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神に頼まれたので世界変革をすることにした  作者: 黒井隼人
グランフォール皇国
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第7話


冒険者ギルドから噴水広場へと戻り、手近なテーブルへと瑠衣、ノエル、シエルと共につき、購入したサンドイッチへと手を付けていく。


「あ、やべ。冒険者ギルドでマルシャン商会の事話すの忘れてた」

「何か話しておくことがあったの?」


和也が作った陶器のコップに水袋の水を入れて配りつつ、瑠衣が首を傾げた。


「ん~、言っておくことがあったというか、冒険者ギルドの方にそこらへんの事話して、事情を知ってる人を増やしておこうかと思ったんだがな」

「なんで?」

「なんかあった際に事情を知ってる人がいれば味方になってくれるかもしれないだろ?」

「そううまくいくかな~」

「うまくいかなくても、もし貴族が騒動を起こしたとしたら不満は高まるだろ。内政に影響が出始めれば楽になるかもしれないしな」

「むしろもっと面倒なことがおこったりして」

「それもあり得そうだから言うな」


バスケットの中にあるサンドイッチを一つ取り、一口齧る。


「ん、美味い」


ハムにレタスにスクランブルエッグ。ベターな具材に適度な塩気が効いている。


「こっちの世界にもハムとかレタスあるんだねー」

「どっかで野菜の種とか手に入れておきたいなー」

「家庭菜園でもするの?」

「いや、国作るって言っただろ?そこで食料安定させるために気候に合った食べ物とかを今のうちに探しておきたいんだよ」

「なるほど」


納得したようでモグモグとサンドイッチを食べ始めた。


「……あ、そういえば敬」

「んあ?」

「マルシャン商会ってどこにあるの?」

「商業地区だろ?」

「商業地区のどこ?」

「………あ、やべ」


瑠衣に言われて気が付いた。そういえば細かな場所を聞くのを忘れていた。


「もう、肝心なところで抜けてるんだから…」

「まいったな…ギルドに戻って聞いてくるか」

「でも、さっきあんな騒動起こしちゃったんだし、今から戻るのはあんまりいいとは思えないよ?」

「ん~、まあ確かにな…」

「あの馬車の品物表には書いてないの?」

「書いてないな。ってか、書いてあったとしても番地とかわからんからな…」

「それもそっか。万能の書は?」

「あれはあんま人目が付く場所で扱いたくないんだよなぁ…」


バックもそうだが、万能の書はかなり希少な物だ。それを人目が付くところで扱うと窃盗や強盗など面倒な輩に目を付けられかねない。

それじゃなくても権力者に目を付けられたら面倒さは跳ね上がる。


「じゃあどうするの?」

「話を聞きながらしらみつぶしで探すしかねぇだろうな~」

「じゃあウィンドウショッピングもしたいな!」

「時間があればな」


ワクワクしている様子の瑠衣に苦笑を浮かべていると、サンドイッチを食べていたシエルが唐突に顔を上げた。

シエルは神爺に魔法の扱い方を教わって以来、空間把握だけでなく、気配察知にも長けだした。そして同じく教わっているノエルも回復魔法に関しては玲と同等レベルにまで上がっている。戦闘能力は二人とも低いのだが、それ以外のサポートとして役に立ってくれそうだ。


「どうした?」


俺の問いかけにシエルがメモ帳に文字を書き始めた。喋ることができないからと文字を教えてきたのだが、二人ともすごい速度で覚えていて、ひらがなだけだが、簡単な会話ならできるようになった。


