83話 剣神
お疲れ様です。
83話ですね~。
タイトル通りの方が現れる話ですW
っていうか・・・台風が気になる今日この頃ですが、
皆さんも気をつけてください。
ブックマークや感想など、宜しくお願いします。
そして夜中のアップもいつも通りの予定なので、宜しくお願いします。
それでは、83話をお楽しみ下さい。
「話は聞かせて頂きました。その件は私が引き受けましょう・・・ユウト様」
ゲートの中から出てきた神に悠斗は驚いた。
「・・・どうして此処に?」
白斗はその姿を確認すると、悠斗の前に防御結界を張った。
「主っ!気ー抜いたらあかんでっ!?」
白斗の声が岩場の聖域に響き渡った。
神界のゲートから出てきたのは、剣神・アマルテアだった。
「剣神・アマルテアか・・・」
「主・・・後ろへ下がっとき!ねーちゃんっ!こいつは人間の敵やっ!」
「なにっ!?分かったわ・・・悠斗、此処は私達にまかせなさい」
桜は神気を解放すると悠斗の前へ出る。
白斗も桜も悠斗の前に立ちはだかり、アマルテアの攻撃に備えた。
アマルテアはゆっくりと近付いてくる。
悠斗はアマルテアを見ると白斗と桜を止め、自らアマルテアに近づく。
「あ、主っ!あきませんって!」
「白斗・・・悠斗なら大丈夫やよ?それにあの女からも変な殺気はあらへんわ」
「・・・わ、わかったけど・・・なんかあったらワシ・・・」
白斗を納得させ桜も神気を抑える。
「ありがとな、白斗と桜♪」
桜は「ニヤ」っと笑うとアマルテアを見据えると沈黙する。
「アマルテア・・・体はもういいのか?」
「ああ、色々と迷惑を掛けたようね?」
「だね?あの時は本当に驚いたけどさ、今も結構驚いてるよ」
アマルテアは薄く笑うと、悠斗に片膝を着き、礼を取った。
「えっ?!アマルテア何やってんだよ?」
アマルテアは頭を垂れたまま話を始めた。
「私は今までの行いにより、神としての地位を失う事になります。
ですから・・・その前に、貴方様の御力になりたく思い参上致しました」
「神の地位を失うって・・・なんでまたそんな事に?
この前の事を言っているのなら、あれはあんたのせいじゃないだろ?」
アマルテアは悠斗の言葉に小さく首を振った。
「いえ、私は常日頃、異形の魔の殺戮の事に対し、
人族を救う事はない・・・そう言っておりました。
実際、私は異形の魔に対抗すべく鍛錬している、
オウムアムアの手助けもしませんでした」
「な、何でまた手助けしなかったのさ?オウムアムアの戦い方はひどかったんだけど?」
「も、申し訳御座いません。私はこのノーブルの世界の者達に対し、
生きる価値なし・・・そう判断致しましたので・・・」
悠斗は一度白斗と桜を見ると、「警戒しなくていいからね?」
そう言って、悠斗はテーブルを置いた場所に移動すると、
アマルテアの分の紅茶を入れた。
桜にも紅茶はいるかと聞いたが、無言で首を振られた。
そして、アマルテアは席に着くと、悠斗が入れた紅茶に口を付けた。
「・・・美味しいわ♪有難う」
「いえいえ、お口に合って何よりです」
静かにカップをソーサーに置くと、アマルテアが話を始めた。
「生きる価値なし・・・その理由は、この世界の住人達が私利私欲に走り、
神を敬わず自堕落な存在だったからです」
「言いたい事は理解できるけどさ?でも・・・」
「はい、分かってはおります。ただ私達は神です。
失敗したのなら、また作ればいい・・・そう思っていたのです」
「ははは・・・神だから出来るってか?めちゃくちゃだな」
アマルテアは顔をしかめつつ頷いた。
「はい。でも・・・本音である事に間違いはありませんし、
今でも少しそう思っております」
「お、思ってるって・・・なんでまた?」
「理由は・・・貴方です」
「えっ?!お、俺ですか?」
「はい、貴方は異世界より、全てを捨ててまでノーブルに来られた・・・
何故異世界の人族に頼らなければならないのか?
