを放つ
「ドカッ!」と、鈍い音をたてるが悠斗はびくともしなかった。
騎士達は唖然として、呻くように・・・「ど、どうしてだ?」
すると白斗が「ニヤリ」と笑うと・・・
「おたくら・・・硬気功って知っとるけ?」
(はは・・・何でお前が偉そうなんだよ?)
悠斗は念話で白斗に言うと、「シッシッシッ♪」と、笑い声だけ聞こえた。
黒い聖騎士はびくともしない悠斗に恐れ少しずつ後退していく。
すると怒鳴ってばかりいた男が突然飛び出し・・・
「わっはっはっ!この時を待っていたのだっ!くらえっ!我が必殺の一撃をっ!」
「ムサン殿っ!聖騎士様を打つのですかっ!」
「ふんっ!魔物に飲み込まれる者など、聖騎士と言わぬわっ!
我がこやつに変わり聖騎士として君臨してやるっ!」
その男は、聖騎士の部隊の副長だったにも関わらず、漁夫の利を得ようと・・・
しかし男はわかっていなかった。
黒い聖騎士は悠斗に恐れを抱いたのであり、
その他の者に対しては・・・その限りではない事を・・・。
「くらえぇぇぇっ!」
その男が上に飛び上がると、ロングソードを振りかぶった。
それを冷たい目で見ていたセルカは・・・
「あいつアホだにゃ・・・」
そうつぶやいた時、「カツンっ!」と、振りかぶった剣が真上で木の枝に当たった。
「げっ!」っと、その男の声が聞こえた瞬間、
黒い聖騎士の剣がその男の胴を真っ二つに切り裂いていた。
「ば、馬鹿な・・・」
その男のつぶやきが聞こえた白斗は・・・「ほんまもんのアホやな」
二つに切り裂かれたその男はそのまま地に落ちた。
その部下だった騎士達はこう言い放った。
「これでみんな浮かばれるぜ・・・」
その他の騎士達も一同に頷いた。
黒い聖騎士は悠斗に隙を見せまいと剣を構えつつ「ジリジリ」後退して行く。
悠斗は逃さないように背後を取りながら牽制していた。
そして悠斗が黒い聖騎士を翻弄している頃・・・
イリア達は防御を白斗に任せると、先程負傷した女騎士をヒールで回復させた。
「傷は治したけど、血液まではどうにもならないからね?
だから今は無茶しないで、ユウトに任せて・・・」
静かな口調で話す女騎士は、「有難う御座います」と言うと、黙って頷いた。
するとその中の一人の騎士が・・・
「聖騎士様は黒い何かを浴びて変わってしまわれたのですっ!
どうか、どうか・・・お助け下さいっ!」
その話を念話で悠斗に聞かせると、一旦距離を取り構え直した。
(まじか・・・?)
(まじみたいでっせ?)
(折角仲間の敵を取らせてやろうかと思って、斬らなかったのにな・・・)
(わざとかいなっ!あーでも・・・丁度その方が良かったみたいでんな?)
(そうみたいだね)
黒い聖騎士は速度を上げると悠斗に襲いかかる。
「おっとっ!」
悠斗は黒い聖騎士の攻撃をかいくぐると、股の間を抜け背後に脱出する。
そして白斗は騎士達から情報を聞き出す為、念話を繋げたまま話をしていく。
「なぁ~あんさん達・・・ん?皆さんどないしたん?」
白斗が急に固まった騎士達を見て首を傾げると・・・
「・・・ちっさっ!」
騎士達の一人が思わず声に出してしまった。
「あっ・・・」
二人の騎士がその言葉を発した男を殴りつけ土下座で謝ってきた。
「ま、まぁ・・・今はええわ・・・、そんな事よりもやな?
あの黒い人は殺さん方がええんやな?」
「はい、何か手はないものかと考えておりましたが、
我々騎士ではどうしようもなく・・・」
騎士の一人が俯き涙を流す。
するとイリアが結界の外へ出ると・・・
「な、何しとんねんっ!」
振り返ったイリアの眼差しはとても真剣だった。
「・・・イリアを信じるのにゃ」
セルカの一言に白斗は頷き、悠斗もまた・・・頷いた。
悠斗は黒い聖騎士の注意を引きつける為、黒い聖騎士の攻撃をひたすら躱していく。
(何をするかわかんないけど・・・任せたよ)
悠斗は口角を上げると、更に挑発する。
イリアは目を閉じ呼吸を整えると、「身体強化っ!Lv.4」
そうつぶやくと一気に黒い聖騎士との距離を詰め背後から触れると・・・
「はぁぁぁぁっ!精霊鑑定っ!」
黒い聖騎士がイリアに攻撃を加えようとした時、
悠斗は石を再び至近距離からぶつけた。
大きい衝突音と共に、黒い聖騎士はよろめく。
イリアは黒い聖騎士がよろめいた瞬間に後方へ飛び退くと、悠斗に鑑定結果を伝えた。
「ユウトっ!この人は特殊な呪いが掛かっているわっ!
貴方の解呪なら・・・いけるはずよっ!
ただしっ!黒いモノの胸の辺りに核となるモノがあるから、
それを破壊するか取り出すかしないと解呪出来ないわっ!」
悠斗はイリアの言葉を聞いた瞬間、誰にでもわかるくらい、
とてつもなく面倒臭そうな顔をしていた。
そして・・・
「・・・面倒臭せぇぇぇぇっ!!!」
悠斗の本音が癒やしの森に響き渡った。
ラウル ・・・ 今回の話は黒い聖騎士なんだね~
ミスティ ・・・ 癒やしの森での出来事なのですね?
ラウル ・・・ ああ、それにあの森には、僕の知り合いがいるんだよね~♪
ミスティ ・・・ ああ~♪私も久々に顔が見たくなりましたわ♪
ラウル ・・・ もし行くのなら僕も誘ってね?
ミスティ ・・・ はい♪手土産をお忘れなく♪
ラウル ・・・ ところで原作者は忙しそうだね?
ミスティ ・・・ 忙しい事は良い事ですが、無理をされては私の出番がっ!
ラウル ・・・ 君・・・最近露骨に言うようになったね?
ミスティ ・・・ そうせざるを得ない事もありますわ♪
ラウル ・・・ やれやれだね><
ってなことで、緋色火花でした。