『れいさん、きます』

「玲が?和也にサンドイッチ渡した後かね?」

「だと思うよー。多分一緒に食べてたんじゃないかな」

「ま、わざわざ別々に食べる理由はないからな」


そんな事を話していると、広場へと来た玲がこちらに気が付き、近づいてきた。


「あら、ここにいたのね~」

「ああ、さっき買ったサンドイッチを食うついでにな。なんか用事があったのか?」

「スティクさんからこれを預かっているのよ~」


そういって一枚の折りたたまれた紙を俺に差し出した。


「なんぞや」


受け取って開いてみると、それはスティクが書いたのであろう。噴水広場から商業地区に向けて書かれている簡易的な地図だった。


「これってもしかして?」

「マルシャン商会の営業所が描かれている地図よ~。敬がわからなくて困ってるかもしれないからって用意してくれたのよ~」

「マジか。またあとで礼を言っておかねぇと」

「サンドイッチ分けてあげたらそれでいいって言ってたわよ~」

「それはそれ。礼は言っておかないとな」


俺の言葉に玲と瑠衣はどこか満足そうに微笑んでいた。


―――――――――――――――――――――――――


その後、買い物をする玲と別れ、スティクが描いてくれた地図の通りに裏通りを歩いていく。


「人通り少ないねー」

「ま、裏路地なんて好き好んであるかんさ」


ノエルとシエルは少し怖いのか、それぞれ俺と瑠衣の服を掴みつつ体を寄せていた。

裏路地を通る最中、ところどころで俺達を見ている奴らがいたが、ただ見ているだけのようだったので無視し、たまに絡んでこようとしていた奴は先んじて睨みつけたらすごすごと引き下がっていった。


「やっぱり治安はよくないのかなー」

「そりゃそうだ。こういう大きな町ってのはそれだけスラムや犯罪組織ってのはでかくなるもんだ。国だろうとなんだろうと大きくなればなるほど影も大きくなる。影が大きくなればそこに潜む裏の世界の住人は過ごしやすくなるって訳だ」

「そういうもんなんだ」

「さて、ここだな」


俺の言葉に瑠衣達は周囲を見回すが、少し暗い色の石造りの建物があるだけで、特に店らしい店は見当たらなかった。


「ここがそうなの?それらしい場所がないけど…」

「地図ではここだな。事務所的なもんかもしれん」

「ノエルちゃん、シエルちゃん大丈夫?」


怯えているのか、顔色が悪く、わずかに震えている二人に気を遣うように瑠衣が声をかけた。ぎゅっと服を掴んでいる手に力が籠る。俺はやれやれとため息を吐きつつ、二人の頭に手を置いた。