何故私達神が強き者を生み出す事ができないのかっ!
そう思い、最初からやり直せばいい・・・そう思っていました」
アマルテアは俯いたままその悔しさが体の震えで見て取れた。
「俺は別にいいんだけど?」
「何故です?家族や仲間達もいらしたのでしょ?
何故そんなに簡単に言えるのですか?」
悠斗は自分用にコーヒーを入れながら苦笑しつつ答えた。
「あはは・・・それはですね?内緒にしていてほしいのですが・・・?」
「わ、分かりました、誰にも漏らさないとお約束致します」
悠斗は軽く頷くと・・・
「俺ね?日本で生きている意味を失くしてしまっていたんですよ。
一番大切な人を亡くしてしまって・・・。
仲間達や家族も、勿論大切だと理解はしていますけどね・・・」
「理解されているのなら・・・何故?」
「えっと・・・どうやらその大切な人を殺したのは・・・俺みたいなんです」
黙って見守っていた桜は、天照より悠斗の話は聞いていたので
ある程度の事情は知っていたのだが・・・
(どう言う事?天照様の話では、悠斗はその事を覚えていないし、
知らされていないと聞いていたのだけど?)
「なんだろ?わかるんですよね?何かを隠しているのって・・・
身内はきっと、俺の事を想って虚偽の話をしたんだろうなって・・・。
俺はそれが嫌だったんだ・・・。ちゃんと話して欲しかった。
そして自ら大切な人を殺してしまった俺は・・・
生きる目的を失った」
「失礼ですが・・・言わせて頂きます。
大切な人を失うのは誰でもある事ではないのですか?」
「ありますね・・・。でもその人を自分の手で殺す人って・・・どうなんでしょ?
しかも・・・俺はその事を覚えていないんですよ?」
「確かにそれはつらい事だと思いますが・・・」
悠斗はコーヒーを飲むと、何故かいつもより味が苦く感じた。
「俺は弟子を取り、俺の持っているモノをある程度伝えた。
そしていつ死んでもいいようにあらゆる魔を一人で狩ったりもした・・・
だけどいつも心はからっぽだったんですよ。
達成感も充実感も・・・俺はその時思ったんですよ・・・
俺って死んでいるんだな?って・・・」
アマルテアは悠斗の表情を見て感じ取っていた。
(表情はあるのに何処かからっぽなのはそう言う事なのね・・・)
「ならばどうしてノーブルに・・・ラウル様に付いて来たのですか?」
「ああ~それは・・・俺みたいな生きる屍みたいなヤツでも、
何かの役に立てるのならって思ったからですよ?
ただ、簡単に死ぬつもりはありません・・・
だけど俺は死んでいいヤツだと思ってはいますよ?」
今までずっと黙っていた白斗がテーブルの上に乗ると・・・
「主っ!何言うとんねんっ!あんたアホかいな?
そんなん亡くなった彼女さんも浮かばれへんわっ!
あんた・・・穂高はんに謝りなはれっ!」
白斗は怒りに任せて穂高の名をうっかり言ってしまった。
その瞬間、悠斗は無意識にマジックボックスからショートソードを取り出すと、
白斗の体に刃を当てて静かにつぶやいた・・・
「・・・何故穂高の事を知っている?」
悠斗の声が冷気を帯びていた。
「な、なんで・・・って・・・」
桜はゆっくり近付くと悠斗に話しかけた。
「悠斗・・・私もその穂高の名は知っている。
だけどね・・・私もこいつも名前と亡くなった事しか聞かされていないわ。
それでも白斗を殺すの?もしそうなら・・・私は止めないわ」
悠斗は桜の声に耳を傾け、ゆっくり目を閉じると・・・
「悪かった」
そう言って、剣を収めた。
その一部始終を見ていたアマルテアは・・・
(み、見えなかった・・・剣神である私が・・・全く見えなかった)
悠斗のポテンシャルの高さにアマルテアは驚愕したのだった。
そして悠斗もまた・・・
(・・・俺と穂高に何かあるのか?)