「悪いようにはしないから俺を信じな」


俺の言葉に二人はうなずいた。


「んじゃ行きますか」


三人がうなずき、そして俺は扉に手をかける。

扉を開け、中に入ると、最低限の机や椅子など、こざっぱりした内装の部屋に三人ほどのガラの悪そうな男たちがたむろしていた。


「あん?なんだテメェ。ここはマルシャン商会の事務所だぞ?それがわかって来てんのか?」

「ああ、ここに数日以内に荷が運び込まれる手筈になってると思うんだが、その件で話をしに来た」


俺の言葉に男は訝し気な表情を浮かべ、何やらほかの男に指示を飛ばすと指示された男二人は裏へと引っ込んだ。


「少し待ってろ」


そういって男はこっちを監視するように椅子に座った。

俺も瑠衣の方を見ると、瑠衣はうなずき、ノエル達を庇うように立ち位置を変えた。

少しして先ほどどこかへ行った男の内一人が少し小柄な男と一緒に戻ってきた。


「やあやあやあ、お待たせいたしました。私が皇国でマルシャン商会を任されている者でございます」


小柄な男はそう名乗った。こびへつらうような笑みを浮かべているが、その目にこちらを下に見ている感情が宿っているのを俺は見逃さない。


「任されているってことはアンタが頭じゃないのか」

「ええ。会長はいろんなところで仕入れをしておりますので」

「へぇ。そうやって違法品を集めているわけだ」


その言葉に表情から笑みが一瞬消えたが、すぐに元に戻る。


「どんな噂をお聞きしたかわかりませぬが、我々マルシャン商会はまっとうな商売をしております故、違法品など取り扱ったことなどございませぬよ」

「あっそ。ま、そこらへんはどうでもいいがな」

「………」

「………」


互いに腹の探り合い。俺の挑発に対してどういう反応をするかを見てみたかったが、さすがにあの程度の安い挑発に乗るほど馬鹿じゃなかったか。

現段階で気になるのは裏に二人向かったというのに一人しか戻ってこなかったこと。

おそらくだが、交渉がこじれて揉めた際の応援を用意していると考え方が無難だろう。状況を見つつ索敵だけは怠らないようにしておこう。


「それで、近々納入される予定の荷ついてのお話とのことですが」

「ああ。アンタらのところに納入される予定でまだ来てない荷があるんじゃないか?」

「はい。お話の通り数日ほど前に納入予定であった荷がまだ届いておりませぬが…何かご存じなのですか?」

「その荷を運んでいる商隊は途中でウェアウルフに襲撃されて全滅したぞ」

「なんと!?それは真ですか!?」

「ああ。その襲撃現場も皇国の兵士に確認してもらっている」

「そうですか…それで荷の方は?」


生存者がいるかどうかよりも先に荷が無事かどうかを聞いてくるか。ま、そうだろうな。


「奴隷以外のほとんどの荷は無事だ。ここまで運んでくるわけにもいかないから荷は馬車の荷台に乗せ門の方に置いてある」

「そうですか」


そう返事と共に座っていた男の方へと目線を向けると、男はうなずいて裏へと引っ込んでいった。大方門の方へと行って荷を回収しに行ったのだろう。ま、俺が割符渡していない段階で和也に追い払われるだろうがな。


「で、さっき言った奴隷だが二人だけ無事だった。それが俺の後ろにいる双子の姉妹だ」

「ふむ」


商人の目がノエルとシエルへと向けられると、びくりと体を竦ませ、瑠衣の後ろへと隠れた。


「で、こっから交渉だ」

「報酬の件ですか?」

「そうだ。俺の望みはこの二人の奴隷。この二人をくれるのなら他の品物は全部返す」

「そのお二人ですか…」


じっくりと品定めするように見つめようとするが、瑠衣がそれを防ぐように立ちふさがった。


「ああ、それと」


俺はあえて今思い出したかのように声を上げ、懐から割符を取り出す。


「あんたが荷を回収に行かせたようだが、あの荷は兵士と俺の連れに管理させていてな。この板を持って行かないと絶対に渡してくれないぞ」


俺の言葉にピクリと眉が上がる。


「もし強引に奪おうとしたら返り討ちにしろと言ってある。あいつなら100人まとめて来ても問題ないだろうからな。だから荷を回収するにはこの割符を持っていく必要があるんだ」


そういってひらひらと割符を見せる。


「どれだけの手勢をよこしたかは知らんが、帰ってくることはないぞ」


俺が挑発的な笑みを浮かべると、商人はギリッと口元を歪ませた。よしよし、これである程度主導権を握れたな。あとはこいつがどれだけ短気かってことだが…。


「それじゃ、交渉を再開しましょうか。こちらからは無事な荷と売上金を、そちらからはこの二人の奴隷を。簡単な話だよな?」

「………」

「そちらが交渉を飲むのであれば契約書を。それが受理されればこちらは割符を渡し、品物と売上金を引き渡します。契約書が全うであることを前提として、ですがね」


あえての丁寧語は相手にどう聞こえるか。まあ、大半の人は挑発だと受け取るだろうけど。

そんな時奥の扉が開き、最初に裏に行ったもう片方の男が顔を出した。その瞬間に索敵をすると、扉の奥に30人ほどの存在を感じる。実力の方まではさすがにわからないが、数は多い。ぶっちゃけ殺さずに30人抑えるのは面倒なんだよな…。室内じゃなければだが。

そんな事を考えている間に、商人の近くにいた男がドアの方へと向かい、軽く会話した後に、メイスを受け取って商人の元へと戻ると、ボソボソと何かをささやいた。

それを聞いた商人はニッコリと笑みを浮かべた。うん、挑発に乗ってくれたようだ。ってか、こうもあっさり乗るとは思わなかったわ。さっきは冷静で挑発には乗らないだろうと思ったが、もしかしたらあの時点ですでに乗っていたのかもな。


「……なるほど、こちらは契約書を、そちらは割符を、確かに取引としては成立しておりますね」

「取引、というよりは報酬として俺はこの二人を望んでいるだけですよ。欲をかかなければ品物と金が取り戻せますよ」


暗にこちらを襲撃するなと伝えているが伝わる様子は一切ない。ま、ここで伝わるほど冷静ならそもそもこちらが提案を出した段階で取引済ませてただろうがな。


「なるほど、ご忠告ありがとうございます。ですが我ら商人は欲深い者でしてね…」


商人の言葉に答えるように男が俺の前に立つ。


「欲するものは何が何でも手に入れたいんですよ」

「オラァ!!」


正面の男がメイスを横薙ぎに振るってきた。

速度としては避けるのは容易い。だがここはあえてよけず、左から迫ってくるメイスが当たる直前にわずかに体を右に傾け、打点をずらした。

メイスは俺のこめかみの付近に当たり、そのまま俺を殴り倒した。


「敬!」

「貴方こそ誰を挑発していたか弁えるべきでしたね」


瑠衣の悲鳴のような声と商人の勝ち誇ったような声を聴きながら俺は床に倒れた。


「さて、ではあなた達はこちらに…」


商人がそこまで言った瞬間、男が吹き飛び勢いよく壁にたたきつけられた。


「………は?」

「誰を挑発していたか弁えろだったか?」


呆けている商人に向け不敵に笑みを浮かべつつ立ち上がる。


「お前こそ誰と対峙しているか、きちんと理解するべきだったな」


打点をずらしたとはいえ、衝撃は頭と首に来ている。軽く首を動かして痛みなどを確認しておく。こめかみに当たったからか、その部分は痛く、触れると指先に血が付いていた。まあ、直撃はしているからな。打点をずらして威力を抑えたとはいえ切れていてもおかしくはない。ま、そこまで傷は深くないだろうから大丈夫だろう。

先ほどの男は風で吹き飛ばして壁にたたきつけたわけだが、まさかのあの一撃でのびてやがる。殴られた借り返してねぇんだがな…。


「なんで起き上がれる…!?死んでいないにしても、すぐには立ち上がれないはずだぞ!」

「んなもんまともに食らってないからに決まってんだろ。あの程度の攻撃かわすことも簡単だったがな」


そういいつつチラリと瑠衣を見ると頷き、ノエル達を連れて後方へと下がっていく。


「さて、先に手を出したのはそっちだ、交渉は決裂だな。やれやれ、欲をかかなければ損をしなかったものを」

「くっ…!お前ら!出てこい!!」


商人の呼び声でドアの後ろに控えていた30人ほどの男たちがどたどたと入ってきた。ってか、ここ一応玄関なんだよな?それなりに広いのは確かだが、30人もの男がそれぞれ武器を構えて入ってきても、暴れられるほどのスペースはねぇぞ?だが商人はそのことに気付いてないのか、また笑みを浮かべていた。


「これだけの数だ!勝ち目はないぞ!」


自らを鼓舞するためか、声を荒げるが、その表情からは余裕が見受けられない。


「そういいながらずいぶんと焦っているようだな。今からでも謝れば許してやるが?」

「ほざけ!お前ら!やっちまえ!!」


雄たけびと共に男たちが襲い掛かってくる。だが、ここは室内だ。一度に相手できるのはせいぜい3・4人が限度だし、武器を振り回そうとすれば味方に当たりかねない。だからこそ室内での多勢は不利になりやすい。

男の一人が正面から突撃してきて、剣を振り下ろしてきた。

俺は左足を後ろに下げつつ、体の向きを変えて振り下ろされた剣を回避し、そのまま一歩前に進んで男の懐へと入り込み、左手を胸元へと押し付ける。


「挨拶代わりだ!」


その言葉と共に風を左手から放出させ、男を後方にいた奴らへと吹き飛ばした。

後方で待機してた奴らは逃げることも出来ず、直撃し、そのまま倒れこんでいく。三分の一ほど巻き込めたかな?ま、上々だろう。


「この野郎!」


俺の左側にいるやつが斧を横薙ぎに振るってくるが、俺もすぐさま屈んで斧をかわし、そのまま相手の膝を裏側からひっかけるように足払いを仕掛けた。


「うおっ!」


がくんと体を沈ませた男の顔面を掴んでそのまま床へとたたきつけ、おまけに一発顔面に拳を叩き込んでおく。後頭部を強打した男はそのまま白目をむいて倒れていた。多分死んでない。うん、多分。