悠斗は椅子に座ると再びコーヒーを入れ始めた。
「話がそれてしまったけどさ・・・
俺の理由なんてそんなところだよ?」
「あ、ああ・・・話してもらっておいてこんな事を言うのも何だけど・・・
すまなかったわね・・・本当に・・・」
「いいよ・・・俺も何故話したのかわかんないしね?
それでアマルテア、あんたはこれからどうするんだ?」
「いつラウル様から宣告されるのかはわからないけど・・・
今のうちに、貴方に手を貸したかったのよ・・・受け入れてもらえるのならね?
だから無理にとは言わないわ。
私だって、受け入れてもらえないだろうと思っているもの・・・」
アマルテアは自分自身に苦笑しながら答えた。
(今更神としてって・・・我ながら呆れるわね?
でも神であるうちに、出来る事はしておきたいわ)
「私の事を信用しなくても構わないし、信用されるとも思ってもいないわ
だけどね・・・少しは役立ちたいと思ってるのよ・・・これでもね?」
悠斗は薄く笑うとアマルテアに手を差し出しこう言った。
「手を貸してくれ・・・アマルテア」
「・・・ええ、有難う♪」
アマルテアは悠斗の手を握ると頭を下げた。
「ユウト様・・・アイテムバッグを貸して頂けますか?」
「ああ・・・あっ・・・あのさ?他の連中のバッグにも同じ事出来る?」
「え?ええ・・・勿論出来ますけど?でも、どうしてですか?」
「だってさ、俺のバッグだけって、何かあった時まずくないですかね?」
「ええ・・・確かにそうですね」
悠斗はイリア達のバッグを取りに行った時、時間が止まっている事に
今更ながら気がついた・・・
(ははは・・・集中力が散漫していたな)
体は何ともなくても、精神はそうじゃなかった事に気づいた悠斗は、
桜や白斗、それにアマルテアに感謝した。
バッグを持ってきた悠斗は、テーブルの上に置くと・・・
「アマルテア・・・俺に手伝える事はないのか?」
「ふふ、ええ・・・これは神としての力だから、貴方に出来る事はないわ♪」
「そ、そうか~それは残念だ」
アマルテアは悠斗の苦笑に頬を緩ませるとバッグに神気を込めていった。
そして暫くすると、バッグはそれぞれの色に光った。
「ふぅ~。これで終わりよ?」
「おお~♪有難う♪これで白斗も誰と組んでも大丈夫だよな?」
笑顔を向け本気で心配してくれていた悠斗に、白斗は感謝していた。
また、桜も同様に悠斗の優しさに感謝していた。
「あっ!でもさ・・・白斗は当然生きているんだけど・・・大丈夫なのか?」
今更そう思った悠斗は困った顔をしていたのだが・・・
「何を今更言うてますのん?今日ワシがバッグの中に入ったのを見てましたやろ?」
「あっ・・・そう言えば・・・あははは」
白斗から視線を外しながら笑う悠斗に呆れながら・・・
「ええでっか?ワシの専門職は回復と防御でっせ?
たかがバッグの力なんて凌駕してるっちゅーねん!」
そう言われると悠斗は更に疑問をぶつけてみた。
「それならさ・・・オウムアムアはどうなのさ?あいつ・・・亜神だぞ?」
悠斗に言われ白斗から溜息が漏れた。
「あ、主・・・ワシと亜神はんは、そもそもサイズがちゃいますやんっ!
そりゃ~ワシかて、亜神はんのサイズやったら無理ですわ」
「ああ~なるほど♪」
「大丈夫でっか?ほんまに~・・・」
「フフフフフ・・・あーっはっはっはっ・・・」
突然笑い始めたアマルテアに悠斗と白斗が唖然とする。
「な、何を急に笑ってるんや?剣神はん・・・何かおもろい事でもあったんか?」
白斗の問いにアマルテアは笑いながら答えた。
「あはははは・・・す、すまん。お二人のやり取りが面白くてね?」
悠斗と白斗は顔を見合わせる。
「俺達ってそんなに面白かったか?」
「どないでっしゃろ?剣神はんのツボがよーわからんわ」
「いやいや、お二人の関係が私には面白く見えたのですよ?