ゆっくりと立ち上がり、ぎろりと睨むとほかの奴らが怯む。


「次」


俺の言葉に残ってる奴らはビクリと体をひるませる。


「な…何をたった一人にビビっているんだ!早く片付けろ!殺しても構わん!!」


商人の言葉に気おされ、一人が突出して俺へと突っ込んできた。持っている両手剣を上段に構え、勢いを乗せて俺へと振り下ろしてくるが、俺はそれよりも早く左足を一歩前に出し、右足を蹴り上げて振り下ろされている両手剣の柄頭を蹴り上げた。

下へと振り下ろそうとする力と、真逆の上へとかちあげる力がぶつかり合った。足は手の三倍の力があると云われている。その通りなのか、両手剣は持っていた手からすっぽ抜けてそのまま天井へと突き刺さった。


「握りが甘い…よっと!!」


左足だけで軽く飛び、振り上げている右足の踵を正面の男の後頭部へと当て、そのまま一気に踏みつけた。

本来蹴りですっぽ抜けるような握りはしていなかったんだろうが、俺の睨みで怯み、商人に急かされ、気もそぞろだったんだろう。南無。


「さて、殺しても構わんだったか?さすがに殺そうとしてくる奴にまで加減する気はないからな」


玄関は俺のすぐ近く、他にも出入り口はあるだろうが、それに行くにはもう一つの扉へと入っていかないといけない。だからまずはそこをふさぐ。

ドアの方へと右腕を向け、少し上へと角度をつける。右腕から放たれた風に真空刃を織り交ぜ、天井を斬り裂いて瓦礫となって扉をふさいだ。


「これで逃げ場はなくなったな。じゃあ…終わらせるか」


一歩前に進むと商人たちの顔が青ざめた。30人のうちたった3人倒しただけ(一人吹き飛ばして三分の一ほど巻き込ませたが)なのにもう諦めたようだ。


「商人として人を見る目はきちんと養った方がよかったですね」

「ま…待て!わかったお前の要求は飲む!その二人は連れて行っていい!だから…」


商人の言葉に俺はニッコリと笑みを浮かべる。商人は希望を見たような明るい表情を浮かべたが…。


「も う お そ い」


商人たち全員を包むように風の幕を生み出し、その内部に大量の真空刃が入り乱れさせた。

さすがに殺すほどの事でもないだろうから、気絶する程度に痛めつけておくか。


「終わった?」

「ん?ああ。これくらいでいいだろう」


瑠衣がいつもの調子で聞いてくる。ま、これくらいなら問題ないし、瑠衣の前でやってたことだからさして心配もしてなかったんだろう。


「でもよかったの?交渉に来たんだよね」

「ん~、問題ないさ。ってか、こうなるだろうなとは思ってた。ってかそう誘導させた」

「思いっきり挑発してたもんね…。でも、よかったの?あんな手荒な方法を取って」

「ま、何とかなるさ。せっかくだからスティクの手伝いをしようと思ってね」

「手伝い?」

「そ。そろそろいいかな」


商人たちの方を見てみると、全員動かなくなっていた。体のところどころには切り傷があるが、どれも致命傷には至らないだろう。逃げ回った際に踏まれたりぶつかったりで骨が折れてるかもしれないが、そこまでは感知しない。全員気絶しているようだし、今のうちにやることやっちまうか。


「んじゃ、とりあえず裏行くか」

「え?なんで?」

「違法物品扱っている可能性があるって話だろ?せっかくだからその証拠も掴んでおこうかとな」

「でも、どこにあるかなんてわかるの?」


そう聞いてくる瑠衣に万能の書を見せると納得したような表情を浮かべた。


「とりあえず行くとするか」


瓦礫にふさがれている扉の方へと足を進める。


「でも、瓦礫でふさいじゃったよね。どうやって…」


瑠衣が言い終わる前に扉を風で斬り裂いて開ける。


「ん?」

「…なんでもない」

「そか?んじゃとっとと探りに行くぞー」


瑠衣達を連れ、事務所の中で違法商品の証拠探しへと赴くことにした。



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