その何気ないやり取りが私には新鮮なのよ?」
悠斗は白斗に肩を竦めて見せると白斗もまた首を捻っていた。
「しかしなんやな~?剣神はんってイメージがだいぶちゃうんやけど、
これがほんまの剣神はんって事かいな?」
「だな~・・・あの魔方陣の影響でおかしくなっていたのかもな?」
悠斗が魔方陣の話をした時、アマルテアの顔つきが変わった。
「ユウト様・・・その事なんですが・・・?」
突然改まった態度を取るアマルテアに悠斗も真剣な面持ちになった。
「何かあるのか?」
「何かと言うか・・・私がいつあの魔方陣を植え付けられたのか・・・
記憶にないのです」
「えっ?!」
「・・・誰にどのように植え付けられたのか・・・本当に覚えていないのです」
悠斗はアマルテアの言葉に嘘がないのは分かってはいるが・・・
「アマルテア・・・グローリーという組織は知っているか?」
「は、はあ・・・名前ぐらいは知っていますが・・・」
「まじか・・・」
「ま、まじ・・・です」
(あー・・・これは完全に面倒臭い事が起るフラグだな・・・
俺の安息はいつ来るんだ?スローライフがしたい・・・
って言うか、某アイドルグループのように、何処かを開拓したいっ!)
そう思う悠斗にあちこちでフラグが立ちまくる現状に、
流石の白斗も項垂れるしかなかった。
「主・・・これはもう運命としか言いようがないと思うんやけど?」
「お、己・・・運命めぇぇっ! あっ!アマルテア?!」
「は、はい?」
「運命神って・・・居る?」
「はい・・・運命神なら居りますが?名をチタニアと言います」
「チタニア・・・ね。分かった。伝言伝えてくれるかな?」
「チタニアに伝言ですか?」
「うんうんっ!伝言は・・・運命神ならもう少し俺に安息をくれっ!
と、そう伝えてほしいんだけど?」
「わ、分かりました。ユウト様の伝言、確かにこのアマルテアが承りました」
「じゃ~宜しく~♪」
三人の様子をずっと見ていた桜が口を開く。
「悠斗・・・あんたにも闇があると分かった。
でも、その闇はあんたにとって掛け替えのないモノ・・・
だけどね?それに迷わされないでね?
あんたを必要としている者達は、神々も含めたくさんいるわ」
桜の言葉が痛いほど分かっている悠斗は・・・
「ああ・・・なるべく・・・気を付けるよ?
俺自身、穂高の謎は・・・謎は必ず解いて見せるっ!・・・じっちゃ・・・」
「あかんっ!主っ!そ、その先はぜっっったいに言うたらあかんでっ! 」
「そ、そっか・・・な、なら・・・異世界行っても頭脳は大人っ!」
「主・・・わざとやろ?わざと言うとるやろっ!」
「うっ・・・お、俺も決め台詞とか欲しいんだけど?」
「パクリはあかんで?まじで・・・あ・か・ん・でっ!」
「・・・はい」
悠斗と白斗のやり取りに桜とアマルテアは笑っていた。
笑顔になれたアマルテアは悠斗に感謝し、
また、桜も白斗を助けてくれた事に感謝していた。
(天照様・・・あなたは一体何をお考えなのでしょうか?
事と次第によっては、私も貴女の敵になるわよ?)
桜は岩場の聖域の夜空を見上げ悲しい目をしていた。
ラウル ・・・ 今回はアマルテアの話なんだね~
ミスティ ・・・ ・・・・・
ラウル ・・・ どうしたのさ?
ミスティ ・・・ あまり仲がいい訳ではないので・・・
ラウル ・・・ 女同士ってさ・・・色々とあるよね?
ミスティ ・・・ ・・・・
ラウル ・・・ ほんとに機嫌悪いな~・・・困った女神だ。
ミスティ ・・・ あっ、そう言えば・・・夜中のアップは私達の閑話でしたわね?
ラウル ・・・ ああ~・・・確かそんな事を言っていたね?
ミスティ ・・・ 楽しみにしておりますわ♪
ラウル ・・・ 女性はほんとに難しいね?
ってなことで、緋色火花でした。




